法律上の婚姻手続をしていなけれど、夫婦として同等の生活をしている男女は内縁関係といいます。内縁関係の夫婦と法律上の夫婦とでは、法律上で保護を受ける対象が異なります。しかし、内縁関係の夫婦であっても法律上の夫婦と同等の権利を受けることができる場合もあります。代表的なものとして、財産分与が挙げられます。
また、内縁関係の夫婦であっても相手方による正当な理由がなく、内縁関係の解消がされた場合には、他方に対する慰謝料の支払い義務が生じます。
こちらの記事では、内縁関係にある夫婦が、不当な理由により解消された場合にどのような対応ができるのかについて記載させていただきました。
内縁関係と言えるには
内縁関係は法律の手続によらない、夫婦のことです。内縁関係と判断されるためには、双方が「婚姻意思をもち」かつ「同居している」ことが実体として必要です。また、第三者に対して内縁関係であることを証明するには住民票の続柄を「妻(未届)」に届出をしておくことで客観的に内縁関係を証明できる可能性が高いと言えるでしょう。
一方、ただ同棲をしている男女(婚姻意思がない)の場合には内縁関係にあるとは言えませんので、内縁解消による権利の主張(例 慰謝料や財産分与の請求等)はできません。
第三者に内縁関係を証明するには
内縁関係を客観的に証明するためにも、最低でも以下のいずれか一つに該当することが望ましいでしょう。
- 賃貸借契約書の同居人の欄に「妻(未届)」の記載がある
- 住民票の続柄に「妻(未届)」の記載がある
- 周囲の方から夫婦としての認識がされている 等
内縁関係の不当な解消をされたら
損害賠償や慰謝料の請求
相手により内縁関係の不当な破棄をされたら、民法上の不法行為となり、相手に対して損害賠償の請求をすることができます。また、内縁関係の解消の原因が、相手による肉体関係を伴う浮気である場合には、相手方や浮気相手に対し、慰謝料を請求することが可能です。
浮気相手に対し、慰謝料を請求する場合には、浮気相手が貴方に内縁関係の配偶者がいることを知っていたこと前提となります。慰謝料の金額は、精神的な苦痛や夫婦の状況を総合的に考慮し算定されます。
養育費の請求もできます
内縁関係の夫婦に子供がいる場合には、養育費の支払いについても定める必要があるでしょう。養育費は子供の監護や教育のために必要な費用であり、具体的には生活費、医療費、学費など幅広い費用が該当します。内縁関係の間でできた子供であっても、その父親は当然に子供を養育する義務があります。しかし、内縁関係の場合、夫が子供を認知をしなければ、法的に父子に親子関係があると認められませんので、認知の手続は必ずしておきましょう。
養育費の金額については、夫婦の合意によって毎月(「3か月」や「毎年」にまとめて支払うこともできます。)いくら支払うのかを決めておき、さらに、支払期日や方法も定めておく方がよいでしょう。養育費の合意ができない場合には、家庭裁判所が公表する「養育費・婚姻費用算定表」に基づき計算することも可能です。実際にこの方法により養育費の合意がされることが多いです。
養育費・婚姻費用算定表による決定方法
養育費や婚姻費用は、家庭裁判所によって基準となる金額が公表されています。例えば、上記の表に基づいて算定してみると、収入が多い方の年収(給与)が400万円で、少ない方の年収(給与)が25万円である場合には、子供一人の養育費の金額が「4~6万円」と算定することができます。
内縁関係の解消によるケース別の対応方法
内縁関係の解消の際に、同居しているのかや、別居しているのかどうかによって実施する手続が対応が異なります。以下ではそれぞれのケースに応じた対応を記載しております。
ケース1 相手が家を出ている場合
内縁関係の解消で、既に相手が家を出て行っている場合には、まずは相手に対し、不当な理由による内縁関係を解消したことに対する損害賠償や慰謝料請求をする意思があることを文書によって伝える必要があるでしょう。これらの請求を口頭でも伝えることができますが、後に請求したことを証明するためにも文書で行うことが望ましいです。また、文書で請求する際には、内容証明郵便によって行いましょう。内容証明郵便によって損害賠償や慰謝料を請求することで、文書の内容や送った日付を郵便局によって証明することができます。さらに、内容証明郵便は相手に対して書留で送られるので普通郵便よりも確実に意思表示ができるでしょう。
