2022.09.19
遺産相続いつもらえる?相続発生から受け取りまでの流れを全てチェック
本記事では、遺産相続について各財産の相続手続から受け取りまでの平均的な日数を記載しております。
相続財産はいつもらえるの?なぜ期間に差があるの
相続が発生すると、大体相続人に財産が承継されるまでに概ね3か月から半年程度かかります。なぜこれほどの差があるのでしょうか?理由としては4つ挙げられます。
1.遺産分割協議書と遺言書で手続が異なる
相続が発生するとまず初めに、その人が遺言書を残しているかどうかを調べなければいけません。相続で遺言書がある場合には、原則、遺言内容に沿って相続がなされ、遺言書が無い場合には相続人同士で遺産分割協議を行って財産の承継を決めます。
つまり遺言書がある場合と無い場合では、そもそも相続の手続が異なるのです。そのため、遺言書がある場合と無い場合では、手続にかかる時間が異なりますし、遺言書がある場合の方が比較的に手続がスムーズに進みます。ただし、遺言書がある場合でも、その遺言書が自筆証書遺言である場合には、家庭裁判所に対し、遺言書の検認手続をしなくてはいけません。検認手続には、概ね1か月程度時間を要しますので、公正証書遺言や法務局の保管制度を利用した遺言と比べ、相続手続きが遅れることが予想されます。
検認手続とはなにか
「検認」とは、相続人に遺言書の存在や内容を知らせるとともに、遺言書の「形状・訂正・日付・署名」等の情報を検認日に確認することにより、後の偽造や変造を防止する手続のことです。遺言書の検認手続は遺言者の死後、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。
検認の要否
- 自筆証書遺言書の場合→必要
- 自筆証書遺言書の法務局保管制度を利用の場合→不要
- 公正証書遺言書場合→不要
相続の発生後に、遺言者が遺言書を残しているかどうかの調査は相続手続きの中でも重要です。その理由は、遺言書の調査を厳かにして、財産の名義変更等の手続がすべて完了した後に遺言書が発見されると遺産分割協議の内容よりも遺言書の内容が優先されてしまうからです。そのため、このような場合には、相続人は、共同相続人に対し、遺言書が見つかったことを周知し遺言書のとおり再度相続するかどうかを話し合う必要があります。ただし、遺言書によって財産を承継する相続人(遺贈者を含む)全員が、既に終わった分割内容に同意すれば遺産分割のやり直さなくてもよいとされています。
上記の理由から、遺産分割協議により相続の手続が全て終わった後に遺言書が発見されると、再度、相続人間で話し合う必要が生じますので、相続の発生後に、亡くなった方が遺言書を残しているかどうかを調べることは重要です。
2.戸籍の収集に時間がかかる
相続によって行う預貯金や不動産などの財産の承継手続きには、一般的に被相続人の戸籍謄本や除籍謄本・改製原戸籍や相続人の戸籍謄本が必要となります。相続は何度も経験する事ではないので、戸籍が必要と言われてもどの戸籍を取得すればいいのかを判断するのは難しいです。そのため、相続発生後の戸籍の収集は大半の方が躓くポイントです。
戸籍の取得平均日数を比較
- 法律の知識があまりない方がされた場合→概ね2カ月~3か月もしくはそれ以上
- 行政書士等の専門家に依頼した場合→概ね3週間~1カ月
上記のように専門家に依頼した場合の、戸籍の平均取得日数は1カ月程です。専門家であっても、相続で必要な戸籍は、郵送請求を要するケースがほとんどですので、このくらいの日数はかかります。
専門家に依頼するメリット
- 必要な戸籍を把握している
- 郵送で取得する戸籍の取得や対応にも慣れている
- 平日に役所に出向く必要がない
- 郵送で戸籍を届けてくれる
- 相続関係図と言われる相続関係を表した図を作成してもらえる
遺言書の内容に沿って手続きを進める方法
