2023.12.17
遺言書は誰に頼むべきか?
自分が死んでしまった後に、相続人間で遺産の争いが予想される場合には遺言書を作成しておくべきです。遺言書を作成することで、相続人の争いが防止できる場合があります。この記事では、遺言書の種類や遺言書を作成するべきケース、遺言書の記載例等について解説いたします。
遺言書について
遺言書とは、遺言を作成する者が生前に作成する自己の財産をその者が亡くなった後にどのように相続(又は遺贈)させるかを定めた文書のことです。遺言書を作成することで法律上決められた相続分と異なる配分により相続分を定めることができます。
遺言書の種類
民法で定められている主な遺言書は、次の3種類があります。
- 自筆証書遺言書
- 公正証書遺言書
- 秘密証書遺言書
その中でも、一般的に利用される遺言書は自筆証書遺言と公正証書遺言であり、秘密証書遺言を利用される方は極めて少ないです。当事務所にご依頼をいたたく方の約7割の方は公正証書遺言を選択されます。遺言書はそれぞれ以下のように作成します。
自筆証書遺言 遺言者本人が、遺言書の全文を自筆し作成する遺言です。遺言書が複数ページに渡る場合は毎葉に作成日と遺言者氏名を自書し押印する必要があります。 |
公正証書遺言 公証人によって作成される遺言書です。公正証書遺言では、遺言者が自筆することを要求されておりません。Word文書等で作成した遺言書の案文を公証人に提出し、公証人が公正証書の原案を作成します。公正証書を作成する場合には公証役場に出向き、公正証書の原案に遺言者が署名と押印(実印)をして作成します。ただし、出張により作成を依頼することも可能です。 |
秘密証書遺言 遺言書の存在を秘密にするために、封筒の中に、遺言書が入っていることを公正証書の手続きで証明する方法です。自筆証書遺言や公正証書遺言ほど利用されているものではありません。 |
遺言書の作成サポートは誰に頼むべきか?
遺言書の作成は以下のような専門家(士業)に依頼することが考えられます。
- 司法書士
- 行政書士
- 弁護士
いずれも、相続や遺言に関わる業務を行う国家資格者ですが、主に取り扱う業務がそれぞれ異なります。
司法書士
司法書士は、司法書士法に基づく国家資格で、専門的な法律の知識に基づき「登記・供託・訴訟」等を代理で行う専門家です。特に上記の業務の中でも、主に土地や建物等の登記手続きを扱うケースが多いです。
行政書士
行政書士は、行政書士法に基づく国家資格で、官公署へ提出する書類の作成や提出、これに準ずる相談及び私人の権利義務・事実証明に関する書類の作成などを業として行う専門職です。行政書士が行うことができる範囲は広く、その業種は「許認可・相続・登録」等、多岐にわたります。
弁護士
弁護士は、相続人の間でのトラブルや遺産の承継に関わる争いがあった事案について、相続人の代理人となり相手方と交渉や裁判を行います。
遺言書のサポートは誰に頼む?ーそれぞれの士業の特徴ー
遺言書の作成の際には、自身の遺言内容に適した専門家に依頼することが重要です。専門家にはそれぞれ次のような特徴があります。
司法書士に依頼するケース
司法書士に遺言書を依頼するケースとして、財産に不動産がある場合が挙げられます。司法書士に依頼することで遺言執行者として、相続人の不動産登記を代理で行えるため遺言執行がスムーズに行えます。
行政書士に依頼するケース
行政書士に遺言書を依頼するケースとして、遺言書に不動産がないケースや、相続財産に自動車がある場合が挙げられます。行政書士は書類作成を業としており、書類作成の件数が多いため比較的安い金額で依頼することできます。
弁護士に依頼するケース
弁護士に遺言書を依頼するケースとして、遺言者と相続人の間で仲が悪く、相続時に揉めそうな場合や、遺留分(※)を侵害する内容の遺言書を作成する場合、又は遺言書の作成に複雑な法律の知識を要する場合に相談するとよいでしょう。
※)遺留分とは相続人が最低限保証される相続分であり、法定相続分の「2分の1」の額が遺留分にあたります。遺留分の額は、相続人が誰になるかや、共同相続人の人数によってその金額が異なります。
遺言書のサポートは誰に頼む?ー依頼するメリットやデメリットー
メリット 遺言書が無効になるリスクが低い
