相手が離婚公正証書の作成に応じない場合は?できること・できないことを解説 - 相続・遺言・離婚専門の大倉行政書士事務所

2026.10.12

相手が離婚公正証書の作成に応じない場合は?できること・できないことを解説

相手が離婚公正証書の作成に応じない場合は?できること・できないことを解説

「養育費は払うと言っているのに、公正証書にはしたくないと言われた」「内容は決まっているのに、公証役場へ行ってくれない」。相手が離婚公正証書の作成に応じないときは、書類の準備だけでは解決できない問題が含まれていることがあります。

大切なのは、約束の内容に反対しているのか、公正証書にすることへ反対しているのか、単に出席が難しいのかを分けることです。相手の同意なく一方的に離婚給付の公正証書を完成させることはできませんが、公正証書が作れないからといって、養育費などを求める方法まで失われるわけではありません。

この記事では、作成を拒否されたときの確認事項、合意書面の扱い、2026年の養育費制度、家庭裁判所の手続と行政書士の対応範囲を整理します。

相手が応じない離婚公正証書は一方だけで作れない

「支払う約束」と「公正証書にする同意」は別

離婚に伴う養育費・慰謝料・財産分与などの約束を公正証書にするには、当事者が内容を確認し、公証人に作成を依頼する手続が必要です。一方が希望する条件を紙に書いて持ち込めば、公証人が相手にその条件を守らせてくれるという制度ではありません。

特に、一定の金銭の支払義務について強制執行につなげる公正証書では、支払義務を負う人による強制執行を受け入れる意思表示が重要です。「毎月払う」と話していることだけで、この意思表示まで当然に含まれるとは判断できません。

公正証書と執行証書の基本的な仕組みは、日本公証人連合会「公正証書」の説明で確認できます。相手が争っている金額を公証人が裁判のように決定するものではありません。

署名済みの協議書がある場合も注意

協議書への署名は、その文書に記載された合意を確認する資料になります。ただし、相手の署名済み協議書を持っていることと、公正証書作成の代理権を与えられていることは別です。相手の印鑑や身分証を預かっていても、無断で手続を進めないでください。

公正証書が作れないことと離婚・請求の可否を混同しない

公正証書は離婚届そのものではなく、作成しただけで協議離婚が成立するわけではありません。また、公正証書を作らなかったという理由だけで、養育費や財産分与の問題がすべてなくなるわけでもありません。日本公証人連合会「離婚」の案内でも、離婚の手続と財産上の約束の書面化が説明されています。

離婚自体への合意があるか、お金の条件に合意があるか、公正証書化に協力する意思があるかをそれぞれ確認しましょう。「公正証書は嫌だ」という一言から、すべての意思を推測しないことが出発点です。

相手が拒否している理由に合わせて対応を選ぶ

相手の反応・事情先に確認すること検討する対応
養育費の金額に納得していない収入資料や希望額、意見が違う部分金額の協議や弁護士相談、家庭裁判所の手続
差押えにつながることが不安支払義務の範囲と公正証書の効力への理解公証人等から説明を受け、条件を再確認する
平日に休めない・遠方に住んでいる内容と作成には同意しているか代理人やウェブ会議の利用可否を公証役場へ確認する
費用を払いたくない費用の総額・対象・分担についての認識見積りを確認し、当事者間で負担方法を整理する
連絡に返答がない連絡の経過、既存の約束、請求に関する期限記録を保存し、待ち続けず相談先を切り替える
脅しや暴力を伴う本人と子どもの安全、連絡先の取扱い直接の説得より安全確保と支援機関への相談を優先する

出席の問題なら代理人やウェブ会議を確認する

相手が条件と公正証書作成に同意していて、出席だけが難しい場合は、代理人による手続を利用できることがあります。ただし、委任する内容を特定した委任状などが必要です。日本公証人連合会の必要書類の案内を確認し、実際の文案に即した委任方法を公証役場と調整します。

ウェブ会議の利用も、当事者の申出、他の嘱託人に異議がないこと、公証人が相当と認めることなどが前提です。代理人やオンライン手続は移動の負担を軽くする方法であって、相手の拒否を無視する方法ではありません。同じ人が双方の代理人になれると決めつけず、代理関係も確認してください。

合意していない項目は「未決」として残す

養育費は合意できていても、財産分与や清算条項には意見の違いがある場合があります。全体が決まったように文案を作るのではなく、合意済みの項目と未決の項目を区別しましょう。

一部だけを先に書面化する場合も、残りの問題を放棄したと受け取られる内容になっていないか確認が必要です。未決事項について対立があるときは、文案を整えるだけで解決しようとせず、弁護士への相談を検討します。