内容証明郵便:郵便局によって提供される「送った文書の内容、日付」を証明できる郵便のことです。内容証明郵便は、重要な権利義務の意思表示をするために、後で第三者に送ったことを証明するために用いられます。内容証明郵便は、任意で配達証明を付けることができ、通常は配達証明付きで送られます。 |
ケース2相手が家にいる場合
内縁関係の解消で、未だに相手と同居している場合には、直接、相手に対し内縁解消による損害賠償や慰謝料(不貞等がある場合)を請求することもできます。相手が既に家を出て行った場合に、相手の居場所が分からなければ、内容証明郵便を送るために相手の住所調査をするところから始めなければならないので、その場合は手続が面倒です。そのため、相手から内縁関係の解消をしたい旨を同居時に伝えられたのであれば、相手が家を出て行く前に損害や慰謝料などによる支払を合意しておくとよいでしょう。合意できた内容については、契約書に残しておきましょう。
同居期間中でも内容証明郵便を利用して相手に請求の意思があることを伝えることができますが、同居している場合には内容証明郵便を差出人本人が受け取ることができますので、効果は現住所が別々の場合と比べて劣ります。
内縁関係の解消は財産分与ができます
離婚に、婚姻中に夫婦で形成した財産を原則2分の1で分けることを財産分与といいます。財産分与は、法律婚の夫婦に認められることが民法によって定められていますが、内縁関係の夫婦についてもこれが適用されます。そのため、内縁関係の解消時に夫婦の財産を互いに開示して共有となる部分について、財産の帰属を決める必要があります。
財産分与の対象となる財産
財産分与の対象となる財産は、婚姻中に夫婦で形成した互いの収入などです。次のような財産は、財産分与の対象となりませんので、確認しておきましょう。
- 結婚前から持っていた現金、預貯金
- 贈与によって得た現金、預貯金、動産等
- 相続によって得た現金、預貯金、不動産等
上記のような財産を「特有財産」といい、これらは財産分与の対象となりません。ただし、これらの財産が特有財産であることの立証は必要ですので、これらを証明する書面がなければいけません。
内縁関係の解消による契約は公正証書にできる?
内縁関係の解消による慰謝料の契約をした場合には、当該契約を公正証書によってすることができます。公正証書で契約することで、内縁解消による慰謝料や財産分与による給付を安全に受け取ることができるでしょう。公正証書を作成する際には、公証人に対し内縁関係の証明や内縁関係の解消の合意についてを適切に伝えなければなりません。
公正証書の作成は、作成しようと思い立って2,3日で作成できるのではありません。公証役場によっては予約なしで当日に作成できる場合もあるようですが、ほとんどのケースでは事前予約が必要となります。また、公正証書を作成するには、必要書類を公証人に対し、提出又は提示する必要があります。これらを考慮しても概ね1か月はかかるでしょう。
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公正証書作成の流れ
1.公正証書の作成合意
公正証書にするには、通常、金銭的な支払債務の記載がされています。そのため、公正証書の作成を合意する際には、内縁関係の解消によって定めるべき「慰謝料、財産分与、養育費」等の金銭的な債務を、具体的にどのように支払うのかまで合意しておく必要があります。
2.公正証書の記載内容の検討
公正証書の作成合意ができれば、記載する内容を契約書の書式に当てはめます。これによって作成した契約書の案文を公証人に提出しますので、契約書の書式には必ず夫婦の合意がある内容のみを記載します。
3.必要書類の準備
公正証書を作成するために必要な書類を準備します。運転免許証やマイナンバーカード(印鑑登録証明書等)は作成時に必ず必要となりますが、夫婦の続柄の記載がある住民票も併せて取得しておくと公証人にも内縁関係であることが認めてもらいやすいでしょう。また、財産分与により不動産がある場合には「登記簿謄本、固定資産評価額証明書(通知書)」も必要となります。
4.公証役場の予約
公証役場に公正証書を作成したい旨の連絡をします。連絡は前記1~3の前にしておく方法もありますが、私は全ての書類を準備してから連絡をするようにしております。
5.公正証書原稿の確認
その後、公証人から公正証書の原稿が届きますので、記載表現や内容を確認します。原稿の確認も必ず夫婦でするようにしましょう。提出した案文と公証人の原稿の表現が一部異なる場合があり、確認しなければ、公正証書の作成当日に相手方により「こんな内容は聞いていない」と主張され、公正証書の修正や変更に時間がかかってしまう場合があります。
