オンライン家庭教師として活動する際、仲介会社を通さず個人契約で生徒を受け持つケースも多くあります。家庭教師と生徒(または保護者)が直接契約を結ぶこの形態は、自由度が高く収入面でも有利な一方で、契約管理や法律遵守まで自分で責任を負う必要があります。
特に契約が長期・高額になる場合には特定商取引法上の義務が生じ、対応を怠るとトラブルに発展しかねません。本記事では、オンライン家庭教師を個人契約で始める方法やメリット・デメリット、そして特商法との関係について解説します。法律面のポイントを押さえ、安全かつ円滑にオンライン指導を行いましょう。
オンライン家庭教師を個人契約で始める方法
まず、オンライン家庭教師を個人契約で始めるには何が必要かを確認しましょう。仲介サービスに登録せず、自ら生徒と直接やり取りするための準備や進め方の基本について説明します。必要な機材や環境の整備から、初回連絡や契約の流れまで、個人契約のスタート手順を把握しましょう。
オンライン家庭教師の個人契約とは
個人契約とは、家庭教師自身が生徒(保護者)と直接契約を結び、レッスン提供や料金受領まで全て自分で行う形態です。企業やマッチングサイトを介さないぶん、日程調整や授業料の設定などを自由に決められます。
例えば、知り合いから紹介された生徒と個別に契約する場合や、自分のSNS発信を見た保護者と直接契約する場合がこれに当たります。仲介手数料がかからず収入を最大化できる点が魅力ですが、その反面、契約の管理やトラブル対応など全責任を自分で負うことになります。
オンライン家庭教師(個人契約)で必要な準備と環境
個人契約でオンライン指導を行うには、まず指導に使う機材と環境を整えましょう。パソコンやタブレット、ウェブカメラ、ヘッドセットなどを用意し、安定した高速インターネット回線を確保します。
ZoomやSkypeといったオンライン会議システムの使い方にも習熟しておくとスムーズです。また、打ち合わせや連絡用にメールアドレスやチャットツールを準備しておきましょう。対面で会わず契約まで進めるケースも多いため、オンライン上で信頼してもらえるよう、実績や資格を証明する資料の用意も有効です。
オンライン家庭教師契約と流れ
生徒募集から契約締結までの基本的な流れを押さえておきます。まず、SNSや紹介等で生徒から問い合わせを受けたら、オンライン面談や体験レッスンを実施してお互いの希望をすり合わせましょう。
指導内容や回数・料金について合意したら、メールなど文書で契約条件を確認します。日程や支払い方法、連絡手段、キャンセル規定など細かな取り決めも明文化しておくと安心です。双方の合意が取れたら契約成立となり、授業開始となりますが、この際に契約内容を書面やPDFで交付しておくと後々のトラブル防止に役立ちます。
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オンライン家庭教師(個人契約)のメリットとデメリット
次に、個人契約ならではのメリットとデメリットを見ていきましょう。仲介を通さないことで得られる利点と、自分で全て対応することによる課題の両面があります。
それぞれを正しく理解し、デメリットへの対策も含めて検討することが大切です。
オンライン家庭教師(個人契約)のメリット
授業の自由度が高く、自分のスタイルで指導できる
個人契約の最大の魅力は、授業の運営における自由度の高さです。大手家庭教師センターや仲介業者を介する場合、カリキュラムや教材、指導方法があらかじめ定められていることが多く、講師の裁量が限定されがちです。
しかし、個人契約であれば、指導日時・授業の頻度・教材の選定から教え方に至るまで、自身の教育理念や得意分野に合わせた授業設計が可能となります。
また、生徒や保護者と直接コミュニケーションが取れるため、相手の希望や学習状況に即した柔軟な対応ができ、よりきめ細かく満足度の高い指導を実現できます。
手数料がなく、収入効率が非常に高い
個人契約では、報酬の全額を自ら受け取ることができます。仲介業者を通じた場合、授業料の20〜50%が紹介手数料として差し引かれるケースが多く、実際の手取り額は大きく減ってしまいます。一方、個人契約ではそうした中間コストが一切不要なため、同じ授業料設定であっても、講師側の収益は格段に高まります。
時間単価に換算すると、個人契約は非常に収益性が高く、生活の安定にもつながりやすい働き方といえます。
自身の努力次第で事業拡大やブランディングも可能
