遺言の受取人が先に亡くなったら?予備的遺言の書き方・文例と注意点 - 相続・遺言・離婚専門の大倉行政書士事務所

2026.09.28

遺言の受取人が先に亡くなったら?予備的遺言の書き方・文例と注意点

遺言の受取人が先に亡くなったら?予備的遺言の書き方・文例と注意点

「自宅は妻に残す」「預貯金は長男に相続させる」と遺言書に書いていても、その人が自分より先に亡くなる可能性はあります。その場合、指定した財産が当然に妻や長男の相続人へ渡るとは限りません。希望に近い形で財産を引き継いでもらうには、最初の受取人だけでなく、万一の場合の受取人も検討しておくことが大切です。

このような備えが予備的遺言です。この記事では、受取人が先に亡くなった場合の考え方、代襲相続との違い、予備的な条項の文例、作成費用の注意点を解説します。特に、自分より先に亡くなる場合と、自分の死亡後に亡くなる場合を区別することが重要です。

予備的遺言とは、万一に備えて次の受取人を決めること

予備的遺言とは、最初に指定した人が遺言者より先に亡くなるなどの場合に備え、別の人に財産を相続させる、または遺贈することを定めておくものです。遺言書の予備のコピーを作ることや、下書きを保管しておくことではありません。

例えば、「原則として妻に自宅を残すが、妻が自分より先に亡くなっていた場合には長女に残す」というように、通常の指定と、その指定が実現しない場合の指定を組み合わせます。基本的な考え方は、日本公証人連合会の予備的な遺言の説明でも確認できます。

最初に整理したい3つのこと

「どの財産を」「最初は誰に」「その人が先に亡くなった場合は誰に」という順番で考えると、希望を整理しやすくなります。法律用語から考え始める必要はありません。

予備的な指定は、財産全体について考える場合も、特定の不動産や預貯金だけについて考える場合もあります。財産ごとに異なる希望があるなら、一つの包括的な文章にまとめるより、どの指定に対する予備的な条項なのかを対応させることが大切です。

受取人が先に亡くなると、遺言書はどうなる?

遺贈は、受遺者が遺言者の死亡以前に死亡すると効力を生じない

遺言によって財産を与えることを遺贈といい、その財産を受ける人を受遺者といいます。民法第994条第1項では、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したとき、遺贈は効力を生じないと定めています。

これは、亡くなった受遺者の子や配偶者が、その遺贈を当然に引き継ぐという仕組みではないことを意味します。例えば、友人に財産を遺贈する予定であっても、その友人が先に亡くなれば、友人の家族へ自動的に同じ財産を渡す扱いにはなりません。

「相続させる」と書いた場合も、当然に子へ引き継がれるわけではない

相続人である長男などに「相続させる」と指定した場合も、その長男が先に亡くなったからといって、指定した財産の全部が当然に孫へ移るわけではありません。予備的な指定があるか、遺言全体からどのような意思が読み取れるかなどを確認する必要があります。

受取人が先に亡くなった既存の遺言については、該当する一文だけを切り出して判断しないことが大切です。他の財産の指定や残余財産の条項によって、検討すべき内容が変わる場合があります。

遺言書全体が無意味になるとは限りません

一人の受取人が先に亡くなった場合でも、別の人への指定まで当然にすべて効力を失うわけではありません。問題になる財産と条項を特定し、遺言書全体を確認してください。

死亡の順番によって、考え方が変わる

先に死亡・同時に死亡・後に死亡を分けて確認

予備的遺言を考えるときは、「受取人が亡くなった」という事実だけでなく、遺言者との前後関係を確認します。死亡後の名義変更が終わっているかどうかと、財産を取得する法律上の時点は別の問題です。

受取人が亡くなる時点基本的な考え方確認するポイント
遺言者より先に死亡その人への指定が予定どおり実現しないため、予備的な指定の有無などを確認します。別の受取人、対象財産、他の条項との関係。
遺言者と同時に死亡相手が遺言者の死亡時に生存していた場合とは区別して考えます。同時死亡を予備的な条項の対象にしているか。
遺言者の死亡後に死亡いったん取得した財産や権利について、その受取人自身の相続が問題になります。最初の遺言だけでなく、受取人の遺言・相続関係。

「手続の前に亡くなった」だけでは、予備的な指定に切り替わらない

例えば、夫が先に亡くなり、その遺言によって妻が財産を取得した後、名義変更の前に妻も亡くなったとします。この場合、妻が夫より先に亡くなった場合の条項が、そのまま適用されるわけではありません。