6.公正証書の作成
公正証書を予約していた日に作成します。作成時には運転免許証等の本人確認書類や認印が必要となります。
内縁関係の解消による通知や書面の作成は
内縁関係の解消により受けた損害を相手に請求するには、まずは相手に対し損害賠償や慰謝料を請求する旨を伝えなければいけません。この通知を内容証明郵便によってすることで相手に対し、通常郵便より確実に意思表示をすることができます。内容証明郵便の郵送後に相手から損害賠償等の支払いの合意ができたら契約書や公正証書として作成しておくと安全です。これらの書面を作成しておくことで安心して相手による支払を受けることができるでしょう。
ご依頼後の流れ
内縁関係の不当な解消による内容証明や契約書又は公正証書の作成をご希望でしたら、次の流れによりご申込いただけます。
1.ご連絡
まずは、次のお問い合わせフォーム、メール又はお電話等でお申込みください。お申込みの時点では、内容証明や契約書又は公正証書を作成するために必要な「事件の概要や経緯、希望」等をお伺いさせていただきます。行政書士は、依頼を受けた業務や内容について守秘義務が課されていますので、安心してご相談いただくことができます。
お問い合わせフォーム→こちら Mail:info@okura-lawjimusho.com Tel:050-3173-4720 |
2.お見積書とご契約
前記1によりお伺いした内容を元に、お見積書と契約書を作成させていただきます。内容にご了承いただけた場合には、契約とお振込みをいただきます。お振込みは、契約後5日以内の事前払いとさせていただいておりますので、ご了承ください。
3.内容証明や契約書案の作成
当事務所によって、内容証明や契約書の案文を作成し、チャットやメールによってお送りさせていただきます。内容を、ご確認いただきながら、内容や表現の変更や修正を重ねて作成いたします。なお、変更や修正においては、追加費用をいただいておりませんので、最後まで安心してサポートをご利用いただけます。
お問い合わせ
料金
業務内容 | 料金 | 概要 |
内縁関係の解消による慰謝料等支払契約書 | 35,000円 | 内縁関係の解消による慰謝料や損害金、養育費、財産分与等を記載した契約書を作成させていたdかいます。 |
内縁関係の解消による内容証明郵便の作成と差出 | 30,000円 | 内縁関係の解消による慰謝料や養育費、財産分与等の請求に関する内容証明の作成と差出をサポートさせていただきます。 |
離婚協議書 | 30,000円 | 離婚に伴う契約書を作成させていただきます。 |
公正証書のサポート | 30,000円~ | 上記の契約について公正証書として作成する場合にはこちらの料金が加算されます。なお、上記全ての契約で公正証書の作成が可能なわけではありませんので、ご了承ください。 |
お客様の声
当事務所は大阪市鶴見区にある事務所ですが、内縁解消による慰謝料支払の契約書や和解書、内容証明郵便等の作成サポートは、大阪市を中心に大阪府、京都府、兵庫県、奈良県のほか、全国の都道府県でもご利用いただいております。ご依頼をお考えでしたら、いつでもお気軽にお申し付けください。
以下は、全国からご利用いただいたお客様のご感想です。評価は現在100件以上いただいており「☆4.9」を継続しております。
作成のイメージ
1.契約書
通常は7ページから9ページの契約書や合意書を作成させていただいております。これら以外にも、離婚協議書や離婚公正証書についても同様にサポートさせていただけます。
2.内容証明
内容証明は電子内容証明による方法で2ページ程度をお送りさせていただいております。
まとめー内縁関係を不当に解消されたら
最後までご覧いただきありがとうございました。こちらの記事では、不当な内縁解消をされた後の慰謝料や損害の請求や、これらの契約を記載した公正証書の作成について解説させていただきました。
1.内縁関係と言えるには
⑴第三者に内縁関係を証明するには
2.内縁関係の不当な解消をされたら
⑴損害賠償や慰謝料の請求
⑵養育費の請求もできます
ⅰ養育費・婚姻費用算定表による決定方法
3.内縁関係の解消によるケース別の対応方法
⑴ケース1 相手が家を出ている場合
⑵ケース2相手が家にいる場合
4.内縁関係の解消は財産分与ができます
⑴財産分与の対象となる財産
5.内縁関係の解消による契約は公正証書にできる?
⑴公正証書作成の流れ
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