2024.04.14
公正証書で養育費の変更をしたい!作り直しはできるのか?
離婚時に作成した公正証書の養育費が、離婚後の事情により減額や増額をしたいとお考えの方は意外と多いかもしれません。このような場合には、養育費の変更は可能なのでしょうか。結論として可能です。ただし、そのような場合には下記⑴から⑶による養育費の改定が必要です。今回の記事では、その中でも下記⑴公正証書の作り直しによる養育費の変更ついて解説します。
【養育費の変更方法】
⑴公正証書の作り直しによる養育費の変更
⑵家庭裁判所の調停による変更
⑶家庭裁判所の審判による変更
公正証書で決めた養育費の変更が起こる事情とは
養育費の額を変更する理由として考えられることはさまざまですが、例えば、従前の契約に再婚や同棲による養育費の減額を定めていた場合や、支払い義務者の病気や失業による収入の大幅な変化により変更を検討されることがあります。養育費は、未成年の子供が成年に達するまでの間、夫婦がそれぞれの収入に応じて子供の監護や養育にかかる費用を公平に負担するものですので、このような特別な事情があれば夫婦の合意、家庭裁判所の調停又は審判により養育費の減額が可能な場合あります。
養育費の変更が認められる根拠は
養育費の変更は、民法第766条により「家庭裁判所は、必要があると認めるときは、子供の親権、面会交流、養育費等を変更し、相当な処分を命ずることができる」という趣旨の規定があることから、公正証書の作成後であっても夫婦間の合意があれば養育費は変更できるものと考えられます。そのため、公正証書に清算条項や養育費の増減をしないことが記載されていたとしても、裁判所により必要があると認められれば養育費の変更ができる可能性があります。
公正証書の作り直しによる養育費の変更
離婚時に公正証書を作成していたとしても、養育費の変更の際に、公正証書を作り直しすることは可能です。厳密にいうと作り直しではなく、従前の契約の一部(養育費)を変更するケースがほとんどです。公正証書により養育費を変更するには、離婚時に作成した公正証書の手続と同様に、当事者間で養育費の変更後の額を話し合い、合意した上で行う必要があります。
【公正証書への記載例】 ○○(以下甲という)と○○(以下乙という)は、○○法務局所属公証人○○○○令和○年○月○日作成同年第○○号離婚給付等契約公正証書の「第○条」の養育費を次のとおり変更すること合意し、甲は、乙に対し、次の変更された内容で支払う。 |
調停で決めた養育費の変更はできるの?
調停によって夫婦で合意し決定した養育費も、その後事情が変われば合意の上、変更することが可能です。調停の場合、調停の成立時に作成された調停調書があるかと思います。調停条項には、未成年の子の親権や養育費に関する記載がされていることが通常であり、養育費を変更するには、調停条項で定められている養育費を新しく作成する公正証書により変更する必要があります。この場合には下記のように、変更の対象となる事項を特定して記載します。なお、この場合の養育費の変更は、公正証書でなく私文書による変更でも可能ですが、通常は公正証書によって変更します。
【公正証書への記載例】 ○○(以下甲という)と○○(以下乙という)は、○○家庭裁判所令和○年(家イ)第12345号 夫婦関係調整調停事件の令和○年○月○日に成立した調停調書の「調停条項第○項」の養育費を次のとおり変更すること合意し、甲は、乙に対し、次の変更された内容で支払う。 |
公正証書で決めた養育費の変更ができない場合
万一、夫婦間の合意が出来なかった場合には、家庭裁判所の手続(調停や審判)に移行します。家庭裁判所は、養育費の金額を変更することが民法により定められていますが、変更は裁判官が必要と認めた場合なされますので、必ず申立人の要望が聞き入れられるわけではありません。
第766条(離婚後の子の監護に関する事項の定め等) 1 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。 2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。 3 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前二項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。 4 前三項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。 |
公正証書による養育費の変更は当方にお任せください
