法定養育費は月2万円?2026年4月の新制度と養育費の書面化・差押えを行政書士が解説 - 相続・遺言・離婚専門の大倉行政書士事務所

2026.10.01

法定養育費は月2万円?2026年4月の新制度と養育費の書面化・差押えを行政書士が解説

法定養育費は月2万円?2026年4月の新制度と養育費の書面化・差押えを行政書士が解説

2026年4月1日から、離婚後の子の養育に関する民法等の改正法が施行され、養育費について大きな制度変更が行われました。

特に注目されているのが「法定養育費」です。2026年4月1日以降に離婚した場合、離婚時に養育費の金額を決めていなくても、離婚時から引き続き子どもの監護を主として行う父母は、一定の条件のもとで、もう一方の親に対して子ども1人当たり月額2万円の法定養育費を請求できるようになりました。

ただし、ここで非常に重要なのは、月2万円が「一般的な養育費の適正額」や「養育費の上限」になったわけではないということです。

法定養育費は、父母が適切な養育費を正式に取り決めるまでの、暫定的・補充的な制度です。実際の養育費は、父母の収入、子どもの人数や年齢、生活状況などを踏まえて決める必要があります。

最初に整理しておきたい3つの数字

月2万円は、一定の場合に取決めがなくても請求できる法定養育費の額です。月8万円は、養育費債権に与えられる先取特権の子1人当たりの上限額です。この2つは全く別の数字です。また、父母が合意する実際の養育費の額が2万円や8万円に制限されるわけでもありません。

法定養育費とは?2026年4月1日に始まった新制度

これまで、離婚時に養育費を決めないまま離婚した場合、後から養育費を受け取るには、父母で改めて話し合うか、家庭裁判所の調停・審判などを利用して具体的な金額を定める必要がありました。

2026年4月1日施行の制度では、離婚時に養育費を決めていない場合でも、離婚時から引き続き子どもの監護を主として行う父母が、他方の親に対して暫定的な養育費を請求できる仕組みが設けられました。

項目 法定養育費の内容
制度開始 2026年4月1日
対象となる離婚 2026年4月1日以降に離婚した場合
金額 子ども1人につき月額2万円
請求する側 離婚時から引き続き子どもの監護を主として行う父母
制度の性質 正式な養育費の取決めまでの暫定的・補充的な制度

例えば、対象となる子どもが2人いる場合には、法定養育費は原則として合計月4万円という計算になります。

しかし、これを見て「離婚後の養育費は今後、子ども1人2万円でよい」と理解してはいけません。

月2万円は養育費の「標準額」ではない

法務省も、法定養育費について、適切な養育費が決まるまでの暫定的・補充的なものと説明しています。

実際の養育費は、父母それぞれの収入、子どもの人数、年齢などの個別事情を考慮して決めることになります。話合いで決められない場合には、家庭裁判所の調停・審判を利用する方法があります。

「2万円で決まり」と考えないことが重要です

法定養育費が月2万円だからといって、年収や子どもの生活状況を問わず、本来の養育費も2万円でよいという意味ではありません。法定養育費は、何も決まっていない状態を一時的に補うための制度です。

離婚時に十分な話合いができるのであれば、法定養育費に頼るよりも、最初から具体的な養育費を決めて書面にしておく方が、その後のトラブルを防ぎやすくなります。

共同親権になれば養育費を払わなくてよい?

2026年4月からは離婚後の親権制度も変わったため、「共同親権なら養育費は発生しないのではないか」という疑問を持つ方もいます。

しかし、親権と養育費は別の問題です。

離婚によって親権者でなくなった場合であっても、子どもの親であること自体がなくなるわけではありません。また、共同親権を選択した場合でも、子どもの生活費や教育費を父母がどのように負担するかを決める必要があります。

法定養育費についても、「共同親権か単独親権か」という名称だけではなく、離婚時から引き続き誰が子どもの監護を主として行っているかなど、制度上の要件を確認することになります。

養育費を決めるなら何を書面にする?

