脱毛サロンやエステティックサロンで脱毛サービスを提供する事業者にとって、契約書類の準備は安全な経営のために欠かせません。脱毛施術のコースは総額が高額になる場合が多く、複数回にわたる長期のプラン契約を結ぶことも一般的です。
そのため、契約内容を明確に書面で示し、顧客との間でしっかり合意を形成することが重要です。本記事では、「脱毛の契約書」をテーマに、特定商取引法(特商法)の観点から脱毛サービス提供時の契約書および概要書面作成の必要性とポイントを詳しく解説します。
サロン経営者として守るべき法的義務や、行政書士に書類作成を依頼するメリットについても触れ、安心してサロン運営を行うための知識を提供します。なお、これから脱毛サロンを開業する方や、既に運営中の方も、本記事を通じて契約実務の要点を再確認し、顧客対応や法令順守に役立ててください。
特商法を遵守した脱毛エステ導入と基本理解
エステ業界における脱毛サービスは、美容医療とは異なり医療資格を持たないエステティシャンが行う光脱毛や美容電気脱毛などが中心ですが、その契約形態や料金体系は消費者に大きな負担を伴うことがあります。ゆえに、提供側であるサロンは契約について正しい知識を持ち、適切な書面を用意する必要があります。
ここでは、脱毛サービスの契約における基本的な考え方と、特商法との関係性について説明します。
脱毛サービスにおける契約書の役割
脱毛サービスでは、一定期間に複数回の施術を行うコース契約が主流です。例えば、「全身脱毛○回コース」「○年間通い放題」など、大きな支払いを伴うプランが提供されます。
こうした契約では、施術範囲や回数、料金、支払い方法、予約の取り方、キャンセルポリシーなどを予め書面で定めておくことが不可欠です。契約書はサロン側と顧客側双方の権利義務を明文化したものであり、後々の誤解やトラブルを防止する役割を果たします。また、明確な契約書を交わしておくことで、顧客に安心感を与え、信頼できるサロンとしての評価にもつながります。
脱毛サービスと特商法の関係
脱毛サロンで提供される高額な長期コース契約の多くは、特定商取引法における特定継続的役務提供の規制対象となります。特定継続的役務提供とは、一定期間にわたり継続して提供されるサービスで、契約期間が1ヶ月を超え、かつ総額5万円を超えるものを指します。
エステティックサービス(痩身エステや脱毛エステなど)はこの典型例であり、脱毛サロンのコース契約も該当し得ます。実際に特商法では「いわゆるエステティック(美容医療を除く)」が指定役務となっており、脱毛サービスはまさにこれに当たります。
そのため、一定条件を満たす脱毛契約を締結する際は、特商法上の義務が発生することを念頭に置かなければなりません。なお、契約期間が1ヶ月以内で金額も5万円以下といった小規模な契約の場合、特商法の規制対象外とはなりますが、トラブル防止の観点からも契約内容を書面で残すことが望ましいでしょう。
契約書・概要書面を整備する重要性
法の適用の有無に関わらず、脱毛サービス提供に際して契約書および概要書面を整備することは、健全な経営のためのリスクヘッジ策となります。特に特商法の対象となる契約では、後述するように契約前後で交付すべき書面や顧客対応の義務が細かく定められており、それに沿った契約書類を用意しないと重大な不利益を被りかねません。
例えば、書面不備のまま高額なコース契約を結んでしまうと、顧客から契約解除や返金を求められた際にサロン側が法的に弱い立場に置かれてしまいます。逆に、しっかりと法令順守した契約書と概要書面を用意し交付しておけば、顧客にも安心してサービスを受けてもらえる上、万一クレームが発生した場合でも契約書を根拠に適切に対応できるというメリットがあります。
特定商取引法における義務と対応
特定商取引法(特商法)は、一部の業種において消費者トラブルを防止するため、事業者に対して通常の取引以上に厳格なルールを課しています。脱毛サービスを含むエステ業界の長期継続的なサービス提供もその規制対象であり、サロンは法が定める義務を確実に履行する必要があります。
健全な事業運営のためにも、法の要求事項を正しく理解しておきましょう。ここでは、脱毛サロンが遵守すべき特商法上の主要な義務と、それに対応するポイントについて解説します。
特定継続的役務提供の条件(脱毛サービスの場合)
改めて、特定継続的役務提供として規制を受ける条件を確認しましょう。契約期間が1ヶ月を超え、契約金額が5万円を超える脱毛サービス契約は、法律上「特定継続的役務提供」に該当します。この条件に当てはまる場合、脱毛サロンの契約は店頭契約であっても特商法の規制下に置かれます。
