相続した不要な土地を国に返せる?相続土地国庫帰属制度の条件・費用・手続きを行政書士が解説【2026年版】 - 相続・遺言・離婚専門の大倉行政書士事務所

2026.09.29

相続した不要な土地を国に返せる?相続土地国庫帰属制度の条件・費用・手続きを行政書士が解説【2026年版】

相続した不要な土地を国に返せる?相続土地国庫帰属制度の条件・費用・手続きを行政書士が解説【2026年版】

親や祖父母から土地を相続したものの、「遠方にあって利用する予定がない」「山林なので管理できない」「売ろうとしても買い手が見つからない」と悩む方は少なくありません。

このような相続土地について、一定の条件を満たせば国に引き取ってもらえる仕組みが「相続土地国庫帰属制度」です。2023年4月27日に始まった制度で、制度開始前に相続した土地についても利用できる場合があります。

ただし、不要な土地であれば何でも国に渡せるわけではありません。建物が残っている土地、境界に問題がある土地、担保権が設定されている土地などは申請できないことがあり、申請時には1筆につき14,000円の審査手数料、承認後には原則として土地管理費相当額の負担金が必要です。

この記事では、奈良県生駒市の大倉行政書士事務所が、2026年時点の法務省・法務局の公表情報をもとに、相続土地国庫帰属制度を利用できる人、対象となる土地、費用、必要書類、申請の流れなどを分かりやすく解説します。

この記事のポイント

  • 相続や一定の遺贈で取得した土地が対象です。
  • 制度開始前に相続した土地でも申請できる場合があります。
  • 売買で購入した土地を単に「不要になった」という理由では原則として利用できません。
  • 建物・担保権・境界問題などがある土地は申請できない場合があります。
  • 審査手数料とは別に、承認後の負担金が必要です。

相続土地国庫帰属制度とは

相続土地国庫帰属制度とは、相続などによって取得した土地について、一定の要件を満たした場合に、所有者が法務大臣の承認を受けて土地の所有権を国庫へ帰属させることができる制度です。

相続によって本人が希望していなかった土地まで所有することになり、その後も草刈り、樹木の管理、近隣への対応などが必要になるケースがあります。土地を売却しようとしても、立地や地形によっては買い手が見つからないこともあります。

こうした土地が長期間放置され、将来的に所有者不明土地や管理不全土地となることを防ぐ目的から制度が設けられています。

法務省が2026年9月16日に公表した速報値では、2026年8月31日時点で全国の申請件数は5,997件、国庫への帰属件数は3,119件とされています。制度開始後、実際に土地を国へ引き渡した事例も積み重なっています。

注意

相続土地国庫帰属制度は、所有者が自由に土地を放棄できる制度ではありません。申請後に法務局による書面審査や必要に応じた実地調査が行われ、法律上の要件を満たしていると判断された場合に限り承認されます。

どのような人が申請できるのか

基本的には、相続または相続人に対する遺贈によって土地を取得した人が申請できます。

例えば、父親が亡くなり、遺産分割によって子が土地を取得した場合は対象となり得ます。また、制度が開始された2023年4月27日より前に相続した土地についても、要件を満たせば申請できます。

土地を取得した方法 原則的な取扱い
相続 申請可能
相続人に対する遺贈 申請可能
売買による購入 原則として申請不可
生前贈与による取得 原則として申請不可
法人が所有している土地 原則として対象外

共有名義の土地は共有者全員で申請する

相続した土地が共有になっている場合には注意が必要です。

共有土地について制度を利用する場合、原則として共有者全員が共同して申請します。

例えば、父親の土地を兄弟3人で相続して3分の1ずつ共有している場合、1人だけが自分の持分を国へ渡すという使い方ではなく、土地全体について共有者全員で手続きを進めることになります。

