相続放棄は3か月以内?期限の数え方・必要書類・手続の流れを行政書士が解説 - 相続・遺言・離婚専門の大倉行政書士事務所

2026.09.27

相続放棄は3か月以内?期限の数え方・必要書類・手続の流れを行政書士が解説

相続放棄は3か月以内?期限の数え方・必要書類・手続の流れを行政書士が解説

相続が始まった後、亡くなった方に預貯金や不動産だけでなく、借金、保証債務、未払い金などがあることが分かり、「相続放棄をしたい」と考えるケースがあります。相続放棄で特に注意したいのが期限です。原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。

ただし、「亡くなった日から必ず3か月」と単純に判断できるとは限りません。疎遠だった親族の死亡を後から知った場合や、相続人になったこと自体を後日知った場合、死亡から数か月後に初めて債権者から請求書が届いた場合など、事情によって確認すべき点が異なります。

この記事では、2026年9月時点の裁判所の案内を踏まえ、相続放棄の3か月という期限、必要書類、費用、手続の流れ、期限が迫っている場合の対応などを整理して解説します。

相続放棄とは何か

相続が開始すると、相続人は亡くなった方の財産について対応を検討することになります。相続の対象には、預貯金、不動産、株式、自動車などのプラスの財産だけでなく、借入金や未払い金などのマイナスの財産も含まれます。

裁判所では、相続が開始した場合の主な選択肢として「単純承認」「相続放棄」「限定承認」を案内しています。

方法 概要
単純承認 被相続人の権利や義務を原則として引き継ぐ方法
相続放棄 被相続人の権利や義務を一切受け継がない方法
限定承認 相続によって得た財産の限度で被相続人の債務を負担する方法

相続放棄は、「遺産はいりません」と他の相続人に伝えるだけでは成立しません。家庭裁判所に相続放棄の申述を行い、受理される必要があります。

相続放棄は原則3か月以内

裁判所の案内では、相続放棄の申述期間は「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内」とされています。この3か月は、相続するか、放棄するか、限定承認をするかを検討する期間であるため、一般に熟慮期間と呼ばれます。

「死亡日から3か月」とは限らない

典型的には、親が亡くなり、その日に死亡の事実と自分が相続人であることを知っている場合、その時点から3か月を意識することになります。

一方、長年連絡を取っていなかった親族が亡くなっていたことを数か月後に知らされた場合などは、死亡日だけを見て「もう3か月が過ぎたから絶対に相続放棄できない」と判断するのは早計です。

裁判所の家事事件Q&Aでも、相続開始の原因となる事実と、自分が法律上の相続人となった事実を知った時から3か月以内に行うものと説明されています。

借金の存在を後から知った場合

実務上よく問題になるのが、死亡時には財産も借金もないと思っていたところ、半年後や1年後に消費者金融、金融機関、保証会社などから突然請求書が届くケースです。

裁判所は、相続財産が全くないと信じ、そのように信じたことに相当な理由があるなど一定の事情がある場合には、相続財産の存在を認識した時から3か月以内の申述が受理されることもあると案内しています。

ただし、死亡から3か月を過ぎていれば必ず認められるという意味ではありません。いつ死亡を知ったのか、いつ自分が相続人であると知ったのか、財産や債務をいつ知ったのか、なぜそれまで把握できなかったのかなど、個別事情が重要になります。

債権者から届いた通知書、請求書、督促状などは、いつ債務を知ったのかを確認する資料になることがあります。届いた書類は捨てずに保管しておきましょう。

3か月では判断できない場合は期間伸長を検討する

相続財産の全体像が分からず、3か月以内に相続するか放棄するかを決められない場合があります。例えば、被相続人が事業をしていた場合、多数の金融機関と取引していた場合、不動産や負債の調査に時間がかかる場合などです。

裁判所では、3か月以内に相続財産を調査しても判断資料が得られないときには、「相続の承認又は放棄の期間の伸長」の申立てにより、家庭裁判所が期間を伸ばすことができると案内しています。

重要なのは、3か月が経過してから慌てて延長を申し出るのではなく、期限内に必要な対応を検討することです。調査に時間がかかりそうだと分かった段階で、早めに専門家や家庭裁判所の案内を確認する方が安全です。

