夫婦としての結婚に向けた歩みを進める中で、お互いの期待や計画を書面(文書)で確認しておくことは、多くのカップルにとって有益な手段となります。書面での約束は、将来のトラブルを未然に防ぎ、結婚の準備をよりスムーズに進める助けとなります。しかし、結婚の約束を書面にする際には、内容や形式に慎重な配慮が必要です。
こちらの記事では、結婚の約束を書面で行うことの可否から、その際のメリットとデメリット、具体的な書面の種類、注意点まで詳細に説明させていただいております。記事をご覧いただき、安心した結婚生活のスタートの一助となれば幸いです。
結婚の約束を書面で行うことの可否
結婚の約束を書面にすることは可能です。ただし、その内容には注意が必要です。婚姻を強制するような印象を与える記載は避けましょう。例えば、「今年中に婚姻をすることを協力し合う」といった内容であれば、相手方と婚約関係にあることや事実婚(内縁)関係にあることを前提としているため、問題ないと考えられます。
結婚の約束を書面でする場合
以下では、結婚の約束を書面にする場合のメリットやデメリット、作成する書面の種類について詳しく述べさせていただきます。
メリットやデメリット
メリット
- 婚約状態の明確化
書面により婚約をしていることを明記できるので、万一、相手による婚約解消や破棄となった場合に、慰謝料請求のための証拠として裁判等で利用できます。これにより、双方の責任を明確にし、不当な婚約解消等を防止することができます。 - 結婚の準備の計画性
結婚する大体の時期を定めておくことで、婚約指輪の作成や結婚式の準備、さらには新居の準備などを計画的に行うことができます。これにより、結婚準備がスムーズに進むでしょう。 - 将来のトラブル防止
結婚に関する取り決めを事前に行うことで、将来のトラブルを防ぐことができます。文書で結婚の約束だけを明文化することも可能ですが、これに加えて、夫婦の財産分配や結婚後の家事の取り決めも合わせて行うことで、将来的な問題を未然に防ぐことができます。
デメリット
- 結婚が契約的に感じられる
書面での約束により、結婚が契約的なものに感じられる可能性があります。ただし、記載方法や言葉の選び方によっては、契約の目的を明確にすることができ、このようなデメリットをカバーすることができます。 - 法的拘束力の限界
結婚の約束を記載した書面には、法的な拘束力に限界があります。たとえば、単なるカップルが結婚の約束を交わしても、自由恋愛により、一方が約束を破った場合に損害賠償を求めることは難しいです。自由恋愛とは、個人が自由に恋愛や結婚を選択する権利を指し、強制的に結婚を履行させることはできません。このため、婚約の約束を文書で記録しても、その内容の実行を強制するのは難しいため、書面の内容については慎重に検討することが重要です。 - プライバシーのリスク
結婚の約束を書面にすることで、もし書面内容に関するトラブルが発生した場合、弁護士や裁判所に個人情報やプライバシーが開示されるリスクがあります。具体的には、書面の内容や履行の確認等がなされ、その結果、プライバシーが侵害される可能性があります。例えば、婚約破棄の問題で裁判に発展した場合、裁判所に提出する書類により、個人の生活や関係に関する詳細な情報が公開される可能性があります。
【関連記事】 |
作成する書面の種類
結婚の約束を書面にする際、一般的に作成される書面には「婚前契約」や「夫婦財産契約」と呼ばれるものがあります。婚前契約は、婚姻後の夫婦生活のルールや夫婦の財産に関する取り決めを行うための契約です。一方、夫婦財産契約は、主に夫婦の財産に関する取り決めを行う契約です。
下記にそれぞれの特徴や記載する内容について解説します。
婚前契約の特徴
婚前契約とは、その名のとおり、結婚前(入籍前)にカップルが結ぶ契約です。記載する内容は、家事育児や仕事、日常生活に関する事柄から、不倫時のペナルティなど多岐にわたります。婚前契約書は、財産保護だけでなく、結婚後の様々な事柄についてお互いの価値観を話し合い、トラブルを防ぐために有効です。そのため、意外にも20代の若いカップルや一般的なカップルも作成しています。
婚前契約によって定める内容
- 婚姻の予定
婚姻をする大体の時期を決めておきます。 - 役割の分担
仕事、家事、子育ての役割や分担について事前に確認し合い、特に共働きのケースではお互いに協力し合うことが重要です。 - 収入や家計
収入からの家計支出の割合や管理方法について取り決めておきます。お金の問題はトラブルの原因となりやすいため、しっかりと話し合うことが大切です。 - 共有財産と特有財産
夫婦の共有財産と個人の財産(特有財産)を明確に区別し、離婚時の財産分与に備えます。婚前の個人財産は離婚時に分与対象外となるため、事前に整理しておくことが重要です。 - 不貞行為や暴力行為
不貞行為やDV、暴力行為については禁止し、万一の際の対応(慰謝料等)も取り決めておくことで、抑止力となり、トラブルを防ぐ効果があります。 - ギャンブルや借金
