2024.06.09
離婚協議書の内容を変更するには
「離婚時に作成した離婚協議書の内容を変更できますか。」という質問を受けることがあります。離婚協議書には、養育費や財産分与等の記載することが通常ですが、このような協議内容を変えることはできるのでしょうか。結論として、可能です。しかし、離婚協議書の内容を変更するには、改めて元配偶者と協議をして変更内容の合意をする必要があります。そのため、変更の対象となる離婚協議書の記載表現や、変更時の相手方との関係性によっては、変更が難しい場合もあります。そのようなケースで相手による変更の合意ができない場合には、調停等を利用した対応をする必要があるでしょう。
こちらの記事では、作成した離婚協議書の内容を変更することが難しいケースや、離婚後に協議の内容を変更しやすくするための記載方法並びに離婚協議書の変更方法等について詳しく述べております。
離婚協議書の内容変更は可能か?
離婚協議書を作成して、無事に夫婦で離婚届を提出したとしても、離婚後に協議内容を変更することは可能です。しかし、離婚により一区切りついた夫婦関係で改めて離婚協議の内容を話し合うことは難しいと考えられます。スムーズに変更の合意を得るためにも従前の契約において後日の話し合いのする合意をしておくことや、子供との面会交流時に相手と多少の会話しておくことが大切でしょう。
離婚協議書の内容を変更するためには
離婚後の協議内容の変更による話し合いを円滑に進めるためには、どのような対策が必要でしょうか。下記では、具体的な内容について解説します。
従前の協議書に変更出来ることを記載しておく
離婚後に協議内容を変更しやすくするためにも「双方の協議によって、面会交流の頻度を変更することができる。」、「離婚後2年間は年金分割を請求することができる。」などと協議書によって定めておくことは大切です。このような表現があると、協議内容の変更を相手に請求した時に話し合いがスムーズに進み、変更の合意が得られやすいと考えられます。
もっとも、作成時に双方が合意し離婚条件を確定しておき、今後の変更を認めない内容にしておいた方が、作成後も紛争の恐れがなくなると考えられますので、当然よいです。どうしても、離婚協議書の作成後に、話し合いにより離婚条件を決めなくてはいけない事情等がある場合には、仕方ありませんので先述のように、離婚協議書の文中に事後に契約変更ができる旨を記載しておきましょう。
コミュニケーションを取っておく
離婚後に元配偶者と話し合うことは、気持ちが進まないことはよくわかります。しかし、離婚協議書によって変更を予定する記載がある場合は、それまでの期間中に相手と多少のコミュニケーションを取っておくことは重要です。このようなケースにおいて、相手とある程度コミュニケーションを取っている場合と、全くコミュニケーションを取っていない場合とでは、実際に離婚後に話し合いをする際に、相手により協議に応じてもらいやすさが異なります。最低限の関係を維持しておくためにも、定期的なコミュニケーションはしておくべきでしょう。しかし、相手と楽しく話す必要はまったくありませんので、例えば、お二人の間に子供がいる場合は、子供の様子や子供が好んでいる物などの話であれば会話しやすいでしょう。
通知義務を記載しておく
離婚後に協議内容の変更ができることを定めていても、いざ、変更を希望するときに相手の住所や連絡先が分からなければ当然に話し合いが出来ません。変更が離婚から数年経っている場合には、離婚時の住所や勤務先と現在の住所や勤務先が変わっている可能性が十分にあり得ます。そのため、従前の契約では住所や連絡先に変更があった場合には通知する義務を定めておきましょう。通知義務は、養育費等の長期的な支払が予定されている条項がある場合には記載されているケースがほとんどですが、このような条項がなければ、記載されていないこともあります。しかし、後に離婚協議書の内容変更を予定した契約の場合には、通知義務は必ず記載しておきましょう。
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離婚協議書の内容変更のポイント
続いて、離婚協議書の内容を変更するポイントについて述べさせていただきます。
従前の契約の特定
離婚協議書の内容を変更するには、まずは従前の契約について特定する必要があります。従前の契約の特定方法については、決まったルールがありませんが、一般的には契約した日付と契約書の表題等によって以下のように特定します。