相続放棄の基本的な手続の流れ

1.相続人と相続財産を確認する

まず、誰が相続人になるのかを戸籍で確認します。同時に、被相続人名義の預貯金、不動産、有価証券、自動車、保険、借入金、クレジットカード、税金、保証債務などを確認します。

借金だけを見てすぐに放棄するのではなく、プラスの財産も含めて全体像を確認することが大切です。一度相続放棄が受理された後に、「実は大きな預金があった」と気付いても簡単に元へ戻せるものではありません。

2.必要な戸籍などを集める

必要書類は、申述する人が配偶者なのか、子なのか、父母・祖父母なのか、兄弟姉妹なのかによって異なります。

裁判所の全国共通案内では、共通書類として、被相続人の住民票除票または戸籍附票、申述人の戸籍謄本などが示されています。そのほか、相続順位によって被相続人の出生から死亡までの戸籍などが必要になる場合があります。

3.被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申述する

相続放棄の申述先は、原則として被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。現在自分が住んでいる場所の家庭裁判所とは限らないため注意しましょう。

例えば、相続人が奈良県生駒市に住んでいても、被相続人の最後の住所が大阪市であれば、管轄は被相続人の最後の住所を基準に確認します。

4.家庭裁判所からの照会等に対応する

申述後、事件の内容によっては家庭裁判所から照会書などが届き、相続を知った時期や相続放棄の意思などについて回答を求められることがあります。

裁判所から郵便物が届いた場合は放置せず、記載された期限や案内を確認して対応しましょう。

5.相続放棄が受理された後の対応

相続放棄が受理され、債権者から借金を請求されている場合には、相続放棄が受理されたことを債権者へ伝えることが考えられます。

必要に応じて「相続放棄申述受理証明書」を取得する方法もあります。裁判所の案内では、受理証明書の交付申請には150円分の収入印紙が必要とされています。

相続放棄に必要な費用

裁判所の案内によると、相続放棄の申述に必要な基本的な費用は、申述人1人につき収入印紙800円分と、連絡用の郵便料です。

項目 内容
収入印紙 申述人1人につき800円
郵便料 家庭裁判所ごとに異なる
戸籍等 取得する戸籍・除籍・住民票除票等に応じて別途必要

郵便料については裁判所ごとに異なるため、実際に申述する家庭裁判所の最新案内を確認してください。

相続人の順位によって必要な戸籍が増える

相続放棄では、後順位の相続人になるほど戸籍の範囲が広くなりやすい点にも注意が必要です。

配偶者・子が放棄する場合

配偶者や子の場合、被相続人の死亡が記載された戸籍、申述人の現在戸籍、被相続人の住民票除票または戸籍附票などが中心になります。

父母・祖父母が放棄する場合

第二順位の父母や祖父母が相続人になるケースでは、先順位である子やその代襲者が存在しないことなどを確認する必要があるため、被相続人の出生から死亡までの戸籍が必要となることがあります。

兄弟姉妹・おい・めいが放棄する場合

第三順位の兄弟姉妹や、代襲相続人となるおい・めいの場合には、さらに広い範囲の戸籍が必要になることがあります。

古い戸籍が複数の市区町村にまたがっている場合は、戸籍収集だけでも時間がかかるため、3か月の期限を意識して早めに動くことが重要です。

相続放棄を検討中に注意したい行為

相続放棄を考えている段階では、被相続人の財産を勝手に売却したり、自分の財産として処分したりすることは避けるべきです。

相続財産を処分するなど一定の行為をすると、事情によっては単純承認をしたものとして扱われる問題が生じる可能性があります。

特に、次のような行為をする前には慎重な確認が必要です。

  • 被相続人名義の預金を解約して自分のために使う
  • 被相続人の自動車や高価な動産を売却する
  • 相続不動産を自分のものとして処分する
  • 遺産を相続人間で分けてしまう
  • 債権者への対応を自己判断だけで進める

葬儀費用の支出や財産の保存行為などは、具体的事情によって評価が異なることがあります。「少し使っただけだから大丈夫」「家族全員が納得しているから大丈夫」と自己判断せず、相続放棄を考えているなら財産へ手を付ける前に確認することをおすすめします。