遺言書に精通している専門家であれば、遺言事項(遺言書に記載して法的な効力がある内容)や付言事項を詳しく理解しており、記載の表現などを適切に助言することができるので、その遺言書が無効になることはほとんどないと言えるでしょう。また、公正証書として作成することで、より高い証拠力が備わった遺言書を作成することができます。
メリット 手間が省ける
遺言書を自分で作成する場合は、作成方法や遺言書の種類などを調べるところから始め、記載内容について検討する必要があります。専門家であれば、遺言者の財産状況やご家族とのご関係を考慮し、遺言者にあった遺言内容を提案させていただくことができます。そのため、こういった調査のお手間をおかけしません。
メリット あまり時間がかからない
遺言書に強い専門家であれば、これまでに数多くの遺言の依頼に対応しているかと思いますので、当然遺言の方法や手順についての調査を要す必要がありません。そのため、通常は2、3カ月程度かかるとされている遺言公正証書の作成も、的確に段取りすることで1カ月程度で完成させることができます。なお、遺言公正証書の場合、公証役場の空き具合では1カ月以内に作成することも可能です。
デメリット 費用がかかる
遺言書をご自身で作成する場合には、自筆証書遺言書(※)の場合、A4用紙とペン、封筒を用意すれば作成できますので安価で作成することができます。専門家に依頼すると最低でも2万円以上はかかりますので費用面ではデメリットがあります。
デメリット 相談しにくそう
日常生活において、行政書士などの専門家になにかを頼む機会はそうありませんので「怒られたらどうしよう」とご不安になられる方も実はいらっしゃいます。ほとんどのケースでそのようなことはありませんが、このような心境の上で、電話や訪問する選択が心理的な負担となることはデメリットかもしれません。(当事務所はそのようなことは一切ございませんので、お気軽にご相談いただけます。)
遺言書のサポートは誰に頼む?ー手続の流れー
以下に①自筆証書遺言書と②公正証書遺言書を依頼した場合のおおよその流れを記載いたします。
(自筆証書遺言書)
1.遺言内容の相談
遺言内容の相談の際は、遺言書に記載する物「預貯金通帳、固定資産税納税通知書、車検証」等のコピーがあれば話し合いがスムーズに進むでしょう。電話などの相談の場合には、電話後にメールによって送るなどで良いでしょう。
2.契約等
専門家によって異なる場合もありますが、話し合い後に、お見積の上、契約締結をすることが一般的です。なお、専門家によっては手付金を要する場合があります。
3.遺言内容の確認
専門家によって、遺言書の文案が作成されます。遺言書の文案はメールやチャット、FAX等で確認いただき、その後、実際に自筆して作成するケースが一般的です。
4.遺言書作成
上記により遺言内容に変更がなければ、自宅や事務所等で専門家の指導のもと実際に遺言書を作成します。
【作成上の注意】 遺言書は、遺言者が自筆で全文を記載する必要があります。通常は事前に作成している遺言書(Word等で作成した文書)の見本を見ながらそっくりそのまま写して作成することが多いです。万一、遺言内容を間違えた場合には、自筆証書遺言書の有効性を担保するためにも訂正して記載するよりも、再度一から新しい紙に記載して作成ほうが良いです。ちなみに、遺言内容を丸写しするだけでも意外と細かな描き間違いが多いので、下書きしてから記載するなどの工夫が必要です。 |
(公正証書遺言書)
公正証書遺言書の作成手順ですが、上記自筆証書遺言書の作成手順(1〜3)までは同じです。4以降は次のように進むことが一般的です。
1.必要書類の準備
遺言公正証書には次のような書類が必要となります。これらすべてを準備した上で公証人に連絡するようにしましょう。
- 遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本
- 受遺者(遺言者の財産の遺贈を受ける者、相続人以外)の住民票
- 預貯金通帳・預金カード
- 固定資産税納税通知書または固定資産評価証明書(不動産を記載する場合)
- 不動産の登記簿謄本(〃)
- 株式や財形貯蓄がある場合は関連する情報(例 ⑴株式:銘柄、数量、証券会社、口座番号⑵財形貯蓄:会社名称、財形貯蓄に関する書類)
- 証人の運転免許証
- 遺言執行者の特定資料
2.公証人へ連絡
遺言書の案文と必要書類が揃えば、公証役場を選び公証人に遺言公正証書を作成する旨を伝えます。その後、作成した遺言書の案文や必要書類を提出します。