ギャンブルや借金の行為についてのルールを定め、特に借金や投資については事前に相談し合うことが重要です。 - 親族や友人との関係
親族や友人との関係を大切にし、そのためのルールや意識すべきことを取り決めておくことが望ましいです。介護が必要になった場合も含めて検討すると良いでしょう。 - 愛情や家庭を大切にする行為
お互いの愛情や家庭を大切にするためのルールを設定し、子作りについての考えや計画も事前に話し合うことで、結婚後のすれ違いやトラブルを防ぎます。
夫婦財産契約の特徴
「夫婦財産契約」と「婚前契約」は、どちらも結婚前にカップルが交わす契約であることには変わりありませんが、厳密には異なるものです。夫婦財産契約は、日本の民法に基づき作成するもので、民法が定める法定財産制とは異なる財産関係を結婚前に定める契約です。これは主に夫婦の財産に関する内容だけを扱います。
夫婦財産契約によって定める内容については、「婚前契約によって定める内容」の財産関連の記載が該当します。
結婚の約束を書面にする場合の注意点
結婚を約束する書面を作成する場合の注意点にはどのようなことがあるのでしょうか。
注意点を理解することによって、書面の不備による契約の無効などを防止することができます。
実効性と内容の制限
結婚の約束を書面で残す際には、強制的な内容を避けることが重要です。特に婚約や内縁状態でない場合、将来の結婚を約束することには法的に拘束することはできないので、具体的な約束を記載するのは難しいです。そのため、「将来の婚姻を約束する。」等の記載は不適切であり、記載するとしても「甲と乙は、婚約や内縁関係はないものの、双方が婚姻を目的に交際していることを確認する」といった記載に留めておく方がよいでしょう。
書面の正確性と具体性
書面を作成する際には、不備がないように注意し、署名や日付の空欄がないようにすることが重要です。また、書面に記載する内容はできる限り明確かつ具体的にし、特に、日付や金額などの具体的な情報を明示することで、後々のトラブルを避けることができます。
結婚の約束を書面にする場合のサンプル(テンプレート)
以下は、結婚の約束を書面にする場合のひな形です。ご自身の状況に合わせてご利用ください。
こちらの内容はシンプルなものであるため、より具体的な記載が必要な場合は、当事務所を含めた専門家にご相談されることをお勧めします。
婚約や内縁関係あり
結婚の約束に関する書面 甲○○と乙○○は、以下のとおり合意する。 第○条(婚約の確認) |
婚約や内縁関係がない
結婚の約束に関する書面 甲○○と乙○○は、以下のとおり合意する。 第○条(交際目的の確認) |
結婚の約束を書面にしておきたい!よくある質問と回答
Q.結婚の約束を書面にする際、どのような内容を含めるべきですか?
書面には、婚姻の大体の時期、役割分担、家計の管理方法、共有財産と特有財産の区分、不貞行為や暴力行為の取り決め、ギャンブルや借金に関するルール、親族との関係などを含めるとよいです。具体的な情報を記載することで、将来のトラブルを避けることができます。
Q.婚約や内縁関係がない場合、結婚の約束を書くことにはどの程度の実効性がありますか?
婚約や内縁関係がない場合、結婚の約束を文書で残しても法的に強制することは難しいです。書面には「婚姻を目的に交際していることを確認する」などの記載が適切ですが、約束の履行を強制することはできません。
Q.結婚の約束を含む書面を作成する際に、法的な問題はありますか?
結婚の約束を書面で残すこと自体には法的な問題はありませんが、婚姻を強制する内容や過剰な要求が含まれていると問題になる可能性があります。内容は法的に実行可能な範囲に留めることが重要です。
Q.結婚の約束を文書で作成するメリットは何ですか?
主なメリットには、主に、婚約状態が明確になる点、結婚準備の計画ができる点、将来のトラブルが防止できる点挙げられます。
Q.結婚の約束を書面にする際、どのようなデメリットがありますか?
デメリットには、結婚が契約っぽく感じられることがあり、他にも法的拘束力の限界、プライバシー侵害のリスクがあります。
Q.書面を作成する際、どのような注意点がありますか?
書面の作成時には、署名や日付の空欄がないようにし、記載内容は明確かつ具体的にすることが重要です。特に日付や金額などの情報を明示し、後々のトラブルを防ぐようにします。
Q.婚前契約と夫婦財産契約の違いは何ですか?
婚前契約は、結婚後の生活全般に関する取り決めを含むもので、家事、育児、収入管理など広範な内容を含みます。一方、夫婦財産契約は、主に夫婦の財産に関する取り決めを行うもので、財産の管理や分配に特化しています。
Q.婚約の証明として書面を使う際、どのような内容が効果的ですか?
婚約の証明としては、書面において婚約の日時を記載の上、その事実を確認する内容を含めることにより、証拠としての利用価値が高まります。
Q.結婚の約束を書面にした場合、専門家に相談するメリットは?