相続放棄すると次の順位の親族が相続人になることがある

相続放棄は、自分だけの問題で終わらない場合があります。

例えば、被相続人に配偶者と子がいて、子全員が相続放棄した場合、被相続人の父母や祖父母などが次の順位の相続人になる可能性があります。さらに直系尊属がいなければ、兄弟姉妹や一定の場合にはおい・めいが相続人になることがあります。

借金を理由に相続放棄する場合、先順位者の放棄によって後順位者へ相続関係が移ることがあります。親族間のトラブルを避けるためにも、誰が次に相続人になり得るのかを確認しておくことが重要です。

「遺産を受け取らない」と相続放棄は違う

遺産分割協議で「私は何も受け取りません」と合意することと、家庭裁判所で行う相続放棄は別のものです。

遺産分割協議で取得財産をゼロにしただけでは、家庭裁判所で相続放棄をしたことにはなりません。被相続人に債務がある場合、単に相続人同士で「借金は長男が払う」などと決めただけで、当然に債権者へ対抗できるとは限りません。

借金を引き継ぎたくないことが主な目的であれば、「財産をもらわない」という話だけで終わらせず、相続放棄が必要なのかを早めに検討しましょう。

未成年者が相続放棄する場合は特別代理人が必要になることもある

未成年者が相続人の場合には、通常は法定代理人が手続を行います。しかし、親権者と未成年者がともに相続人であり、未成年者だけが相続放棄する場合など、親と子の利益が相反するケースでは、特別代理人の選任が必要になる場合があります。

家族全員が相続放棄を考えているケースでも、誰が先に申述するかなどによって扱いが変わることがあるため、未成年の子が含まれる場合は特に早めの確認が重要です。

奈良県生駒市周辺で相続手続を進める際のポイント

奈良県生駒市の大倉行政書士事務所では、生駒市を中心に奈良市、東大阪市、大阪市やその周辺地域の相続に関するご相談に対応しています。

相続では、相続放棄だけを見るのではなく、まず戸籍から相続人を整理し、預貯金や不動産などの財産関係を確認することが重要です。当事務所では、行政書士の業務範囲で戸籍収集、相続人調査、遺産分割協議書など相続に伴う書類作成をサポートしています。

一方、相続放棄は家庭裁判所の手続です。裁判所への申述や裁判手続に関する代理など、行政書士の業務範囲外となる部分については、司法書士など対応権限を有する専門家への相談が必要です。相続全体を整理する中で、どの手続が必要なのかを早い段階で切り分けることが大切です。

相続放棄についてよくある質問

Q1.親が亡くなってから3か月を過ぎたら絶対に相続放棄できませんか?

必ずしも死亡日から機械的に3か月を数えるとは限りません。相続開始や自分が相続人になったことをいつ知ったかなど、具体的事情によって判断されます。死亡から3か月以上経過している場合は、債権者からの通知書など、いつ相続や債務を知ったのか確認できる資料を保管しておきましょう。

Q2.借金があるか分からない場合でも3か月以内に決めないといけませんか?

原則として3か月以内の判断が必要ですが、調査をしても判断材料がそろわない場合には、家庭裁判所へ相続の承認・放棄の期間伸長を申し立てる制度があります。期限が迫る前に検討することが重要です。

Q3.兄弟全員で一緒に相続放棄しないといけませんか?

相続放棄は各相続人が行う手続です。限定承認とは異なり、相続人全員が必ず一緒に相続放棄しなければならないわけではありません。

Q4.相続放棄をすれば借金だけ放棄して預金は受け取れますか?

できません。相続放棄は、原則としてプラスの財産だけを残して借金だけを放棄する制度ではありません。権利・義務を含めて相続しない手続です。

Q5.相続放棄の手続前に遺産を使っても大丈夫ですか?

相続財産の処分内容によっては、単純承認との関係が問題になる可能性があります。相続放棄を検討している間は、自己判断で預金の解約や財産の売却などを行わない方が安全です。

まとめ

相続放棄は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。

ただし、被相続人の死亡日、死亡を知った日、自分が相続人となったことを知った日、借金の存在を知った日が異なるケースもあり、「死亡から3か月」という数字だけで結論を出せない場合があります。

相続放棄を検討している場合は、まず相続人と財産・債務を整理し、必要な戸籍を早めに集めることが重要です。3か月以内に判断できない場合には期間伸長の制度もあるため、期限直前まで放置しないようにしましょう。

参考サイト

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