語学教室(英語・中国語・フランス語など)を開業しようとする場合、提供するサービス内容が特定商取引法の規制対象となる可能性があります。
本記事では、語学教室の事業者が押さえておくべき特定商取引法上の重要ポイントを、行政書士の視点から平易に解説します。特に語学教室は「特定継続的役務提供」に該当しうるサービスであり、契約前後の書面交付義務やクーリング・オフ制度など、消費者保護のための規制が適用されます。
法律を正しく理解し遵守することで、トラブルを未然に防ぎ、受講者(消費者)との信頼関係を築くことができます。本記事を参考に、適切な契約書類の準備と法令遵守のポイントを確認してみましょう。なお、本記事の内容は語学教室の契約書類整備にも役立つ情報であり、法令を踏まえた円滑な開業準備にお役立てください。
語学教室とは
語学教室とは、学校教育法に基づく義務教育や高等教育とは異なり、民間の事業者が自主的に運営する語学指導サービスを指します。一般的には「英会話スクール」をイメージする方が多いですが、対象となる言語は多岐にわたります。たとえば、中国語、フランス語、ドイツ語、韓国語、スペイン語など、世界各国の言語に対応した教室が存在します。
対象となる年齢層も幅広く、幼児向けの早期教育から、学生、社会人、シニア世代に至るまで、各年代のニーズに合わせたカリキュラムが提供されています。
近年では、ビジネス英語や留学準備、資格取得対策(TOEIC、英検、HSKなど)に特化したクラスも人気を集めています。
提供形態にも大きなバリエーションがあります。最も一般的なのは、講師と受講者が同じ空間で対面するスタイルであり、これにはマンツーマンの個別指導や、複数人が一緒に学ぶグループレッスンがあります。また、ZoomやGoogleMeetなどを活用したオンラインレッスンも急速に普及しています。
特にコロナ禍以降は、オンラインに切り替える教室が増え、地理的な制限を受けずに全国どこからでも受講可能な環境が整いました。いずれの形式でも、受講者は語学力の向上を目的として一定期間のレッスンを契約し、事業者(教室側)はその対価として受講料を受け取るという、役務提供型の契約関係が成り立ちます。
教育サービスとしての性質と注意点
語学教室は「教育サービス業」として位置付けられます。したがって、サービスの目的は単なる物品の販売ではなく、知識や技術(この場合は言語能力)の習得支援にあります。しかし、注意すべき点は、受講者が期待する「成果」が必ずしも保証されるものではないという点です。
語学力の向上には、個人の能力、学習意欲、学習環境、レッスン外での復習など、複数の要因が影響します。そのため、「3か月で英語がペラペラに」などといった宣伝文句で過度な期待を抱かせると、受講者との間でトラブルに発展する可能性があります。
実際に、語学教室をめぐる消費者トラブルの多くは、「思ったより上達しなかった」「高額な契約をしてしまった」「解約できると思っていたのにできなかった」といった、成果や契約条件に関する誤解から生じています。
こうしたリスクを踏まえ、事業者側には、サービス内容や契約条件(期間・料金・解約条件など)について、正確かつわかりやすく説明する責任があります。説明が不十分であった場合には、「不実告知」や「重要事項の不告知」として、特定商取引法違反と判断されることもあります。
語学教室の運営者は、自らが提供するサービスが「教育機会」であることを認識し、その限界や効果の個人差を前提とした誠実な説明を行うべきです。そうした姿勢が、顧客との信頼関係を築くうえでも非常に重要です。
契約形態と特定商取引法との関係
語学教室では、下記のようなさまざまな契約形態が存在します。
- 月額制(月謝制)
毎月決まった金額を支払い、継続的にレッスンを受ける形式 - 一括前払い制
3か月・6か月・1年などの期間契約で、初回にまとめて料金を支払う形式 - チケット制
10回分などのレッスン権利を前払いで購入し、都度消化していく方式 - ポイント制
一定額でポイントを購入し、レッスンごとに所定のポイントを消費する方式
これらのうち、特定の条件を満たす場合には、「特定継続的役務提供(後述します。)」に該当し、特定商取引法による規制を受けることになります。
語学教室の運営者は、自らが提供する契約が法的にどのような位置づけにあるかを正確に理解し、それに応じた対応を行うことが求められます。とくに広告や勧誘に際しては、根拠のない成果の保証を避け、受講者の判断を誤らせないよう慎重に行動しなければなりません。