遺言書に検認が必要か、そうでないかによって相続手続の開始するタイミングが違います。
自筆証書遺言書の場合は検認が必要です
自筆証書遺言書が見つかったときは、絶対にその場で開封してはいけません。必ず見つけたままの状態で家庭裁判所に持参し、家庭裁判所による検認手続を受けてから共同相続人間で遺言書の内容を確認しましょう。また、先ほど説明した通り、自筆証書遺言書保管制度を利用している場合には検認手続が必要ありません。
【関連ページ】 ›法務省HP 自筆証書遺言書保管制度
公正証書遺言書の場合には検認は不要です
公正証書遺言書は、公証役場の公証人が関与して、遺言書を公正証書の形で残すものです。したがって、公正証書遺言書である場合は、安全が確証されているため、検認の必要がありません。そのため、スムーズに相続の手続を開始することができます。
もし遺言執行者が定められていた場合
遺言書の内容を実現させるために、遺言者から財産の名義変更や払戻請求等の手続を行うことを指定された者を遺言執行者と言います。遺言書の中で遺言執行者が選任されている場合は、その遺言執行者が手続を進めることになります。そのため、遺言執行者でない相続人などが遺言書の内容を勝手に進めることはできません。万一、遺言執行者が迅速に遺言執行を行わない場合には、内容証明郵便等によって遺言執行者の就職諾否の請求をしましょう。
遺言執行者が定められていなかった場合には、家庭裁判所に遺言執行者の選任を申立てなければいけません。そのため、遺言書を作成する際には、遺言執行者を指定することがかなり重要です。
遺産分割協議書の内容に沿って手続きを進める方法
遺言書が見当たらない場合には、相続人は遺産分割協議書を作成して遺産分割の手続を行うこととなります。そのため、相続の手続のスピードも共同相続人が協力的だった場合とそうでない場合でかなり変わります。
遺産分割協議までにかかる期間
相続が発生してから、遺産分割協議を行うまでの予想日程は概ね1か月から3か月です。遺産分割協議を行うまでに戸籍の収集や、故人の財産の調査を行わなくてはいけません。そのため、相続の発生後から遺産分割協議を行うまで少し時間がかかります。また無事に、亡くなった方の相続人や財産の調査が終わり遺産分割協議までたどり着けても、遺産分割協議に時間がかかる場合があります。遺産分割協議は当然ながら相続人全員で行いますので、話し合いが上手くまとまれば、その分協議は早く終わりますが、相続人間で意見が食い違うことがあれば、協議も長引いてしまい、遺産分割調停や訴訟にまで発展する場合があります。
以上のことから、遺産分割協議によって遺産分割を行う場合は、共同相続人の協力の有無によって変わってくると言えるでしょう。
遺産分割協議は早めに行いましょう
遺言書が無いからと言って、遺産分割を行うことを後伸ばしにしていてはいけません。法律上では相続手続について以下のような期限が設けられています。
- 相続放棄(相続開始から3か月以内)
- 限定相続(相続開始から3か月以内)
- 相続税申告(相続開始から10か月以内)
- 準確定申告(相続開始から4か月以内)
これらの期間は、過ぎてしまうと亡くなった方の多額の負債を承継したり、相続税の延滞金の支払いを求められる場合があるので注意しましょう。
財産の内容によってもらえるタイミングが違います
相続財産をもらえるタイミングは、その財産の内容によっても違います。
預貯金の場合
相続は、その遺産の種類によって手続を行う機関や方法が違うため、亡くなった方の財産が自分の手元に来るまでの時期が異なります。例えば、預貯金の相続の場合は以下のような手続が必要なので、概ね2、3週間程時間がかかります。
1.金融機関に相続を連絡
金融機関に相続の旨を伝えると、亡くなった方が所有していた口座の凍結がなされます。口座凍結がなされると、相続人であっても遺産分割協議書等の書面がなければ払戻や名義変更ができません。ただし、民法の改正により、一定の手続を行うと150万円までの払戻しが可能となりました。
