オンラインで子ども向けの学習塾を開業しようと考えたとき、意外と見落とされがちなのが法律面の準備です。学習塾は学校とは異なり、特別な免許や資格がなくても開業できます。しかし、小学生〜高校生を対象に継続的に教育サービスを提供するオンライン塾は、消費者保護のための法律である特定商取引法の規制対象となる可能性があります。
具体的には「特定継続的役務提供」という取引類型に該当し、契約前後に交付すべき書面があるなど、遵守すべきルールが存在します。
この記事では、オンライン塾開業にあたって押さえておきたい法的ポイントを行政書士が分かりやすく解説します。特定商取引法上の特定継続的役務提供に該当するかどうかの判断基準と、それによって生じる概要書面・契約書面の交付義務の有無、さらに安心して開業準備を進めるために行政書士のサポートを活用する必要性とメリットについて説明します。
法律に不慣れな方でも理解できるよう、専門用語もかみ砕いて解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
オンライン塾は特定継続的役務提供に該当する?
オンライン塾を開業する際にまず確認すべきは、自分の提供するサービスが特定商取引法における「特定継続的役務提供」に当たるかどうかです。特定継続的役務提供とは、一言で言えば「長期間にわたり継続して行われ、高額な料金を受け取るサービス契約」のことで、エステサロンや語学教室、結婚相談所などと並んで学習塾もその典型例とされています。
オンラインであっても提供形態に関係なく該当しうるため注意が必要です。
特定継続的役務提供とは
特定継続的役務提供(とくていけいぞくてきえきむていきょう)とは、法律で指定された7種類のサービス類型の一つで、一定期間を超えて継続的にサービスを提供し、その対価として高額の料金を受け取る契約を指します。
学習塾(塾生への継続的な学習指導サービス)はこの中に含まれており、他にはエステティックサロン、語学教室、家庭教師派遣、結婚相手紹介サービス、パソコン教室、美容医療サービスが挙げられます。これらのサービスは、長期契約となりやすく費用もまとまった額になるため、契約トラブルを防ぐ目的で特定商取引法によって事業者に詳細なルール遵守が求められているのです。
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特定継続的役務提供
該当となる条件:2ヶ月超かつ5万円超
すべての塾が自動的に特定継続的役務提供になるわけではなく、契約期間と金額の条件を満たす場合に規制対象となります。具体的には、提供する教育サービスの契約期間が2ヶ月を超える(2ヶ月を超えて継続する契約)こと、そして受け取る契約金額の総額が5万円を超える場合です。
契約金額には、授業料のほか入会金や教材費、設備費用など生徒側が支払うすべての費用を合計した額が含まれます。例えば半年間や1年間のコース料金を一括前払いする場合はもちろん、この条件に該当します。また、多くのオンライン塾では月謝制であっても入会金や数ヶ月分の受講で合計5万円を超えるケースがほとんどでしょう。
オンライン塾が該当しないケースは?
基本的に、小学生から高校生を対象とした学習指導サービスであれば、オンライン形式であっても前述の条件を満たせば特定継続的役務提供に該当します。一方で、契約期間が2ヶ月以内かつ総額5万円以下の短期・低価格の講座であれば、この法律の特定継続的役務提供には当たりません。
また特定商取引法の規定上、幼稚園・小学校入学のための受験指導のみを行う塾や、高校卒業後の浪人生だけを対象とする予備校等は対象外とされています。しかし一般的な学習塾ビジネスではこれらに該当するケースは稀です。ほとんどの場合、オンライン塾を開業すれば特定継続的役務提供として特定商取引法のルールを守る必要があると考えておきましょう。
オンライン塾の概要書面/交付義務とポイント
もし提供するオンライン塾サービスが特定継続的役務提供に該当する場合、開業にあたって準備すべき重要書類の一つが概要書面です。概要書面とは、簡単に言えば「契約を正式に結ぶ前に相手(生徒や保護者)に渡す、契約内容の概要を書いた書類」のことです。
特定商取引法ではこの概要書面を契約前に交付することが義務付けられており、ここには契約しようとしているサービスの重要事項を記載しておかなければなりません。
概要書面の役割と交付タイミング
概要書面は、入会希望者と正式に契約を交わす前の段階で交付します。例えば、体験授業後の面談や申込み手続きの説明時に、「入会案内」などのタイトルで概要書面を手渡すイメージです。
オンライン塾の場合でも、郵送や対面説明の場で交付するか、法律に則った適切な方法で相手に届ける必要があります。この書面の役割は、契約前にサービス内容や利用条件をきちんと書面で示すことで、お客様(生徒や保護者)に契約内容を正確に理解・納得してもらうことにあります。
