遺留分侵害額請求は1年以内?期限・計算方法・内容証明での請求を行政書士が解説【2026年版】 - 相続・遺言・離婚専門の大倉行政書士事務所

2026.10.01

遺留分侵害額請求は1年以内?期限・計算方法・内容証明での請求を行政書士が解説【2026年版】

遺留分侵害額請求は1年以内?期限・計算方法・内容証明での請求を行政書士が解説【2026年版】

亡くなった親の遺言書を確認したところ、「長男に全財産を相続させる」と書かれていた、あるいは生前に特定の相続人だけが多額の贈与を受けていたというケースがあります。このような場合、一定の相続人には遺留分という最低限の取り分が保障されており、侵害された金額について遺留分侵害額請求ができる可能性があります。

ただし、遺留分は何もしなくても自動的に支払われる制度ではありません。特に注意したいのが期限で、原則として相続の開始と遺留分を侵害する贈与・遺贈を知った時から1年という短い期間制限があります。

この記事では、2026年時点の民法を前提に、遺留分侵害額請求の期限、遺留分を請求できる人、計算方法、生前贈与の扱い、内容証明郵便を利用する際のポイントまで、大倉行政書士事務所が分かりやすく解説します。

先に結論

遺留分侵害額請求で特に重要なのは、「遺産額を完全に計算してから動こう」として1年の期限を過ぎないことです。財産の全容がまだ分からない場合でも、遺留分を請求する意思を期限内に明確に相手方へ伝えることを検討する必要があります。

遺留分侵害額請求とは

遺留分とは、一定の相続人に法律上保障されている最低限の相続財産の取り分です。被相続人は原則として遺言によって財産の承継先を自由に決められますが、一定の相続人については、その遺言や生前贈与によっても遺留分が問題となる場合があります。

現在の民法では、遺留分を侵害された場合、財産そのものを取り戻すのではなく、原則として侵害額に相当する金銭の支払いを請求します。民法第1046条では、遺留分権利者等が受遺者や受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求できると定められています。

項目 現在の制度
制度名 遺留分侵害額請求
基本的な請求内容 遺留分の侵害額に相当する金銭の支払い
令和元年7月1日より前に開始した相続 改正前の遺留分減殺請求の制度が問題となるため、現在の制度とは取扱いが異なる場合があります。

現行の条文は、e-Gov法令検索「民法」で確認できます。

遺留分を請求できる相続人は誰か

遺留分が認められているのは、すべての法定相続人ではありません。民法第1042条では、兄弟姉妹以外の相続人に遺留分を認めています。

相続人 遺留分 主な注意点
配偶者 あり 常に相続人となり、遺留分の対象になります。
子 あり 子が先に死亡している場合には、代襲相続人となる孫等が問題となることがあります。
直系尊属 あり 子やその代襲相続人がいない場合などに相続人となります。
兄弟姉妹 なし 法定相続人になる場合でも遺留分はありません。

兄弟姉妹には遺留分がありません

たとえば、子がおらず、配偶者と兄弟姉妹が法定相続人になる場合でも、兄弟姉妹自身には遺留分がありません。「法定相続人だから必ず遺留分もある」というわけではない点に注意してください。

遺留分を検討する前提として、誰が相続人なのかを正確に確定する必要があります。被相続人の出生から死亡までの戸籍を確認し、子、代襲相続人、父母、兄弟姉妹などの相続関係を整理することが重要です。

遺留分の割合はどのくらいか

遺留分の割合は、相続人の構成によって異なります。基本的には、直系尊属だけが相続人となる場合は遺留分全体が3分の1、それ以外では原則として2分の1です。相続人が複数いる場合には、そこから各相続人の取り分を計算します。

主な相続人の構成 個別の遺留分の目安
配偶者のみ 配偶者:2分の1
子のみ 子全体:2分の1。子が複数いれば原則として人数に応じて分けます。
配偶者と子 配偶者:4分の1、子全体:4分の1
直系尊属のみ 直系尊属全体:3分の1
配偶者と直系尊属 配偶者:3分の1、直系尊属全体:6分の1
兄弟姉妹のみ 遺留分なし

同順位の子や父母が複数いる場合には、さらに人数に応じた計算が必要です。また、代襲相続や相続放棄などがある場合には相続人の構成自体が変わるため、単純に上の表だけで判断しないようにしてください。

遺留分侵害額請求の期限は「1年」と「10年」

遺留分侵害額請求で最も注意すべき点が期間制限です。民法第1048条では、遺留分侵害額請求権について、次の期間を定めています。

期間 起算点 意味
1年 相続の開始と、遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時 この時から1年間権利を行使しないと、原則として時効により消滅します。
10年 相続開始の時 遺留分侵害を知らなかった場合でも、相続開始から10年を経過すると請求できなくなります。

特に重要な注意点

家庭裁判所へ遺留分侵害額請求調停を申し立てただけでは、相手方に対する遺留分請求の意思表示にはならないと裁判所が案内しています。

期限が迫っている場合には、調停申立てとは別に、相手方に対して遺留分に関する権利を行使する旨の意思表示を行う必要があります。

裁判所の公式案内でも、遺留分侵害額請求は相手方への意思表示が必要であり、調停申立てとは別に内容証明郵便等による意思表示を行う必要があると説明されています。詳細は裁判所「遺留分侵害額の請求調停」で確認できます。

