【2026年改正】遺言書の押印はいつから不要?自筆証書遺言の現在のルールを行政書士が解説 - 相続・遺言・離婚専門の大倉行政書士事務所

2026.09.27

【2026年改正】遺言書の押印はいつから不要?自筆証書遺言の現在のルールを行政書士が解説

【2026年改正】遺言書の押印はいつから不要?自筆証書遺言の現在のルールを行政書士が解説

「遺言書に印鑑はいらなくなったのですか」「2026年の法改正でもう押印せずに遺言書を書いてよいのでしょうか」といった疑問を持つ方が増えています。

2026年6月、遺言制度を見直す民法等の改正法が成立し、自筆証書遺言について押印を必須としない方向への改正が正式に決まりました。しかし、ここで特に注意しなければならないのが、法律が成立・公布されたことと、実際に新しいルールが施行されることは別だという点です。

2026年9月現在、自筆証書遺言を作成するときは、従来どおり遺言者本人が全文・日付・氏名を自書し、原則として押印する現在の民法上の方式に従う必要があります。「ニュースで押印が不要になると見たから」と先回りして印鑑を押さずに作成すると、施行前であれば方式上の問題が生じるおそれがあります。

この記事では、2026年の改正で何が変わるのか、いつから押印が不要になるのか、現在遺言書を作る場合はどうすればよいのか、自筆証書遺言書保管制度との関係も含めて分かりやすく解説します。

結論|2026年9月現在は遺言書への押印が必要

最初に結論を整理すると、2026年9月現在、自筆証書遺言の押印要件を廃止する改正法は成立していますが、押印を不要とする部分はまだ施行前です。

法務省によると、2026年6月17日に「民法等の一部を改正する法律」が成立し、同年6月24日に公布されました。この改正には成年後見制度の見直しのほか、遺言制度の見直しが含まれています。

遺言制度のうち、自筆証書遺言の押印の任意化などについては、2026年6月24日の公布日から起算して1年を超えない範囲内で、政令で定める日に施行される仕組みです。

したがって、改正法が成立したからといって、2026年6月24日から直ちに印鑑が不要になったわけではありません。

現在の法務省・法務局の案内でも、自筆証書遺言については、遺言書の全文、作成日付、遺言者の氏名を本人が自書したうえで押印することが案内されています。新しい制度の施行日までは、この現行ルールを前提に作成することが重要です。

2026年の遺言制度改正では何が変わる?

2026年の改正では、遺言をより利用しやすくするため、複数の見直しが行われます。その中でも一般の方に特に影響が大きいのが、自筆証書遺言における押印要件の見直しです。

自筆証書遺言の押印が任意になる

現在の民法では、自筆証書遺言を作成するとき、遺言者が遺言書の全文、日付、氏名を自書し、印を押すことが必要とされています。

今回の改正では、この押印要件が廃止されることになりました。施行後は、法律上の方式として、全文・日付・氏名を自書するという基本構造を残しつつ、押印そのものは必須ではなくなる方向です。

つまり「印鑑を押していない」という理由だけで、自筆証書遺言の方式要件を満たさないことになる現在の仕組みが変更されます。

財産目録の押印要件も見直される

現在の自筆証書遺言では、遺言本文とは別に財産目録を添付する場合、その財産目録についてはパソコンで作成したり、不動産の登記事項証明書や預金通帳のコピーを使用したりすることができます。

ただし、自書ではない財産目録を使用する場合には、現在は財産目録の各ページに遺言者本人が署名し、押印することが求められています。

2026年の改正では、この財産目録に関する押印要件についても廃止されることになります。もっとも、財産目録について何を記載するのか、財産が明確に特定できているかという問題は別です。押印が不要になったからといって、曖昧な財産の表示でよいという意味ではありません。

訂正時の押印要件も変わる

自筆証書遺言では、書き間違いを訂正したり、文章を追加・削除したりする場合にも厳格な方法が定められています。

現在は、変更場所を示し、変更した旨を付記して署名するとともに、変更箇所への押印も必要とされています。

改正後は、この訂正等に関する押印要件についても廃止されます。ただし、訂正方法そのものが完全に自由になるわけではありません。遺言書は本人の最終意思を確認する重要な書類ですから、訂正が多い場合には、誤解を避ける意味でも新しい用紙で作り直す方法を検討した方が分かりやすいことがあります。

押印不要になるのはいつから?

