脱毛サロンを新規に開業するにあたっては、店舗物件の確保や機材の準備、集客プランの策定など様々な準備が必要です。その中でも見落としがちなのが、契約書類や法令対応といった法的な準備です。
顧客と締結する契約書および事前説明に用いる概要書面は、特定商取引法(特商法)で交付が義務付けられており、適切に整備しておかなければ思わぬトラブルや行政処分を招くおそれがあります。
本記事では「脱毛サロンの開業」をテーマに、脱毛ビジネスを始める方が押さえておくべき契約書・概要書面作成の重要性と、特商法に基づく対応ポイントについて解説します。
法的義務の内容から契約書作成時の注意点、さらに行政書士など専門家への相談メリットまで、開業準備に役立つ知識を網羅しました。これから脱毛サロンを開業しようと考えている方はもちろん、既に開業済みで契約面を見直したい方も、ぜひ参考にしてください。
脱毛サロンを開業する際に理解しておくこと
脱毛ビジネスを成功させるには、サービス内容や価格設定だけでなく、法令遵守の姿勢が欠かせません。特に、消費者と直接契約を交わすエステサロンでは、契約トラブルを防ぐための仕組みづくりが重要です。ここでは、脱毛サロン開業にあたって知っておきたい基本事項として、脱毛サービスの種類や提供形態、および契約書を整備する意義について説明します。
脱毛サービスの種類と提供形態
一口に脱毛と言っても、その提供形態には大きく2種類あります。1つは医療機関(クリニック)で医師又は有資格者が行う医療脱毛で、もう1つはエステサロン等で行われる美容ライト脱毛(エステ脱毛)です。
医療脱毛は医師免許が必要なレーザー照射等を用いるのに対し、エステ脱毛は主に光脱毛機器を用い、無資格でも提供可能な美容行為として行われます。開業にあたって医師資格がない場合は美容ライト脱毛のサロンを運営する形になりますが、この場合でも契約内容やサービス結果については十分な説明と合意が必要です。
なお、エステ脱毛を提供する際には、使用機器の出力や広告表現において医療行為と誤認される行為をしないよう注意が必要です(例えば「永久脱毛」等の表現は無資格医療と見なされる可能性があります)。医療脱毛クリニックであっても自由診療の範疇でエステに類するサービスを提供する場合には、後述する特商法の規制対象となりうる点に注意しましょう。
特商法が関係する脱毛サービス契約
脱毛サロンを開業する際には、自社が提供するサービスが特定商取引法における特定継続的役務提供のルールに該当するかどうかを判断する必要があります。期間が長期にわたり高額となる脱毛コース契約は特商法の規制対象となります。
脱毛サロンの場合、契約期間が1ヶ月超かつ金額が5万円超という条件に当てはまれば、自動的に特定継続的役務提供として扱われます。脱毛サロンのコースメニューは多くがこの条件に該当するため、特商法上の義務を念頭に置いて開業準備を進めなければなりません。
仮に単発メニューのみでコース契約がない形態であれば特商法の対象外ですが、将来的にコース販売を導入する可能性がある場合は、あらかじめ法律の規制内容を理解して対応策を講じておくことが望ましいでしょう。
脱毛サロンの開業前に整えるべき契約書類と仕組み
脱毛サロン開業に際しては、契約書や概要書面といった書類面の準備も万全にしておきましょう。特に、後述する特商法対応としてこれらの書面を用意することは法的義務であり、怠ると開業後に大きなリスクを招きます。
契約書類の雛形は業界団体から販売されているものもありますが、開業するサロン独自のメニューやポリシーに合わせてカスタマイズする必要があります。例えば、予約キャンセルや返金対応のルール、肌トラブルが生じた場合の対処方法、施術結果の保証範囲など、個々のサロンごとに取り決めたい事項があります。
こうした点も踏まえ、単に書面を用意するだけでなく、契約時の説明フローや書面交付の手順など、運用面の仕組みまで整えておくことが理想的です。開業前に契約関連の準備をしっかり行っておけば、オープン後のトラブル発生率を格段に下げられるでしょう。契約面の十分な備えは、顧客満足度と事業の信頼性向上にも直結する重要なポイントです。
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特商法における脱毛サロンの義務と対応