安全に連絡できる場合は文案と確認事項を短く伝える

連絡をする場合は、「絶対に公正証書にして」と繰り返すより、どの約束を明確にしたいのか、どこが未決なのかを短く示すと論点を整理できます。相手が内容を読める形で文案を渡し、修正希望を確認する方法が考えられます。

確認のための連絡例

先日話し合った養育費の金額と振込日を、双方が確認できる書面にまとめたいと考えています。文案を送りますので、合意できる部分と修正を希望する部分を教えてください。公正証書にする場合の費用や出席方法についても、確認したうえで相談したいです。

これは穏やかな確認が可能な場合の例です。既に強い対立がある場合や、連絡によって危険が生じる場合まで本人が送る必要はありません。また、返答日を設定したとしても、期限までに返事がないことを、当然に合意や公正証書作成への同意として扱うことはできません。

「払わないなら勤務先へ知らせる」「公正証書にしなければ子どもに会わせない」など、別の問題を圧力として持ち出すことは避けてください。通知書を送る方法を選んでも、それだけで相手の同意や支払いが確保されるわけではありません。

公正証書がなくても合意書面と養育費の制度を確認する

既にある合意書を捨てたり、安易に書き換えたりしない

公正証書にできなくても、当事者間で取り交わした協議書や合意書は、何を約束したかを確認する資料になります。日付、当事者、対象となる子ども、金額、支払期限などが分かる形で保存し、入金記録と照合してください。

署名がある文書でも、すべての条項が必ず有効とは限りません。逆に、「公正証書ではないから無意味」と決めつけて処分するのも適切ではありません。変更前の書面を残したうえで、実際に合意した範囲を確認しましょう。

2026年4月以降の養育費には先取特権の制度がある

2026年4月1日以降に発生した養育費については、一定の範囲で先取特権に基づく差押えを検討できます。裁判所は、父母の間の合意書面を、担保権を証する文書として提出する場合を案内しています。公正証書や調停調書がなくても、書面の内容などに応じて利用を検討できる仕組みです。

先取特権が付く上限は、月額8万円に子どもの数を掛けた額です。これは約束していない月8万円を新たに請求できる制度ではありません。例えば、合意した養育費が子ども1人について月5万円なら、月8万円に増えるわけではなく、合意した債権を前提に検討します。

制度の対象となるのは2026年4月1日以降に発生した養育費であり、以前の未払い分まで同じ制度で扱えるわけではありません。合意の時期だけでなく、請求する各月の養育費がいつ発生したかを分けて確認してください。

必要な文書、追加資料、申立先などは、裁判所「養育費に基づく差押え」で案内されています。合意書さえあれば自動的に入金される制度ではなく、裁判所への申立てや差し押さえる財産の確認などが必要です。

養育費を決めていない場合の法定養育費

2026年4月1日以降に離婚し、養育費を取り決めていない場合には、離婚時から引き続き未成年の子どもを主として監護する親が、他方の親に対し、子ども1人当たり月2万円の法定養育費を請求できる場合があります。支払能力等に応じた例外もあるため、具体的な状況の確認が必要です。

法定養育費は適切な養育費を決めるまでの暫定的・補充的な制度であり、月2万円がすべての家庭の標準額ではありません。2026年3月31日以前の離婚に同じように適用される制度でもありません。金額が未決のままなら、裁判所の養育費請求調停の案内も確認してください。

合意できない場合は家庭裁判所の手続を検討する

公正証書の作成にこだわって連絡を続けるより、現在の問題に合う手続へ切り替えた方がよい場合もあります。何を決めたいのか、離婚前か離婚後か、既に支払義務を定めた文書があるかによって選択肢が異なります。

現在の状況主に検討する手続確認するポイント
離婚と離婚条件がまとまらない夫婦関係調整調停(離婚)離婚、養育費、財産分与などを整理する
別居中の生活費が支払われない婚姻費用の分担請求調停・審判離婚後の養育費と区別して生活費を検討する
離婚後の養育費が決まらない養育費請求調停・審判収入、子どもの年齢・人数、監護状況など
離婚後の財産分与が決まらない財産分与請求調停など離婚日によって異なる申立期間を確認する
既存の調停調書等に基づく支払いがない履行勧告や強制執行など公正証書を作り直す前に既存の文書を確認する

各手続の関係は、裁判所「養育費に関する手続」にまとめられています。調停を申し立てるために、相手から「調停に参加する」という同意を先に取り付けなければならないわけではありません。

調停がまとまらなかった後の流れも同じではない

養育費請求調停で合意できない場合は、審判手続に移って裁判官が判断する流れがあります。一方、離婚そのものについて調停で解決できなければ、離婚訴訟を検討することになります。「どの調停も不成立になれば自動的に離婚が認められる」という理解は誤りです。