2.相続届等の書類の記入と提出
金融機関から郵送で相続届等が届くので必要事項に記入しその他必要書類(下記参照)と一緒に金融機関に提出します。
【主に必要な物】
- 戸籍謄本(被相続人の出生から死亡までのものと相続人全員のもの)
- 預金通帳・カード
- 遺産分割協議書
- 相続届
- 印鑑登録証明書
3.指定の口座に払戻しされる
通常であれば、提出後1週間から10日程度で指定した口座に支払われます。
各金融機関の相続手続
各金融機関の相続手続に関するページのURLです。
銀行名称 | ページ |
三井住友銀行 | こちら |
りそな銀行 | こちら |
三菱UFJ銀行 | こちら |
あおぞら銀行 | こちら |
みずほ銀行 | こちら |
関西みらい銀行 | こちら |
池田泉州銀行 | こちら |
京都銀行 | こちら |
南都銀行 | こちら |
自動車の場合
自動車の所有者が亡くなった場合には、名義変更や抹消登録等の手続を管轄の陸運局で行わなくてはいけませんので、概ね2、3週間程時間を要します。自動車の名義を亡くなった方から相続人に変更する場合、保管場所を管轄する警察署長の車庫証明書を取得する必要があります。以下では、自動車の車庫証明証の取得手続きと、その後の名義変更手続を解説しております。
1.車庫証明証の取得
亡くなった方の自動車の名義変更を行う場合、新たに車庫証明証を取得する必要があります。車庫証明証の発行は新所有者の車の保管場所を管轄している警察署で行います。車庫証明証の平均的な取得日数は約10日です。車庫証明を管轄の警察署に申請した後、車庫証明証が交付されるまで概ね7日程度かかりますので、余裕を持っておくことが大切です。
2.管轄陸運局で相続の手続
車庫証明証の取得後は、相続における名義変更に必要な書類を集め、管轄の陸運局に提出して名義変更を行います。提出する資料に不備が無ければ、新たな車検証が発行され手続は以上です。
【主に必要な物】
- 車検証
- 戸籍謄本(被相続人の出生から死亡までのものと相続人全員のもの)
- 遺産分割協議書
- 印鑑登録証明書(自動車を相続する者)
- 車庫証明証
- 移転登録申請書
- 自動車税・自動車取得税申告書
- 手数料納付書(登録印紙500円貼付)
不動産の場合
不動産の名義変更(登記)でも預貯金や自動車と同様に遺産分割協議書や戸籍謄本等の書類が必要となります。相続時の不動産登記では主に下記の書類が必要となります。
【主に必要なもの】
- 戸籍謄本(被相続人の出生から死亡までのものと相続人全員のもの)
- 住民票の除票(被相続人)
- 相続する者の住民票
- 遺産分割協議書(印鑑登録証明書付き)もしくは遺言書
- 固定資産税評価証明書
- 登記申請書
- 相続関係説明図
株式等の場合
株式の相続による名義変更にも遺産分割協議書や戸籍謄本等の書類が必要となります。相続時の株式の名義変更等の手続には主に下記の書類が必要となります。
【主に必要なもの】
- 証券会社からの通知書
- 戸籍謄本(被相続人の死亡が確認できるものと相続人)
- 遺産分割協議書(印鑑登録証明書付き)もしくは遺言書
- 相続関係説明図
まとめー遺産相続いつもらえる?
遺産を取得する時期は、相続する財産や遺言書の有無によって異なることがわかりました。相続の手続はややこしく、何度も経験することではありません。そのため、時間がかかってしまうことは仕方がないことです。しかし、このようなややこしい相続手続も計画を立てて実行すれば、比較的に早く終わらすことができます。
また、専門家に相談することで、不安も解消され、手続きも計画的に進むというメリットがあります。まずは、自分で手続をやってみるのも一つですし、最初から任せたいという方も大倉行政書士事務所でご対応いたしますので、まずはお気軽にご相談ください。