遺言執行者の就任通知は誰に送る?相続人への通知義務・文例・送付方法 - 相続・遺言・離婚専門の大倉行政書士事務所

2026.10.12

遺言執行者の就任通知は誰に送る?相続人への通知義務・文例・送付方法

遺言執行者の就任通知は誰に送る?相続人への通知義務・文例・送付方法

遺言執行者に指定されたとき、最初の連絡で迷いやすいのが相続人への就任通知です。「財産を受け取る人だけに送ればよいのか」「就任したことを知らせれば足りるのか」「遺言書の写しまで送る必要があるのか」といった疑問が生じます。

法律上の中心となる義務は、遺言執行者に就任した事実だけでなく、遺言の内容を相続人に遅滞なく通知することです。就任通知という名称の書面を作っても、その内容が十分でなければ、義務を果たしたとはいえない場合があります。

この記事では、2026年10月12日時点の制度をもとに、通知の相手、時期、記載項目、書面通知の文例、返送された場合の考え方を説明します。文例は、実際の遺言書、就任の経緯、相続関係を確認したうえで調整してください。

就任通知で伝えるべきなのは「就任」と「遺言の内容」

民法1007条の通知義務を確認する

民法1007条1項は、遺言執行者が就職を承諾したときは直ちに任務を行うことを定め、同条2項は任務を開始したときに遺言の内容を相続人へ遅滞なく通知することを定めています。条文でいう「就職」は、一般の会社への就職ではなく、遺言執行者の職務を引き受けることを指します。

そのため、「私は遺言執行者になりました。今後の手続は任せてください」という一文だけでは、遺言に何が書かれているかが相続人に伝わりません。就任の根拠を示すとともに、遺言内容を確認できるようにする必要があります。根拠はe-Gov法令検索の民法1007条をご確認ください。

古い遺言や過去に開始した相続については、改正法の経過措置を確認する場面もあります。遺言書の作成日、死亡日、執行者の就任日を区別して控えておくと、その確認がしやすくなります。

遺言書の写しを使うと内容の食い違いを防ぎやすい

遺言内容を伝える際は、遺言書の写しを添えて通知する方法が考えられます。要約だけにすると、残りの財産に関する条項、費用負担、遺言執行者の権限などが抜け落ちるおそれがあるためです。

写しを用意する場合は、必要なページがそろっているか、文字が読めるか、別紙の財産目録などが抜けていないかを確認します。元の遺言書そのものを各相続人に送って回収できなくなることは避け、原本や正本・謄本等の保管と、通知に使う写しの管理を分けましょう。

通知と同意の取得は別です。

遺言内容を通知することは、相続人に権利放棄や遺産分割への同意を求めることと同じではありません。「期限までに返事がなければ、すべて同意したものとする」という文言は入れないでください。

就任通知は誰に送る?通知先の確認方法

財産を取得するかどうかだけで相手を選ばない

民法1007条2項が通知先としているのは相続人です。遺言で財産を取得する人だけに限定されていません。相続人である以上、遺言に取得する財産が記載されていない人や、普段連絡を取っていない人も含めて確認します。

遺留分がない相続人についても、「遺留分がないから知らせなくてよい」とは扱いません。一方、相続人ではない受遺者に必要な連絡をすることと、相続人への法定の通知義務とは、分けて整理します。

戸籍等で相続関係を確認する

親族の記憶だけで通知先を決めると、前婚の子、養子、代襲相続人などを見落とすことがあります。亡くなった方の戸籍等を確認し、誰が相続人になるかを整理したうえで、それぞれの送付先を確認します。

「昔から付き合いがない」「財産はいらないと言っていた」という事情だけで、相続人から外すことはできません。家庭裁判所での相続放棄がある場合には、その事実と、その後の相続関係を確認します。相続開始後に相続人が亡くなった場合も、承継関係を含めた確認が必要です。

通知先を整理する表には、氏名、相続関係、確認資料、送付先、送付日、受領確認の状況を記載すると管理しやすくなります。ただし、その住所録や戸籍一式を、必要もなく他の相続人へ一括配布しないようにしてください。

疎遠な相続人や住所不明の相続人がいる場合

住所が分からない人がいるからといって、その人を通知先から除外するのではなく、どの資料で住所を調べ、何が確認できていないかを記録します。把握できている相続人への連絡まで、理由なく止め続けることも避けてください。

親族に預ければ本人へ渡るはずだという推測だけで処理せず、本人に届く方法を検討します。所在地の調査に限界がある場合や、連絡そのものが紛争につながっている場合には、個別の事情に応じて専門家に相談しましょう。

通知はいつまでに送る?財産調査の完了を待つべき?

