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2023.12.10

相続で前妻の子には相続権はあるのか?

相続で前妻の子には相続権はあるのか?

こちらの記事では、前妻の子に相続権はあるのかどうかを主題に、相続の意味や相続によって引き継がれる財産が誰の者になるのかなど説明させていただきます。

そもそも相続とは?

一般的な相続の図

法律でいう相続とは被相続人(亡くなった方)の死亡によって、被相続人の権利義務を相続人(被相続人の財産等を受け継ぐ者)が包括的に承継することをいいます。承継とは法律用語で権利や義務を引き継ぐことを言います。上記の家族のケースでは、法定相続人は配偶者(法定相続分:2分の1)と子供(法定相続分:2分の1)となり、長男と長女の各相続分は4分の1ずつとなります。

相続では、被相続人の権利だけでなく義務も承継することとなりますので、預金や不動産等のプラスの遺産以外にも、借金等のマイナスの遺産も相続人が引き継ぐこととなります。つまり、被相続人のプラスの財産のみを引き継ぎ、マイナスの財産は引き継がないということはできません。ただし、被相続人が生前に多額の借金などがあり、被相続人のプラスの財産だけでは補えない場合には、一定の手続を経ることで被相続人の権利義務を放棄することができます。(相続放棄)

相続人の範囲を知りましょう

相続人の範囲は民法により、次のとおり定められています。

配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の者は、次の順位により配偶者と一緒に相続人になります。なお、相続を放棄した者は初めから相続人でなかったものとみなされますので、相続を放棄した者に代襲相続(※1)はありません。

常に相続人:配偶者
第一順位:子供
第二順位:直系尊属
第三順位:兄弟姉妹

※1)代襲相続とは、相続人が被相続人より先に死亡していた場合等に死亡した相続人の子供や孫が被相続人の財産を受け継ぐことをいいます。代襲相続は子供と兄弟姉妹に認められており、子供には代襲相続(再代襲相続)が何代にも続いて認められていますが、兄弟姉妹には再代襲相続が認められていません。

第一順位:子供

子供は被相続人の配偶者と一緒に相続します。配偶者が亡くなっている場合には子供のみ相続権を有します。仮に、被相続人の直系尊属(親)や兄弟姉妹がいたとしても子供が生きている限りは、これらの者は相続人となりません。

配偶者が死亡しているケースで子供が2人いる場合、子供が被相続人の財産を2分の1ずつ相続します。ただし、相続人間の協議によって相続分を変えることも可能です。

(配偶者との相続分)
配偶者:2分の1
子供:2分の1

第二順位:直系尊属

被相続人と配偶者の間に、子供がいない場合には被相続人の直系尊属である父や母が配偶者と一緒に相続します。直系尊属は、代襲相続が認められておらず、父と母が両方亡くなっている場合には祖父母が被相続人の財産を相続します。配偶者と子供がいない場合には、直系尊属が被相続人の財産を全て相続します。

(配偶者との相続分)
配偶者:3分の2
直系尊属:3分の1

第三順位:兄弟姉妹

被相続人に子供、直系尊属がいない場合には、被相続人の兄弟姉妹が配偶者と一緒に相続します。配偶者が既に亡くなっている場合には、子供や直系尊属と同様に兄弟姉妹が被相続人の財産を全て承継します。兄弟姉妹には再代襲相続がなく、被相続人の甥と姪が亡くなっている場合には甥の子や姪の子に財産が承継されることはありません。

(配偶者との相続分)
配偶者:4分の3
兄弟姉妹:4分の1

相続で前妻の子供には相続権はあるか

前妻の子は、その子供の境遇によって相続権がある場合と無い場合があります。それは、前妻の子供と被相続人の関係が実の親なのか、前妻の連れ子なのか等によって相続できるかどうかが異なります。

前妻の子供に相続権がある場合

前妻の子に相続権がある場合

⑴前妻の子が被相続人の嫡出子であった場合

前妻の子が被相続人と前妻との間で生まれた子であれば、その子には相続権があります。しかし、前妻の子に相続権が認められるためには、その子供が嫡出子(※1)である必要があり、非嫡出子(※2)の場合、相続権は認められません。(認知された非嫡出子は相続権が認められます。後述しております。)また、婚姻の成立の日から200日間の間に生まれた子や婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定されますので、これらの子についてには相続権が認められています。(嫡出推定制度)

※1)嫡出子とは、婚姻関係にある男女の間に生まれた子供のことです。
※2)非嫡出子とは、法律上の夫婦関係でないときに男女の間に生まれた子供のことです。つまり、役所に婚姻届を提出していない状態でできた子供のことをいいます。

