2022.03.29
相続に時効はあるの!?【知っておきたい時効と期限】
相続手続きには時効があることを理解していない人も多いかもしれません。しかし実際には、相続手続きには時効が存在します。そのため、相続を先延ばしにしていると、時効が原因で手続ができなくなり、取り返しのつかないことになる場合があります。
この記事では、相続の時効や時効以外の概念で期限が定められているものについて解説しています。是非最後までご覧ください。
相続後の時効により権利が主張できなくなること
1.遺留分侵害額請求権
遺留分侵害額請求権は、遺留分を主張する者が、相続の開始及び遺留分の侵害があった事実を知った時から1年間行使しなかった場合、又は相続開始から10年が経過したときに時効によって消滅します。
遺留分とは、亡くなった方が自己の財産を配偶者や子供又はこれら以外の者に相続や遺贈、生前贈与したことにより、特定の相続人が遺留分に相当する財産を受け取れなかった場合に、遺留分を侵害する者に対し、その侵害額に相当する金銭を請求することです。例えば、遺言書に「長男にすべての遺産を相続する」と記載がある場合、長男以外の相続人は、遺留分侵害額請求権を行使することで、最低限の相続分を長男に対し請求することができます。
民法第1048条(遺留分侵害額請求権の期間の制限) 遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から10年を経過したときも、同様とする。 |
遺留分がある人
遺留分は、民法により主張できる者が定められています。遺留分を主張できる者は以下に該当する相続人となります。兄弟姉妹は遺留分を有しません。
- 配偶者
- 子(代襲相続人も含む)
- 直系尊属(被相続人の父母、祖父母)
2.相続回復請求権
相続回復請求権には「時効」がありますので、ご注意ください。相続回復請求権は具体的には、相続人が相続権を侵害されたことを知った時から5年間行使しなかった場合、又は相続開始から20年が経過したときに時効によって消滅します。しかし例外もあり、例えば共同相続人が悪意をもって特定の相続人の相続権を侵害した場合には、相続を知ってから5年が過ぎていても相続回復請求権を行使して遺産を取り戻せる可能性があります。
民法第884条(相続回復請求権) 相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から20年を経過したときも、同様とする。 |
相続で時効以外に手続の期限が定められていること
1.相続放棄の手続
相続放棄は、相続の開始(被相続人が亡くなった日)から3ヶ月以内に行わなければいけません。相続放棄とは、相続人が亡くなった方の財産を放棄する手続のことです。通常、相続では亡くなった方のプラスの財産(預金や不動産等)とマイナスの財産(負債)の両方を承継することとなりますが、相続放棄をすれば、相続人がこれらの財産を承継することはありません。
相続放棄の手続は、亡くなった日から3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があり、この期間を過ぎてしまうと亡くなった方の財産を受け継ぐ(単純承認)ことになりますので、亡くなった方に多額の債務があり相続放棄を考えている方はすぐに専門家に相談しましょう。期間を過ぎると、相続放棄が承認されることが難しくなります。
相続放棄の具体的な手続
1.亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に相続放棄の申述を行います。
2.亡くなった方の配偶者が相続放棄で必要となる一般的な書類は以下です。
⑴相続放棄の申述書
⑵亡くなった方の住民票除票又は戸籍附票
⑶申述人(放棄する方)の戸籍謄本
⑷亡くなった方の死亡の記載のある戸籍謄本
2.限定承認の手続
限定承認は、相続の開始(被相続人が亡くなった日)から3ヶ月以内に行わなければいけません。限定承認とは、故人のプラスの相続財産の範囲内で借金や債務等のマイナスのを弁済し、余りのプラスの財産があれば相続する手続です。(マイナスの財産がプラスの財産価格を上回る場合には相続人が承継する財産は「0円」となります。)
限定承認を行うには、相続人全員が家庭裁判所で申述する手続をしなければいけません。そのため、単純承認や相続放棄のように、相続人が個別で亡くなった方の財産を承継するかを決めることはできません。
限定承認は、単純承認をした場合と「違わないのでは?」とお思いの方もいらっしゃるかと思いますが、限定承認は以下のような特定のケースで利用されることがあります。
- 債務の現状が把握できていない場合
- 亡くなった方の事業を引き継ぎたいけれど債務が大きい場合
- 不動産や親の形見等どうしても相続したい財産がある場合
上記のようなケースで、限定承認を利用することで、亡くなった方に想定以上の債務があること相続後に分かった場合にその財産を承継する義務がなくなりますので安心です。
限定承認の具体的な手続
1.亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に相続人全員が共同して限定承認の申述を行います。
2.亡くなった方の配偶者と子供が相続放棄で必要となる一般的な書類は以下です。
⑴限定承認の申述書
⑵亡くなった方の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本(又は除籍、原戸籍)
⑶亡くなった方の住民票除票又は戸籍附票
⑷相続人全員の戸籍謄本
⑸亡くなった方の子(及びその代襲者)で死亡している方いる場合、その子(及びその代襲者)の出 生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
相続に関するご相談は当事務所にお任せください
当事務所は相続を専門に取り扱った事務所です。ご自分で相続手続を行うことに不安を感じている方は是非、相談ください。初回の電話による相談は無料でございます。