例えば、6ヶ月間有効な○回コース契約や、1年間のサブスクリプション型脱毛契約などは、ほぼ確実にこの枠組みに入ると考えてよいでしょう。サロン側は、自店の提供プランが該当するかを把握した上で、必要な対応を講じなければなりません。
概要書面および契約書面の交付義務
特商法により概要書面と契約書面の交付は事業者の義務として定められています。脱毛サロンでも、高額コースの契約時には契約内容を記した書面を必ず発行・交付しなければなりません。
具体的には、契約を結ぶ前にサービス内容や料金など契約の要点を記載した「概要書面」を顧客に渡し、十分な説明と確認を行います。そして契約締結後には、契約条件を詳細に記載した「契約書面」を速やかに交付します。
これら書面には特商法施行規則で定められた事項を漏れなく盛り込む必要があります。交付された概要書面と契約書面は、顧客が後から内容を確認できるよう各1部ずつ顧客に渡すとともに、サロン側でも控えを保管します。
もし書面を交付しなかったり記載すべき事項に漏れや誤りがあった場合、法違反となるだけでなく、正しい書面を交付するまでクーリングオフ期間が開始しないため、顧客はいつでも契約解除を主張できる状態が続いてしまうのです。こうしたトラブルを避けるためにも、法定どおりの書面交付を徹底する必要があります。
なお、2022年の法改正により、消費者が事前に同意した場合には契約書類を電子データで交付することも可能となりました(電子交付の場合も記載事項や見やすさの要件は紙と同様です)。
クーリングオフと中途解約への対応
特商法の規制対象となる脱毛サービス契約では、契約後でも消費者に一定の解約権が保障されています。まず、契約書面を受け取った日を含めて8日間は、理由を問わず契約解除ができるクーリングオフ期間です。脱毛サロンは、顧客から書面(ハガキ等)でクーリングオフの通知を受けた場合、たとえ既に一部の施術を行っていたとしても、契約金額の全額を無条件で返金しなければなりません(施術済み分も含め請求不可)。
また、8日間のクーリングオフ期間が過ぎた後でも、消費者は中途解約(途中解約)を行うことができます。中途解約が申し出られた場合、サロン側は提供していない残りの施術料金を返金する必要があります。この際、違約金として顧客に負担いただける金額には上限が定められており、脱毛エステ契約の場合は未消化分料金の10%または2万円のいずれか低い額がその上限です。(美容医療は未消化分料金の20%または5万円のいずれか低い額がその上限です。
それ以上のキャンセル料を請求することはできません。もしサロンが不当に高額な違約金を定めていると、それ自体が特商法違反となり無効とみなされます。クーリングオフおよび中途解約の制度については、契約時に顧客にしっかり説明し、契約書面にもその手続き・条件を明記しておくことが肝要です。顧客対応の備えとして、解約の申し出があった場合の社内フロー(返金処理や書面の受領確認など)も整備しておくと安心です。
脱毛契約書の具体的な内容と注意点
脱毛サービス用の契約書や概要書面を作成する際には、法律上の必須記載事項を網羅するとともに、業務特性に即した細かな配慮が求められます。
ここでは、脱毛サロンの契約書に盛り込むべき具体的な項目と、作成時の注意点について解説します。
契約書・概要書面に記載すべき主な項目
脱毛サービスの契約書面には、特商法施行規則で規定された事項をすべて記載する必要があります。主な項目として、下記があげられます。
- 提供する役務の内容(脱毛の対象部位や範囲、コース回数等)
- 役務提供期間(通える期間や施術間隔)
- 支払うべき料金総額とその支払方法(ローンや分割払いの場合は支払回数・金額)
- 事業者の名称・住所・電話番号(法人の場合は代表者名)
- 契約日および契約担当者名
- クーリングオフに関する事項
- 中途解約時の精算ルール
- 契約にあたり顧客に購入を求める関連商品がある場合は、その商品名や数量、代金
- 特約条項(例:○○割引適用の場合の条件等)
- 割賦販売法に基づく抗弁権に関する事項
- 前受金の保全状況についての記載など
これらはすべて契約書面に記載し、概要書面にも契約の要点として同様の情報を記載します。顧客には概要書面で事前に契約内容を確認してもらい、納得の上で契約書面に署名をいただくというステップを踏むことが重要です。
契約書作成時の書式要件と表示方法
契約書類は内容だけでなく、書式や表示についても法令の基準を満たしていなければなりません。特に重要事項の表示方法に関して、特商法ではいくつかのルールが定められています。たとえば、書面中の文字サイズは8ポイント以上とすること、クーリングオフや中途解約の説明については赤枠で囲み、赤字で明瞭に記載すること、といった具合です。