共有者の中に制度利用に反対する人がいる場合には、まず共有者間で今後の土地の扱いを検討する必要があります。

国が引き取れない土地には条件がある

相続土地国庫帰属制度で最も重要なのが土地そのものの状態です。

国が土地を取得した後、通常の管理や処分を行うために過大な費用・労力が必要になる土地まで無条件に引き取る仕組みではありません。

法律上、申請段階で対象外となる「却下要件」と、審査の結果として承認されない「不承認要件」が定められています。

申請できない主な土地

次のような土地は、原則として承認申請をすることができません。

主な状態 注意点
建物がある土地 住宅、倉庫などの建物が残っている場合は対象外となります。
担保権等が設定されている土地 抵当権など、第三者の権利が設定されている場合があります。
他人による使用が予定される土地 現に通路として利用されている土地、墓地、境内地などが該当する場合があります。
一定の土壌汚染がある土地 特定有害物質による汚染がある土地は対象外です。
境界が明らかでない土地 所有権の範囲や帰属について争いがある土地も問題になります。

特に注意したいのが、古い実家が残ったままの土地です。

「誰も住んでいないから土地ごと国に引き取ってもらいたい」と考えても、建物が存在している状態では申請できません。制度を利用するのであれば、建物の解体や権利関係の整理などを検討することになります。

建物を解体すれば必ず国庫帰属が認められるという意味ではありません。建物以外の要件についても審査されますので、解体工事を決める前に土地全体の状況を確認することが重要です。

申請しても承認されない可能性がある土地

申請自体は受け付けられても、通常の管理・処分に過大な費用や労力が必要と判断されると、不承認になる場合があります。

例えば、法務省は次のような土地を例示しています。

  • 一定の急な崖があり、管理に過大な費用や労力が必要となる土地
  • 管理や処分を妨げる工作物、車両、樹木などが存在する土地
  • 地下に除去が必要な有体物がある土地
  • 他人との争いを解決しなければ通常の管理ができない土地
  • 災害防止のため特別な措置が必要な土地
  • 国による追加の整備が必要となる森林

山林や農地でも制度を利用できる可能性があります

「山林だから利用できない」「農地だから利用できない」という制度ではありません。実際に国庫帰属した土地には宅地、農用地、森林などが含まれています。ただし、土地の状態や管理負担によって個別に判断されます。

境界確定や測量は必ず必要なのか

土地の境界については誤解されやすいポイントです。

相続土地国庫帰属制度では、申請土地の位置と範囲が分かり、隣接地との境界点を示せることが重要です。

一方で、制度を利用するために必ず境界確定測量を行わなければならないという仕組みではありません。法務省の案内でも、申請前の測量そのものを一律の必須条件とはしていません。

ただし、境界がどこなのか分からない、隣地所有者との認識が異なる、登記上の土地と現況の対応が不明確という場合は、そのままでは手続きが難しくなる可能性があります。

境界に問題がある場合

行政書士が土地の筆界を決定することはできません。測量や土地の筆界に関する専門的な判断が必要な場合には、土地家屋調査士など適切な専門家への相談を検討する必要があります。

相続土地国庫帰属制度にかかる費用

制度を利用するときは、大きく分けて申請時の審査手数料と、承認された後の負担金があります。

審査手数料は1筆14,000円

2026年時点の審査手数料は、土地1筆につき14,000円です。

例えば3筆の土地について申請する場合は、審査手数料だけで42,000円となります。

申請を取り下げた場合や、審査の結果として却下・不承認となった場合でも、原則として納付済みの審査手数料は返還されません。

承認された場合は負担金を納付する

法務局の審査を経て国庫帰属が承認された場合には、土地の管理に必要となる費用を考慮した負担金を納付します。

基本的な考え方は、国が土地を管理するための10年分の標準的な管理費用相当額です。

土地の種類 負担金の基本的な考え方
宅地 原則20万円。ただし一定の市街地の宅地は面積に応じて算定されます。
田・畑 原則20万円。ただし一定の市街地や農用地区域等では面積に応じて算定されます。
森林 面積に応じて算定されます。
雑種地・原野等 原則20万円です。

例えば法務省の公表例では、一定の市街地にある宅地は100平方メートルで約55万円、200平方メートルで約80万円とされています。また、森林は1,500平方メートルで約27万円、3,000平方メートルで約30万円といった算定例があります。

