英会話教室(語学スクール)を開きたいとお考えの方は、提供する英会話サービスが特定商取引法(特商法)の規制対象となる可能性があります。特定商取引法とは、訪問販売や通信販売など取引形態ごとに事業者規制を定めた消費者保護法です。英会話教室のようなスクールビジネスも同法の対象に含まれる場合があるため注意が必要です。
本記事では、英会話教室の個人事業主が知っておくべき特商法上の重要ポイントを、行政書士の視点からわかりやすく解説します。
特に英会話教室は特商法で定める「特定継続的役務提供」に該当しやすく、契約前後の概要書面・契約書面の交付義務やクーリングオフ制度など、消費者保護のルールに従う必要があります。
法律を正しく理解し遵守することで、開業後のトラブルを未然に防ぎ、受講者(生徒)との信頼関係を築くことができます。本記事を参考に、必要な契約書類の準備や法令遵守のポイントをしっかり確認しておきましょう。なお、特商法に違反した場合、業務停止命令や罰則が科される可能性もあるため注意が必要です。
英会話教室が特商法の規制対象となる条件
英会話教室だからといって必ず特商法の対象になるわけではありません。法律上「特定継続的役務提供」に該当する取引とは、エステティックサロンや結婚相手紹介サービス、語学教室など長期間・高額のサービス提供を行うものを指し、現在7種類のサービスが指定されています。語学教室(英会話スクール)はその一つです。
特定継続的役務提供に該当するには、契約期間と契約金額の両面で一定の基準を満たす必要があります。具体的には、
- 2ヶ月を超える契約期間かつ総額5万円を超える受講料の条件を満たす場合
に特商法の規制対象となります。
これは長期・高額の契約で消費者トラブルが生じやすいことから、特商法で特別な規制をかけているためです。英会話教室でも一定期間のまとめ契約を提供する際は、このルールを踏まえて運営する必要があります。なお、レッスンが対面・オンラインのいずれで行われる場合でも、上記条件を満たせば特商法の規制対象となる点に注意してください。
特に、語学教室では一括数十万円のコース料金を設定するケースが多く、金額面でこの基準を超えやすい点に注意が必要です。なお、高額な受講料をクレジットカード払いや教育ローンで支払う場合も、契約の性質は変わらず特商法の対象となります。
英会話教室の特商法対象外は?
短期・低額のサービスは特商法による特定継続的役務提供の対象外です。具体的には、契約期間が2ヶ月以内、または総額5万円以下のコースであれば特定継続的役務提供に該当しません。
例えば月謝制で毎月払いの形式や、一回完結の短期講座などは法律上の規制対象外となります。ただし対象外の場合でも、契約内容を明示するなど基本的な配慮は重要です。特に個人で小規模に行う場合、あえて長期コースを設けず月謝制(都度払い)にすることで特商法の適用を受けない形態とすることも一法です。ただし、規制対象外であっても契約条件の明示やトラブル防止策は欠かせません。
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英会話教室を開く場合は特商法書面の交付義務があるかを調べる
長期の英会話コースが特商法の特定継続的役務提供となる場合、事業者には契約に関する書面交付義務が課されます。
具体的には、契約前に重要事項を記載した概要書面を交付し、契約締結後には速やかに契約書面を交付する必要があります。
これらの書面には事業者情報やサービス内容、料金、契約期間、クーリングオフ等の権利に関する事項が記載されており、消費者が契約内容を正しく理解できるようにする狙いがあります。仮に書面を交付せずに契約を進めてしまうと法律違反となり、行政から指導・勧告を受けたり契約無効を主張されるリスクにつながります。必ず所定の書面を準備して交付し、法定の手続きを遵守しましょう。
概要書面(契約概要)
概要書面とは、特定商取引法において特定継続的役務提供に該当するサービスを契約する際、事業者が契約の申込みを受ける前に消費者(申込者)に交付しなければならない書面です。
この概要書面は、契約に関する重要事項を事前に明示することで、消費者が内容を十分に理解し、納得したうえで契約を検討できるようにすることを目的としています。概要書面には、以下の事項を記載することが法律で義務付けられています。
概要書面に記載すべき主な項目
- 事業者の名称(法人の場合は法人名と代表者名)、住所(本店または主たる事務所の所在地)電話番号その他の連絡先
- 提供する役務の内容および提供期間
- 必要となる商品・教材等の情報(名称、種類、数量)
- 対価・金額に関する事項(入会金、月謝、登録料などを含む概算金額)
- 金銭の支払時期および支払方法(例:毎月現金、クレジットカード、口座振替等)