上述のとおり、公正証書や調停調書で定めた内容であっても、双方の合意があれば変更することが可能です。当方は、全国対応にて依頼を承っておりますので、遠方の方であってもお気軽にお問い合わせください。
料金
当事務所に公正証書の作り直しを依頼いただいた場合の料金と費用は下記でございます。
サービス | 料金 | 概要 |
公正証書作成費(養育費変更) | 50,000円~ | 公正証書や調停調書で定めた養育費の金額を公正証書によって変更するサポートをいたします。 |
お客様の声
お客様の声の全部はこちらからご確認いただけます。
公正証書による養育費変更の流れ
当事務所にご依頼いただいた場合の、公正証書の作成までの流れを記載いたします。
1.連絡
まずは、電話や問い合わせフォームなどから養育費の減額又は増額を公正証書によって定めたい旨をご連絡ください。なお、この時点で当事者間で養育費の変更について合意いただいている必要があります。
2.お伺いした内容を元に公正証書の案文を作成します
契約とお支払後に、下記の書類をメール等でお送りいただきます。それらの書類を拝見し打ち合わせによってお伺いした内容を元に公正証書の案文を作成します。
3.公正証書案のご確認
上記により作成した公正証書案を確認いただき、間違いがなければ必要書類をご準備いただき公証役場に作成内容や作成予定日の打ち合わせをさせていただきます。なお、必要書類については当方により代理で集めることも可能です。
4.公正証書の作成
公正証書の原稿が公証人から届きましたら、再度内容を当事者でご確認いただきます。原稿の内容について間違いがなければ、作成日を決定しお持ちいただく書類や手数料をお伝えします。
5.公正証書の作成
上記により決めた作成日に当事者であるお二人が公証役場に行っていただきます。代理人による作成も可能な場合がありますが、原則はお二人で行っていただくこととなりますので、その点ご了承ください。作成には下記のものが通常必要です。
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード)
- 認印
- 手数料
公正証書により養育費を変更する場合の補足
調停調書により定められている内容に、債務者による通知義務(住所や勤務先を変更したときに相手方に対する通知を義務づける条項)が無い場合には、これを加えておくことをおすすめします。この条項は相手に通知を強制する効力はありませんが、子供の養育費が発生する期間については、債務者による不払いがあった場合や子供の事故や病気が起きた場合の連絡に備えて、いつでも債権者が債務者の居場所を把握しておくことはとても大切です。
当事務所が対応できない養育費の変更について
下記の依頼については、対応出来かねます。
⑴既に、養育費について強制執行がされている場合
このような場合には、強制執行の取り下げを裁判所に申し立てる必要があり行政書士の業務範囲ではありません。
⑵養育費の減額について合意できていない場合
行政書士は、養育費変更について相手の方に対して、提案や交渉はできませんので弁護士等の業務範囲となります。
⑶養育費の支払条件が曖昧
養育費を支払うことの合意ができていたとしても、月々の支払金額が定まっていたなかったり、支払時期が決まっていない場合には公正証書により記載することができません。
養育費の変更についてよくある質問
Q1.調停後に公正証書を作成すればよいでしょうか。
調停が成立した場合、調停調書が作成されますので公正証書は不要です。
Q2.公正証書で契約するメリットはなんでしょうか。
公正証書による養育費の支払い契約は、不払いや遅延などの契約違反があった場合に、支払義務者側の財産を差し押える強制執行が可能になります。支払義務者は強制執行が履行されないように公正証書の内容を守るよう努めるでしょう。
Q3.公正証書の内容変更は覚書でも大丈夫でしょうか。
覚書で作成した場合には、覚書で変更したところについての強制執行はできませんので当事者間では有効ですがあまりお勧めしません。
Q4.再婚したので養育費を減額したいのですが可能でしょうか。
債務者の再婚による養育費の減額は、難しいかと思います。ただし、相手の方が減額を認めるのであれば合意に基づき変更することができます。
Q5.養育費の一括による支払い変更は可能でしょうか
はい。一括払いすることも可能です。しかし、実際は養育費を一括支払にするケースはかなり少ないです。確かに一括払いすることで、養育費の支払義務のあるものは早々に義務を逃れることができますが、支払後に当事者一方による事情の変更が生じたときに既に支払っている養育費を増額することは難しいと考えられます。