法務省は、養育費の取決めについて、金額だけでなく支払期間、支払時期、振込先などを具体的に決め、口約束ではなく書面に残すことを案内しています。

離婚協議書などを作成する場合には、最低限、次の事項を確認しておくことが重要です。

決めておきたい事項 記載例・確認内容
養育費の月額 子どもごとの金額を明確にします。複数の子どもがいる場合には総額だけでなく内訳を決めておく方法もあります。
支払開始時期 離婚成立月、翌月など、いつの分から支払うのかを明確にします。
毎月の支払日 毎月末日、毎月25日など具体的な日を定めます。
振込先 指定口座への振込とし、振込手数料をどちらが負担するかも検討します。
支払期間 何歳まで、または大学卒業時までなど、当事者の合意に応じて具体化します。
進学費用等 入学金、授業料、高額な医療費など通常の養育費とは別の費用をどう負担するか検討します。
事情変更 失業、転職、再婚、進学など大きな事情変更が生じた場合の協議方法を決めることがあります。

特に支払期間については、「成年になるまで」とだけ書く場合は注意が必要です。現在の成年年齢は18歳ですが、養育費は子どもが経済的・社会的に自立するまでの費用という性質があり、成年年齢が18歳だから養育費も必ず18歳で終了するという関係ではありません。

養育費の「月8万円」は何の金額?

2026年4月の改正では、法定養育費だけでなく、養育費の支払を確保するための制度も強化されました。

その一つが養育費債権に対する先取特権です。

先取特権とは、法律上一定の債権について、債務者の財産から他の一般債権者に優先して弁済を受けられる権利です。

養育費について先取特権が認められる額は、子ども1人当たり月額8万円が上限とされています。

数字 意味
月2万円 養育費の取決めがない場合に一定の要件のもとで請求できる法定養育費
月8万円 養育費債権について先取特権が付与される子ども1人当たりの上限額

8万円は養育費の上限ではありません

父母が「養育費は月10万円」と合意すること自体が、月8万円という数字によって禁止されるわけではありません。8万円は先取特権が付与される範囲に関する数字であり、養育費そのものの上限額とは意味が異なります。

公正証書を作らなくても差押えできるようになった?

今回の改正で実務上大きなポイントとなるのが、養育費について一定の先取特権が認められたことです。

これまで、父母間で私的な合意書を作っているだけの場合、養育費を支払ってもらえなくなったときに強制執行するには、公正証書や調停調書、審判書などの債務名義を取得する必要が問題となっていました。

現在は、養育費の存在を証明する父母間の合意書等があるなど所定の要件を満たす場合には、先取特権に基づく差押えを利用できる制度が設けられています。

ただし、「手書きのメモが1枚あれば必ずすぐ給与を差し押さえられる」という意味ではありません。

差押えを申し立てるには、どのような養育費債権が存在するのかを証明する書類など、民事執行手続上の要件を満たす必要があります。

公正証書が不要になったわけではない

新制度ができた後も、離婚給付契約を公正証書にしておく意味がなくなったわけではありません。

養育費以外にも、財産分与、慰謝料、解決金その他の金銭給付を定めるケースがあります。また、養育費についても、合意内容や将来の執行方法を明確にしておくことには大きな意味があります。

どの書面が適しているかは、離婚条件の内容によって異なります。

書面化の基本

養育費の新制度ができたからこそ、「金額」「対象となる子」「開始月」「支払日」「終期」が第三者から見ても分かるように書面を整えておくことが重要です。

法定養育費があるなら離婚時に何も決めなくてよい?

法定養育費が創設されたことで、「離婚を急いでいるので、養育費は何も決めずに離婚しても大丈夫」と考えることもできます。

しかし、可能であれば離婚時に具体的な条件を整理しておくことをおすすめします。

法定養育費はあくまで暫定的な制度であり、父母の実際の収入や子どもの生活費を反映して月2万円という金額が設定されているわけではありません。

また、養育費以外にも、離婚時には次のような事項を検討することがあります。

項目 確認する内容
親権 単独親権・共同親権を含め、子どもの利益を基準に検討します。
養育費 月額、期間、支払日、振込方法などを決めます。
親子交流 頻度、方法、連絡方法などを子どもの利益に配慮して検討します。
財産分与 預貯金、不動産、保険、自動車等の夫婦財産を整理します。
年金分割 制度の対象となる場合は必要な手続を確認します。