個人契約は、自身のスキルや実績、信頼を積み上げていくことで、より多くの生徒からの依頼を受けたり、高単価の契約を獲得したりすることが可能です。
SNSや個人サイトを活用して情報発信を行えば、自身の指導スタイルや実績を広く知ってもらうことができ、生徒募集や紹介の幅が自然と広がっていきます。こうした活動を通じて、単なるアルバイトの域を超えて、教育者としてのブランディングを築くことも可能です。
将来的にはオンラインスクールの立ち上げや教材販売など、事業展開の可能性も見えてくるなど、個人契約は「教える仕事」を超えた成長の機会を提供してくれます。
オンライン家庭教師(個人契約)のデメリットとその対策
集客や宣伝をすべて自分で行う必要がある
個人契約では、生徒の募集や営業活動を自分自身で行わなければなりません。仲介業者を利用する場合は、すでに登録している生徒からのマッチングが行われるため、講師は教えることに専念できますが、個人契約ではそうした支援がありません。
特に始めたばかりの頃は知名度がなく、SNS・ブログ・口コミ・地域の掲示板などを駆使して地道に宣伝活動を行う必要があります。反応が出るまで時間がかかることもあり、最初の数ヶ月は思うように生徒が集まらない可能性もあります。
【対策例】
- SNSやブログによる継続的な情報発信
- 知人・保護者の紹介制度の導入
- 地域の教育イベントやオンラインフォーラムへの参加など、露出機会の確保
事務作業やトラブル対応など、授業以外の負担が大きい
授業そのもの以外にも、日程調整・問い合わせ対応・料金の請求・契約締結・領収書の発行など、多岐にわたる事務作業をすべて自分で行う必要があります。
さらに、授業料の未払い、急なキャンセル、保護者からのクレームなど、トラブル対応もすべて自己責任で行わなければなりません。これらが重なると、精神的負担が増し、授業の質に影響を及ぼす可能性も否定できません。
【対策例】
- 契約前に「料金・支払方法・キャンセルポリシー」等を明記した契約書を交わす
- 支払は月初の前払い制にする
- 未払い防止として保証金制度や決済サービスの利用を検討する
自己管理と時間管理の徹底が求められる
完全に自立した働き方であるがゆえに、時間管理・業務の優先順位付け・体調管理などもすべて自分で行う必要があります。無理に生徒を多く抱えすぎたり、休みなく授業を入れてしまったりすると、心身のバランスを崩しやすくなります。
また、自己評価が難しいため、質の高い授業を安定して提供し続けるには自己研鑽も欠かせません。
【対策例】
- 業務効率化ツール(スケジュール管理アプリ・オンライン請求書システムなど)の活用
- 忙しくなりすぎた場合は、事務を信頼できる人に一部委託することも検討
- 自己研修の時間も業務の一部として計画的に確保する
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オンライン家庭教師(個人契約)と特定商取引法の関係
続いて、個人契約でオンライン家庭教師サービスを提供する場合に関係する法律について確認します。規模が小さいからといって法律が適用されないわけではありません。契約内容によっては特定商取引法の「特定継続的役務提供」に該当し、事業者として守るべき規制があります。このトピックでは、その条件と義務、遵守の重要性を解説します。
特定継続的役務提供に該当する条件
オンライン家庭教師の個人契約であっても、契約期間と金額によっては特商法の特定継続的役務提供の対象になります。具体的には、契約期間が2ヶ月を超え、かつ契約金額の総額が5万円を超える場合です。
家庭教師サービスはエステや結婚紹介所などと並び、長期・高額になりやすい役務として指定されています。例えば「半年分まとめ払いで10万円」のような契約はこの条件に該当します。オンラインか対面か、法人か個人かに関係なく、条件を満たせば法律が適用される点に注意しましょう。
求められる対応(概要書面・契約書面の交付など)
上記の条件を満たす契約を結ぶ場合、事業者(家庭教師側)は特商法に基づきいくつかの義務を負います。契約を締結する前に、サービス内容や期間・料金、解約方法などを記載した概要書面を生徒に交付し、契約成立後には遅滞なく契約書面(内容は概ね概要書面と同様です。)を交付しなければなりません。
書面には事業者の氏名(名称)・住所、提供する役務の内容・期間、料金総額や支払方法、クーリングオフ(契約書面受領から8日以内に書面で契約解除可能)に関する事項、中途解約の条件など法律で定められた情報を漏れなく記載します。