遺言は原則として遺言者の死亡時から効力を生じます。妻が取得した財産や権利は、妻自身の相続で検討することになります。「夫の死後、すぐ妻も亡くなったから次の候補へ直接渡る」とは限らない点に注意してください。根拠となる基本的な時点は、民法第985条で確認できます。

同じ日に亡くなったことと、同時死亡は同じではない

民法第32条の2には、複数の死亡者について、どちらかが相手の死亡後も生存していたことが明らかでないとき、同時に死亡したものと推定する規定があります。単に死亡日が同じというだけで、必ず同時死亡として扱うわけではありません。

予備的な条項では、同じ事故などによる同時死亡も想定するなら、その旨が分かる表現にしておくと、条件の読み違いを減らせます。死亡の順番が問題になる具体的な案件では、戸籍だけでなく、死亡時刻などの資料も含めて確認が必要になることがあります。

代襲相続があるのに、なぜ予備的遺言が必要なの?

相続人になることと、特定の財産を全部もらうことは別

子どもが親より先に亡くなった場合、その子どもの子、つまり孫が相続人となる代襲相続があります。相続人の範囲については、国税庁の公式説明にも整理されています。

ただし、代襲相続によって孫が相続人になることと、「長男に自宅全部を相続させる」という指定の利益を孫がそのまま引き継ぐことは、同じではありません。孫が相続人に含まれるとしても、問題の自宅について他の相続人との遺産分割が必要になることがあります。

法定相続分と、遺言で希望した配分は一致しないことがある

説明のため、配偶者がおらず、子どもが長男と長女の2人、長男には子どもが1人いる家庭を考えます。長男が先に亡くなり、問題となる財産について有効な指定がない場合、ほかに事情がなければ、長女と長男の子がそれぞれ2分の1の法定相続分を持つ関係になります。

この結果と、「長男に残す予定だった自宅を、長男の子だけに残したい」という希望は異なります。希望を実現するための予備的な指定と、法律上の相続人・相続分の仕組みは、分けて整理しましょう。

「家族なら分かるはず」を条項に置き換える

「長男がいなければ、その子に渡してほしい」という希望があるなら、その受取人と財産を明確にします。遺族の推測や、死亡後の話合いだけに委ねないことが、予備的な指定を検討する意味です。

予備的遺言の書き方と、考え方が分かる文例

以下は、条項の組み立てを説明するための文例です。実際の人物・案件の紹介ではありません。また、遺言書全体のひな形ではなく、この文章だけを印刷・署名すれば有効な遺言書が完成するものではありません。財産の特定、相続関係、方式などは個別に整える必要があります。

文例1:妻が先に亡くなった場合は、長女へ

妻を第一の受取人、長女を予備的な受取人にする例

第1条 遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、妻○○○○(昭和○年○月○日生)に相続させる。

第2条 妻○○○○が遺言者より先に死亡し、又は遺言者と同時に死亡した場合には、前条にかかわらず、遺言者の有する一切の財産を、長女○○○○(昭和○年○月○日生)に相続させる。

この例では、妻が遺言者の死亡時に生存している通常の場合と、先に、または同時に亡くなった場合を分けています。「妻に渡した後、将来、長女に渡す」という二段階の指定ではありません。

ほかにも子どもがいる場合には、遺留分への配慮が必要です。家族関係にかかわらず、そのまま使えば問題がなくなる文章ではないことに注意してください。

文例2:特定の不動産について、長男の代わりに孫へ

対象財産を限定する例

第1条 遺言者は、別紙財産目録1記載の不動産を、長男○○○○(昭和○年○月○日生)に相続させる。

第2条 長男○○○○が遺言者より先に死亡し、又は遺言者と同時に死亡した場合には、前条の不動産を、長男の子である○○○○(平成○年○月○日生)に相続させる。

この例で予備的に指定しているのは、不動産だけです。預貯金なども同じ孫に渡したい場合は、それらをどの条項で指定するのか別に確認します。「前条の財産」と「一切の財産」を混在させると、意図より広い範囲を指定してしまうおそれがあります。

別紙財産目録は別途作成し、登記事項証明書に合わせて土地・建物を特定します。共有不動産であれば、遺言者が持つ持分を確認してください。本文の参照先と目録の番号が一致しているかも、最終確認の対象です。

文例3:予備的な受取人が相続人ではない場合

友人や、養子縁組をしていない子どもの配偶者など、相続人ではない人へ財産を渡すことを考える場合もあります。その場合は、家族内での呼び方だけでなく、法律上の相続関係に合わせて「遺贈する」などの表現を検討します。