- クーリング・オフに関する事項
- 中途解約に関する事項
- 割賦販売法に基づく抗弁権の接続について(クレジット契約を締結する場合、消費者が割賦販売法に基づいて抗弁権を行使できる旨)
- 前受金の保全措置(役務提供前に受け取る金銭の額が法定基準を超える場合は、その保全措置の内容)
- 特約事項(標準契約と異なる特別な取り決めがある場合には、その詳細)
このように、概要書面は契約の透明性と消費者保護のための非常に重要な役割を果たします。とりわけ、教材費や関連商品の購入が別途必要となるケースでは、それらの費用が契約における総支払額に大きく影響するため、詳細かつ明確な記載が求められます。
契約前にこの書面を交付・説明することで、消費者が不意打ち的な契約や誤認による申し込みを防ぐことができます。適切に記載・交付することは、事業者にとってもトラブル防止のために重要です。
契約書面(正式な契約書)
契約の締結後には、遅滞なく、契約の詳細内容を記載した「契約書面(正式な契約書)」を交付する必要があります。これは、特定商取引法その他関係法令により、消費者に対する契約内容の明確な通知が義務づけられているためです。
契約書面には、事前に交付される「概要書面」の記載事項に加え、以下の詳細が記載されます。これにより、契約内容について誤解が生じることなく、双方の権利義務を明確にすることが目的です。
契約書面に記載すべき主な項目
- 契約の締結年月日:契約が正式に成立した日付を明記します。
- 契約担当者の氏名:契約を締結した事業者の担当者名を記載します。
- 役務(または販売される権利)の内容:提供されるサービスや権利の内容、範囲、条件などを具体的に記載します。
- 役務の提供開始日および提供期間:実際にサービス提供が開始される日付、またはサービスが提供される期間を明示します。
- 購入が必要な商品がある場合、その商品名・種類・数量等
- 支払総額とその内訳(役務の対価、物品代金、消費税、手数料等)
- 金銭の支払時期および方法:支払いのタイミング(例:契約時、月毎、前払い等)および支払方法(例:銀行振込、クレジットカード等)を明記します。
上記各項目は表形式や条項構成にして契約書本文に反映させることで、より実務的・法的に有効な書面を作成できます。
また、概要書面と契約書面は文字の大きさ(8ポイント以上)や書式にも規定があり、クーリングオフに関する記載を赤字・赤枠で強調するなど細かなルールに則って作成しなければいけません。法に則った書面を交付することで、後日の「聞いていない」というトラブル防止につながります。
書面交付時のポイント
概要書面・契約書面は、原則としていずれも書面(紙)で交付する必要があります。最近では契約者の事前同意を得て書面を電子交付する手続きも可能になりつつありますが、条件が厳しく注意が必要です。具体的には、消費者に対し事前に電子交付について説明・承諾を得るなどの手続きを踏む必要があります。
そのため、基本的には契約書類は紙で速やかに交付し、その日付からクーリングオフ期間の起算が始まることを踏まえておきましょう。交付が遅れるとその分だけ契約解除のリスク期間が延びてしまいます。
記載漏れのないよう正確な書類を作成し、適切に交付することが大切です。なお、宣伝・勧誘時に「必ず短期間で話せるようになる」といった誇大な表示をすることも禁止されています。広告段階から誠実な情報提供を心がけましょう。
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英会話教室の契約/クーリングオフと中途解約の制度
特商法の対象サービスでは、契約後も消費者(受講者)に契約解除の権利が保障されています。
まず、契約書面を受け取った日から8日以内であれば、理由を問わず契約を解除できるクーリングオフ制度があります。
受講申込者に冷静に熟考する機会を与えるための制度で、期間内であれば消費者は一切の負担なく契約をやめることが可能です。さらに、クーリングオフ期間を過ぎた後でも、契約期間中であれば途中で解約(退会)することが可能です。
事業者側はこれらの解除申し出に応じなければならず、所定の方法で受講料の返金対応等を行う義務があります。開業にあたっては、「途中解約不可」「返金しない」などの特約を定めても特商法に反し無効となるため、最初から法律に沿った解約条件を契約書に定めておくことが重要です。契約解除に関するルールを正しく理解し、適切に対応できる体制を整えておきましょう。
クーリングオフ(8日間)
契約書面を受領した日を1日目として、8日間は無条件で契約解除を申し出可能です。消費者から書面でクーリングオフの通知を受けたら、事業者は理由の如何を問わず契約を解除しなければなりません。