口頭だけの説明では行き違いや説明漏れが起きやすいため、重要事項を文書で確認してもらうプロセスが法律で求められているのです。
概要書面に記載すべき内容
概要書面には、契約しようとするサービスの主要な内容と条件を漏れなく記載します。具体的には契約書面(後述)とほぼ同じ項目を盛り込む必要がありますが、契約前段階の説明資料であるため契約書面より簡易な表現でも構いません。主な記載事項としては以下のようなポイントがあります。
- 事業者の情報:塾を運営する事業者の氏名(名称)、住所、電話番号など(法人なら法人名・所在地・代表者名等)。
- サービスの内容:提供する指導内容や形態(オンライン個別指導なのか集団授業なのか)、期間や回数(例:週◯回×◯ヶ月)など。
- 料金と支払い方法:入会金、月謝、教材費など費用内訳と総額、支払い時期や方法(銀行振込、クレジットカード可否、一括か分割か等)。
- サービス提供期間:契約で定める受講期間の開始日と終了日。
- 中途解約やクーリング・オフ等の条件:契約を途中で解約できるか、その方法や精算ルール、契約後8日以内であれば無条件解約できるクーリング・オフ制度の説明など。
以上のような事項を分かりやすくまとめ、相手にしっかり確認してもらうことが大切です。概要書面とはいえ法定の書類ですから、単なる宣伝パンフレットではなく法律で定められた項目を網羅した正式な説明資料として作成しましょう。
この段階で疑問点や不安な点をクリアにしておけば、後々の契約トラブル予防にもつながります。
概要書面を交付しないとどうなる?
特定継続的役務提供に該当する塾で概要書面の交付を怠ると、法律違反となります。本来交付すべき書面を渡していない場合、契約者との信頼関係を損なうだけでなく、行政から是正指導や最悪の場合罰則を受けるリスクもあります。
実際に特定商取引法では、概要書面や契約書面を交付しない、または記載すべき事項が欠けている場合に6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金(またはその両方)といった厳しい罰則規定が設けられています。(特商法第71条罰則)
開業後にそんな事態にならないよう、契約前の説明書面である概要書面は必ず用意し、適切に交付しましょう。
契約書面の交付義務とポイント
オンライン塾では契約前だけでなく、契約を締結した際にも書面を交付する義務があります。それが契約書面です。これは一般的な契約書とは少し異なり、特定商取引法上、契約成立後できるだけ速やかに顧客に渡さなければならない契約内容詳細の書類を指します。
契約書に署名・捺印して終わりではなく、法律に定められた項目を全て含んだ契約内容確認書面を別途交付する必要がある点に注意が必要です。
契約書面の役割と交付タイミング
契約書面は、正式に入会契約を結んだ直後に交付するものです。契約書そのものとも言えますが、単に双方がサインして手元に控えておくだけでは不十分で、お客様に契約内容を書面で渡すことが義務付けられています。
交付のタイミングは契約成立後できるだけ速やかに(遅滞なく)とされており、通常は契約手続き完了時にその場で手渡すか、オンライン契約の場合でも郵送などで速やかに送付します。
この契約書面の役割は、契約した内容をあらためて明文化し、双方の認識を一致させることです。概要書面で提示した事項を踏まえ、最終確定した契約事項を網羅することで、「聞いていた話と違う」といった食い違いを防ぎ、後日のトラブルを抑止する効果があります。
契約書面に記載すべき内容
契約書面には、概要書面と同様の項目を含めつつ、実際に締結した契約内容の詳細を記載します。法律で記載が義務付けられている事項が細かく定められており、主なものは以下のとおりです。
- 事業者の情報:事業者名や所在地、電話番号、代表者名(法人の場合)。
- サービスの具体的内容:提供科目や指導方法(オンライン個別指導か集団指導か)、週あたりの授業回数、1回の授業時間など契約内容の詳細。
- 料金総額と内訳:入会金、授業料、教材費などの各金額および合計金額。もし別途購入が必要な教材等があればその商品名・数量・価格。
- 料金の支払時期・方法:支払いのタイミング(例:毎月◯日までに翌月分前払い等)や方法(銀行振込、カード払い、一括/分割など)。
- 役務提供期間:サービス提供の契約期間(開始日と終了日、または◯ヶ月間等)。
- クーリング・オフに関する事項:契約書面受領日を含めて8日以内であれば理由を問わず書面で契約解除(クーリング・オフ)できること、その手続き方法や効果。
- 中途解約に関する事項:クーリング・オフ期間経過後でも契約期間途中で解約できること、その際の精算ルールや違約金の計算方法。
