オンラインで英会話レッスンやプログラミング教室などを開設するにあたり、見落とせないのが関連法令の遵守です。中でも、長期にわたるサービス提供を対象とした特定商取引法の規制、すなわち特定継続的役務提供に該当するかどうかは重要なチェックポイントとなります。
契約プランや料金設定によっては、事業者は契約前後の書面交付やクーリングオフ対応など厳格な義務を負うことになります。これらを怠ると、消費者とのトラブルや行政処分につながりかねません。
本記事では、オンラインレッスンのサービスを開設・運営する際に押さえておくべき法律上のポイントについて、特定継続的役務提供の条件、必要書面の準備、違反防止の留意点、そして行政書士によるサポートまで詳しく解説します。適切な法対応を行い、安心してオンライン事業をスタートさせましょう。
特定継続的役務提供の適用条件と該当サービス
まず、オンラインレッスンを開設するにあたり、自身のサービスが特定継続的役務提供に該当するかどうかを理解する必要があります。これは特定商取引法で規定された取引類型の一つで、長期間にわたってサービスを提供し高額な料金を受け取る契約形態が対象です。
消費者がそのような長期契約を結ぶ際、事前の十分な情報提供と契約解除の機会を保障することでトラブルを防ぐことを目的とした制度でもあります。以下では、その概要や対象サービス、適用条件について順に確認していきましょう。
特定継続的役務提供制度の概要
特定継続的役務提供とは、簡単に言えば長期継続サービスの契約に対する特別ルールです。特定商取引法では、一定のサービス分野において長期間・高額の契約を結ぶ際に、事業者に対して書面交付やクーリングオフなど特別の義務を課すことで、消費者を保護しています。
その背景には、「長期間続くサービスは契約時に全ての結果を予測しにくく、消費者が不利な状況に陥りやすい」という考えがあります。オンラインによる英会話レッスンや学習塾などは受講期間が長期化しやすく費用もかさむため、法律で特に注意が払われているのです。まずは自社のオンラインレッスンがこの制度の射程に入るか、基本的な考え方を押さえておきましょう。
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特定継続的役務提供
対象となるサービスの種類とオンラインへの該当
特定継続的役務提供として政令で指定されているサービス分野には、語学教室(英会話スクール)、家庭教師、学習塾、パソコン教室、エステティックサロン、美容医療、結婚相手紹介サービスの7種類があります。
いずれも長期間・高額の契約になりやすいため特別な規制が設けられています。例えば、オンラインで提供する英会話レッスンは「語学教室」に該当し得ますし、オンライン家庭教師サービスも「家庭教師」の範疇に入ります。
重要なのは、サービス提供の手段がオンラインであっても対象外にはならないという点です。法律上、「インターネットや電話等を用いて行われる場合も広く含む」と規定されており、対面かオンラインかは関係ありません。したがって、オンライン形式であっても上記サービス類型に当てはまるものは特定継続的役務提供として扱われる可能性が高いと認識しておきましょう。
該当した場合に必要な書面の種類と作成義務
オンラインレッスンが特定継続的役務提供に該当する契約形態であれば、事業者は契約書類を作成して消費者に交付する法的義務があります。
必要となる書面は主に2種類です。
概要書面(契約概要書)
契約締結前に交付する書面で、契約の重要事項を消費者に説明する目的があります。概要書面には、次のような事項を記載することが義務付けられています。
- 事業者の名称・住所等の基本情報
- 提供する役務(レッスン内容)や提供期間
- 支払うべき料金総額と支払い方法
- クーリングオフや中途解約(途中解約)に関するルール
要するに、契約を申し込む前に消費者が知っておくべき情報を網羅した書面です。
契約書面(契約内容書)
契約締結後に交付する書面で、実際に結んだ契約内容を明確にするものです。契約書面には概要書面の内容に加えて、契約を担当したセールス担当者の氏名や契約締結日など、最終合意された契約の詳細を記載します。契約後に消費者へ渡す正式な契約書と考えてよいでしょう。
事業者は上記2つの書面を適切に作成し、所定のタイミングで交付する義務があります。書面には法律で定められた項目を漏れなく記載し、特にクーリングオフに関する注意書きは赤枠・赤字で明記するといった形式要件にも従う必要があります。
個人事業主であっても例外ではなく、該当サービスを提供する以上はこれら書面を用意して交付することが求められる点に注意しましょう。
オンラインレッスンが特定商取引法に該当する場合の実務対応
