「事実婚の場合には、契約書を残しておいた方がいいと聞きましたが本当ですか?」といったご質問をたまに受けます。結論として、事実婚の場合には契約書を作成しておくべきでしょう。その理由については本文中に述べさせていただきます。
こちらの記事では、事実婚の法律の位置づけや、事実婚において考えられること、なぜ事実婚は契約書を作成しておいた方がよいのかなどについて解説させていただきます。
事実婚とはなにか
事実婚とは、事実上婚姻している状態にある男女のことをいいます。事実婚の対置される概念として「法律婚」があります。法律婚は婚姻の届出をしているので、法律上の夫婦として認められますが、事実婚は婚姻の届出をしていないので、生活の実態として夫婦と認められていますが法律上の夫婦としては認められません。事実婚は「内縁関係(内縁婚)」などとも呼ばれます。
事実婚の実態
近年、事実婚を選択する夫婦がメディアでも紹介されています。事実婚に関するデータは少なく、実態の調査は難しいですが、令和3年に内閣府が調査したデータを見ると事実婚を選択している人数は全体人口の2~3%と言われています。調査の詳細は、調査回答者のうち、「配偶者がいる」と回答した人は2,3%であり、その内「事実婚」と回答した人は2,9%であったとされています。事実婚は全体を見ると少ないと感じられると思いますが、事実婚を選択する大きな要因は夫婦の名字・姓の問題があることが指摘されています。
事実婚契約書で主に定めること
医療行為や介護等の同意について定めることができる
法律婚で当然に認められる行為であっても、事実婚の場合には、認めるかどうかの判断が分かれるケースがあります。その一つに、医療行為の同意があります。医療行為の同意については、通常配偶者であれば認められる権利ですが、事実婚の場合には医療行為の同意やそれに付随する内容(医師による医療行為の説明、カルテの開示など)を互いに委任する契約を定めておいた方が良いでしょう。この条項を記載することによる委任の有効性を認めるかどうかの判断は不明ですが、病院が委任を有効と判断する場合に、このような契約書や公正証書が有効な判断の材料となることは確かでしょう。
互いの財産の帰属を決めることができる
事実婚のカップルは、法律婚のカップルと同様の法的扱いを受けることができません。そのため、法律婚の配偶者には認められる「相続権」や「税金の免除」等が認められず、一方が死亡した場合に、相手の財産の相続をすることができなくなります。このような場合には、遺言書を作成するなどの対策が考えられますが、遺言の場合は、遺言者が自由に撤回することができますので、確実にその方の財産を取得できるかは分かりません。この対策として、事実婚契約書に死因贈与に関する条項を記載しておくことで、上記遺言よりも安心していずれかが先に死亡した場合の財産の帰属を決めておくことができると考えられます。ただし、死因贈与についても撤回が認められるケースがありますので、その点の理解が必要です。
★遺言と死因贈与の違い 遺言は遺言者の単独行為ですので、遺言書作成後も自由に撤回することが出来ます。しかし、死因贈与は当事者間での契約ですので、自由な撤回を認めないとする説もあります。 |
事実婚契約書で記載されるその他の内容
事実婚契約書には、上述した医療行為の同意や財産の帰属以外にも下記のような内容を定めることが一般的です。事実婚契約書の作成を検討されている方の多くは、法律婚による夫婦間の法律関係の条項をできる限り盛り込みたいという要望があります。
- 婚姻意思の合意
- 合意による解除
- 同居や協力義務
- 相互扶助の義務
- 夫婦間の財産について
- 子供の認知や氏について
- 日常家事の代理権
上記の内容は、法律婚の場合は、夫婦間で契約しなくとも自動的にそのような取り扱いになります。(夫婦財産関係は例外があります。)しかし、事実婚の場合にはそれが認められないことが通常です。そのため、最低でもここまでで説明した条項については記載しておくべきでしょう。
また、これらの内容について公正証書として作成しておくことで、私文書よりも高い証拠力を有する契約とすることができます。契約を公正証書によってされることをお考えでしたら、下記の関連記事よりご覧ください。
【関連記事】 >事実婚契約を公正証書ですることを検討されている方はこちらをクリック |
事実婚でも被扶養者になれるか?