⑵前妻の子を認知していた場合

前妻の子が非嫡出子の場合は、相続権がないと先述しました。しかし、前妻の子供が、非嫡出子であったとしても被相続人(父親)が届出や遺言等によって被相続人が認知(※3)をしていた場合には、前妻の子は被相続人の相続人となります。認知の方法はいくつか存在し、一般的な認知方法として①胎児の状態で行う認知②認知届の提出によってする認知③遺言による認知等が挙げられます。

※3)認知とは、非嫡出子を、その父親が自分の子供であると認めることです。母親はその子供がお腹から生まれた時点で法律上の親子関係が生じますので、母親の認知は一部の例外を除きほとんどありません。

⑶遺言によって前妻の子に相続させた場合

前妻の子が非嫡出子であったとしても、被相続人が生前に遺言により自らの財産を前妻の子に遺贈させるとしている場合は、血縁関係のない前妻の連れ子等についても被相続人の財産を受け継ぐ場合があります。このようなケースによる財産の承継は、相続ではなく遺贈によって行われたことになります。

★ポイント
遺贈も相続も財産の承継には変わりありませんが、遺言書で第三者に財産を渡すことを遺贈といい、法定相続人による財産の引き継ぎを相続といいます。

相続で前妻の子に財産を渡したくない

前妻の子に相続したくない場合

自分が死んでしまったときに、前妻の子に財産を残さず現在の妻と子供に財産を全て残したいと考えられる方は少なくありません。このような場合には遺言や生前贈与等の方法により、前妻の子に財産を相続させない方法が考えられます。しかし、前妻の子が嫡出子である場合には、遺留分(※4)が認められているので、被相続人の全部の財産を渡さないというのは難しいところです。

※4)遺留分とは、配偶者や子供、直系尊属が認められている最低限の相続分のことであり、遺言内容が全ての財産を特定の者に相続させる内容であったとしても、遺言により一定の相続分を得られなかった配偶者や子供、直系尊属が遺贈を受けた者に対し、遺留分を侵害する額の支払を請求することができます。なお、被相続人の兄弟姉妹には遺留分が認められておりませんので、ご注意ください。

これらの内容を踏まえて、どのように対策すれば前妻の子にできる限り財産を相続させないのか以下に解説いたします。

1.遺言書による方法

遺言書の例文

遺言によって、相続権を持つ前妻の子に自分の財産を相続させないためには以下の手順により遺言書を作成する必要があります。

⑴財産の帰属を全て特定しておく
遺言によって前妻の子に遺産を相続させないようにするには、全ての財産の帰属を特定の者に帰属させる記載しておくなどが考えられます。例えば、以下のような記載にしておけば遺言によって前妻の子に遺産が行くことはありません。

【遺言書文例】

第1条(預貯金)
 遺言者は、遺言者の有する別紙の預貯金を甲に相続させる。

第2条(不動産)
 遺言者は、遺言者の有する別紙の不動産を乙に相続させる。

第3条(その他財産)
 前各条以外の財産が見つかった場合、その他一切の財産は甲に相続させる。

⑵付言事項により遺留分侵害額請求権をしないよう求める

遺言には、主に遺言事項と付言事項の2つに分けることができます。遺言事項とは、遺言書に記載することで法的な効力を有する事項のことをいい、付言事項とは、遺言書に記載する法的に効力の有しない事項のことをいいます。遺言事項は民法等の法律によって定められており、定められていないものについては付言事項に記載します。

現行民法では、遺言事項に遺留分侵害額請求権を否定する内容を記載することが認められていませんので、遺言者が、前妻の子に遺留分侵害額請求権を行わないことを求めるには、付言事項によって記載することとなります。付言事項に遺留分侵害額請求権の行使を記載する際には下記のように記載します。

【付言事項の例】

私は、○○(前妻の子)に遺留分侵害額請求権の行使をしないことを強く希望します。○○(現在の妻)と○○(現在の子)は私が入院しているときも、自宅にいるときも足腰の悪い私を一生懸命に看病などしてくれました。私の財産も少ないため、残りの財産は○○(現在の妻)と○○(現在の子)が生活の足しにしてくれれば嬉しいです。○○(前妻の子)には離婚後、なかなか連絡してやれなかったけれど、本当に感謝しています。

2.贈与によって生前の財産を減らしておく

被相続人が亡くなる前に、配偶者やその子供に贈与しておくことで被相続人の相続が発生した際の財産を減らすことができます。贈与税の基礎控除は110万円までですが、夫婦の婚姻期間が20年以上の場合には、基礎控除のほかに最高2,000万円まで配偶者控除を利用することができます。