これらは消費者にとって見落としがないよう配慮するための規定で、違反すると交付書面自体が無効と判断されかねません。実際、文字が小さすぎたり注意事項が不鮮明な契約書は「適切な書面を渡した」と認められず、クーリングオフ期間が進行しない(=いつまでも契約解除可能な状態が続く)という不利な結果を招きます。
契約書類を作成する際は、必須項目の記載漏れがないことはもちろん、レイアウトや表記方法についてもガイドラインに従って作成しましょう。必要に応じて業界団体が提供する書式例などを参照し、自社の契約書が基準を満たしているか確認することをお勧めします。
書面不備に伴うリスクと実務上の注意点
脱毛契約に関する書面の不備は、消費者トラブルと行政処分の双方に直結し得る重大なリスクです。たとえば、概要書面や契約書面を交付しないまま契約を結んでいた場合、顧客は法律上いつでも契約解除を主張でき、極端な場合には全ての施術完了後であっても全額返金に応じなければならなくなる可能性があります。
また、実際に特商法違反(書面交付義務違反など)でエステサロンが業務停止命令等の行政処分を受けた例も報告されています。特商法に違反すれば100万円以下の罰金といった罰則規定もあり、悪質な場合には刑事罰や営業禁止措置に至るケースもあります。
こうした事態を避けるためにも、契約時には書面を必ず二部用意して正確に記載・交付し、顧客とサロン双方が各一部を保管する流れを徹底しましょう。また、契約書にはサービスの効果や留意事項についての説明も盛り込み、顧客に正しい理解と納得を得てもらう工夫が大切です。
脱毛施術の効果には個人差があること、施術後の自己処理方法や肌トラブルのリスク等について事前に明示し、同意を得ておけば、期待の行き違いによるクレームを防ぐことができます。契約書類は単なる義務履行の手段ではなく、顧客との信頼関係を築くための大切なコミュニケーションツールである点を認識しておきましょう。このように、契約書類の不備はサロン経営を揺るがしかねない重大なリスクとなりかねません。日頃から書面の内容や交付方法を点検し、法令順守に万全を期しましょう。
行政書士への依頼メリット・問い合わせ導線
脱毛サロンの契約書や概要書面を法的に万全なものにするためには、特商法関連を専門とする行政書士などの力を借りることが有効です。最後に、行政書士に書類作成を依頼することの利点と、相談の流れについて説明します。
専門家に依頼するメリット
特商法に精通した行政書士に依頼すれば、特商法をはじめ関連法規に準拠した契約書類を作成してもらうことができます。自社で一から書式を研究したり法令チェックを行ったりする手間を省けるため、その分サロン業務や集客に注力できるメリットがあります。
また、行政書士は最新の法改正や行政動向にもアンテナを張っているため、書類が古い様式のままで法規に合致していないといった事態も避けられます。結果として、契約書類に関する心配を減らし、安心して事業運営に専念できるでしょう。
行政書士が提供するサポート内容
行政書士に依頼できるサポートは契約書の作成だけに留まりません。例えば、概要書面やプライバシーポリシー、免責同意書など、サロン運営に必要な各種書類の整備についても相談し作成を依頼することができます。
また、新規に脱毛サロンを開業する場合には、行政官庁への開業届出や許可申請が必要かどうかの確認や、必要に応じて各種行政手続きの代行を依頼することも可能です。万一、顧客との間でトラブルが起きた際にも、行政書士から適切な文書の作成アドバイスや解決策の提案を受けられるため、平時から専門家と連携しておくことで緊急時にも落ち着いて対処できます。
安心してサロン経営を行うために
脱毛サロンにおける契約書類の整備は、単に法律を守るための作業ではなく、顧客に安心感を提供し信頼を得るための土台でもあります。行政書士の専門知識を活用して契約書や概要書面を整えることで、違法な契約になってしまうリスクや契約トラブルを未然に防ぐことができます。
これからサロンを開業する方や、既に経営中で契約書を見直したい方は、ぜひ一度行政書士への依頼を検討してみてください。それがきっと心強いサポートとなるはずです。プロの知見を取り入れることで、法律面の不安を解消し、本業に専念できる環境を整えましょう。
脱毛契約書・特商法書面の作成は当事務所へお任せください
脱毛サロンにおける契約書や概要書面は、法令に沿って正確に整備しておかなければ、後々のトラブルや行政処分につながりかねません。当事務所では、特定商取引法に基づく契約書類の作成や確認を専門的にサポートしております。特に次のようなご要望に対応可能です。
- 脱毛サロンの概要書面・契約書面の新規作成