内縁関係であっても、被扶養者としての認定は可能とされています。しかし、収入要件や同居等の証明が必要となりますので、世帯全員の住民票や被扶養者異動届等の書類の提出が必要です。
なお、実体として内縁関係であっても住民票の上の続柄が「同居人」であると、扶養認定を受けることができず、「夫又は妻(未届)」のように記載されている必要があります。
被扶養者となるメリットは
内縁関係で被扶養者となるメリットは次のことが挙げられます。詳細は後述しております。
- 健康保険料の免除
- 第三号被保険者(※1)の扱いとなる
- 事実婚の証明ができる
※1)第三号被保険者とは、第二号被保険者(国民年金の加入者であり、厚生年金に加入している者)に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者のことをいいます。保険料は、第二号被保険者全体で負担しますので、個別に納める必要はありません。
健康保険料の免除
内縁関係であっても、扶養により保険料の免除を受けることができます。
第三号被保険者の扱いとなる
第三号被保険者となることで、保険者が保険料を負担しますので国民年金の保険料の支払が不要となります。
事実婚の証明ができる
事実婚の証明方法は、公正証書や住民票など様々考えられますが、被扶養者であることの証明によっても同様に可能です。
事実婚契約書を作成する4つのメリット
事実婚契約書を作成することによる効果を既にいくつかあげさせていただきましたが、作成することによりどのようなメリットが得られるのかを、まとめさせていただきます。
- 法律婚と同等の夫婦間の法律関係に近づけることができる
- 互いの財産の帰属を契約しておくことができる
- 夫婦では契約しない内容も決めることができるので、事前に起こりうる問題を想定しておくことで、問題が起きたらスムーズに解決することができる
- 公正証書によっても作成することができる
下記に詳細を説明します。
法律婚と同等の夫婦関係に近づけることができる
事実婚契約書を作成する一番の目的は、法律婚の夫婦間の法律関係と近づけることではないでしょうか。事実婚契約書を作成することで、事実婚の状態ではあるものの、法律婚の状態に近い夫婦間の法律関係を実現することができます。
互いの財産の帰属を契約しておくことができる
事実婚では、民法上の法定相続人に該当しませんので、相続権が発生しません。そのため、相手の財産を取得するには、遺言する又は契約を締結するなどして、死後の財産の帰属を決めておく必要があります。(これをしなければ、亡くなった方の子供や親に財産が相続されてしまいます。)事実婚契約書では、例えば死因贈与を条項に加えることができますので、亡くなった方の財産を包括的に又は特定的に取得することができるでしょう。
問題解決がスムーズ
事実婚契約書に記載する内容は、婚姻中の問題の対処を目的とする内容が多いです。そのため、契約後に想定していたことが起こった時に、契約条項に沿ってスムーズに問題に対応することができると言えます。また、事実婚は夫婦間の取消権が原則認められない点でもメリットと言えるでしょう。(法律婚の場合は夫婦間の契約について取消権の規定が民法で定められています。)
公正証書によっても作成することができる
事実婚契約の場合、公正証書として作成することができます。夫婦間の契約の場合には、夫婦間の取消権が理由で公証役場によっては作成を断られることがありますが、事実婚契約の場合には、そのように断られることはほとんどないでしょう。
事実婚契約書の作成依頼は/専門の行政書士にお任せください
当事務所は、夫婦関係の契約書や浮気、不倫の防止に関する誓約書又は合意書を作成することを専門に取り扱っている行政書士事務所でございます。これまでに、夫婦間の契約について数多くご相談を受け、契約書を作成してきた経験があります。現在、事実婚の状態であり、こちらの記事をご覧いただき、事実婚契約書の作成を検討いただけた方は、まずは当事務所の無料相談をご利用ください。無料相談は、電話で約30分を予定しております。
料金
料金表は→こちら
お問い合わせ
当事務所の依頼後の流れ
1.お問い合わせ
電話や問い合わせフォームより、事実婚契約書を作成されたい旨をお伝えください。
2.御見積とご契約
その後、お伺いした内容で御見積書と契約書を作成させていただきます。料金にご承諾をいただけましたら、電磁的な方法による契約をしていただきます。
3.お支払い
当事務所のサービスは事前払い制とさせていただいております。契約後5日以内に金額をお支払いください。
4.事実婚契約書の案文作成
上記3によりお振込みいただいた日から約1週間で契約書の案文を作成させていただきます。案文作成後は内容をPDFによってご確認いただき、変更や修正があればその都度対応させていただきます。
5.事実婚契約書の製本と郵送
製本と郵送をご希望いただきましたら、これらの手続も対応させていただきます。
事実婚の契約についてよくある質問
Q1.依頼した場合の大体の費用はいくらでしょうか。
作成内容によっても若干異なりますが、概ね30,000円から40,000円で作成させていただけるかと思います。
Q2.事実婚契約書の依頼から作成までの期間を教えてください。
金額をお支払いいただいた後、1週間前後で作成させていただきます。そのため、最初の相談からですとトータルで2週間ほどです。
Q3.事実婚契約書は公正証書にできますか。
通常は、作成可能ですが公証人の判断にもよりけりです。
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