財産額がまだ分からなくても期限を意識する

相続が発生した直後は、不動産の評価額、預貯金、有価証券、生前贈与などがすぐに判明しないこともあります。しかし、財産調査に時間をかけている間にも1年の期間が進む可能性があります。

遺留分侵害額請求の意思表示をする段階では、必ずしも最終的な請求額まで確定していることが必要とは限りません。そのため、遺留分を侵害されている可能性が高く、期限が迫っている場合には、まず権利を行使する意思を明確にすることと、正確な金額を計算する作業を分けて考えることが重要です。

遺留分侵害額はどのように計算するのか

遺留分の計算では、死亡時に残っていた預貯金や不動産だけを見るわけではありません。一定の生前贈与を加算し、被相続人の債務を控除したうえで、遺留分算定の基礎となる財産額を求めます。

基本的な考え方

遺留分を算定するための財産額 = 相続開始時の財産 + 算入対象となる贈与 - 被相続人の債務

その基礎財産に遺留分割合を掛けて個別の遺留分を求め、その人自身がすでに受け取った遺贈や一定の贈与、遺産から取得すべき財産などを考慮して、実際の侵害額を算定していきます。

配偶者と子2人の計算例

たとえば、遺留分算定の基礎となる財産が4,000万円で、相続人が配偶者と子2人だったとします。

相続人 遺留分割合 4,000万円を基準にした遺留分額
配偶者 4分の1 1,000万円
子A 8分の1 500万円
子B 8分の1 500万円

仮に「子Bに全財産を相続させる」という遺言があり、子Aが遺産や生前贈与をまったく受けていなかったとすると、単純化した例では子Aについて500万円の遺留分が問題になります。

ただし、現実の案件では生前贈与、不動産評価、債務、生命保険、特別受益、すでに取得した財産などを確認する必要があるため、上記のような単純計算だけで最終的な請求額を確定できない場合があります。

生前贈与はすべて遺留分の計算に入るわけではない

「兄だけが10年前に住宅購入資金をもらっていた」「相続人ではない人に死亡直前に多額の贈与がされていた」といった場合、生前贈与をどこまで遺留分の計算に含めるかが問題になります。

民法第1044条では、贈与を遺留分算定の基礎財産へ加える期間について一定のルールを設けています。

贈与の相手 原則的な対象期間 主な条件
相続人以外 相続開始前1年間 原則として相続開始前1年間の贈与が対象になります。
相続人 相続開始前10年間 婚姻、養子縁組のため、または生計の資本として受けた贈与など、一定の贈与が対象になります。
害意のある贈与 上記期間より前でも対象となる場合あり 贈与した側と受けた側の双方が遺留分権利者に損害を加えることを知っていた場合などは別途検討が必要です。

「昔の贈与だから関係ない」と決めつけない

贈与の時期だけでなく、誰が受贈者なのか、何のための贈与だったのか、当時どのような事情があったのかによって判断が変わることがあります。多額の生前贈与がある場合には、通帳、振込記録、不動産登記、贈与契約書などの資料も確認しましょう。

遺留分侵害額請求は内容証明郵便で行うべきか

遺留分侵害額請求の意思表示そのものに、必ず内容証明郵便を利用しなければならないという形式上の決まりがあるわけではありません。

しかし、遺留分侵害額請求には1年という短い期間制限があるため、「いつ、誰に、どのような内容で請求したのか」を後から確認できるようにすることが非常に重要です。そのため、実務では内容証明郵便を利用する方法が考えられます。

日本郵便の内容証明は、いつ、どのような内容の文書を、誰から誰宛てに差し出したかを証明する制度です。ただし、内容証明だけでは相手に配達された事実まで証明するものではないため、必要に応じて配達証明を併用する方法があります。詳細は日本郵便「内容証明」で確認できます。

通知書に記載を検討する主な事項

遺留分侵害額請求通知に盛り込む事項の例

  • 被相続人の氏名
  • 相続が開始した事実
  • 対象となる遺言や贈与の内容
  • 自分の遺留分が侵害されている旨
  • 遺留分侵害額請求権を行使する意思
  • 必要に応じて金銭の支払いを求める旨
  • 差出人と相手方の氏名・住所

財産の全容が判明していない段階では、正確な請求金額を算定できないことがあります。その場合でも、期限との関係では「遺留分侵害額請求権を行使する」という意思が相手方に明確に伝わる文面にすることが重要です。

一方、誰に対して請求するべきなのか、複数の受遺者・受贈者がいる場合にどのように整理するのかについては、個別事情によって判断が複雑になることがあります。

内容証明を送った後に相手が支払わない場合

遺留分侵害額請求の意思表示をしても、相手方が請求金額や不動産の評価、生前贈与の有無などを争い、支払いに応じない場合があります。

当事者間で話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所の遺留分侵害額の請求調停を利用することができます。