特定商取引法(特商法)は、消費者取引における不公正な勧誘や契約トラブルを防止するために定められた法律で、脱毛サロンを含むエステ業界の継続サービス提供にも適用されます。開業にあたっては、この法律で課される義務を正しく理解し、必要な対応策を講じておくことが重要です。
ここでは、特商法上求められる主な義務と、新規開業時に準備すべきポイントについて説明します。
契約時に必要な概要書面・契約書面の交付
特商法の規定により、該当する契約を締結する際には概要書面と契約書面の2種類の書面を顧客に交付する義務があります。新規開業のタイミングで、予めこれらの書類を作成し、スムーズに交付できる体制を整えておきましょう。
契約締結前には、サービス内容や期間・料金などの重要事項を記載した「概要書面」を用いて説明を行い、顧客の理解と同意を得ます。そして契約締結後には、正式な「契約書面」を直ちに交付します。
これらの書面には契約条件の詳細やクーリングオフ等に関する法定記載事項をすべて網羅する必要があります。また、記載内容や形式は特商法施行規則で細かく定められており、文字サイズは8ポイント以上、クーリングオフの注意書きは赤枠・赤字で記載するなどのルールもあります。
書面を交付しなかったり、内容に不備があると、契約自体が無効と見なされたり後述のクーリングオフ期間が進行しない原因となります。つまり、正しい書面を交付するまでクーリングオフ期間が開始されないため、顧客はいつでも契約解除を主張できる状態が続いてしまうのです。したがって、開業前に契約書類を法令に適合した形で準備し、スタッフにも交付手順を周知しておくことが大切です。
なお、法律改正により、消費者の事前承諾を得て電子メール等で書面交付を行うことも可能となっています(電子交付の場合も記載事項や閲覧しやすい形式に関する要件があります)。
クーリングオフ制度と解約への備え
特商法の下では、契約後一定期間内であれば消費者は無条件で契約を解除できるクーリングオフ制度が設けられており、脱毛サロンの契約にもこれが適用されます。先述のとおり、契約書面を受け取ってから8日以内であれば顧客は理由を問わず契約を解約可能です。
開業にあたっては、クーリングオフの対応手順を事前に整備しておきましょう。具体的には、顧客から書面で解約通知が来た場合の受付方法、既に施術を開始していた場合の料金返金処理(施術済み分も含め全額返金が原則)などをマニュアル化しておきます。
また、8日を過ぎた後でも中途解約(途中解約)の申し出に応じる義務があります。提供していない施術分の料金は返金しなければならず、違約金として請求できるのは残額の一部(医療脱毛以外の脱毛エステの場合は未消化分の10%または2万円のいずれか低い額が上限)に限られます。(医療脱毛の違約金として請求できる額は未消化分の20%または5万円のいずれか低い額です。)
これらのルールは契約書面にも明記し、スタッフにも理解させておく必要があります。開業前にクーリングオフ対応や返金処理のフローまで決めておけば、万一解約希望があった場合でも迅速かつ適法に対処できるでしょう。
また、顧客から預かった前受金は解約時の返金に備えて適切に管理し、返金原資を確保しておくことも重要です。
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脱毛サロン契約の具体的な内容と注意点
開業準備段階で、脱毛サービス利用契約の内容を詳細に詰めておくことは、顧客満足とトラブル防止の両面で重要です。ここでは、契約書・概要書面に盛り込むべき具体的事項と、作成・運用上の注意点について説明します。
脱毛契約書に記載すべき主な項目
脱毛サロンの契約書面や概要書面には、法律で定められた事項を漏れなく記載する必要があります。主な項目として次のようなものがあります。
- 提供する脱毛サービスの内容(対象部位、回数、期間など)
- 支払うべき料金総額と支払方法(分割払いの場合の条件等)
- 役務提供期間(通える期間や有効期限)
- 事業者の名称・住所・電話番号および代表者名
- 契約日と契約担当者名
- クーリングオフに関する説明
- 中途解約時の精算ルール等
また、関連商品(例:ホームケア用化粧品等)の購入が必要な場合はその商品名や価格、販売事業者情報も記載しなければなりません。さらに、サロン独自の特約(例:○○保証制度や○○サービス付帯など)がある場合には、その内容を具体的に明示します。