※法律上、クーリング・オフの説明部分は赤枠か赤字で明示する決まりがあります。 ※特定商取引法では中途解約時の違約金に上限が定められており、学習塾の場合、2万円又は当該特定継続的役務提供契約における1か月分の授業料相当額のいずれか低い額しか請求できません。この条件を契約書面に明記し、消費者が中途解約しても過大な負担を負わないことを示す必要があります。 |
これらの項目を盛り込んだ契約書面を作成し、契約成立時にきちんと交付することで、契約内容が明確になり顧客も安心できます。とりわけクーリング・オフや中途解約の条件は消費者にとって重要な保護規定ですので、法律で求められるとおり正確に記載し説明しましょう。
適法な契約書面を交付しておけば、万一後で「聞いていない」「説明が違った」という問題が起きた際にも、「契約時にこのように説明しています」と証拠になり、事業者・顧客双方にとってトラブルを減らす効果があります。
契約書面を交付しない場合のリスク
概要書面の場合と同様、契約書面の交付義務を怠ることも重大なリスクを伴います。特定商取引法に違反した場合、行政処分(業務停止命令など)の対象となるだけでなく、刑事罰が科される可能性もあります。
書面を交付しないあるいは書面の内容に不備があるだけでも法違反とみなされ、前述した懲役刑・罰金刑の適用対象です。また、書面がきちんと交付されていない契約は後から無効主張をされる恐れもあり、事業の信用失墜にも繋がりかねません。せっかく開業しても違法な運営では継続できなくなってしまいますから、契約書面の準備・交付は絶対におろそかにしないようにしましょう。
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オンライン塾開業の行政書士によるサポート
以上のように、オンライン塾の開業には特定商取引法に基づく厳格な書面作成・交付義務があります。これらを自分だけで完璧に対応するのは容易ではありません。法律の条文を読み解き、漏れなく書類を整備するには相当の時間と労力がかかりますし、初めての開業準備で他にもやることが山積みの中、法的な書類づくりに不安を感じる方も多いでしょう。
そんなときに心強い味方となるのが、契約書や規約の作成を専門とする行政書士です。ここでは、行政書士に相談・依頼することの具体的なメリットと、サポート内容について解説します。
時間と労力の大幅な節約
法定の概要書面や契約書面を一から自力で作成しようとすると、特定商取引法の条文や消費者庁のガイドラインを調べ、必要事項を盛り込んだ書式を作り上げる必要があります。
慣れないうちは「この書き方で合っているだろうか?」と悩みながら試行錯誤することになり、開業準備の大きな負担となりかねません。行政書士に依頼すれば、そうした書類作成の手間と時間を大幅に省くことができます。その結果、経営者は本来注力すべき指導内容の準備や集客などに専念でき、事業立ち上げを円滑に進められるでしょう。
法令に沿った正確な書類作成で安心
行政書士は日々さまざまな事業者の契約書類を作成・チェックしている法律の専門家です。特定商取引法で定められた記載必須事項を漏れなく盛り込み、形式にも誤りのない書類を作成してもらえるため、法令遵守の点で安心感が得られます。
自分で書類を用意した場合、「この内容で法律上問題ないだろうか…」という不安がつきまといがちですが、プロの手が入った書面であれば自信を持って運用できます。また万一、契約に関するトラブルや消費者からのクレームが発生した場合でも、行政書士に相談していれば適切なアドバイスや改善策を提案してもらえるので心強いです。
トラブル防止・信頼性向上にもつながる
行政書士による書面作成サポートは、単に書類を作って終わりではありません。どのタイミングでどの書面を交付し、何を説明すべきかといった実務的なアドバイスも受けることができます。
法律の規制を踏まえた運用方法まで指導を受けておけば、「渡し忘れ」や「説明不足」による違反リスクを格段に減らせます。さらに、法に則った適正な契約手続きを行っている塾は、保護者からの信頼も高まります。「契約内容をきちんと書面でもらえて安心だった」「対応が誠実だ」といった評価につながり、生徒募集の面でもプラスになるでしょう。
行政書士のサポートを受けて法令順守を徹底することは、結果的に開業後の円滑な運営と信用向上につながる有益な投資と言えます。
オンライン塾の開業に要する契約書の作成はお任せください
オンラインで学習塾を開業するにあたり、特定商取引法に基づく「概要書面」や「契約書面」の整備は避けて通れません。法定の記載事項を漏れなく含んだ書類を作成することで、トラブルの予防だけでなく、保護者からの信頼獲得にもつながります。