特定の財産を、相続人以外へ遺贈する場合の条項例

長男○○○○が遺言者より先に死亡し、又は遺言者と同時に死亡した場合には、第○条記載の財産を、○○○○(昭和○年○月○日生、住所○○)に遺贈する。

この例だけでは、第一の受取人への指定や対象財産の記載が不足しています。実際には、それらの条項と組み合わせます。遺贈の範囲や方法によって手続上の検討事項も変わるため、単に氏名だけを入れ替えて流用しないでください。

書く前に確認したい、5つの注意点

「万一の場合」「受け取れない場合」だけで済ませない

「妻に万一のことがあれば長女へ」と書くと、死亡だけでなく病気や入院まで含むのか、読み手が迷う可能性があります。また、「受け取れない場合」には、先に亡くなる場合、放棄する場合、手続が進まない場合など、異なる事情が含まれ得ます。

どの事実が起きたときに、誰への指定へ切り替えるのかを明確にすることが重要です。死亡以外の条件も入れたいときは、それぞれの条件をどう確認できるかまで考えます。

相続放棄を、先に死亡した場合と一緒に扱わない

相続放棄や遺贈の放棄は、受取人の死亡とは別の制度です。「長男が受け取らなければ孫へ」といった希望がある場合、何を放棄するのか、孫が相続人になるのか、遺贈として指定する必要があるのかなどの整理が必要です。

特に、相続放棄をした人の子が、それだけで代襲相続人になるわけではありません。死亡の場合の文例に、理由を考えず「その他受け取れない場合」を付け加えないようにしましょう。

「妻の死亡後は長男へ」という将来の承継とは区別する

予備的遺言は、妻が遺言者より先に亡くなるなどの場合に、別の受取人を定める備えです。妻が実際に財産を取得した後、その財産を妻の死亡時に誰へ渡すかという問題とは異なります。

「自分の死後は妻に所有権を渡し、その妻が亡くなったら必ず長男へ」という希望については、通常の予備的な条項だけで実現すると考えないでください。妻自身の遺言や、信託などを含めた別の検討が必要になる場合があります。

予備的な受取人が複数いる場合は、分け方まで決める

「長男の子どもたちに渡す」とする場合には、誰が対象なのか、どの割合で分けるのか、一人が先に亡くなった場合をどうするのかを整理します。氏名で特定するか、一定の範囲の人を指定するかによっても、確認点が変わります。

ただし、あらゆる出来事に備えようとして条項を複雑にしすぎると、全体の読み違いを招きます。起こった場合に配分を変えたい事情から優先して整理し、その後の見直しも併せて考えるほうが実用的です。

残余財産や遺言執行者の指定と整合させる

特定の口座や不動産だけでなく、記載しなかった財産を誰へ渡すのかも確認します。第一の受取人への予備的な条項がある一方、「その他一切の財産」の受取人には代わりの指定がない、といった抜けがないかを見直しましょう。

また、財産の受取人と遺言執行者は別の役割です。同じ人を両方に指定している場合、その人が先に亡くなったときに、財産の行き先だけでなく執行する人の手当ても必要になることがあります。

予備的遺言を入れると、公正証書の費用は増える?

同じ証書に併記する場合、財産価額に対応する手数料は二重計算しない

日本公証人連合会は、主となる指定と予備的な指定を1通の遺言公正証書に併記する場合、主となる指定によって手数料を算定し、予備的な指定については別に算定しないと説明しています。

したがって、「妻が受け取る場合」と「妻が先に亡くなり、長女が受け取る場合」を一つの証書で定めたことだけで、財産の価額に対応する手数料が二重になるわけではありません。詳しくは、予備的な遺言の手数料算定に関する公式説明を確認してください。

総額が必ず同じ、追加してもすべて無料という意味ではない

公正証書作成の費用には、証書のページ数や交付方法などに関係する項目もあります。専門家に作成支援を依頼する場合の報酬も、依頼内容ごとに確認が必要です。公正証書遺言の作成手数料の案内を参考に、何が見積りに含まれるかを確認しましょう。

後から別の公正証書を作る場合は別扱い

先に主となる指定だけを作り、後日、予備的な指定を追加するために別の遺言公正証書を作る場合は、その作成について手数料が算定されます。最初の相談で、万一の場合の希望も伝えておくことが大切です。