また、調停調書や確定した審判など、支払いを求める根拠になる文書が既にある場合、必ず離婚公正証書へ作り直す必要があるわけではありません。新しい書面を作ることではなく、現在の問題の解決に使える手続を選ぶことが目的です。

相談時に整理すると役立つ資料

離婚日または別居日、子どもの年齢、現在の約束、相手が拒否している点、支払済み・未払いの記録をまとめましょう。「公正証書を作ってくれない」という説明だけよりも、必要な対応を判断しやすくなります。

連絡を待つ間も期限と安全を優先する

公正証書の話合いだけで期限が止まると思わない

財産分与について家庭裁判所への申立てができる期間は、2026年4月1日以降の離婚では離婚した日の翌日から起算して5年、同年3月31日以前の離婚では2年です。裁判所「財産分与請求調停」の案内を確認し、相手の返事を待っている間に期間が過ぎないよう注意してください。

養育費の未払い、慰謝料、既に合意した支払債務などは、権利の性質や合意内容によって検討が異なります。「公正証書の作成を頼んでいるから期限は大丈夫」と自己判断せず、期限が気になる場合は早めに弁護士へ相談してください。

暴力や脅しがあるときは本人による説得を優先しない

相手に会うと危険がある、居場所を知られたくない、子どもへの危害を示唆されている場合は、まず安全確保を優先してください。文案を送ることで住所や連絡先が伝わる可能性もあるため、資料を渡す前に支援機関や弁護士へ相談しましょう。

生駒市は、離婚を考えている方への相談窓口案内で、法律相談、女性相談、奈良県の配偶者暴力相談支援センターなどを紹介しています。奈良市や東大阪市へ転居を考えている場合も、先に安全な連絡方法と相談先を確保し、新住所の記載・開示の扱いを確認することが大切です。

離婚届を無断で提出される不安もある場合は、公正証書の問題とは分けて、市区町村の戸籍窓口へ不受理申出の手続を相談してください。

行政書士への文書作成依頼と弁護士への交渉依頼を分ける

当事者間で合意した離婚条件を整理し、離婚協議書や公正証書の文案作成を相談する場面と、相手の拒否や条件の対立を解決する場面は異なります。

行政書士に依頼すれば相手を説得して合意させてもらえる、争っている養育費を代わりに交渉してもらえるという前提では依頼できません。相手との紛争に関する交渉代理や裁判手続が必要な場合は、弁護士に相談します。公証人には、公正証書の効力や作成要件、出席・委任の方法などを確認できます。

文書作成を依頼する前には、合意の有無を正確に伝えてください。「依頼した後で相手が同意するはず」と進めると、作成が止まった場合の費用や修正の範囲で認識が違ってしまうことがあります。報酬、実費、作業開始後に中止した場合の扱いは、各依頼先の見積りと契約条件を確認しましょう。

相手が応じない場合のよくある質問

相手の署名済み離婚協議書があれば、一人で公正証書にできますか?

署名済み協議書だけで、相手に代わって作成を依頼できるとは限りません。公正証書化への同意、具体的な委任内容、本人確認などが必要です。相手の意思を確認せずに委任状を作ることはできません。

公証役場に行くことだけを嫌がっている場合はどうしますか?

内容と作成に同意しているなら、代理人やウェブ会議を利用できるか公証役場へ確認します。ただし、必要書類や利用条件があり、出席方法を変更しても相手の同意が不要になるわけではありません。

公正証書がないと養育費の差押えは一切できませんか?

一切できないとはいえません。調停調書等がある場合のほか、2026年4月以降に発生した養育費については合意書面に基づく先取特権の制度などを検討できる場合があります。法定養育費も含め、適用要件と必要書類を個別に確認してください。

相手が調停にも応じないと言っています。申立ては無意味ですか?

申立て前に相手の同意を得る必要はありません。養育費では審判による判断につながる場合もあります。ただし、離婚そのものの手続と養育費の手続では、その後の流れが異なるため、具体的な問題に合わせて確認します。

合意した条件の書面化を進めたい方へ

相手が離婚公正証書の作成に応じない場合は、拒否の理由を整理し、出席方法の調整で進められる問題か、交渉や裁判手続が必要な問題かを見極めることが重要です。公正証書を作ることだけを目的にせず、本人と子どもの生活、請求の期限、安全を優先してください。

奈良県生駒市の大倉行政書士事務所では、当事者間で合意した内容を踏まえた離婚協議書・公正証書の文案作成についてご相談いただけます。相手との紛争に関する交渉代理や裁判手続は取り扱いません。合意の状況を確認したうえで、文書作成として対応できる範囲をご案内します。

事務所名大倉行政書士事務所
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