夫婦いずれかの浮気により誓約書を作成することとなった場合には、相手に一方的に誓約させたいのか、夫婦でその他の約束を含めて約束するのかで作成する書類が異なります。一般的に、相手に一方的に誓約をさせる文書は誓約書に当たりますが、夫婦で約束事を決めて契約する文書は合意書等となります。
こちらの記事では、上記の内でも夫婦一方に対して守らせる誓約書の内容や目的、法的な有効性等詳しく述べさせていただきました。
浮気誓約書の内容と目的
浮気誓約書は、夫婦関係の場合には「浮気をしたことを認める内容、浮気相手の特定、今後の浮気の防止」等の内容を定めます。浮気誓約書を作成しておくことで、今後の浮気を防止することができますし、今回の浮気の重大性について有責配偶者(浮気をした者)に対して理解させることができるでしょう。
また、浮気誓約書を作成することで、今回の浮気を許したと誤解されることがあります。しかし、誓約書には、今回の浮気による損害賠償請求を次回の浮気まで猶予する条項を盛り込むこともできます。このように記載しておけば、次に浮気があった場合、損害賠償の請求や離婚に向けた合意がスムーズに進む可能性があります。また、浮気をした相手が離婚や損害賠償を拒否した場合でも、前回の浮気誓約書と2回目の浮気の証拠を持って調停や裁判を有利に進めることができるでしょう。ただし、損害賠償請求の猶予条項は誓約書ではなく、合意書に記載されることが一般的です。
下記では、浮気誓約書や合意書に記載する条項の表現例を記載いたしました。
(誓約書の記載) ⑴浮気を認める内容・浮気相手の特定 誓約者は、○○に対して、○○との間で民法に規定される不貞行為を行ったことを認める。 ⑵今後の浮気の防止 誓約者は、速やかに、携帯電話から○○(マッチングアプリ名)を削除する。 |
(合意書の記載) 慰謝料請求権の猶予 甲は、乙に対し、本件不貞に基づく慰謝料請求権を本契約を遵守する間は猶予する。 |
浮気誓約書や合意書の法的な有効性
浮気誓約書や合意書を作成する際に、作成による法的な有効性が気になるところかと思います。これらの書面を作成し、誓約者や当事者と合意することで当然に相手方は契約内容に拘束されます。しかし、これらの書面は私文書と言われる私人が作成する文書ですので、公正証書の作成による強制執行や裁判所の確定判決等による強制執行と異なり、約束の内容を相手に強制することができません。そのため、これらの書面を作成しても約束が破られる可能性も当然にあります。このような場合には、調停、訴訟などの裁判手続きを利用する必要があるでしょう。浮気誓約書は、このようなケースで過去に浮気をしたことを立証する証拠となります。
夫婦間の契約による取消
婚姻中に夫婦でした契約は、民法第754条の取消権が規定されています。その理由は夫婦関係ではお互いが感情に左右され自由な意思で契約することが難しく、又夫婦間の契約を強制することは家庭内の調和が乱れる恐れがあるからです。
夫婦間の取消権の例外
夫婦間の契約は取消ができることは上述のとおりですが、契約後に取消できない例外もあります。
第三者の権利を侵害する場合
夫婦間で物品の贈与をした後に、贈与を受けた側が友人に対し、その物品を売却した場合ようなケースでは、夫婦の従前の贈与の契約を取り消してしまったら、物品を購入した友人に損害がでてしまいます。このようなケースでは、夫婦間でした契約であっても取り消すことができません。 この規定は、民法754条の「ただし、第三者の権利を害することはできない。」の部分により読み解くことができます。
夫婦関係が破綻している場合
夫婦間で取り決めた契約は、通常、良好な関係のうちに解決されるべきであり、破綻関係にある夫婦はむしろ他人同士の契約と同等と考えられますので、夫婦関係が破綻している状態での取消は認められていません。夫婦関係が破綻していると言えるためには、夫婦での婚姻継続意思の欠如や、関係の修復が難しい状態のことをいいます。裁判により、夫婦関係が破綻していることを立証するためには別居の証拠等を用いる必要があります。
第754条(夫婦間の契約の取消権) 夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。 |
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浮気誓約書の作成手順
1.証拠集め
まずは、浮気をした事実を相手に認めさせるように証拠を集めておきましょう。
2.話し合い
原則として、話し合いは2人だけで行うことが推奨されますが、2人での話し合いが困難な場合は、自分の両親に仲介してもらうなどの対策を検討しましょう。