行政書士である当事務所では、オンライン塾運営に必要な書類一式を、法令に準拠して作成いたします。特に、次のようなお悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください:
- 契約書や概要書面に何を記載すればよいのか分からない
- 自作の契約書で法的に問題がないか不安がある
- 特定商取引法の対象になるかどうか自信がない
- クーリング・オフや中途解約の条項をどう盛り込めばいいか迷っている
- 開業準備で手が回らず、書類作成に割く時間がない
- 生徒・保護者からの信頼を得られる体制を整えたい
法令を踏まえた適正な契約書類を整備し、安心して開業できるよう、全力でサポートいたします。まずはお気軽にご相談ください。
当事務所に依頼する3つのメリット
法定記載事項を網羅した正確な書面が作成できる
特定商取引法に基づく概要書面および契約書面には、記載しなければならない法定項目が詳細に定められており、記載漏れや形式不備があると契約無効や行政処分のリスクも生じます。当行政書士事務所に依頼することで、こうした複雑な要件をすべて満たした正確な書類を作成してもらえるため、安心して運用できます。
実務に沿った運用指導が受けられる
概要書面や契約書面は「作成して終わり」ではなく、どの段階で、どのように交付し、何を説明すべきかといった実務運用が極めて重要です。当行政書士事務所は、実際のクリニック業務の流れに即して、説明する用語内容や、契約締結の手順などを詳しく説明しますので、違反リスクの少ない運営が可能となります。
最新の法改正や実務動向に対応できる
特定商取引法は定期的に改正が行われており、例えば近年では書面交付の電子化が一部認められるようになるなど、事業者側に求められる対応も変化しています。行政書士はこうした法改正にも精通しているため、時代に合った内容の書類整備や契約運用が可能になります。自力では見落としがちな法的変更点にも素早く対応できるため、常に適法な状態を維持するうえでの強力な支援となります。
料金表
当サービスの費用は明瞭な定額制となっております。
内容 | 料金 | 詳細 |
⑴概要書面・契約書面の作成 ⑵契約手順の説明書 |
55,000円 | 事前相談からヒアリング、書類の作成・納品までの一連のサービス費用が含まれています。追加料金なしで、2種類の書面を一括して作成いたします。t契約の手順書もお付けします。 |
選択プラン | ||
⑶電子交付対応 | 11,000円 | 電子交付対応では、書面をWord文書で提供し、サービス利用者への電子交付に必要な同意取得の方法や手順についてアドバイスいたします。 |
※上記料金以外に、特殊なご要望や追加の書類作成が発生しない限り、基本的に追加費用はございません。
手続きの流れ
当事務所へのご依頼から書類お渡しまでの一般的な流れをご説明します。初めての方でも安心してご利用いただけるよう、丁寧に対応いたします。
お問い合わせ・ご相談
まずはお問い合わせフォームやお電話等でお気軽にご相談ください。業種や事業内容、ご依頼の概要をお伺いします(この段階では費用はかかりません)。
お見積りのご提示
ヒアリングした内容にもとづき、正式にサービス提供する場合の費用のお見積りを提示いたします。基本的には前述の定額料金ですが、もし特殊な事情で追加料金が生じる場合はこの時点でご説明します。お見積りにご納得いただいた上で正式にご依頼ください。
契約締結
当事務所にて委任契約書を作成し、電子形式で締結していただきます。
追加質問のお伺い
書面作成に必要な事項について詳しくお伺いします。サービスの内容・特徴、提供条件、料金体系、契約条件(解約条件や返金規定等)などをメールにてお伺いいたします。
書類の作成
お伺いした内容を踏まえて、概要書面および契約書面を作成します。法律用語が多く難解になりすぎないよう配慮しつつ、法定事項を漏れなく盛り込んだ書類案を作成いたします。通常、1週間程度でドラフト(下書き)をご用意し、一度内容をご確認いただきます。ご要望に応じて修正を加え、最終版を完成させます。
書類の納品
完成した書類を納品いたします。基本的には電子データ(Word文書やPDFなど)でお渡しいたしますので、お客様の方で必要部数を印刷してご利用いただけます。また、納品後の運用方法についてもご不明点があれば納品から1か月はサポートいたします。作成した書類を実際にお客様が顧客に交付する際の手順や留意点などについてもご説明できますので、安心してご利用いただけます。
以上がご依頼から納品までの基本的な流れです。不明点がございましたら各段階で遠慮なくご質問ください。当事務所が責任を持ってサポートいたします。
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