実際にオンラインレッスンが特定商取引法の規制対象(特定継続的役務提供)となる場合、事業者は具体的にどのような対応を取ればよいのでしょうか。本トピックでは、契約時に用意すべき書面の内容や交付方法、タイミングなど実務上のポイントを詳しく見ていきます。
また、万一これらを怠った場合に事業者が直面する罰則やリスクについても解説します。
契約書面と概要書面の違いと内容要件
上記で述べたとおり、概要書面は契約前に交付、契約書面は契約後に交付するもので、それぞれ記載すべき内容が法律で決められています。概要書面には主に契約の概要情報(サービス内容・期間・料金・支払方法など)と消費者の権利に関する事項(クーリングオフや中途解約の可否・方法)が盛り込まれます。
書面交付のタイミングと方法(電子交付の可否など)
交付のタイミングは先述のとおり、概要書面は契約申込を受ける前、契約書面は契約締結後に遅滞なく(できるだけ早く)交付します。具体的には、オンラインで申し込みフォームを送信させる前や、対面であれば申込書に署名させる前に概要書面を渡し、実際に契約が成立した直後から数日以内に契約書面を交付する流れです。
交付方法について、従来は原則として紙の書面を手渡しまたは郵送で交付する必要がありました。しかし、2023年6月の法改正により一定の条件下で電子メール等による交付が可能となりました(消費者が希望する場合のみ)。
電子交付を行う場合でも、きちんと消費者の承諾を得て、送信記録や受領記録を保存できるようにする必要があります。また、書面交付時には形式面の要件にも注意しなければなりません。
これらの形式要件を満たさないと、仮に電子メールなどで書面を交付していても法律上無効とみなされたり、クーリングオフ期間が開始していない扱いになるおそれがあります。
遵守しない場合の罰則やリスク
概要書面・契約書面の交付義務を怠ったり、書面に記載すべき事項が抜け落ちていた場合、事業者には行政処分や罰則が科される可能性があります。例えば、概要書面・契約書面を渡さなかった場合、6か月以下の懲役又は100万円以下の罰金が科される場合があります。(特商法第71条第1号)
また、クーリングオフができる8日間の期間ですが、これは法律上必要な記載事項をすべて網羅した概要書面・契約書面を消費者に渡した時から起算されます。そのため、概要書面・契約書面を交付していなかったり、あるいは交付していても不備がある場合、正しい書面を渡してから8日がたつまではいつでもクーリングオフができることになってしまいます。
事業者にとって、こうした書面交付義務の不履行は大きなリスクです。消費者との紛争を防ぐためにも、契約時の書面交付は確実に実施し、法律で求められる記載事項を漏れなく盛り込むようにしましょう。
オンラインレッスン開設者が法律遵守するための注意ポイント
法律上の義務を理解したら、次は実際の運用面での注意点を押さえておきましょう。せっかく書面を整備しても、運用を誤れば特定商取引法違反となりかねません。ここでは、特に重要なクーリングオフと中途解約への対応方法、そして違反を防ぐために事業者が留意すべきその他のポイントを解説します。
適切な対応を徹底し、利用者との信頼関係を損なわない健全な運営を心がけることが大切です。
クーリングオフの理解と対応
クーリングオフは、消費者が契約後に一定期間内であれば無条件で契約解除できる制度です。特定継続的役務提供の場合、消費者は契約書面を受け取った日を含めず8日以内であれば、理由を問わず書面(または電磁的記録)により契約解除を申し出ることができます。
事業者はこの申し出を受けたら速やかに対応しなければなりません。クーリングオフによる解約が行われた場合、事業者側は既に受け取った金銭を全額返金し、提供途中であってもサービスの対価は請求できません。違約金や手数料も一切請求不可です。
なお、契約書面にクーリングオフに関する注意書きを赤字で明記しなかった場合など、適切に告知していない場合には、8日を過ぎてもクーリングオフを認めざるを得ないケース(期間の延長)が生じる可能性があります。そうした事態を避けるためにも、書面での明示と解除手続への誠実な対応を徹底しましょう。
中途解約(途中解約)時の対応と清算
クーリングオフ期間を過ぎた後でも、消費者には契約期間の途中でサービスをやめる中途解約の権利があります。事業者はこの申し出にも応じる義務があり、法律で定められた範囲内で清算を行う必要があります。
具体的には、パソコン教室・学習塾・家庭教師・語学教室など継続的サービスに関しては、サービス提供開始前に解約された場合、事業者が請求できるキャンセル料はパソコン教室および語学教室では上限1万5000円、学習塾では1万1000円、家庭教師では2万円までに制限されます。
