2023.04.02
離婚時の財産分与のやり方を教えて!行政書士が解説
離婚をする際には、事前に夫婦の財産をどのように分与するかを決めなくてはいけません。これを財産分与といい、知識がないと不利な取り決めをしてしまうケースがあるので、財産分与の決め方や種類、対象となるものをしっかりと理解しておく必要があります。この記事では、財産分与を行うにあたり、財産分与のやり方や進め方等に関して注意するべき点も抑えております。
離婚時の財産分与とは何か
まず初めに財産分与とは何を指すのか、夫婦間の財産の分配割合はどのように決めるのかなど、基本的なことについて説明いたします。財産分与のルールやポイントを抑えて、離婚時に不利にならないように基本的な事項について理解しましょう。
財産分与とは
財産分与とは、一般的に夫婦が共同生活を送るなかで形成した財産を離婚時に分配することをいいます。財産分与の分配を決める際は、夫婦間の話し合いの上、合意して決めることが多いです。万一、夫婦のいずれかが、財産分与による分配を拒否した場合でも、夫婦は婚姻中に築いた財産の全てを相手に開示して、相手の請求に対し財産分与に応じなくてはいけません。(法律で財産分与を請求することが認められています。)ただし、財産分与は離婚時に義務的に行うものではなく、離婚時に夫婦が財産分与の権利を放棄した場合には、財産分与せずに離婚をすることも可能です。
離婚時の財産分与の対象財産は?
財産分与の対象となる財産は、夫婦が婚姻中に築いた以下のような財産が対象になります。
預貯金
婚姻中に夫婦が稼いだ現金や預貯金は、名義人に関係なく夫婦の共有財産とみなされ、離婚時には財産分与の対象となります。預貯金には、退職金も含まれ、婚姻に中に会社に勤めていた期間の相当する額を割り出し、財産分与の際に分配を請求することができます。
不動産
不動産も登記上の名義に関係なく、婚姻中に取得したものは夫婦の共有財産となります。一般的に建物等に住宅ローンの返済が残っている場合には、建物を売却し売却により残った額を夫婦で分けます。一方でローンの返済が済んでいる場合は、住宅の売却金の査定額を調べるなどして、不動産の価値を調査し査定額の半分で清算することが一般的です。
保険
婚姻中に契約した生命保険や学資保険の解約返戻金も、婚姻後から離婚までの期間に相当する額については財産分与の対象となります。なお、解約返戻金の生じない生命保険は評価額が0ですので、財産分与の対象とはなりません。
借金等の負債
財産分与といっても、プラスの財産のみが対象になるわけではありません。婚姻中に生活を維持する目的で行った借金やローン等も財産分与の対象となります。つまり、夫婦のいずれかにこれらの借金がある場合には、上記の預貯金、不動産等のプラスの財産からこれらの借金の合計額を差し引た額を夫婦で分けることが一般的です。なお、借金であってもギャンブルや浪費などの、夫婦のいずれが相手の同意なく一方的に作った借金については財産分与の対象となりません。
離婚時の財産分与の対象にならない財産は?
夫婦が婚姻中に協力して築いていない固有財産のことを特有財産といいます。この特有財産については、離婚時に財産分与の対象となりませんので、抑えておきましょう。
相続により得た財産
相続や贈与によって得た財産については、いずれも婚姻中に発生したものであるかを問わず特有財産とみなされ、財産分与の対象にはなりません。
婚姻前の財産
財産分与の対象財産は、婚姻期間中に夫婦で協力して築き上げた財産ですので、婚姻前に各々が築いた財産については、財産分与の対象外となります。
社会通念上で判断できる固有財産
社会通念上で判断できる固有財産とは、当人の所有物であることが、客観的もしくは常識的に判断できるものを指します。例としては衣服があげられます。
離婚時の財産分与の2分の1が原則
財産分与については上述のとおりですが、その分配率はどのように決めればよいのでしょうか。結論は財産分与の分配率は財産の形成に対する貢献度で決まります。基本的に婚姻期間中の夫婦の財産の形成に関する貢献度は同等であるという見解がなされているので、財産分与の割合は2分の1として計上されることが多いです。つまり、夫が会社の経営等で高額な収入を得ていた場合であっても、妻が専業主婦として家庭を支えていたのであれば、夫の稼ぎは妻の家事育児等の日頃のサポートがあってこそのものであると考えられます。
しかし、財産分与の分配は必ずしも2分の1ずつである必要はありません。夫婦で分配率の合意ができないようであれば、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることができます。
離婚時の財産分与の種類
財産分与には、種類があるのをご存知でしょうか。財産分与は大きく分けて3つの種類があります。これらは、それぞれ財産分与を行う理由や目的によって分けられています。
⑴扶養的財産分与