土地の所在・地目・利用状況・面積などによって金額が異なるため、「どの土地でも20万円で手放せる」と考えないようにしましょう。

負担金は通知後30日以内に納付する

承認後、法務局から負担金額の通知が届きます。

申請者は、負担金の通知を受けた日から30日以内に納付する必要があります。

期限内に納付しなかった場合、承認の効力が失われるため注意が必要です。

相続土地国庫帰属制度の手続きの流れ

制度の利用を検討するときは、いきなり申請書だけを提出するのではなく、土地の状況を調査したうえで進めることが重要です。

1.土地の資料を確認する

まずは土地の登記事項証明書、公図、地積測量図、固定資産税関係資料、現地写真などを確認します。

相続した土地がどこにあるのか、誰の名義になっているのか、建物や権利設定がないか、境界を示せる資料があるかなどを整理します。

2.法務局へ事前相談する

法務省・各法務局では相続土地国庫帰属制度について相談を受け付けています。

奈良県内の土地であれば、奈良地方法務局で相談することができます。奈良地方法務局では事前予約制の相談が案内されており、登記事項証明書、地積測量図、登記所備付地図、境界関係資料、現地写真などを準備すると相談が進めやすいとされています。

土地が大阪市や東大阪市など大阪府内にある場合には、原則として土地所在地を管轄する法務局の本局が申請先となります。

3.申請書と添付書類を準備する

土地の状態を確認した後、承認申請書と必要な添付資料を準備します。

法務省の申請書様式では、基本的な添付書類として次のような資料が示されています。

  • 土地の位置及び範囲を明らかにする図面
  • 申請土地と隣接土地との境界点を明らかにする写真
  • 申請土地の形状を明らかにする写真
  • 申請者の印鑑証明書
  • 必要に応じて相続・遺贈による取得を証明する書類

実際に必要となる書類は、登記名義や相続の経緯などによって異なります。

4.審査手数料を納付して申請する

申請書を土地所在地を管轄する法務局・地方法務局の本局へ提出します。

支局や出張所ではなく、本局が申請窓口になる点に注意してください。

5.法務局による審査・実地調査

法務局では提出された書類を確認し、必要に応じて現地調査を行います。

土地の状態、境界、権利関係、工作物や樹木の状況などが確認されます。

奈良地方法務局が公表している相続土地国庫帰属制度の標準処理期間は8か月です。ただし、これはあくまで通常の場合の目安であり、個別案件の状況によって8か月を超えることがあります。

6.承認後に負担金を納付する

審査の結果、要件を満たしていると判断されれば承認され、負担金額が通知されます。

通知された負担金を期限内に納付すると、その時点で土地の所有権が国庫へ帰属します。

申請から国庫帰属までの基本的な流れ

土地資料の確認 → 法務局への相談 → 申請書類作成 → 申請・審査手数料納付 → 法務局による審査・現地調査 → 承認 → 負担金納付 → 国庫帰属

相続登記をしていない土地でも申請できるのか

古い相続では、亡くなった親や祖父母の名義のまま土地が残っているケースがあります。

相続土地国庫帰属制度では、一定の場合には相続登記がされていなくても、戸籍等によって相続により土地を取得したことを証明して申請できる仕組みがあります。

ただし、申請を取り下げた場合や、却下・不承認となって土地を引き続き所有する場合には、別途相続登記を行う必要が生じます。

また、2024年4月1日から相続登記が義務化されています。国庫帰属制度を検討しているからといって、相続登記の義務そのものを無視してよいわけではありません。

相続登記と国庫帰属申請は別の制度です

相続登記の申請代理や登記に関する専門業務は司法書士等の業務分野です。行政書士が相続登記そのものを代理することはできません。必要に応じて各専門家を使い分けることが重要です。

行政書士に依頼できること

相続土地国庫帰属制度は、任意代理人に手続きのすべてを任せる仕組みにはなっていません。

法務省の案内では、申請できるのは原則として本人または法定代理人とされています。

一方、申請書類の作成については、弁護士・司法書士・行政書士へ依頼することができると案内されています。

したがって行政書士へ相談する場合には、相続関係の確認、戸籍等の収集、申請に必要となる書類の整理、制度に応じた申請書類の作成など、行政書士の業務範囲で支援を受けることが考えられます。

ただし、土地の境界確定や測量は土地家屋調査士、相続登記は司法書士、相続人間で争いがある場合や法律紛争については弁護士など、問題の内容によって適切な専門家は異なります。