既に受講料を受け取っている場合は全額返金し、教材など関連商品が渡してある場合はそれも引き取りの上で代金を返還します。この期間内であれば、解約に対していかなる違約金・手数料も請求できません。
中途解約(途中退会)
クーリングオフ期間を過ぎても、受講期間の途中で退会(契約解除)することは法律上認められています。事業者は受講者からの中途解約の申し出に応じ、所定の金額を返金しなければなりません。すでに提供済みのサービスに相当する金額(提供済み期間の受講料)は差し引いた上で、未提供分の受講料の一部を違約金(解約料)として受け取ることができます。
ただし、その違約金には上限が定められており、英会話教室の場合「未受講分料金の20%」もしくは「5万円」のいずれか低い額が上限です。(例えば総額12万円・6ヶ月の英会話契約を締結し、3ヶ月終了時点で中途解約する場合、事業者はまず提供済み3ヶ月分の受講料相当額6万円を控除します。残り6万円について20%である1.2万円を違約金として請求でき、4.8万円を返金することになります。)
契約開始前の解約
契約後、サービス提供が始まる前に受講者が解約を希望したケース(たとえば開講日前のキャンセル)でも、事業者は解約に応じる必要があります。この場合、違約金として請求できる額は特に制限されており、1万5千円を超えて請求することはできません。
以上のように、過度に高額な解約料で消費者が不利益を被らないよう、法律で厳しくルールが定められています。
英会話教室の書面不交付によるトラブル事例
契約書面を交付しないまま長期コースの契約を結んでしまい、受講者から1か月後にクーリングオフを求められたケースがあります。事業者が法定書面を渡していなかったためクーリングオフ期間が経過していないと見なされ、契約締結から1か月後でも無条件解約が認められました。
当然、受講料は全額返金となり、事業者にとって大きな損失です。このように法律への無知や不備は経営上のリスクにつながりかねません。英会話教室をめぐるトラブルは他にも、「思ったより上達しなかった」「説明と違う内容だった」といった不満から生じるケースがあります。
重要なのは、契約前にサービス内容や契約条件(期間・料金・解約条件など)を正確に説明し、書面として残しておくことです。それがトラブル予防につながります。また、語学の上達には個人差があるため、「必ず上達する」などと断言せず、成果を保証できない旨を伝えておくことも信頼構築上重要です。
英会話教室を開きたい!行政書士に書類作成を依頼する利点
英会話教室の開業にあたり、特商法に基づく概要書面・契約書面を自分で用意するのはハードルが高いと感じるかもしれません。法律用語や規定事項を網羅した書類を一から作成するのは容易ではなく、記載漏れがあると行政処分のリスクもあります。
こうした法定書面の作成や特商法対応は、経験豊富かつ専門の行政書士に依頼するのが安心です。特商法の適用判断から必要書類の作成まで、専門家に相談することで安全かつ効率的に開業準備を進められます。
専門家に任せることで、法令に沿った正確な書類をスピーディに準備でき、準備の手間や不安を大きく軽減できます。最後に、行政書士に依頼する具体的なメリットを3つご紹介します。
法令に準拠した書類作成
行政書士は特商法の最新動向を踏まえ、法律で定められた事項を漏れなく盛り込んだ契約書類を作成します。クーリングオフの記載方法など細かな要件もクリアした書面を用意できるため、法令遵守を確実にし、後の行政指導や契約無効リスクを防げます。(また、法改正にも適宜対応できるため、常に最新のルールに沿った書類整備が可能です。)
書類作成の手間とミスを軽減
複雑な書類作成を専門家に任せることで、ご自身はレッスン内容や集客など本来の業務に集中できます。行政書士は豊富な書類作成経験があるため、素人には難しい文面も的確に整備され、記載ミスや要件漏れによるトラブルを避けられます。
安心して開業・運営できる
法的に適正な契約書類を整えることで、受講者からの信頼度も高まります。行政書士のサポートにより開業前の不安を解消し、法律面での備えが万全な状態で事業をスタートできます。また、開業後も困ったときはすぐに相談できるため、継続的に心強いパートナーとなってくれます。
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英会話教室の特商法対応は当事務所にお任せください
英会話教室の開業や運営にあたって、特定商取引法への対応は非常に重要です。
概要書面や契約書面をはじめ、法定の書類を正しく整備することで、トラブルを未然に防ぎ、受講者との信頼関係を築くことができます。