甲乙間で令和○年○月○日に離婚に伴う協議によって定めた契約
上記のような特定がされていないと、変更部分が不明確となり、どの契約の内容に変更があったのかや、どの部分について変更があったのかなどについて相手と疑義が生じる恐れがあります。そのため、原契約や変更する部分はしっかりと特定して契約書に記載しましょう。
協議離婚の一部のみの変更をする
離婚協議書の内容を変更するからといって、新しく離婚協議書を作成する必要はありません。上記のように原契約の特定と変更の対象となる条文を特定して、契約の一部を変更するようにしましょう。もし、前の契約書が無いからと言って新しく離婚協議書を作ってしまうと、財産分与や慰謝料について消滅時効が完成しているなど、何かと揉めるリスクがあります。なお、変更した協議書には「本条以外の規定は原契約による。」と記載しておくと、変更部分が明確となり、原契約との間で矛盾が生じることはありません。
養育費の変更例
例えば、養育費の支払額が現在の協議書では5万円と記載されているけれど、諸事情で翌月から支払が難しくなった場合に養育費を3万円に減額するケースでは、以下のような記載が考えられます。
第○条(養育費の変更) 甲と乙は、令和○年○月○日に協議によって決めた離婚条件等の契約(以下「原契約」という。)について、同契約の第○条において定めた養育費の金額を3万円に変更することに合意する。支払期日や支払方法については、原契約のとおりとする。 |
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離婚協議書から公正証書に変更する
離婚協議書を作成した後に、離婚協議書を公正証書とすることはできるのでしょうか。結論としてできます。しかし、この場合には、再度相手方と公正証書として作成することの合意をする必要があります。さらに、公正証書として作成する場合には、強制執行認諾条項(※1)を記載することが通常ですので、相手が債務者である場合には、この文言の意味をしっかりと説明して、了承を得る必要があります。強制執行認諾条項は債務者にとっては、重い内容になりますので、これが原因で離婚協議書を作成しても、公正証書は作成しないと断られるケースも実は少なくありません。
※1)強制執行認諾条項とは、お金を払う義務のある債務者があらかじめ、自らがお金を払わなかった場合には公正証書によって強制執行を受けることを承諾したという内容の条項です。これにより、お金の支払いを受ける者は、裁判をせずに強制執行の手続が可能となります。
離婚協議書から公正証書に変更する流れ
1.公正証書作成の合意
離婚協議書から公正証書に変更するには、まずは、公正証書を作成することの同意を相手から得る必要があります。この合意ができなければ公正証書の作成はできませんので、離婚協議書にて事前に公正証書を作成することを記載しておきましょう。
2.必要書類の取得
公正証書を作成するには、本人確認書類として運転免許証やマイナンバーカード及び夫婦関係を証する書類として戸籍謄本が必要となります。まずは、これらの書類を準備しましょう。また、公正証書へ記載する内容によっては、登記簿謄本や固定資産税納税通知書又は年金書類、生命保険書類の提示を求められる場合があります。具体的な書類は事前に確認するようにしましょう。
3.公証役場の予約
公正証書は、公証役場で作成しますが、公証役場は基本的に混雑しております。そのため、公正証書を作ろうと思い、その日に公証役場に行って作成できるような書類ではありません。(公証役場によりますが。)まずは、公証役場に行く日を予約して、事前に公証人に離婚協議書や必要書類を提出しておきましょう。
4.公正証書の作成
上記により、必要な書類を提出して数日後に公証人から公正証書の原稿が届きます。原稿を夫婦で確認し、問題がなければ、調印日を予約して、予約した日に本人確認書類と認印及び手数料を持って公証役場に出向きます。調印時間は概ね30分です。
離婚協議書から公正証書に変更する場合の記載
公正証書を前提に、離婚協議書を作成する場合には、協議書の条項に「後日、本協議書に記載した内容を記載した公正証書を作成する。」のような記載をしておきましょう。この内容が無ければ、相手によっては、事後の公正証書の作成に協力してもらえない可能性があります。
【関連記事】 >合意による離婚は公正証書を作るべきか? >離婚公正証書は代理で作成できる? |