これらはすべて書面に記載します。顧客には概要書面で事前に契約内容を確認してもらい、納得の上で契約書面に署名をいただくというステップを踏むことが重要です。
脱毛サロンの契約書作成と運用上の注意
契約書類を作成する際は、単に必要事項を埋めれば良いというものではありません。前述の通り、文字サイズや表示方法などのフォーマット面で守るべき規定があるため、それらに沿った書式で作成しましょう。
業界標準のフォームを利用する場合でも、自サロン用にカスタマイズした部分が規定違反になっていないか注意が必要です。また、契約書類は用意しただけでは不十分で、確実に顧客へ交付し控えを保管する運用を徹底することも重要です。
開業当初はスタッフも手続きに不慣れな場合がありますので、契約時の説明手順や書面の受け渡し方法をマニュアル化し、研修で周知しておくと良いでしょう。正しい運用がされていないと、せっかく整備した契約書も宝の持ち腐れになってしまいます。
なお、書面の交付漏れや記載不備は特商法違反となり、行政処分や罰則(100万円以下の罰金等)の対象にもなり得るため、絶対に避けなければなりません。
トラブル防止のための契約内容の工夫
契約書に記載すべき事項を網羅できたら、次は契約内容そのものの充実にも目を向けましょう。脱毛サービスにおいては、施術効果の感じ方や肌状態の変化に個人差があるため、結果を保証しすぎないことも重要なポイントです。
例えば、「○回で必ず○○になります」という表現は避け、効果には個人差がある旨を記載し、必要に応じて追加施術やアフターケアの案内をする旨を盛り込むなど、顧客の期待値を適切にコントロールする工夫が考えられます。
また、万一肌トラブル(火傷やかゆみ等)が生じた場合の連絡方法や簡易な補償ルールを契約書に明示しておくと、トラブル発生時にも落ち着いて対応できます。このように契約内容を充実させておけば、法令順守のみならず、顧客との信頼関係構築にも大いに役立つでしょう。
行政書士への依頼メリット・問い合わせ導線
最後に、脱毛サロンの開業時に行政書士など専門家に依頼することのメリットについて触れておきます。
書類作成や手続き面でプロのサポートを受けることで、法律面の不備を防ぎ、安心してビジネス立ち上げに集中することができます。
開業準備に専門家を活用するメリット
行政書士は、事業の許認可や契約書作成に関するプロフェッショナルです。脱毛サロンの開業準備において行政書士に相談すれば、特商法を始めとする関連法規に適合した契約書類を一緒に整備してもらえます。
また、個人事業主として開業するか法人設立するかといった事業形態の選択、保健所等への各種届け出が必要かどうかの確認など、法務面で疑問に感じる点を気軽に相談できるメリットもあります。
初めての開業では手探りの部分も多いですが、専門家の知見を借りれば無用な失敗や手戻りを防ぎ、スムーズに準備を進めることができるでしょう。
行政書士が提供できる主なサポート
具体的に行政書士に依頼できる業務としては、契約書面や概要書面の作成はもちろん、プライバシーポリシーや同意書など各種書類の作成支援が挙げられます。
また、開業にあたり必要となる行政手続き(例えば法人設立時の定款作成・認証等)がある場合には、その書類作成・申請代行も依頼可能です。
さらに、開業後に法改正があった際の契約書修正や、トラブル発生時の文書作成アドバイスなど、継続的にサポートを受けられる点も心強いでしょう。法務の専門家を味方につけておけば、常に最新の情報を踏まえた適切な対応ができるため、長期的に見てもメリットは大きいと言えます。
安心して開業・運営するために
脱毛サロンの開業準備における契約書類の整備は、顧客へのサービス品質を保証しトラブルを防ぐための大切なプロセスです。行政書士など専門家の助言を得ながら法的に万全な書面を用意することで、「知らなかった」では済まされない法令違反のリスクを回避し、開業後も安心して営業に専念できます。
開業を控えて不安を感じている方や、契約書の内容に自信が持てない方は、ぜひ一度専門家への相談を検討してみてください。それが結果的に最良のスタートダッシュにつながり、将来の事業成功への確かな土台となるでしょう。専門家を味方につけ、確実なスタートを切りましょう。
脱毛サロン開業時の契約書作成はお任せください!