裁判所の案内では、調停申立てに際し、被相続人の出生から死亡までの戸籍、相続人全員の戸籍、遺言書の写し、預貯金・不動産・有価証券・債務等に関する資料などが標準的な添付資料として案内されています。

段階 主な内容
財産・相続人の確認 戸籍、遺言書、預貯金、不動産、生前贈与、債務等を整理します。
権利行使の意思表示 期限を確認し、必要に応じて内容証明郵便等で請求意思を明確にします。
当事者間の確認 請求額や財産評価について確認します。
家庭裁判所の調停 話し合いがまとまらない場合に、家庭裁判所の調停を利用する方法があります。
訴訟等 調停でも解決できず、法的紛争として争う場合には、弁護士への相談を検討します。

紛争になった場合は弁護士への相談を

相手方が遺留分の存在、財産評価、生前贈与、請求額などを争い、法律上の交渉や訴訟対応が必要になった場合には、弁護士へ相談することが適切です。

遺留分と行政書士がサポートできる範囲

行政書士は、相続関係において戸籍等を基にした相続関係の整理や、遺産分割協議書など権利義務に関する書類の作成を取り扱います。また、日本行政書士会連合会では、依頼者の意思に基づいて内容証明郵便の文書を作成することも行政書士業務として案内しています。

ただし、法的紛争段階にある案件や、相手方との交渉代理、裁判手続に関する対応については行政書士業務の範囲とは異なります。

そのため、遺留分に関して行政書士へ相談する場合には、相続人や資料の整理、依頼者本人の意思に基づく書面作成など、紛争性のない範囲かどうかを確認する必要があります。すでに相手方との争いが顕在化している場合には、早い段階で弁護士への相談を検討してください。

行政書士の相続・書類作成業務については、日本行政書士会連合会「遺言・相続」および日本行政書士会連合会「契約書」でも案内されています。

遺留分侵害額請求のよくある質問

遺留分侵害額請求は1年を過ぎると必ずできなくなりますか?

民法では、相続開始と遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年間権利を行使しない場合、時効によって消滅すると定めています。ただし、「いつ知ったのか」が問題となるケースもあるため、1年を過ぎている可能性がある場合でも自己判断だけで諦めず、個別事情を専門家へ確認することをおすすめします。

遺留分の金額がまだ分からなくても請求できますか?

財産の全容が判明していない段階でも、遺留分侵害額請求権を行使する意思表示自体は検討できます。期限が迫っている場合には、金額の確定を待って権利行使が遅れないよう注意が必要です。

兄弟姉妹にも遺留分はありますか?

ありません。兄弟姉妹が法定相続人となるケースであっても、民法上、兄弟姉妹には遺留分が認められていません。

口頭で遺留分を請求しても有効ですか?

遺留分侵害額請求の意思表示は、必ず内容証明郵便でなければならないわけではありません。ただし、期限との関係で「いつ、どのような請求をしたのか」が後に問題となる可能性があるため、書面で証拠を残す方法を検討することが重要です。

家庭裁判所に調停を申し立てれば1年の期限は大丈夫ですか?

裁判所は、遺留分侵害額請求調停を申し立てただけでは、相手方に対する権利行使の意思表示にはならないと案内しています。調停とは別に、遺留分に関する権利を行使する旨を相手方へ意思表示する必要があります。

遺留分侵害額請求をした後は期限を気にしなくてもよいですか?

遺留分侵害額請求権を行使すると金銭債権が発生しますが、その金銭債権についても一般の債権と同様に消滅時効が問題になります。権利行使をしたまま長期間放置せず、支払いまでの手続を進めることが重要です。

生駒市で相続・遺言に関する書類作成をご検討の方へ

大倉行政書士事務所は、奈良県生駒市を拠点として、相続・遺言に関する書類作成や相続手続に関するご相談に対応しています。

生駒市のほか、奈良市、東大阪市、大阪市およびその周辺地域からのご相談にも対応しています。遺留分について相続関係や書類を整理したい場合には、まず現在の状況を確認したうえで、行政書士が対応できる範囲か、弁護士等への相談が適切な案件かを整理することが大切です。

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まとめ|遺留分は期限を最優先に確認する

遺留分侵害額請求では、まず自分に遺留分があるかを確認し、相続人、遺言、生前贈与、相続財産、債務などを整理することが必要です。

そして何より重要なのが、相続開始と遺留分侵害を知った時から1年という期間制限です。相続開始から10年という期間もあるため、「財産調査が終わってから考えればよい」と長期間放置することは避けるべきです。

遺留分で確認したいポイント

  • 自分が遺留分権利者に該当するか
  • 遺言書や生前贈与によって遺留分が侵害されているか
  • 1年・10年の期限がいつまでなのか
  • 誰に対して請求する必要があるのか
  • 期限内の意思表示をどのような方法で残すか
  • 紛争になっている場合は弁護士への相談が必要か

遺留分は相続財産の評価や生前贈与の有無によって計算が大きく変わることがあります。期限に不安がある場合には、早めに資料を整理し、案件の状況に応じた専門家へ相談することが重要です。

参考サイト

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