国庫帰属制度を使う前に売却や引取りも検討する

「使わない土地だから、すぐ国に返そう」と決める必要はありません。

国庫帰属制度は非常に有用な制度ですが、審査手数料、土地の整備費用、建物の解体費用、承認後の負担金などを合わせると相応の費用が必要になる場合があります。

そのため、土地によっては次のような方法も比較しておくことが大切です。

  • 不動産会社を通じた売却
  • 隣接地所有者への売却・譲渡
  • 自治体等への寄附の可能性を確認する
  • 農地であれば農業委員会等を通じて利用希望者を探す
  • 相続土地国庫帰属制度を利用する

実際、法務省の2026年8月31日時点の統計では、制度への申請後に「有効活用の見込みが生じた」ことを理由として取り下げられた案件も多数あります。

隣地所有者から土地を引き受けたいという申出があったり、自治体などによる活用が決まったりするケースもあるため、国庫帰属だけに選択肢を限定しない方がよいでしょう。

相続土地国庫帰属制度でよくある質問

相続した土地なら必ず国に引き取ってもらえますか?

いいえ。建物がある土地、担保権等が設定されている土地、境界が明らかでない土地などは申請できない場合があります。また、申請できても管理に過大な費用や労力が必要な土地は不承認となる可能性があります。

昔相続した土地でも制度を利用できますか?

制度開始前に相続した土地であっても、相続等により取得したことなどの条件を満たせば申請できる場合があります。2023年4月27日以降に相続した土地だけに限定された制度ではありません。

土地に古い家が建っていても申請できますか?

建物が存在する土地は申請できない土地に該当します。制度利用を検討する場合には建物の扱いを先に検討する必要があります。ただし、建物を解体すれば必ず承認されるということではなく、その他の要件についても確認が必要です。

山林でも国に引き取ってもらえますか?

山林であることだけを理由に制度対象外となるわけではありません。ただし、国による追加的な整備が必要な森林などは不承認となる可能性があります。森林の場合、負担金も原則として面積に応じて算定されます。

行政書士に申請を全部任せられますか?

任意代理人が申請者本人に代わって手続きのすべてを行う制度ではありません。申請は原則として本人または法定代理人が行います。一方、法務省は申請書類の作成について弁護士・司法書士・行政書士へ依頼できると案内しています。

申請が認められなかった場合、審査手数料は戻りますか?

原則として、申請を取り下げた場合や却下・不承認となった場合でも、納付した審査手数料は返還されません。申請前に土地の状態や要件を十分確認しておくことが重要です。

相続した土地でお困りの方へ|大倉行政書士事務所

相続した土地については、単に「使う・売る」だけではなく、相続人の確認、戸籍の収集、遺産分割、相続土地国庫帰属制度など複数の手続きが関係する場合があります。

大倉行政書士事務所は奈良県生駒市を拠点として、生駒市・奈良市をはじめ、東大阪市、大阪市やその周辺地域の相続に関する書類作成などのご相談に対応しています。

国庫帰属制度を検討する場合も、まず土地を取得した経緯や相続関係、現在の土地の状態を整理することが大切です。行政書士の業務範囲を超える登記・境界・紛争等が関係する場合には、それぞれ適切な専門分野を確認しながら進める必要があります。

事務所名大倉行政書士事務所
所在地奈良県生駒市山崎町3番11-1
電話番号0743-83-2162
受付時間9:00〜18:00
対応地域生駒市・奈良市・東大阪市・大阪市およびその周辺地域
お問い合わせお問い合わせフォームはこちら

まとめ|不要な相続土地は早めに選択肢を確認する

相続土地国庫帰属制度は、相続によって取得したものの利用予定がなく、売却も難しい土地を所有し続ける負担を解消できる可能性がある制度です。

一方で、国はすべての土地を無条件に引き取るわけではありません。建物の有無、担保権、境界、工作物、地下埋設物、崖、森林の管理状態など、土地ごとの事情が審査されます。

さらに、1筆につき14,000円の審査手数料に加えて、承認後には原則20万円または土地の種類・面積に応じて算定される負担金が必要です。

相続した土地を手放したい場合には、「売却できるか」「隣地所有者等が引き取れるか」「国庫帰属制度を利用できるか」を比較しながら検討するとよいでしょう。

土地を長期間放置すると、草木の繁茂や近隣への影響など新たな管理問題につながることがあります。利用予定のない土地を相続した場合は、そのままにせず早い段階で資料を確認し、今後の方針を整理することが重要です。

参考サイト

その他の関連記事