相談前に用意したい資料と、見直しの進め方

受取人と財産を、対応する表に整理する

最初から完成した遺言案を作ろうとするより、財産と受取人を対応させたメモを用意すると、相談で確認したい部分が分かりやすくなります。予備的な受取人を決められない財産は、空欄のまま相談事項として残して構いません。

準備するもの確認したい内容
家族関係のメモ配偶者、子、孫などの関係と、既に亡くなっている人。
財産の一覧不動産、預貯金などの内容と、遺言者が持つ権利の範囲。
希望する配分第一の受取人と、その人が先に亡くなった場合の受取人。
既存の遺言書作成日、対象財産、残余財産や遺言執行者の条項。
配慮したい事情同居する家族の住まい、受取人の負担、家族間の対立の有無。

公正証書遺言の作成では、戸籍や財産に関する資料等が必要です。どの証明書をどの範囲でそろえるかは、日本公証人連合会の必要資料の案内を参考に、担当する公証人へ確認してください。

受取人の死亡や家族構成の変化があったら、現行の遺言を確認する

受取人が既に亡くなっている場合は、予備的な条項があるかだけでなく、現在の希望と内容が一致するかを確認します。結婚・離婚、子や孫の誕生、不動産の売却、口座の変更なども、確認の機会になります。

作成済みの公正証書の手元の控えに文章を書き足しても、それだけで公証役場が保管する遺言の内容が変更されるわけではありません。既存の遺言と追加する内容の関係を確認し、適切な方式で整えます。

生駒市で、受取人が変わる場合まで見据えた遺言を考える

奈良県生駒市を拠点とする大倉行政書士事務所では、遺言に関する相談や作成に向けた準備を扱っています。最初の受取人だけでなく、その人が先に亡くなった場合の希望まで整理することが、遺言内容を具体化する出発点になります。

例えば、生駒市の自宅について、現在同居する配偶者を優先するのか、将来の管理を考えて奈良市に住む子どもへ残す場合も想定するのかでは、検討する条項が変わります。大阪市に住む家族が関わる場合も、距離だけで受取人を決めず、本人の希望と各人の負担を分けて整理しましょう。

配分や遺言の有効性に争いがある場合は弁護士、登記は司法書士、相続税は税理士など、問題の内容に応じた確認が必要です。予備的な条項は、紛争や税務上の問題をすべて解消するものではありません。

予備的遺言について、よくある質問

受取人が先に亡くなったら、必ず遺言書を作り直す必要がありますか?

既に予備的な指定があり、その内容が現在の希望に合っていれば、死亡の事実だけを理由に必ず作り直すとは限りません。ただし、別の財産や遺言執行者の指定も含め、全体を確認することが大切です。

長男が先に亡くなれば、その子に同じ財産が渡りますか?

長男の子が代襲相続人になる場合でも、長男に残すと書かれた財産の全部を、そのまま取得するとは限りません。特定の財産を長男の子へ渡したいなら、その希望を予備的な条項として検討します。

予備的な受取人には、友人を指定できますか?

相続人以外の人への遺贈を予備的に指定することも検討できます。対象財産、条件、人物の特定を明確にし、遺留分や実際の執行方法も確認します。相続人への指定と同じ文章を機械的に流用しないでください。

妻に財産を渡した後、妻の死後は必ず長女に渡るようにできますか?

それは、妻が自分より先に亡くなった場合に備える予備的遺言とは異なる問題です。妻が取得した財産のその後の承継については、妻自身の遺言や別の仕組みも含めて検討する必要があります。

予備的遺言があれば、遺留分を考えなくてもよいですか?

いいえ。予備的な指定が働く場合も、遺留分のある相続人の権利への配慮は必要です。第一の受取人が取得する場合だけでなく、予備的な受取人が取得する場合の配分も確認します。

まとめ:財産の行き先を「次の場合」まで整理する

予備的遺言は、受取人が自分より先に亡くなるなどの事態に備える方法です。誰へ渡すかだけでなく、どの条件で、どの財産の受取人を変更するかを明確にします。

代襲相続で誰かが相続人になることと、遺言で指定した財産をそのまま受け取ることは別です。また、自分の死亡後に受取人が亡くなる場合まで、同じ条項で処理できるとは限りません。家族関係と財産の一覧を用意し、通常の場合と万一の場合の両方を確認しておきましょう。

参考サイト

法令・手続の案内は2026年9月28日時点の確認内容に基づきます。文例は一般的な説明用であり、個別の遺言の効力、相続関係、税務判断を保証するものではありません。

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