語学教室と特定商取引法
特定商取引法(特商法)は、消費者トラブルが生じやすい特定の取引形態やサービス提供に対して、勧誘方法や契約手続きについて規制を定めた法律です。語学教室はこの法律で規制される「特定継続的役務提供」の一つに指定されており、一定の条件下で提供される語学教室サービスは特定商取引法の対象となります。
特定商取引法の目的は、事業者と消費者(ここでは語学教室の運営者と受講者)の情報格差を是正し、不公正な勧誘や契約条件から消費者を保護することにあります。
語学教室が特定商取引法の規制対象とされる背景には、過去に英会話スクール等で高額な長期契約を巡るトラブルが多発した経緯があります。例えば、受講料を一括前払いしたものの途中で通えなくなったり、教室側が突然倒産して受講料が戻ってこないといった被害が社会問題となりました。
こうした事例を踏まえ、語学教室のように長期かつ高額になりがちなサービスについては、契約段階での十分な情報提供(事前書面、事後書面の交付など)とクーリング・オフ等の救済措置が必要だと認識されています。
もし、役務提供事業者がこれらの義務を履行しない場合には、所管官庁(消費者庁や都道府県)は是正指示や業務停止命令を発出することができ、悪質な場合は罰則(懲役刑・罰金刑)が科されることもあります。また、消費者に適切な書面を交付していなかった場合にはクーリング・オフ期間が進行せず、後日になって契約解除を主張されるリスクもあります。事業者にとって法令遵守は単なる義務というだけでなく、円滑な事業運営と信頼確保のために不可欠な要素なのです。
語学教室が特定継続的役務提供に該当するケース
語学教室のすべてが自動的に特定商取引法の対象となるわけではなく、法律上「特定継続的役務提供」に該当するには一定の条件があります。それは契約の期間と金額に関する基準です。令和7年5月現在、語学教室(語学の教授サービス)は政令で指定された特定継続的役務の一つであり、契約期間が2ヶ月を超え、かつ契約金額が5万円を超える場合に特定商取引法の規制対象となります。
典型的なケースとして、6ヶ月~1年間のコース受講契約で一括30万円の受講料を支払うような場合が挙げられます。こうした長期・高額の契約では、事業者は以下の義務を負います。
- 概要書面の交付
契約申込を受ける前に、契約内容の概要(サービス内容、提供期間、料金体系、支払方法、契約解除条件など)を記載した書面を交付します。この概要書面により、受講者は契約前に重要事項を確認できます。 - 契約書面の交付
契約成立後、速やかに契約書面(正式な契約内容を詳細に記した書面)を交付します。契約書面には双方の契約内容が明文化され、後日のトラブル防止に役立ちます。特に語学教室の概要書面や契約書面では、クーリング・オフ可能期間(8日間)であることを赤字かつ赤枠で明示することが法定されています。 - クーリング・オフの受付
契約書面交付日から8日以内であれば、受講者からのクーリング・オフ通知を無条件で受け付けなければなりません。受講者が既に支払った代金があれば全額返金し、教材等関連商品も引き取りの上で代金を返還します。この期間内の解約に、事業者は如何なる損害賠償や違約金も請求できません。 - 中途解約への対応
クーリング・オフ期間を過ぎても、契約期間内であれば受講者からの中途解約の申し出に応じる必要があります。この場合、事業者は提供済みのサービス料相当額を差し引いた上で、未提供分の料金の一部を違約金(解約料)として受領できます。ただし、その違約金の上限は法律で定められており、語学教室の場合は「未受講分料金の20%」もしくは「5万円」のいずれか低い額が上限となります。
さらに、契約開始前に中途解約された場合でも事務手数料等として1万5千円を超える額を請求できません。これらの制限により、過度に高額な解約料で消費者が泣き寝入りする事態を防いでいます。
以上が特定継続的役務提供に該当する語学教室サービスに課される主な義務と対応です。行政書士など専門家に依頼すれば、これら法定事項を盛り込んだ契約書や概要書面の作成をサポートしてもらえるため、法令遵守と円滑な運営に役立てることができます。
【違約金の計算例】 6ヶ月コース総額12万円の英会話契約を締結し、3ヶ月終了時点で中途解約する場合、事業者はまず提供済み3ヶ月分の受講料相当額6万円を控除します。残り6万円について、違約金として請求できるのはその20%である1万2千円が上限(5万円との比較で低い方を適用)です。したがって受講者には未提供分から違約金1万2千円を差し引いた4万8千円が返金されます。このように法定の解約ルールに則れば、受講者も過度な負担を強いられずに済み、事業者も一定のコスト回収が図れる仕組みとなっています。 |