3.誓約書(仮)の作成
話し合いの際には、仮の誓約書を作っておき、署名もらっておきましょう。その際に、後に正式な誓約書として作成することを伝えておくと、2回目の相手による署名がスムーズです。
4.誓約書の作成
上記3で作成した誓約書に細かい内容を加えて正式な誓約書を作成します。その書面に相手に署名をもらい手続は以上です。
こちらでは、誓約書の作成手順について記載させていただきましたが下記では、こういった話し合いをどのようにすると円滑に進めることができるのかについて述べさせていただきます。
夫婦間で浮気後の話し合いを円滑にするには
話し合いの時間を確保する
夫婦の関係を損なうおそれのある話し合いを行うためには、適切な環境を整えることが重要です。例えば、子供がいる場合は、子供が就寝した後に話し合いをするように計画する必要があります。夫婦の離婚問題は子供にとっても重大な問題ですので、子供の感情や状況に十分に配慮することが不可欠です。
冷静な対応を心がける
相手との対話で威圧的な態度をとると、相手は心を閉ざしたり、開き直ったりする可能性があります。相手がこうした反応を示すと、こちらが本来聞きたいことを引き出すのが難しくなります。そのため、対話の際には常に冷静な態度を保ち、建設的な方向で進めるように心がけてください。
第三者を利用する
夫婦間の話し合いは基本的に2人で行うことが推奨されますが、難しい場合には第三者を巻き込むことも考慮できます。通常、夫婦の問題に直接関与しない第三者を介入させることは、問題を複雑化させる可能性もあります。しかし、夫婦間の話し合いが互いの性格や事情により困難な場合には、第三者の介入が良い影響を及ぼすこともあります。
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浮気誓約書を破った場合には
夫婦の間で作成した浮気誓約書が、誓約者によって守られなかった場合、つまり違反した場合にはどのような措置を検討することができるでしょうか。考えられる方法としては、①離婚を提案する、②慰謝料を支払ってもらう等があります。前記①のケースでは、事前の浮気誓約書で「今後浮気をした場合には、協議離婚に真摯に応じること」を誓約していた場合には、相手によってスムーズに協議離婚に応じてもらえる場合があります。もし、これによる協議離婚に応じない場合には調停や裁判による離婚を検討されることになり、これらの調停等の手続で、事前に作成していた浮気誓約書が証拠として離婚が認められる可能性が高くなります。
前記②のケースでは、相手が2回目の浮気をしても、生活環境などの事情を考慮して婚姻関係を続ける選択もできます。このような場合には、事前の浮気誓約書に慰謝料請求権の猶予を記載しておくことで、それを違反したことに基づく慰謝料請求をすることができます。この慰謝料請求についても認められない場合には上記同様に調停や裁判の手続を利用することとなります。
夫婦関係を改善させるための努力
浮気誓約書の作成目的は、今後の夫婦関係の改善も当然に含まれます。作成後に夫婦関係を改善するには以下のような方法が考えられます。
1.コミュニケーションを深める
浮気後に夫婦で以前のように話し合うことは難しいかもしれません。まずは、日常のお互いの気持ちや考えを簡単に共有し合うことから始めてみるとよいでしょう。相手の感情や意見に対して理解を示し、共感することで信頼関係の回復が期待できます。
2.感謝の気持ちを示す
婚姻生活が長くなると、互いに対する感謝の気持ちを伝える回数が減ってくることは、よくあることです。出会ったころのように、日々の些細なことにも感謝の言葉を述べることで、相手の尊重や支持を示すことができます。
3.一緒の時間を過ごす
長時間一緒に過ごすことで、かつての恋人同士の感情が復活し、お互いの愛情が再び芽生えるかもしれません。
これらの方法を実践することで、夫婦関係を改善し、より良いパートナーシップを築くことができると考えられます。
夫婦間の浮気誓約書の作成はお任せください
当事務所では、民事法務を専門としており、これまでに夫婦間の誓約書、契約書、合意書、示談書の作成を多数サポートしてきました。夫婦間の契約には取消権の規定が関わる場合があり、適切な表現の選定は重要です。このような依頼では、行政書士など書類作成の専門家に相談することで、安心して文書を作成することができます。行政書士が作成する文書は公証人が作成する公正証書とは異なり、内容の記載範囲が広いため、夫婦間の合意を確認する手段として非常に有効です。
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