これらは消費者が契約内容を正しく理解するための措置であり、個人であっても省略は許されません。また、書面は紙で交付するのが原則ですが、2023年の制度改正により事前に相手の承諾を得ればメール等での電子交付も可能となりました。
遵守しない場合のリスク
特商法で定められた書面交付などの義務を怠ると、さまざまなリスクが生じます。まず、概要書面や契約書面を渡していない場合、契約後であっても生徒側はクーリングオフ(無条件解除)を主張でき、授業料の返金に応じざるを得なくなる可能性があります。
つまり、書面を交付しない限りクーリングオフ期間は進行しないため、何ヶ月経っても解除を求められ得ます。また、口頭の約束だけで進めてしまうと「説明を受けていない」「聞いていない」といったクレームに発展しやすく、信頼を損ねる原因になります。
さらに、事実と異なる説明で契約を結んだ場合には契約自体を取り消される可能性もあり注意が必要です。悪質なケースでは行政当局から業務停止などの行政処分を受けることもあり得ます。
実際に特商法違反で指導を受けた家庭教師業者の例も報告されています。例えば、契約書を交付せずに数ヶ月分の授業料を前払いで受け取っていたところ、生徒側から契約解除を求められ全額返金することになった家庭教師の例もあります。
消費者から苦情が相次げば行政から是正を求められたり、業界全体の信用低下につながったりするおそれもあるでしょう。個人で活動する場合でも、法律違反は取り返しのつかない損失につながることを肝に銘じましょう。また、過大な違約金条項など消費者に一方的に不利な契約条件は消費者契約法によって無効と判断される場合もあります。
安心してオンライン家庭教師(個人契約)を続けるために
最後に、個人契約でオンライン家庭教師サービスを安全に継続するためのポイントを確認します。トラブルを予防し、生徒との信頼関係を築くために心がけたいことや、困ったときに頼りになる専門家について紹介します。
契約書類を整備する
個人契約では、口頭の約束だけでなく必ず契約内容を書面化しておきましょう。たとえ短期・少額の契約であっても、後から条件をめぐって食い違いが生じないようにするため、メールや文書で合意事項を確認し合うことが大切です。
特商法の適用対象となる契約であれば、前述のとおり概要書面と契約書面の交付が義務ですし、対象外の場合でも書面を交付しておけば生徒側の安心感が高まります。契約書類には、サービス内容や料金だけでなく、支払期日や遅延時の対応、解約方法(クーリングオフの可否や中途解約の精算方法)なども盛り込み、双方が納得した上でサインまたは合意するようにしましょう。
コミュニケーションと信頼構築
個人契約では、一人ひとりの生徒との信頼関係が何より重要です。契約後も、生徒や保護者との連絡を密に取り、進捗や要望を共有しましょう。万一指導に関する不満やトラブルの兆候が見えたら、早めに話し合って解決策を講じる姿勢が信頼維持につながります。
問題が起きた際には感情的にならず、契約書に基づいて冷静に対応することを心掛けてください。また、日頃から誠実で丁寧な対応を積み重ねることで、口コミで新たな生徒を紹介してもらえるなど、良い循環が生まれるでしょう。
レッスンの成果や今後の方針について定期的に保護者と確認し、要望や不安を早めに解消する努力も大切です。
専門家の力を借りる
法律に関する不明点があったり、契約書の作成に自信がなかったりする場合は、遠慮なく行政書士などの専門家に相談しましょう。特商法を専門にしている行政書士であれば同法に基づく契約書類の作成業務にも通じており、個人事業の家庭教師向けに適切な契約書や等を作成してくれます。
自作の契約書では不安な点も、専門家のチェックを受ければ安心です。また、契約トラブルが起きてしまった場合にどう対処すべきかなど、具体的なアドバイスをもらうこともできます。専門家のサポートを得ることで法規制への対応負担を軽減し、本業の指導に専念できる環境を整えましょう。
もちろん専門家への依頼には費用がかかりますが、自己流で契約書を作成して後にトラブルになるより、初めからプロに任せて安心を得る方が結果的に得策と言えるでしょう。