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語学教室が特定継続的役務提供に該当しないケース
一方で、語学教室のすべての取引が常に特定商取引法の特定継続的役務提供に該当するわけではありません。以下のようなケースでは、契約期間・金額の要件を満たさないため特定商取引法の規制対象外となります。
都度払い・月謝制
レッスン毎に料金を支払う方式や、1ヶ月ごとに受講料を払い自由に解約できる月謝制の場合、長期間にわたり消費者を拘束しない契約形態と判断され、特定商取引法の適用対象にはならないと解されています。受講者はいつでも退会できるため、契約が長期に固定されていないからです。
短期・低額のコース
契約期間が2ヶ月以内、または総額5万円以下の短期コース・単発講座は、特定継続的役務提供の要件に該当しません。例えば1ヶ月完結の集中講座(総額5万円以下)や、数回のレッスンのみのパッケージなどがこれに当たります。
無料体験・イベント
無料体験レッスンや一日限りの語学ワークショップなど、有償契約に該当しないものや、一回限りで継続性のないイベントは特定商取引法の枠外です。ただし、無料体験後に有料コースを契約する際は、その契約内容によっては特定商取引法の対象となる点に留意が必要です。
以上のケースでは特定商取引法上の厳格な書面交付義務やクーリング・オフ適用はありません。しかし注意すべきポイントもあります。
まず、月謝制であっても実質的に解約が困難な仕組みになっている場合(例:解約には数ヶ月前の予告が必要、初回に高額な入会金や教材費を支払わせ実質的に長期契約と同等にしている場合など)は、形式が月謝でも実態は長期契約とみなされ特定商取引法の適用がある可能性があります。
事業者として、法律の抜け道を狙った契約形態は避け、常に受講者の立場に立った運用を心がけるべきです。また、特定商取引法の対象外であっても消費者保護の観点は重要です。契約内容や料金体系はできるだけ明確に示し、書面に残しておく方がトラブル防止につながります。
仮に法定のクーリング・オフ制度が適用されなくても、独自に一定の返金保証期間を設けるなど柔軟な対応をすることで、顧客からの信頼を得られるでしょう。加えて、特定商取引法以外にも消費者契約法など一般的な消費者保護法制があり、不当に消費者に不利益な契約条項は無効とされる場合があります。
したがって、特定商取引法の適用有無に関わらず、公正で分かりやすい契約を結ぶことが健全な語学教室経営の基本と言えます。なお、特定商取引法は消費者(個人)を保護する法律であるため、企業や事業者同士の取引には適用されません。しかし語学教室の運営においては、多くの場合相手は一般消費者です。
消費者との信頼関係を損ねるような不誠実な対応は、行政への苦情や口コミでの評判悪化に繋がり、長期的に事業者自身のダメージとなります。法の適用有無に関わらず、誠実で透明性のある運営を心掛けることが結果的に成功への近道と言えるでしょう。
以上、語学教室と特定商取引法に関する重要ポイントを解説しました。適切な法令対応と丁寧な情報提供により、受講者に安心してサービスを受けてもらえる環境を整えることができます。これから開業される事業者の方は、本記事の内容を踏まえて万全の準備を進めてください。行政書士等の専門家は、概要書面や契約書面の作成支援をはじめ、特定商取引法対応について心強いパートナーとなり得ます。法を味方につけ、信頼される語学教室運営を目指しましょう。
語学教室運営のための特定商取引法に基づく書面はお任せください
語学教室を運営するうえで、特定商取引法への対応は欠かせません。特に、一定期間にわたる語学指導を提供し、受講料として5万円を超える契約を結ぶ場合、いわゆる「特定継続的役務提供」に該当し、法定の契約書面・概要書面の作成・交付が義務となります。
当事務所では、語学教室の実情やビジネスモデルに合わせて、法定要件を満たす書類を丁寧に作成いたします。たとえば次のようなケースにも柔軟に対応可能です。
- 月額制または一括払い型の契約形態に応じた契約書作成
- オンラインレッスンに対応した記載内容の調整
- クーリングオフや中途解約に関する記載の明確化
- 未成年の受講者がいる場合の親権者同意条項の追加