一方、サービス提供開始後に中途解約する場合には、消費者は提供済み期間分の料金を支払うとともに、残りの未提供分については、パソコン教室・語学教室では「契約残額の20%または5万円のいずれか低い額」、家庭教師では「未提供分に対する1か月分の授業料相当額または5万円のいずれか低い額」、学習塾では、「未提供分に対する1か月分の授業料相当額または2万円のいずれか低い額」を違約金として支払うことで解約が可能です。
なお、これらの上限を超える違約金や不当な清算条件を契約書に定めても取消対象又は無効とされますので、契約書面には法定ルールに基づく中途解約時の清算基準を明記し、実際の解約時も速やかに対応する必要があります。
その他、違反を防ぐためのポイント
最後に、クーリングオフや中途解約以外で違反を防止するために注意すべき点を確認します。まず、誇大または不適切な広告表示の禁止です。サービスの効果を過度に強調したり、事実と異なる宣伝を行ったりすると、特定商取引法違反(不実告知や誇大広告)に該当する恐れがあります。
例えば「必ず短期間で上達」「絶対に成果保証」などの表現は避け、正確かつ誠実な情報提供を心がけましょう。また、書面交付の不備にも注意が必要です。概要書面や契約書面を交付しなかったり記載漏れがあった場合、法律上はクーリングオフ期間が開始しない(=消費者はいつでも契約解除できる状態が続く)と解釈される可能性があります。
こうしたリスクを回避するためにも、書面は法定どおり漏れなく作成・交付することが重要です。以上の点を踏まえ、常に法律遵守を念頭に置いた運営を行うことで、利用者からの信頼を得て長期的な事業発展につながるでしょう。
行政書士によるオンラインレッスン開設のサポート
法規制への対応や書面作成に不安がある場合は、行政書士などの専門家の力を借りることも検討してください。行政書士は契約書類の作成や法務手続きに精通した国家資格者であり、特商法などを専門に扱う行政書士であれば、オンラインレッスン開設に伴う諸準備を強力にサポートしてくれます。
専門家に任せることで、法令違反のリスクを低減し、安心して開業準備に集中できるでしょう。以下に、行政書士が提供できる具体的な支援内容を紹介します。
法定書面の作成代行と整備支援
行政書士は、特定商取引法に基づく概要書面・契約書面の作成を専門業務としています。自身で書類を作成する場合、法律用語や細かい記載事項の解釈に戸惑うことも多いですが、行政書士に依頼すればスムーズです。
事業者の提供するサービス内容や契約条件をヒアリングした上で、法定項目を漏れなく盛り込んだ書面を作成してくれます。クーリングオフや中途解約の記載方法(赤字表記や文言)についても熟知しているため、形式要件を満たす正確な書面が得られます。書類作成をプロに任せることで、時間と労力を節約できるだけでなく、法的に適切な契約書類を用意できる安心感が得られるでしょう。
契約内容や表示の確認
オンラインレッスンの契約内容や広告・サイト表示についても、行政書士のチェックを受けることで安心です。たとえば、契約約款におけるクーリングオフ条項や解約条件が適法か、違約金の設定額が法の上限内に収まっているか、ウェブサイト上に特定商取引法で求められる表示(事業者情報や返品特約等)を適切に掲示しているか、といった点を専門家が確認してくれます。
自分では気づきにくい法令違反のリスクも、行政書士の目を通すことで事前に洗い出すことが可能です。指摘を踏まえて契約内容や表示を修正すれば、開設後のトラブル発生を予防できるでしょう。
開業手続きや継続的サポートの活用
行政書士は書類作成以外にも、オンラインレッスン事業の開業手続き全般や、開業後の継続的な法務サポートも提供しています。法人を設立する場合の定款作成など、事業開始時に必要な手続き全般について支援を受けることができます(オンラインレッスン自体には特段の許認可は不要です。)。
また、開業後に法改正があった際の書面見直し、契約トラブル発生時のアドバイスなど、継続的なアフターサポートを依頼できる点も心強いところです。行政書士と継続的に連携することで、常に最新の法令に則った運営を維持でき、安心して事業に専念できるでしょう。
オンラインレッスンの開設時に必要な書類作成はお任せください
オンライン英会話やプログラミング教室などのレッスン事業を始める際、見落としがちな重要ポイントが「特定商取引法への対応」です。長期契約や高額プランを提供する場合には、特定継続的役務提供に該当する可能性があり、契約前後の書面交付やクーリングオフ対応など、厳格な法的義務が課されます。
