
古物商の許可は「営業所なし」では取得・維持できません。申請時点で少なくとも一つの拠点(主たる営業所)を定め、営業所ごとに管理者を置き、台帳を備え付けられる実体が必要です。店舗を持たないネット販売や出張買取中心でも、自宅の一室などを営業所として位置付けるのが現実的解です。申請は主たる営業所の所在地を管轄する警察署経由で行います。
- 営業所なしでは許可は不可。行商のみでも住所・居所が営業所とみなされます。
- 営業所は「営業の本拠」。台帳の備付・保存、立入検査への対応ができる実体が必要です。
- ネット販売でも営業所は要る。ウェブ表示義務やURLの届出対象になる取引形式があります。
- 申請は主たる営業所の所在地の所轄警察署長経由で行います。
- 拠点の確定→管理者の選任→申請書類の準備→提出・審査、の順で進めます。
結論と法的根拠—なぜ「営業所ゼロ」は成立しないのか
古物営業法は、営業所ごとに管理者を一人選任することを求めています。管理者は拠点に紐づくため、「営業所が一つもない」状態は制度上の前提に反します。
また、古物台帳や関連書類は「営業所」に備え付け又は直ちに表示可能な状態で保存する義務があります。保存先が営業所とされていることからも、拠点の不存在は想定されていません。
さらに、警察職員は必要に応じて「古物商の営業所、仮設店舗、保管場所」等に立ち入って確認できます。実地確認の対象としての営業所が制度設計に組み込まれている点も重要です。
実務上の定義では、営業所とは「営業の本拠」であり、帳簿や商品を保管し、責任の所在が明確な場所を指します。行商のみを行う場合でも、住所又は居所を営業所とみなす扱いが示されており、「完全に拠点なし」は認められません。
営業所として認められる場所の考え方
営業所は、日常的に古物営業に関する意思決定や事務処理が行える拠点で、台帳や関連資料の保管、警察からの照会・臨店時の対応ができる実体が必要です。具体的な可否は最終的に管轄の判断ですが、以下の考え方で検討すると迷いにくくなります。
営業所として位置付けやすい例
- 自宅の一室を事務スペース化して台帳や在庫・受入記録を管理する(居住地を兼ねていても可)。
- 小規模オフィス・店舗(来客対応の有無は問わない)。
- 他業種と併設の事務所でも、古物営業の事務・保管・管理が明確に分かる体制にしている。
いずれも「営業の本拠」として機能すること(帳簿・記録の整備、連絡体制、検査対応)がポイントです。
判断が分かれやすい場所(事前確認推奨)
- 倉庫のみ:単なる保管だけで人が常駐せず事務処理も行わない場合は「本拠」と言いにくい。一方、査定・記録・管理を行う実態があるなら営業所に当たり得ます。
- シェアオフィス:占有が弱く、台帳保管や検査対応に不安がある場合は適合性が問題になります。
- バーチャルオフィス:郵便受け相当で実体が乏しい場合、「本拠」性を満たしにくい。
最終判断は管轄の公安委員会(所轄警察署経由)ですが、基準は「営業の本拠としての実体があるか」です。迷う場合は、台帳保管・記録整備・警察からの連絡や臨店への即応性を説明できる準備をして所轄で確認してください。
ネット販売・非対面取引・行商の場合の拠点と表示・届出
オンライン中心でも営業所は必要です。非対面取引を行う場合、ウェブサイト上での表示義務(氏名又は名称、許可をした公安委員会名、許可証番号など)や、取引形式によってはURLの届出(送信元識別符号の届出・使用権限の疎明)が求められる場面があります。
行商(営業所以外で行う取引)を選択しても、住所又は居所が営業所とみなされます。催事や出張買取を主とする場合でも、「拠点なし」ではなく、自宅等の基点を営業所として確定させ、台帳の整備・保存を行ってください。
申請までに決めること・整える書類
許可申請は、主たる営業所(営業所が未設置の場合は住所又は居所)所在地の所轄警察署長を経由して行います。申請書には営業所の名称・所在地・管理者等を記載するため、拠点と管理体制を先に確定させる必要があります。