当事務所では、特商法に精通した行政書士が、英会話教室・語学スクールの運営者様に向けて、特商法に準拠した契約書類の作成・チェック・整備のご支援を行っております。特に、次のようなお悩みをお持ちの方はぜひご相談ください。
- 開業にあたって、どの書類を揃えればいいか分からない
- 自分で書類を作ってみたが、法的に問題がないか不安
- 概要書面・契約書面の記載内容や書式の整え方を知りたい
- クーリングオフや中途解約の規定を正しく書けているか確認したい
- オンラインスクール形式での開業で、電子交付の注意点を知りたい
- 将来的な行政処分のリスクを避け、万全の体制で事業を始めたい
法律に合った確実な書面を整備することは、開業後の安心・安定運営に直結します。ぜひ一度、お気軽にご相談ください。
当事務所に依頼する3つのメリット
法定記載事項を網羅した正確な書面が作成できる
特定商取引法に基づく概要書面および契約書面には、記載しなければならない法定項目が詳細に定められており、記載漏れや形式不備があると契約無効や行政処分のリスクも生じます。当行政書士事務所に依頼することで、こうした複雑な要件をすべて満たした正確な書類を作成してもらえるため、安心して運用できます。
実務に沿った運用指導が受けられる
概要書面や契約書面は「作成して終わり」ではなく、どの段階で、どのように交付し、何を説明すべきかといった実務運用が極めて重要です。当行政書士事務所は、実際のクリニック業務の流れに即して、説明する用語内容や、契約締結の手順などを詳しく説明しますので、違反リスクの少ない運営が可能となります。
最新の法改正や実務動向に対応できる
特定商取引法は定期的に改正が行われており、例えば近年では書面交付の電子化が一部認められるようになるなど、事業者側に求められる対応も変化しています。行政書士はこうした法改正にも精通しているため、時代に合った内容の書類整備や契約運用が可能になります。自力では見落としがちな法的変更点にも素早く対応できるため、常に適法な状態を維持するうえでの強力な支援となります。
料金表
当サービスの費用は明瞭な定額制となっております。
内容 | 料金 | 詳細 |
⑴概要書面・契約書面の作成 ⑵契約手順の説明書 |
55,000円 | 事前相談からヒアリング、書類の作成・納品までの一連のサービス費用が含まれています。追加料金なしで、2種類の書面を一括して作成いたします。t契約の手順書もお付けします。 |
選択プラン | ||
⑶電子交付対応 | 11,000円 | 電子交付対応では、書面をWord文書で提供し、サービス利用者への電子交付に必要な同意取得の方法や手順についてアドバイスいたします。 |
※上記料金以外に、特殊なご要望や追加の書類作成が発生しない限り、基本的に追加費用はございません。
手続きの流れ
当事務所へのご依頼から書類お渡しまでの一般的な流れをご説明します。初めての方でも安心してご利用いただけるよう、丁寧に対応いたします。
お問い合わせ・ご相談
まずはお問い合わせフォームやお電話等でお気軽にご相談ください。業種や事業内容、ご依頼の概要をお伺いします(この段階では費用はかかりません)。
お見積りのご提示
ヒアリングした内容にもとづき、正式にサービス提供する場合の費用のお見積りを提示いたします。基本的には前述の定額料金ですが、もし特殊な事情で追加料金が生じる場合はこの時点でご説明します。お見積りにご納得いただいた上で正式にご依頼ください。
契約締結
当事務所にて委任契約書を作成し、電子形式で締結していただきます。
追加質問のお伺い
書面作成に必要な事項について詳しくお伺いします。サービスの内容・特徴、提供条件、料金体系、契約条件(解約条件や返金規定等)などをメールにてお伺いいたします。
書類の作成
お伺いした内容を踏まえて、概要書面および契約書面を作成します。法律用語が多く難解になりすぎないよう配慮しつつ、法定事項を漏れなく盛り込んだ書類案を作成いたします。通常、1週間程度でドラフト(下書き)をご用意し、一度内容をご確認いただきます。ご要望に応じて修正を加え、最終版を完成させます。
書類の納品
完成した書類を納品いたします。基本的には電子データ(Word文書やPDFなど)でお渡しいたしますので、お客様の方で必要部数を印刷してご利用いただけます。また、納品後の運用方法についてもご不明点があれば納品から1か月はサポートいたします。作成した書類を実際にお客様が顧客に交付する際の手順や留意点などについてもご説明できますので、安心してご利用いただけます。
以上がご依頼から納品までの基本的な流れです。不明点がございましたら各段階で遠慮なくご質問ください。当事務所が責任を持ってサポートいたします。
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