条件を決められる状態であれば、後回しにするより離婚協議書などへ具体的に記載した方が、後日の認識違いを防止しやすくなります。

養育費を決める実務上の流れ

協議離婚で養育費を決める場合には、次のように整理すると進めやすくなります。

父母それぞれの収入資料を確認する

源泉徴収票、給与明細、確定申告書などを確認し、お互いの収入を把握します。

養育費の金額と期間を協議する

家庭裁判所で用いられている養育費算定表も参考になりますが、算定表だけで全てが自動的に決まるわけではありません。子どもの教育や医療など具体的事情も確認します。

特別費用を整理する

大学進学、私立学校への進学、高額な医療費、留学など、毎月の養育費だけでは整理しにくい支出をどのように負担するのか検討します。

合意内容を書面にする

離婚協議書などに具体的な内容を記載します。公正証書化する場合には、公証役場へ提出する原案や必要資料も整理します。

離婚後も記録を残す

銀行振込による支払記録、住所変更の連絡、進学に関する協議内容などを残しておくと、後日の確認が容易になります。

養育費が支払われなくなった場合

養育費について合意しても、実際に支払いが止まるケースがあります。

家庭裁判所の調停や審判などで養育費が定められている場合には、履行勧告などを利用できる場合があります。また、要件を満たせば給与・預貯金等に対する差押えを検討することになります。

2026年4月1日からは、養育費等を請求する民事執行についても手続が見直され、財産開示、勤務先情報の取得、給与債権の差押えにつながる制度が整備されています。

ただし、どの手続を使えるかは、現在持っている書面や債務名義、未払い額、相手方の勤務先・財産状況などによって異なります。

未払いが起きてから書面を作るのは難しくなることがあります

関係が悪化してから相手方へ新たな書面への署名を求めても、応じてもらえないことがあります。合意できる段階で具体的な条件を書面にしておくことが重要です。

よくある質問

2026年4月から養育費は全員月2万円になったのですか?

いいえ。月2万円は、2026年4月1日以降に離婚し、養育費の取決めをしていない場合に一定の要件のもとで利用できる法定養育費です。通常の養育費の標準額や上限額ではありません。

子どもが2人なら法定養育費はいくらですか?

法定養育費は子ども1人当たり月額2万円とされているため、対象となる子どもが2人であれば原則として合計月4万円となります。

月8万円という金額は養育費の上限ですか?

違います。月8万円は、養育費債権について先取特権が付与される子ども1人当たりの上限額です。父母が合意できる養育費そのものを月8万円以下に制限する制度ではありません。

新制度ができたので公正証書は作らなくてよいですか?

一概にはいえません。新制度により一定の書面に基づく差押えの選択肢は広がりましたが、公正証書には合意内容を明確化する意味があり、養育費以外の金銭給付を定めるケースもあります。離婚条件全体を見て判断する必要があります。

共同親権なら養育費を払わなくてもよいですか?

共同親権であることだけを理由に養育費の負担がなくなるわけではありません。親権と、子どもの生活・教育に必要な費用を父母が負担する問題は分けて考える必要があります。

養育費は18歳になれば必ず終わりますか?

成年年齢が18歳であることと、養育費の支払期間が当然に18歳までとなることは同じではありません。養育費は子どもの経済的・社会的な自立なども関係するため、離婚時には終期を具体的に協議して書面化しておくことが大切です。

まとめ|法定養育費に頼り切らず具体的な取決めを

2026年4月1日から、養育費を決めないまま離婚した場合でも、一定の条件を満たせば子ども1人につき月額2万円の法定養育費を請求できる制度が始まりました。

これは、養育費が何も決まっていない状態で子どもの生活費が確保できなくなることを防ぐための、暫定的・補充的な仕組みです。

月2万円が適正な養育費の基準になったわけではありません。可能であれば、父母の収入や子どもの生活状況に合わせて具体的な養育費を決め、離婚協議書などの書面へ残しておくことが重要です。

また、月8万円という数字は先取特権の上限に関するもので、養育費自体の上限ではありません。2万円と8万円の意味を混同しないようにしましょう。

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