離婚協議書や公正証書の作成はお任せください
離婚協議書や公正証書の作成をお考えの方で、どのような記載を検討することができて、どのように進めればよいかがわからないなどとお悩みの方は当事務所にご相談いただけます。また、本記事のように、離婚協議書から公正証書経の変更、又は離婚協議書の内容変更についてお考えの方も同様にご相談をいただけます。
当事務所は、大阪市内にある事務所ですが、離婚協議書や公正証書の作成業務に限っては、全国で対応をさせていただくことができます。そのため、これまでに、兵庫県、京都府、奈良県、三重県等の近畿圏を中心として、近畿圏以外では、東京都、神奈川県、沖縄県の方からのご依頼をいただいた経験もございます。
当事務所に、これらの書面作成を依頼いただいた場合には次のように進めさせていただくことが多いです。
手続の流れ
1.ご連絡
まずは、お問い合わせフォーム、メール又はお電話等でお申込みください。お申込みの時点では、離婚協議書や公正証書を作成するために必要な「離婚の合意や離婚条件、記載のご希望」等をお伺いさせていただきます。行政書士は、依頼を受けた業務や内容について守秘義務が課されていますので、安心してご相談いただくことができます。
2.お見積書とご契約
前記1によりお伺いした内容を元に、お見積書と契約書を作成させていただきます。内容にご了承いただけた場合には、契約とお振込みをいただきます。お振込みは、契約後5日以内の事前払いとさせていただいておりますので、ご了承ください。
3.離婚協議書や公正証書の案文作成
当事務所によって、離婚協議書や公正証書の案文を作成し、チャットやメールによってお送りさせていただきます。内容を、ご夫婦で確認いただきながら、内容や表現の変更や修正を重ねて、最終的にお二人が合意された離婚協議書や公正証書を完成させます。なお、変更や修正においては、追加費用をいただいておりませんので、最後まで安心してサポートをご利用いただけます。
料金
書面の種類 | 料金 | 概要 |
離婚の公正証書 | 60,000円~ | 離婚公正証書の原案を作成し、公証役場において打ち合わせや必要書類の提出等を行います。 |
公証役場での代理調印 | 15,000円 | 当事者一方の代理人として、公証役場で代理署名等を行います。代理人を立てて作成する場合には、委任者の委任状が必要です。 |
離婚協議書 | 30,000円 | 離婚協議書を作成し、PDFにより提供します。郵送は追加料金で対応させていただきます。 |
お客様の声
以下は、ご依頼いただいたお客様からいただいたお客様のご感想です。
作成のイメージ
通常は7ページから9ページの離婚協議書や公正証書を作成させていただいております。
よくある質問
Q1.離婚協議書の変更を断られました。
養育費等の変更が夫婦で合意できない場合には、調停を検討することができます。調停とは、夫婦の間に調査委員や裁判官が入って夫婦問題の解決を図る裁判の制度です。調停は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てて開始されます。
Q2.離婚協議書と公正証書の違いは何でしょうか。
離婚協議書は私人が作成する文書で、公正証書は公証人が作成する公文書に該当します。また公正証書によってした契約で、強制執行認諾文言がある場合には裁判手続きを経ずに、債務不履行による強制執行をすることができます。
Q3.離婚協議書の内容変更は自分でもできますか。
ご自身でも可能です。ただし、正しい手順で行わなければ変更ができないリスクがあります。そのため、ご自身でされる場合には、作成後の協議書を専門家に確認してもらうことはした方がよいでしょう。
まとめー離婚協議書の内容を変更するには
最後までご覧いただきありがとうございました。こちらの記事では、離婚協議書の内容を作成した後に変更するための対策や、変更する場合の記載方法等について、離婚協議書や公正証書のケースに分けて次のとおり解説をさせていただきました。
1.離婚協議書の内容変更は可能か?
2.離婚協議書の内容を変更するためには
⑴従前の協議書に変更出来ることを記載しておく
⑵コミュニケーションを取っておく
⑶通知義務を記載しておく
3.離婚協議書の内容変更のポイント
⑴従前の契約の特定
⑵協議離婚の一部のみの変更をする
⑶離婚協議書の内容の変更例
4.離婚協議書から公正証書に変更する
⑴離婚協議書から公正証書に変更する流れ
⑵離婚協議書から公正証書に変更する場合の記載