2026年9月現在、押印不要化の具体的な施行日は、単に「法律が公布された日」と同じではありません。

法務省は、押印の任意化等について、2026年6月24日の公布日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行すると案内しています。

そのため、これから自筆証書遺言を作成する方は、「作成する日」に新制度が施行されているかどうかを必ず確認する必要があります。

特にインターネット上の記事や動画では、「遺言書のハンコが不要になった」という見出しだけが先行する場合があります。しかし、法改正では成立日、公布日、施行日がそれぞれ異なることは珍しくありません。

新制度の施行前に作成するのであれば、現在の方式に従って押印しておくことが基本です。

現在の自筆証書遺言で必要な4つの基本ポイント

それでは、現時点で自筆証書遺言を作成するとき、どのような点を守る必要があるのでしょうか。

1.本文を本人が自筆する

自筆証書遺言は、その名称のとおり、原則として遺言者本人が自分で書く方式です。

現在の民法では、財産目録を除き、遺言書の全文を本人が自書する必要があります。パソコンで本文を入力して印刷し、最後だけ署名する方法は、自筆証書遺言の本文としては原則として認められません。

家族が代筆したものや、本人が読み上げた内容を別の人が記載したものも、自筆証書遺言の要件を満たさない可能性があります。

2.作成日を具体的に書く

遺言書には、作成した日付を本人が自書します。

「令和8年9月吉日」のように日を特定できない書き方は避け、たとえば「令和8年9月27日」のように具体的な年月日を記載します。

遺言では、複数の遺言書が存在したときに、後に作成された遺言が重要になる場面があります。そのため、いつ作成された遺言書なのかが分かることは非常に重要です。

3.氏名を本人が書く

遺言書には遺言者本人の氏名を自書します。

相続手続で本人の遺言書であることを確認しやすくするためにも、普段だけ使用する略称や通称に頼るより、戸籍や住民票等で確認できる氏名を正確に記載することが望ましいでしょう。

4.施行前は押印する

押印不要化が話題になっていますが、新制度の施行前に作成する自筆証書遺言については、現在の法律に従って押印します。

自筆証書遺言について、必ず実印を使用しなければならないという一般的な要件ではありません。ただし、相続開始後に本人の意思や遺言書の真正について疑問が生じる可能性を考えると、どの印鑑を使用するかを含めて慎重に作成することが大切です。

財産目録だけはパソコンで作成できる

「遺言書は全部手書きしなければならない」と思われることがありますが、現在の制度でも例外があります。

遺言書本文に添付する財産目録については、自筆でなくても構いません。パソコンで一覧表を作成したり、不動産の登記事項証明書の写し、預金通帳の写しなどを財産目録として添付したりすることができます。

財産が多い方にとって、土地の所在・地番・家屋番号、金融機関名、支店名、口座などをすべて本文に手書きすることは大きな負担です。そのため、財産目録を別紙化できる制度は実務上非常に便利です。

ただし、現在は自書ではない財産目録の各ページに署名・押印が必要です。両面に財産の記載がある場合などは方式上の注意点があるため、法務省の最新案内を確認して作成することをおすすめします。

押印が不要になっても「遺言書なら何でも有効」ではない

今回の改正について最も注意したいのは、押印要件がなくなることと、遺言書の作成が完全に自由になることは同じではないという点です。

押印は遺言の方式要件の一つにすぎません。施行後も、自筆証書遺言として必要な自書や日付、氏名などの要件を守る必要があります。

さらに、形式を守っていても、遺言内容そのものに問題があれば、相続手続の段階で支障が生じる場合があります。

財産を特定できない

たとえば「自宅を長男に相続させる」とだけ記載した場合、所有する不動産が複数ある、土地と建物で名義が異なるといった事情があると、どの財産を指しているのか問題になることがあります。

不動産であれば登記事項証明書等を確認し、所在、地番、家屋番号などによって特定できるようにすることが重要です。

預金口座の表示が曖昧

預貯金についても、「○○銀行のお金を長女に相続させる」とだけ書くより、銀行名、支店名等を確認し、他の口座と区別できる形で記載した方が相続手続を進めやすくなります。

遺留分への配慮が必要な場合がある

特定の相続人だけに財産を集中させる遺言を作成する場合、他の相続人の遺留分が問題となるケースがあります。

遺言書を作成すること自体と、その遺言内容が将来どのような影響を与えるかは別の問題です。家族構成や財産状況によっては、専門家に相談しながら内容を検討することが望ましいでしょう。

法務局の自筆証書遺言書保管制度も検討できる

自筆証書遺言を作成した場合、自宅の金庫や引き出し等で保管する方法のほか、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用することができます。

この制度では、遺言書の原本を法務局で保管してもらえるため、紛失や第三者による破棄・改ざん等のリスクを抑えることができます。

保管申請は本人が行う

遺言書の保管申請ができるのは遺言者本人です。代理人だけで申請したり、郵送だけで保管申請を完了させたりすることはできません。

これは、法務局で本人確認を行い、自筆証書遺言の外形的な方式を確認する制度だからです。

保管申請の手数料

法務省が案内している遺言書の保管申請手数料は、遺言書1通につき3,900円です。

手数料や申請方法は制度改正によって変更される可能性があるため、実際に利用するときは法務省または管轄法務局の最新情報を確認してください。

家庭裁判所の検認が不要になる

通常、自宅等で保管されていた自筆証書遺言については、相続開始後に家庭裁判所の検認手続が必要となります。

一方、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用して保管されている遺言書については、家庭裁判所の検認が不要です。

相続開始後の手続負担を軽減したい場合には、大きなメリットの一つとなります。

法務局で保管すれば内容まで保証されるわけではない

自筆証書遺言書保管制度について、「法務局に預ければ内容も法律的に問題ないと確認してもらえる」と誤解されることがあります。

法務局では、自筆証書遺言について、全文・日付・氏名の自書や押印など、民法上の方式に適合しているかを外形的に確認します。

しかし、「この財産の分け方で将来トラブルにならないか」「遺留分を侵害していないか」「この表現で銀行や不動産の手続が確実にできるか」といった個別の遺言内容を全面的に審査してくれる制度ではありません。

特に、不動産が複数ある、相続人以外の人に財産を遺贈したい、遺言執行者を定めたい、前婚の子がいる、子どもがいない夫婦であるなどの場合には、遺言内容を事前に整理することが重要です。

自筆証書遺言と公正証書遺言はどちらがよい?