オンライン家庭教師を個人契約で行う場合、自由な反面、多くの責任を自分で負うことになります。しかし、法律を正しく理解し、丁寧な契約手続きを踏むことで、リスクを最小限に抑えながら自分らしい指導サービスを提供し続けることが可能です。特商法など関係法令を遵守し、生徒との信頼関係を築きながら、安心・安全なオンライン指導を継続していきましょう。プロ意識と法令遵守の両輪で、あなたのオンライン指導サービスを成功に導いてください。
オンライン家庭教師の個人契約で必要な契約書類の作成はお任せください
当事務所では、オンライン家庭教師として個人契約を結ぶ際に必要な契約書・概要書面・クーリングオフ通知書等の作成を専門的にサポートしております。特定商取引法や消費者契約法を踏まえた内容で、将来的なトラブルの予防と信頼性の高い契約関係の構築をお手伝いいたします。特に次のようなお悩みをお持ちの方におすすめです。
- 契約書を作りたいが、どこまで明記すればいいかわからない
- 特定商取引法の適用対象になるか判断に迷っている
- 授業料の未払い・急なキャンセルなど、トラブルを防ぎたい
- PDFやメールによる書面交付に対応したいが方法がわからない
一人で抱え込まず、どうぞお気軽にご相談ください。実務経験豊富な行政書士が、あなたの指導スタイルに合わせた契約書類の作成と法的アドバイスを丁寧にご提供いたします。オンラインでの面談・書面交付にも対応しておりますので、遠方の方でも安心してご依頼いただけます。
当事務所に依頼する3つのメリット
法定記載事項を網羅した正確な書面が作成できる
特定商取引法に基づく概要書面および契約書面には、記載しなければならない法定項目が詳細に定められており、記載漏れや形式不備があると契約無効や行政処分のリスクも生じます。当行政書士事務所に依頼することで、こうした複雑な要件をすべて満たした正確な書類を作成してもらえるため、安心して運用できます。
実務に沿った運用指導が受けられる
概要書面や契約書面は「作成して終わり」ではなく、どの段階で、どのように交付し、何を説明すべきかといった実務運用が極めて重要です。当行政書士事務所は、実際のクリニック業務の流れに即して、説明する用語内容や、契約締結の手順などを詳しく説明しますので、違反リスクの少ない運営が可能となります。
最新の法改正や実務動向に対応できる
特定商取引法は定期的に改正が行われており、例えば近年では書面交付の電子化が一部認められるようになるなど、事業者側に求められる対応も変化しています。行政書士はこうした法改正にも精通しているため、時代に合った内容の書類整備や契約運用が可能になります。自力では見落としがちな法的変更点にも素早く対応できるため、常に適法な状態を維持するうえでの強力な支援となります。
料金表
当サービスの費用は明瞭な定額制となっております。
内容 | 料金 | 詳細 |
⑴概要書面・契約書面の作成 ⑵契約手順の説明書 |
55,000円 | 事前相談からヒアリング、書類の作成・納品までの一連のサービス費用が含まれています。追加料金なしで、2種類の書面を一括して作成いたします。t契約の手順書もお付けします。 |
選択プラン | ||
⑶電子交付対応 | 11,000円 | 電子交付対応では、書面をWord文書で提供し、サービス利用者への電子交付に必要な同意取得の方法や手順についてアドバイスいたします。 |
※上記料金以外に、特殊なご要望や追加の書類作成が発生しない限り、基本的に追加費用はございません。
手続きの流れ
当事務所へのご依頼から書類お渡しまでの一般的な流れをご説明します。初めての方でも安心してご利用いただけるよう、丁寧に対応いたします。
お問い合わせ・ご相談
まずはお問い合わせフォームやお電話等でお気軽にご相談ください。業種や事業内容、ご依頼の概要をお伺いします(この段階では費用はかかりません)。
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当事務所にて委任契約書を作成し、電子形式で締結していただきます。
追加質問のお伺い
書面作成に必要な事項について詳しくお伺いします。サービスの内容・特徴、提供条件、料金体系、契約条件(解約条件や返金規定等)などをメールにてお伺いいたします。
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以上がご依頼から納品までの基本的な流れです。不明点がございましたら各段階で遠慮なくご質問ください。当事務所が責任を持ってサポートいたします。
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