当事務所では、特定商取引法をはじめとする関連法規に準拠した概要書面・契約書面の作成支援をはじめ、契約内容の確認、運営体制の整備まで一貫してサポートいたします。適切な法対応により、トラブルの予防と安心・信頼のある事業運営を実現しましょう。
特に次のようなお悩みをお持ちの方はご相談ください。
- 契約時に必要な概要書面や契約書面の書き方が分からない
- 自分のオンライン講座が特定商取引法の規制対象か判断がつかない
- クーリングオフや中途解約の正しい記載方法が不安
- 電子交付や利用規約の整備をどこまで対応すればよいか迷っている
- 違約金・キャンセルポリシーの設定が法的に適切か不安
- 開業後のトラブルを未然に防ぎたい
当事務所に依頼する3つのメリット
法定記載事項を網羅した正確な書面が作成できる
特定商取引法に基づく概要書面および契約書面には、記載しなければならない法定項目が詳細に定められており、記載漏れや形式不備があると契約無効や行政処分のリスクも生じます。当行政書士事務所に依頼することで、こうした複雑な要件をすべて満たした正確な書類を作成してもらえるため、安心して運用できます。
実務に沿った運用指導が受けられる
概要書面や契約書面は「作成して終わり」ではなく、どの段階で、どのように交付し、何を説明すべきかといった実務運用が極めて重要です。当行政書士事務所は、実際のクリニック業務の流れに即して、説明する用語内容や、契約締結の手順などを詳しく説明しますので、違反リスクの少ない運営が可能となります。
最新の法改正や実務動向に対応できる
特定商取引法は定期的に改正が行われており、例えば近年では書面交付の電子化が一部認められるようになるなど、事業者側に求められる対応も変化しています。行政書士はこうした法改正にも精通しているため、時代に合った内容の書類整備や契約運用が可能になります。自力では見落としがちな法的変更点にも素早く対応できるため、常に適法な状態を維持するうえでの強力な支援となります。
料金表
当サービスの費用は明瞭な定額制となっております。
内容 | 料金 | 詳細 |
⑴概要書面・契約書面の作成 ⑵契約手順の説明書 |
55,000円 | 事前相談からヒアリング、書類の作成・納品までの一連のサービス費用が含まれています。追加料金なしで、2種類の書面を一括して作成いたします。t契約の手順書もお付けします。 |
選択プラン | ||
⑶電子交付対応 | 11,000円 | 電子交付対応では、書面をWord文書で提供し、サービス利用者への電子交付に必要な同意取得の方法や手順についてアドバイスいたします。 |
※上記料金以外に、特殊なご要望や追加の書類作成が発生しない限り、基本的に追加費用はございません。
手続きの流れ
当事務所へのご依頼から書類お渡しまでの一般的な流れをご説明します。初めての方でも安心してご利用いただけるよう、丁寧に対応いたします。
お問い合わせ・ご相談
まずはお問い合わせフォームやお電話等でお気軽にご相談ください。業種や事業内容、ご依頼の概要をお伺いします(この段階では費用はかかりません)。
お見積りのご提示
ヒアリングした内容にもとづき、正式にサービス提供する場合の費用のお見積りを提示いたします。基本的には前述の定額料金ですが、もし特殊な事情で追加料金が生じる場合はこの時点でご説明します。お見積りにご納得いただいた上で正式にご依頼ください。
契約締結
当事務所にて委任契約書を作成し、電子形式で締結していただきます。
追加質問のお伺い
書面作成に必要な事項について詳しくお伺いします。サービスの内容・特徴、提供条件、料金体系、契約条件(解約条件や返金規定等)などをメールにてお伺いいたします。
書類の作成
お伺いした内容を踏まえて、概要書面および契約書面を作成します。法律用語が多く難解になりすぎないよう配慮しつつ、法定事項を漏れなく盛り込んだ書類案を作成いたします。通常、1週間程度でドラフト(下書き)をご用意し、一度内容をご確認いただきます。ご要望に応じて修正を加え、最終版を完成させます。
書類の納品
完成した書類を納品いたします。基本的には電子データ(Word文書やPDFなど)でお渡しいたしますので、お客様の方で必要部数を印刷してご利用いただけます。また、納品後の運用方法についてもご不明点があれば納品から1か月はサポートいたします。作成した書類を実際にお客様が顧客に交付する際の手順や留意点などについてもご説明できますので、安心してご利用いただけます。
以上がご依頼から納品までの基本的な流れです。不明点がございましたら各段階で遠慮なくご質問ください。当事務所が責任を持ってサポートいたします。
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