3.公証人から連絡
案文などを提出後、約1週間ほどで公正証書の案文がメールなどで届きます。内容を確認し、間違いがなければ、その旨を連絡します。
4.証人の手配
遺言公正証書の作成時は、公証人1名と証人が2名必要です。証人は公正証書の作成日に、作成される公正証書が本人の意思で作成されているかを確認します。そのため、証人は遺言者と関わりのある者(利害関係人等)はなることができませんので注意しましょう。
遺言書の記載例-テンプレート
こちら遺言書と財産目録の記載例でございます。遺言内容に応じてご使用ください。なお、こちらの記載例と当事務所にご依頼いただき作成させていただく遺言書とは異なり、簡単な記載となっております。ご使用はご自身の責任においてお願い致します。
遺言書 私は、私の所有する次の各条の財産を長男〇〇(〇年〇月〇日生)と二男〇〇(〇年〇月〇日生)に相続させる旨の遺言をする。 第1条(預金) 第2条(不動産) 第3条(遺言執行者) 遺言者 |
以下は財産目録の記載例でございます。財産目録は用紙にWord文書等で入力いただいても、上記写真のように通帳のコピーや履歴事項全部証明書のコピーを添付しても有効に遺言することができます。
財産目録(別紙1) (預金) 財産目録(別紙2) (土地) |
遺言書は誰に頼むべきかーまとめー
遺言書は司法書士、行政書士、弁護士などの専門家に作成を依頼することができ、無資格者が報酬を得て作成の助言などをすることは違法となり罰則規定があります。また、専門家には、それぞれ特徴があり「不動産関連は司法書士」「不動産がない場合や自動車がある場合は行政書士」「紛争が予想される場合には弁護士」というように、遺言書の作成を依頼する際は、ご自身の作成ケースに当てはめてどの専門家に依頼するのがベストかを決めれば良いでしょう。
当事務所にもご相談いただけます
弊所でも遺言書の作成依頼を承っております。遺言書の作成依頼をご検討の方は、ますば弊所の初回電話無料相談をご利用ください。また、大阪以外の方であっても出張による相談に対応しておりますので、このような方もお気軽にご相談やご依頼いただけます。
当事務所の料金は以下のとおりです。
料金表
サービス内容 | 費用 | 概要 |
自筆証書遺言書 作成サポート |
40,000円 | 遺言者様の意思に沿った内容の遺言書の文案を作成致します。 |
公正証書遺言書 作成サポート |
80,000円 | 遺言者様の意思に沿った内容の遺言書の文案を作成し、公証役場で打ち合わせ等を行います。 |
※)近畿圏外の方は別途出張料金がかかる場合がございます。
遺言書は誰に頼むべきか?ーよくある質問ー
1.自筆で書く遺言書には所定の書式がありますか。
ありませんので、どのような書式を使用していても法律に定められた方法によれば有効に作成できます。一般的にはA4の用紙が使用されることが多いです。
2.公正証書で遺言書を作成するには作成当日に自筆の遺言が必要ですか?
不要です。公正証書は公証人が作成した原本に署名と押印(実印)をします。原本は作成の際に公証人によって準備していただけます。なお、出張による作成の場合も公証人が公正証書の原本を持参していただけます。
3.遺言執行者とはなんでしょうか。
遺言執行者とは遺言者の死後に、遺言書の内容を適切に実行する者です。遺言執行者には遺言書の作成に携わった専門家や、遺言により財産を相続する者が選ばれるケースが多いです。
4.遺言書を知人に助言を求めることはできますか。
知人の方が行政書士、司法書士又は弁護士であれば有償により助言を受けることができます。しかし、知人が無資格者である場合、有償で遺言書作成の助言や手伝いをした場合には行政書士法、弁護士法の違反となる恐れがありますので注意が必要です。
5.遺言書に関する相談は有料ですか
役所でしている各専門家の相談でしたら、基本的に無料でしょう。個別に専門家に相談する場合は有料の場合と無料の場合があります。当事務所は初回の電話相談(約30分)は無料で対応させていただいております。
6.自筆証書遺言書から公正証書遺言書に変更することはできますか。
可能です。ただし、公正証書遺言の作成には戸籍謄本や住民票、印鑑登録証明書等の書類が必要となりますので、取得されていない方はご準備いただく必要があります。