押印が不要になれば、自筆証書遺言がさらに作成しやすくなると考えられます。一方で、すべての人に自筆証書遺言が適しているとは限りません。

項目 自筆証書遺言 公正証書遺言
作成 原則として本人が本文を自書 公証人が関与して作成
証人 原則不要 原則2名必要
費用 自分で作成する場合は低額 公証人手数料等が必要
保管 自宅または法務局の保管制度 公証役場で保管
検認 法務局保管なら不要 不要
内容確認 原則として本人が責任を持って作成 公証人が作成に関与

財産関係が単純で内容も比較的シンプルな場合には、自筆証書遺言と法務局の保管制度を組み合わせる方法が考えられます。

一方、財産額が大きい、相続人同士の関係が複雑、相続人以外への遺贈があるなどの場合には、公正証書遺言を検討する価値があります。

遺言書を作成するときは「将来の相続手続」まで考える

遺言書は、書くこと自体が目的ではありません。遺言者が亡くなった後、相続人や受遺者がその内容に従って実際に預金、不動産、株式その他の財産の手続を進められることが重要です。

そのため、遺言書を作成するときには、次のような点まで確認しておくと安心です。

  • 現在の相続人が誰になるのか
  • 所有している不動産を正確に把握しているか
  • 銀行口座や証券口座を整理しているか
  • 誰にどの財産を承継させるのか明確か
  • 遺言執行者を指定する必要があるか
  • 遺留分に配慮する必要があるか
  • 遺言書をどこで保管するか

数年前に作った遺言書がある場合でも、不動産の売却、預金口座の変更、家族の死亡や出生などによって、現在の状況と内容が合わなくなっていることがあります。定期的に内容を確認することも大切です。

行政書士に遺言書作成のサポートを依頼できる

行政書士は、依頼者から事情をお聞きし、相続関係や財産状況を整理したうえで、遺言書作成に必要となる文案や書類作成をサポートすることができます。

自筆証書遺言を作成する場合でも、「何をどこまで書けばよいか分からない」「財産の表示方法に不安がある」「遺言執行者を定めたい」といったケースでは、事前に内容を整理しておくことが重要です。

また、公正証書遺言を希望する場合には、公証役場へ提出する原案や必要資料の準備をサポートできる場合があります。

ただし、相続人間ですでに紛争が生じている場合や、法律上の争いについて代理交渉が必要な場合などは、弁護士への相談が適切となります。

まとめ|施行日までは従来どおり押印して作成する

2026年の民法改正により、自筆証書遺言の押印要件は廃止されることになりました。

しかし、2026年9月現在、押印不要化はまだ施行前です。新制度が正式に施行されるまでは、現在の民法に従い、遺言書の全文・日付・氏名を本人が自書し、押印して作成する必要があります。

特に注意したいのは、「改正法が成立した」というニュースだけを見て、施行前に押印せず遺言書を作成してしまうことです。遺言は本人が亡くなった後に効力が問題となる書類であり、作成時点で方式を正確に守ることが重要です。

また、押印が不要になった後も、財産の特定方法や遺言内容、相続人との関係などが重要であることは変わりません。単に形式だけを整えるのではなく、実際の相続手続まで見据えて作成することをおすすめします。

よくある質問

2026年9月現在、印鑑を押さずに自筆証書遺言を作ってもよいですか?

現時点では、押印不要化の改正部分は施行前です。施行日までは現在の方式に従い、遺言書に押印して作成することが基本です。

2026年の改正法はいつ成立しましたか?

民法等の一部を改正する法律は2026年6月17日に成立し、同年6月24日に公布されました。押印の任意化等は、公布日から1年を超えない範囲内で政令により定められる日に施行されます。

押印が不要になればパソコンで遺言書を作成できますか?

押印要件の廃止と、全文を自書する要件は別の問題です。自筆証書遺言については、改正後も基本となる自書要件を確認する必要があります。財産目録については現在でも一定の条件のもとパソコン等で作成できます。

自筆証書遺言を法務局に預けることはできますか?

はい。自筆証書遺言書保管制度を利用できます。保管申請は遺言者本人が行い、法務局に保管された遺言書は相続開始後の家庭裁判所による検認が不要となります。

法務局に預ければ遺言内容も有効だと保証されますか?

法務局では自筆証書遺言の方式について外形的な確認を行いますが、個々の遺言内容の法的な効果や将来の紛争の有無まで保証する制度ではありません。

参考サイト

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