- 既存の契約書類が特商法に適合しているかのチェックと修正提案
- クーリングオフ・中途解約条項の明確化と法定ルールに沿った整備
- 電子交付(最新の特商法改正対応)のための書式作成
- 免責同意書・注意事項説明書・プライバシーポリシー等、関連文書の整備
行政書士として、最新の法改正や行政指導の動向を踏まえた実務的かつ正確な書類をご提供いたします。「自作の契約書で大丈夫か不安」「法改正に対応できているか確認したい」といった段階からでも構いません。ぜひお気軽にご相談ください。
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当事務所に依頼する3つのメリット
法定記載事項を網羅した正確な書面が作成できる
特定商取引法に基づく概要書面および契約書面には、記載しなければならない法定項目が詳細に定められており、記載漏れや形式不備があると契約無効や行政処分のリスクも生じます。当行政書士事務所に依頼することで、こうした複雑な要件をすべて満たした正確な書類を作成してもらえるため、安心して運用できます。
実務に沿った運用指導が受けられる
概要書面や契約書面は「作成して終わり」ではなく、どの段階で、どのように交付し、何を説明すべきかといった実務運用が極めて重要です。当行政書士事務所は、実際のクリニック業務の流れに即して、説明する用語内容や、契約締結の手順などを詳しく説明しますので、違反リスクの少ない運営が可能となります。
最新の法改正や実務動向に対応できる
特定商取引法は定期的に改正が行われており、例えば近年では書面交付の電子化が一部認められるようになるなど、事業者側に求められる対応も変化しています。行政書士はこうした法改正にも精通しているため、時代に合った内容の書類整備や契約運用が可能になります。自力では見落としがちな法的変更点にも素早く対応できるため、常に適法な状態を維持するうえでの強力な支援となります。
料金表
当サービスの費用は明瞭な定額制となっております。
内容 | 料金 | 詳細 |
⑴概要書面・契約書面の作成 ⑵契約手順の説明書 |
55,000円 | 事前相談からヒアリング、書類の作成・納品までの一連のサービス費用が含まれています。追加料金なしで、2種類の書面を一括して作成いたします。t契約の手順書もお付けします。 |
選択プラン | ||
⑶電子交付対応 | 11,000円 | 電子交付対応では、書面をWord文書で提供し、サービス利用者への電子交付に必要な同意取得の方法や手順についてアドバイスいたします。 |
※上記料金以外に、特殊なご要望や追加の書類作成が発生しない限り、基本的に追加費用はございません。
手続きの流れ
当事務所へのご依頼から書類お渡しまでの一般的な流れをご説明します。初めての方でも安心してご利用いただけるよう、丁寧に対応いたします。
お問い合わせ・ご相談
まずはお問い合わせフォームやお電話等でお気軽にご相談ください。業種や事業内容、ご依頼の概要をお伺いします(この段階では費用はかかりません)。
お見積りのご提示
ヒアリングした内容にもとづき、正式にサービス提供する場合の費用のお見積りを提示いたします。基本的には前述の定額料金ですが、もし特殊な事情で追加料金が生じる場合はこの時点でご説明します。お見積りにご納得いただいた上で正式にご依頼ください。
契約締結
当事務所にて委任契約書を作成し、電子形式で締結していただきます。
追加質問のお伺い
書面作成に必要な事項について詳しくお伺いします。サービスの内容・特徴、提供条件、料金体系、契約条件(解約条件や返金規定等)などをメールにてお伺いいたします。
書類の作成
お伺いした内容を踏まえて、概要書面および契約書面を作成します。法律用語が多く難解になりすぎないよう配慮しつつ、法定事項を漏れなく盛り込んだ書類案を作成いたします。通常、1週間程度でドラフト(下書き)をご用意し、一度内容をご確認いただきます。ご要望に応じて修正を加え、最終版を完成させます。
書類の納品
完成した書類を納品いたします。基本的には電子データ(Word文書やPDFなど)でお渡しいたしますので、お客様の方で必要部数を印刷してご利用いただけます。また、納品後の運用方法についてもご不明点があれば納品から1か月はサポートいたします。作成した書類を実際にお客様が顧客に交付する際の手順や留意点などについてもご説明できますので、安心してご利用いただけます。
以上がご依頼から納品までの基本的な流れです。不明点がございましたら各段階で遠慮なくご質問ください。当事務所が責任を持ってサポートいたします。
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