専門家に相談することで、書面の内容が法的に適切であるか確認でき、将来的なトラブルを未然に防ぐことができると考えられます。
結婚を約束する書面の作成はお任せください
近年、インターネット上には様々なサンプルやテンプレートが豊富にありますが、それらを利用して適法な契約を結ぶことはできるのでしょうか。各ケースには特有の事情があるため、安全な契約を確保するには専門家の関与が必要です。
当事務所では、民事法務を専門にし、夫婦、カップル等の結婚を約束する書面を含め、誓約書、契約書、合意書、示談書の作成を多数サポートしてきました。また、事務所は大阪市内に拠点を構えていますが、こういった書面の作成作成サポートについては、大阪府、兵庫県、奈良県、京都府をはじめ、東京都、神奈川県、沖縄県、広島県など、広範囲な地域からのご依頼にも対応しています。以下では、当事務所にご依頼いただいた場合の手続きの流れなどについてご説明いたします。
ご依頼後の流れ
結婚を約束する書面の作成をご希望でしたら、次の流れによりご申込いただけます。
1.ご連絡
まずは、次のお問い合わせフォーム、メール又はお電話等でお申込みください。お申込みの時点では、結婚を約束する書面を作成するために必要な「事件の概要や経緯、希望」等をお伺いさせていただきます。行政書士は、依頼を受けた業務や内容について守秘義務が課されていますので、安心してご相談いただくことができます。
お問い合わせフォーム→こちら Tel:050-3173-4720 |
2.お見積書とご契約
前記1によりお伺いした内容を元に、お見積書と契約書を作成させていただきます。内容にご了承いただけた場合には、契約とお振込みをいただきます。お振込みは、契約後5日以内の事前払いとさせていただいておりますので、ご了承ください。
3.契約書の案文作成
当事務所によって、契約書の案文を作成し、チャットやメールによってお送りさせていただきます。内容を、ご夫婦で確認いただきながら、内容や表現の変更や修正を重ねて、最終的にお二人が合意された契約書や誓約書を完成させます。なお、変更や修正においては、追加費用をいただいておりませんので、最後まで安心してサポートをご利用いただけます。
お問い合わせ
料金
業務内容 | 料金 | 概要 |
浮気防止の誓約書 | 30,000円 | 浮気を防止する内容の誓約書を作成させていただきます。 |
交際契約書 | 35,000円 | 交際中のカップル間の契約書を作成させていただきます。 |
婚前契約書 | 婚前の契約書を作成させていただきます。 | |
事実婚契約書 | 事実婚状態の契約書を作成させていただきます。 | |
夫婦財産契約書 | 夫婦の財産関係を記載した契約書を作成させていただきます。 | |
公正証書のサポート | 30,000円~ | 上記の契約について公正証書として作成する場合にはこちらの料金が加算されます。なお、上記全ての契約で公正証書の作成が可能なわけではありませんので、ご了承ください。 |
お客様の声
現在(令和6年6月)時点で、他のウェブサイトやGoogleなどを含めて、計150件以上の口コミをいただいており、総合的な評価は「4.9/5」と高く評価されています。このため、当事務所が提供するサービスは自信を持ってご提供しています。
ただし、すべての口コミが良い評価ではなく、改善すべき点もあります。具体的には、相談のしやすさなどに関する改善点が見られますので、日々その向上に努めています。以下は、お客様からいただいたご感想の一部です。
作成のイメージ
通常は7ページから9ページの結婚を約束する書面を作成させていただいております。
結婚の約束を書面にしておきたい!まとめ
最後までご覧いただきありがとうございました。こちらの記事では、結婚の約束を書面で行うことの可否から、その際のメリットとデメリット、具体的な書面の種類、注意点まで詳細に説明させていただきました。下記にはこちらの記事を簡潔にまとめたものを載せております。
- 結婚の約束を書面できるか
結婚の約束を書面にすることは可能ですが、婚姻を強制する内容は避けるべきです。「今年中に婚姻をする」といった協力の約束が適切です。 - メリットとデメリット
メリット:
婚約状態を明確にし、万一の婚約解消時に証拠として利用可能。
結婚準備の計画性が向上し、スムーズに進行。
将来のトラブルを未然に防ぐための取り決めができる。デメリット:
結婚が契約的に感じられる可能性がある。
法的拘束力に限界があり、強制的に結婚を履行させることは困難。
プライバシーのリスクが伴う可能性がある。 - 作成する書面の種類
婚前契約: 結婚前に家事、役割分担、財産分配などを取り決める契約。
夫婦財産契約: 主に財産に関する取り決めを行う契約。注意点:
実効性と内容の制限: 強制的な内容は避け、「婚姻を目的に交際していることの確認」などにとどめる。
書面の正確性: 明確かつ具体的な内容を記載し、署名や日付に不備がないようにする。 - サンプル(テンプレート)やよくある質問は前記トピックをご確認ください。
【参考】 >民法 – e-Gov法令検索 |
コメント