扶養的財産分与とは夫婦のどちらかが、離婚後に生活が困窮する可能性がある場合に、なされる財産分与です。例えば、妻が現在定職についておらず、離婚後に十分に生活できる資金力が確保できない場合が挙げられます。扶養的財産分与では、経済的に自立できない配偶者に対し、自立することが出来るようになるまで毎月一定の額を支払うことが一般的です。具体的な期間については、相手の状況によって異なりますが、数年間に及ぶ場合もあります。
⑵清算的財産分与
清算的財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に築き上げた財産を分配するものです。この財産分与が一般的に認知されている財産分与の種類ではないでしょうか。財産分与の対象は、上述のとおり財産全般で預貯金はもちろん、不動産、自動車、宝飾品、家具等の財産も含まれます。一方で清算的財産分与の対象とならない財産には、婚姻前から各自が所有していたものや、婚姻中であっても相続や贈与により取得したもの、衣類等の社会通念上一方の固有財産と判断できるものが挙げられます。ちなみに、こちらの清算的財産分与に関して「離婚の原因を作った人(有責配偶者)であっても財産分与を相手に請求できますか?」といった質問を受けることがありますが、財産分与は法的に夫婦の両方に認められている権利ですので、有責配偶者からであっても財産分与の請求は可能です。
⑶慰謝料的財産分与
慰謝料的財産分与とは、相手の不貞行為やDV(家庭内暴力)等の理由により、精神的苦痛を与えられた場合に、相手に対して請求できる財産分与の種類です。慰謝料的財産分与は、上記の不貞やDVを受けた側にのみ請求権があり、離婚協議書で定める「慰謝料」とは別の権利になります。なお慰謝料的財産分与と慰謝料を両方請求することも可能です。
離婚時の財産分与のやり方!【手順の例】
離婚時の財産分与を行う手順の一例を以下説明します。
⑴夫婦間の財産の開示
離婚時の財産分与を行う際には、夫婦が互いの財産を開示して行うようにしましょう。特に債権者(離婚によって財産を得る方)は離婚前に相手の財産に関する書類を調査し、おおよその財産額を把握しておくことが重要です。債務者(離婚により財産を渡す側)は悪意をもって所有財産を隠す場合があります。(財産隠し)
⑵財産分与の協議
互いの財産の開示が終われば、婚姻中に夫婦で築いた財産と特有財産(財産分与の対象外)を分けます。特有財産には婚姻前に既に所有していた財産や、相続によって得た財産があり、これらを除く財産について夫婦間でどのように分配するか話し合いましょう。先述のとおり、離婚による財産分与は基本的に2分の1ずつの分配率で行います。
⑶離婚協議書もしくは公正証書として作成
夫婦で決めた財産分与の内容は、後の水掛け論を避けるためにも、口頭で約束するのではなく必ず離婚協議書もしくは公正証書として作成しましょう。いきなり離婚協議書を作るのが、難しいようであればメモ用紙などに「財産分与の額は特有財産を除き2分の1ずつとして、○○(夫)は令和○年○月○日に500万円を支払う。」と言った内容のメモに署名と捺印を貰うだけでも、後に手続をスムーズに行うためにも有効でしょう。
財産分与は夫婦で話し合って決めるのが最もスムーズな方法です。話し合いは互いに感情的にならずに、協議内容をまとめることを目的に互いに妥協点を見つけながら進めることがとても大切です。しかし、夫婦で会話もできないほど険悪な仲である場合や、相手が話し合いに応じてくれない場合も中にはあります。そのような場合には弁護士などの第三者を仲介役として、話し合いを進めるのが有効です。
財産分与の記載がある離婚協議書の作成は行政書士にお任せください
離婚は、人生で何度も経験することは出来ないので詳しい知識を持つ機会は少ないのではないでしょうか。知識が少ないまま離婚手続きを進めてしまうと、後に離婚時に請求できた財産を逃してしまう可能性も否定できません。
「自分で調べるには難しい」「時間がかかりすぎる」等のお悩みをお抱えでしたら、専門家の力を借りることも一つの方法です。行政書士は弁護士と違って本人の代理人として交渉することができないので、離婚協議書や公正証書の作成を専門として扱っている方も多いです。そのため、書面の作成代理のみの依頼については弁護士よりも金額が低額になる傾向があります。弊所も、離婚に関する業務(契約書の作成等)を専門業務の一つとしているので、低額で書類のサポートをさせていただきます。当事務所のサービスは全国対応しております。
料金
下記が当事務所にご依頼いただいた場合の料金でございます。
書面の種類 | 料金 | 概要 |
離婚協議書 |
30,000円 |
離婚協議書を作成し、ご住所に郵送致します。 |
離婚の公正証書 | 60,000円~ | 離婚公正証書の原案を作成し、公証役場において打ち合わせや必要書類の提出等を行います。 |
公証役場での代理調印 | 15,000円 | 当事者一方の代理人として、公証役場で代理署名等を行います。代理人を立てて作成する場合には、委任者の委任状が必要です。 |
離婚協議書作成の費用や公正証書の作成サポート費用の記載ページは→こちら
【関連記事】