当事務所では、脱毛サロンを開業する際に必要となる各種契約書の作成をサポートいたします。特定商取引法(特商法)や業界の法令を遵守した契約書類を整備し、トラブルを未然に防ぐための対策を講じます。以下のようなお悩みをお持ちの方に、専門的なアドバイスを提供いたします。
- 契約書の内容が法的に適切か不安
- クーリングオフや中途解約のルールを適切に運用したい
- 特商法に基づく概要書面・契約書の作成が必要
- 顧客とのトラブルを予防するための契約内容を検討したい
- 契約時の説明手順や書面交付の方法に不安がある
- サロンの個別のメニューや特約を契約書に反映させたい
当事務所は、契約書や概要書面の作成のみならず、法令対応についても全面的にサポートします。特商法に基づく重要事項の記載から、契約書作成の運用に至るまで、事業運営を法的にサポートし、開業後のトラブル発生リスクを軽減します。ぜひ、お気軽にご相談ください。
当事務所に依頼する3つのメリット
法定記載事項を網羅した正確な書面が作成できる
特定商取引法に基づく概要書面および契約書面には、記載しなければならない法定項目が詳細に定められており、記載漏れや形式不備があると契約無効や行政処分のリスクも生じます。当行政書士事務所に依頼することで、こうした複雑な要件をすべて満たした正確な書類を作成してもらえるため、安心して運用できます。
実務に沿った運用指導が受けられる
概要書面や契約書面は「作成して終わり」ではなく、どの段階で、どのように交付し、何を説明すべきかといった実務運用が極めて重要です。当行政書士事務所は、実際のクリニック業務の流れに即して、説明する用語内容や、契約締結の手順などを詳しく説明しますので、違反リスクの少ない運営が可能となります。
最新の法改正や実務動向に対応できる
特定商取引法は定期的に改正が行われており、例えば近年では書面交付の電子化が一部認められるようになるなど、事業者側に求められる対応も変化しています。行政書士はこうした法改正にも精通しているため、時代に合った内容の書類整備や契約運用が可能になります。自力では見落としがちな法的変更点にも素早く対応できるため、常に適法な状態を維持するうえでの強力な支援となります。
料金表
当サービスの費用は明瞭な定額制となっております。
内容 | 料金 | 詳細 |
⑴概要書面・契約書面の作成 ⑵契約手順の説明書 |
55,000円 | 事前相談からヒアリング、書類の作成・納品までの一連のサービス費用が含まれています。追加料金なしで、2種類の書面を一括して作成いたします。t契約の手順書もお付けします。 |
選択プラン | ||
⑶電子交付対応 | 11,000円 | 電子交付対応では、書面をWord文書で提供し、サービス利用者への電子交付に必要な同意取得の方法や手順についてアドバイスいたします。 |
※上記料金以外に、特殊なご要望や追加の書類作成が発生しない限り、基本的に追加費用はございません。
手続きの流れ
当事務所へのご依頼から書類お渡しまでの一般的な流れをご説明します。初めての方でも安心してご利用いただけるよう、丁寧に対応いたします。
お問い合わせ・ご相談
まずはお問い合わせフォームやお電話等でお気軽にご相談ください。業種や事業内容、ご依頼の概要をお伺いします(この段階では費用はかかりません)。
お見積りのご提示
ヒアリングした内容にもとづき、正式にサービス提供する場合の費用のお見積りを提示いたします。基本的には前述の定額料金ですが、もし特殊な事情で追加料金が生じる場合はこの時点でご説明します。お見積りにご納得いただいた上で正式にご依頼ください。
契約締結
当事務所にて委任契約書を作成し、電子形式で締結していただきます。
追加質問のお伺い
書面作成に必要な事項について詳しくお伺いします。サービスの内容・特徴、提供条件、料金体系、契約条件(解約条件や返金規定等)などをメールにてお伺いいたします。
書類の作成
お伺いした内容を踏まえて、概要書面および契約書面を作成します。法律用語が多く難解になりすぎないよう配慮しつつ、法定事項を漏れなく盛り込んだ書類案を作成いたします。通常、1週間程度でドラフト(下書き)をご用意し、一度内容をご確認いただきます。ご要望に応じて修正を加え、最終版を完成させます。
書類の納品
完成した書類を納品いたします。基本的には電子データ(Word文書やPDFなど)でお渡しいたしますので、お客様の方で必要部数を印刷してご利用いただけます。また、納品後の運用方法についてもご不明点があれば納品から1か月はサポートいたします。作成した書類を実際にお客様が顧客に交付する際の手順や留意点などについてもご説明できますので、安心してご利用いただけます。
以上がご依頼から納品までの基本的な流れです。不明点がございましたら各段階で遠慮なくご質問ください。当事務所が責任を持ってサポートいたします。
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