これらの書類は単なる形式的なものではなく、トラブル予防や信頼構築にも直結する重要な法的文書です。不備があると監督官庁からの行政指導や、消費者トラブルにつながるリスクもあります。
語学教室を新規に立ち上げる方はもちろん、既に運営されている方でも「現在の契約書が特商法に適合しているか不安」「書類を見直したい」というご相談を多くいただいています。
特定商取引法に強い行政書士が、語学教室運営を法的側面からしっかりサポートいたします。まずはお気軽にご相談ください。
当事務所に依頼する3つのメリット
- 法定記載事項を網羅した正確な書面が作成できる
特定商取引法に基づく概要書面および契約書面には、記載しなければならない法定項目が詳細に定められており、記載漏れや形式不備があると契約無効や行政処分のリスクも生じます。当行政書士事務所に依頼することで、こうした複雑な要件をすべて満たした正確な書類を作成してもらえるため、安心して運用できます。 - 実務に沿った運用指導が受けられる
概要書面や契約書面は「作成して終わり」ではなく、どの段階で、どのように交付し、何を説明すべきかといった実務運用が極めて重要です。当行政書士事務所は、実際のクリニック業務の流れに即して、説明する用語内容や、契約締結の手順などを詳しく説明しますので、違反リスクの少ない運営が可能となります。 - 最新の法改正や実務動向に対応できる
特定商取引法は定期的に改正が行われており、例えば近年では書面交付の電子化が一部認められるようになるなど、事業者側に求められる対応も変化しています。行政書士はこうした法改正にも精通しているため、時代に合った内容の書類整備や契約運用が可能になります。自力では見落としがちな法的変更点にも素早く対応できるため、常に適法な状態を維持するうえでの強力な支援となります。
料金表
当サービスの費用は明瞭な定額制となっております。
内容 | 料金 | 詳細 |
⑴概要書面・契約書面の作成 ⑵契約手順の説明書 | 55,000円 | 事前相談からヒアリング、書類の作成・納品までの一連のサービス費用が含まれています。追加料金なしで、2種類の書面を一括して作成いたします。t契約の手順書もお付けします。 |
選択プラン | ||
⑶電子交付対応 | 11,000円 | 電子交付対応では、書面をWord文書で提供し、サービス利用者への電子交付に必要な同意取得の方法や手順についてアドバイスいたします。 |
※上記料金以外に、特殊なご要望や追加の書類作成が発生しない限り、基本的に追加費用はございません。
手続きの流れ
当事務所へのご依頼から書類お渡しまでの一般的な流れをご説明します。初めての方でも安心してご利用いただけるよう、丁寧に対応いたします。
- お問い合わせ・ご相談
まずはお問い合わせフォームやお電話等でお気軽にご相談ください。業種や事業内容、ご依頼の概要をお伺いします(この段階では費用はかかりません)。 - お見積りのご提示
ヒアリングした内容にもとづき、正式にサービス提供する場合の費用のお見積りを提示いたします。基本的には前述の定額料金ですが、もし特殊な事情で追加料金が生じる場合はこの時点でご説明します。お見積りにご納得いただいた上で正式にご依頼ください。 - 契約締結
当事務所にて委任契約書を作成し、電子形式で締結していただきます。 - 追加質問のお伺い
書面作成に必要な事項について詳しくお伺いします。サービスの内容・特徴、提供条件、料金体系、契約条件(解約条件や返金規定等)などをメールにてお伺いいたします。 - 書類の作成
お伺いした内容を踏まえて、概要書面および契約書面を作成します。法律用語が多く難解になりすぎないよう配慮しつつ、法定事項を漏れなく盛り込んだ書類案を作成いたします。通常、1週間程度でドラフト(下書き)をご用意し、一度内容をご確認いただきます。ご要望に応じて修正を加え、最終版を完成させます。 - 書類の納品
完成した書類を納品いたします。基本的には電子データ(Word文書やPDFなど)でお渡しいたしますので、お客様の方で必要部数を印刷してご利用いただけます。また、納品後の運用方法についてもご不明点があれば納品から1か月はサポートいたします。作成した書類を実際にお客様が顧客に交付する際の手順や留意点などについてもご説明できますので、安心してご利用いただけます。
以上がご依頼から納品までの基本的な流れです。不明点がございましたら各段階で遠慮なくご質問ください。当事務所が責任を持ってサポートいたします。
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