申請前チェックリスト
- 主たる営業所をどこにするか決める(自宅の一室でも可。賃貸・管理規約の制限や共用部の使用可否を事前確認)。
- 営業所ごとの管理者を選任する(個人事業の単独経営なら本人で足りる場合が多い)。
- 台帳(電子含む)を備え付け・保存できる体制を用意する。
- ネットで非対面取引を行う場合は、サイトの表示項目・URL(送信元識別符号)の取扱いと使用権限の疎明資料を準備する。
- 申請書・添付書類を整え、主たる営業所の所在地を管轄する所轄警察署へ提出(オンライン手続が用意されている地域でも、手順は主たる営業所基準で整理されています)。
許可取得後に営業所で行うこと(台帳・検査対応など)
営業開始後は、取引記録の作成・保存義務を履行し、台帳等を営業所に備え付けるか、直ちに書面表示できる状態で保存します(保存期間の起算や運用は法令に基づき整理)。
また、必要に応じ、警察職員が営業時間中に営業所・仮設店舗・保管場所等へ立ち入ることがあります。記録や本人確認の履行状況等について説明できるよう、日頃から営業所での管理体制を整えておきましょう。
営業所を変えるときの手続の考え方
営業所の名称・所在地、URL、管理者など、許可証記載事項や届出事項に変更が生じたときは、届出や許可証書換えが必要になる場合があります。変更の内容ごとに提出先・様式・期限が異なるため、変更前に所轄警察署(主たる営業所の所在地)で必要手続を確認し、余裕をもって準備してください。根拠規定は古物営業法・同施行規則で整備されています。
FAQ
店舗は持たず、ネット販売と出張買取だけで始めたい。営業所は必ず要りますか?
要ります。営業所は「営業の本拠」と位置付けられ、台帳の保存や検査対応の基点になります。行商のみを行う場合でも、住所又は居所を営業所とみなす扱いが示されています。自宅の一室を営業所にするなど、拠点を明確化して申請してください。
倉庫を借りています。そこだけで申請できますか?
倉庫が「本拠」として機能しており、査定・記録・保管・台帳管理・検査対応ができる実体があれば営業所に当たり得ます。単なる保管のみで人の業務が行われない場所は営業所性が弱いため、体制と実態を所轄で確認してください。
バーチャルオフィスや共有オフィスでも大丈夫?
要件は「営業の本拠としての実体」があることです。占有や台帳保管、臨店・照会への即応性が確保できない場合は営業所と認められないことがあります。契約条件や運用実態を踏まえ、所轄で事前相談するのが無難です。
申請前に物件が未確定でも出せますか?
申請書に主たる営業所の名称・所在地・管理者等を記載するため、拠点と管理体制の確定が先です。申請は主たる営業所(未設置の場合は住所・居所)所在地の所轄警察署長経由で行います。
ネットだけで販売します。ホームページ上の表示や届出は必要ですか?
非対面取引を行う場合、ウェブ上で名称・許可公安委員会名・許可証番号等の表示が必要です。取引形式によってはURLの届出や使用権限の疎明も求められます。扱う取引の形態に応じて、所轄の案内と法令の様式を確認してください。
営業所を移転します。何をすればいいですか?
変更の内容(主たる営業所か、その他の営業所か、許可証記載事項か等)に応じて、届出や許可証の書換えが必要です。提出先は主たる営業所の所在地の所轄警察署経由となります。期限や様式は変更類型ごとに異なるため、事前に所轄で確認しましょう。
まとめ
古物商の許可は「営業所ゼロ」では成り立ちません。営業所は営業の本拠であり、行商のみでも住所・居所が営業所とみなされます。まずは自宅の一室等を含めた拠点を確定し、管理者の選任と台帳の備付・保存体制、ウェブ表示・URL対応(必要な場合)を整えましょう。申請は主たる営業所の所在地の所轄警察署長経由です。拠点の実体に不安があれば、所轄へ事前相談を行い、実務運用を確認してから進めるのが最短ルートです。