3.相続人の排除を検討する

相続人が被相続人の生前に、虐待や重大な侮辱を加えた場合等には、被相続人は生前に対象の相続人を家庭裁判所への請求や遺言によって相続権の剥奪を行うことができます。しかし、相続人の排除は請求すれば必ずしも認められるわけではなく、その事実が家庭裁判所によって認められた場合のみ有効です。

相続で前妻の子に相続させないために公正証書で遺言を作成する

前妻の子供にできる限り財産を相続させないための方法として、遺言書を作成することは有効です。万一、遺言書を作成せずに相続が発生した場合には、前妻の子を含めて遺産分割を行うことになりますので、配偶者やその子供にとっては、非常に面倒な手続きを行わなくてはいけません。以下は公正証書で遺言書を作成する手続の流れを解説になります。

遺言公正証書の作成手順

遺言書作成の手順(フローチャート)

1.遺言書の案文を作成する

公正証書を作成するには、公証人に遺言書の案文を提出しなくてはいけません。遺言書の案文の作成は、ご自身で本やネットのテンプレートを見て作成することができますが、記載する財産が高額になる場合や、複雑な内容を含む場合には、行政書士や弁護士などの専門家に案文の作成を依頼して手続を進めることをお勧めします。

2.必要書類を準備する

遺言公正証書の作成には、以下の書類を準備して事前に公証人に対してメールや郵送により送る必要があります。なお、本人確認書類(印鑑登録証明書)については、当日に原本が必要ですので、必ずご持参ください。

【必要書類】

3.公証人に案文の作成を依頼する

案文が完成し、必要な書類が集まりましたら、これらをメールや郵送により公証人に提出します。提出後、約1、2週間で公証人から遺言公正証書の原案がメール等によって届きます。原案を確認し、変更等が無い場合にはその旨を伝えましょう。変更がある場合には、新たな変更文案を作成し、再度修正を依頼しましょう。

4.証人の手配

遺言公正証書の作成には、公証人1名の他、証人2名の立会いが必要となります。証人は利害関係のある者はなることはできませんので、行政書士等の専門家に依頼して進めると楽でしょう。また、公証役場においても事前の相談により証人を手配することが可能です。

5.公正証書の調印

上記の手続が終わりますと、公証役場において、公正証書の調印を行います。調印では、公証人が公正証書の内容を読み上げ内容に間違いがないかを確認します。内容に間違いがなければ公証人にその旨を伝え、公正証書に署名と押印(実印)をし、手続は以上となります。

遺言公正証書の作成サポートにも対応しております

遺言公正証書の作成サポートは大倉行政書士事務所にもご依頼いただけます。弊所にご依頼いただけますと貴方のご希望に沿った内容の遺言書作成をサポートさせていただきます。弊所ではこれまでに公正証書をはじめとした遺言書の作成に数多く携わらせていただいた経験があります。ご自身で作成するのにご不安をお抱えの方は是非一度ご相談ください。

また、公正証書以外にも自筆証書の遺言書もサポートさせていただくことが可能ですので、金額面で検討されている方や時間的に早く作成したい方は自筆証書による遺言書の作成もご検討ください。

遺言作成風景(自筆証書遺言)

遺言書の作成は以下のようにして実施いただきます。(写真はネットへの転載の許可を得ております。

自筆証書遺言作成の風景

自筆証書遺言作成のサポートでは、実際にご依頼者様のご自宅にお伺いし、事前に作成していた遺言書の案文を遺言書用紙にそのまま記載していただきます。記載中にわからないことがあればその都度ご質問いただくこともできますし、サポートは遺言書の保管方法までしっかりとさせていただきますので、ご安心してご依頼いただけます。

遺言サポート費用

サポート内容 費用 概要
自筆証書遺言作成サポート 40,000円75,000円 自筆証書による遺言書の作成をサポート致します。
公正証書遺言作成サポート 80,000円110,000円 公正証書による遺言書の作成をサポート致します。公証役場の手続もサポート致します。
遺言書の添削 15,000円 作成された遺言書を確認し添削致します。

※)ご依頼の範囲や内容によって料金を御見積させていただきます。

相続で前妻の子には相続権はあるのか?ーまとめ

最後までご覧いただきありがとうございました。前妻の子が被相続人の嫡出子等である場合には、前妻の子にも相続権が認められ、前妻の連れ後や非嫡出子である場合には相続権が認められておりません。

前妻の子が嫡出子であり、自分の財産を残したくない場合には遺言書の作成や生前贈与による対策を検討する必要があります。

「相続では前妻の子にも相続権があるか?」を執筆した行政書士

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