「遅滞なく」は全国共通の何日以内という意味ではない

民法1007条2項は、通知期限を「10日以内」「1か月以内」といった一律の日数で定めているわけではありません。しかし、具体的な日数がないからといって、通知を後回しにしてよいということではありません。

就任と任務開始の状況を確認し、遺言の内容を相続人に伝える準備を速やかに進めます。戸籍の取得や送付先の確認に時間がかかる場合は、着手した日、照会先、回答待ちの内容を記録しておきましょう。

財産目録の完成と遺言内容の通知を混同しない

遺言内容の通知と、民法1011条に基づく財産目録の作成・交付は、関連はあっても別の義務です。財産調査に時間がかかる場合、「目録が全部完成するまで、遺言の存在も内容も知らせない」という進め方は避けてください。

通知の時点で調査中の項目があるなら、その旨を正確に伝え、財産目録は調査状況を踏まえて遅滞なく交付する方針を説明します。ただし、「後日送ります」と書けば財産目録の交付を無期限に先延ばしできるわけではありません。両方の義務は民法1007条・1011条で確認できます。

日付は分けて管理しましょう。

遺言者の死亡日、遺言書の確認日、就任を承諾した日、任務開始日、通知書作成日、実際の発送日は、それぞれ意味が異なります。記録を整えるために事実と違う日へさかのぼらせないでください。

検認が必要な遺言は取扱いを先に確認する

家庭で保管していた自筆証書遺言などでは、家庭裁判所での検認が必要になる場合があります。封印のある遺言書は家庭裁判所で開封する必要があるため、通知用のコピーを作ろうとして勝手に開封しないでください。

公正証書遺言や法務局の保管制度を利用した遺言書については検認が不要です。また、検認は遺言の有効・無効を確定する手続ではなく、裁判所から相続人へ検認に関する連絡があったことだけで、遺言執行者自身の通知が済んだと考えないことも重要です。詳細は裁判所「遺言書の検認」をご確認ください。

就任通知書に記載する内容

法律上、通知書の題名や全国共通のひな形が決まっているわけではありません。以下の項目は、受け取った相続人が「誰の、どの遺言に基づく連絡か」を確認しやすくするための整理例です。

項目記載する内容注意点
日付・宛先作成日と相続人の氏名実際の送付日も別途記録する
遺言者の情報氏名、死亡日など対象者を特定できる必要な情報に絞る
遺言の特定遺言の作成日、方式など複数の遺言がある場合は関係を確認する
就任の根拠遺言による指定、家庭裁判所による選任など実際の経緯と異なる表現にしない
遺言内容写しの添付等により内容を伝える一部の条項や別紙の抜けを確認する
今後の連絡調査状況、財産目録の交付予定、連絡先未確定の金額や完了日を断定しない

相続人から資料の提供を受けたい場合は、何の確認に必要なのかを具体的に書きます。「手続のために必要です」とだけ記載して、実印や印鑑登録証明書の提出を一律に求めるのではなく、実際の手続に必要な範囲を確認してください。

遺言執行者の就任通知の文例

遺言執行者の就任通知の文例

次の文例は、遺言によって指定された人が就任を承諾し、遺言書の写しを添えて相続人へ送る場面を想定した一般の書面通知の例です。裁判所の申立書や、内容証明郵便の書式そのものではありません。

○年○月○日

○○○○ 様

遺言執行者 ○○○○
連絡先住所 ○○○○
電話番号等 ○○○○

遺言執行者就任及び遺言内容のご通知

被相続人○○○○様は、○年○月○日に亡くなられました。

私は、同人が○年○月○日に作成した遺言により遺言執行者に指定され、○年○月○日に就任を承諾し、任務を開始しました。

民法1007条2項に基づき、別添の遺言書の写しにより、遺言の内容をご通知いたします。

現在、遺言執行に必要な相続関係及び財産関係の確認を進めています。財産目録については、調査状況を踏まえ、遅滞なく作成・交付いたします。

相続関係、財産又は送付先に関して確認すべき事項がございましたら、上記連絡先までお知らせください。今後、手続に必要な資料について、目的と内容を明示のうえ確認をお願いする場合があります。

本書は、就任の事実及び遺言の内容をお知らせするものです。本書の受領により、遺留分その他の権利の放棄や、別の合意をお願いするものではありません。

添付書類:遺言書の写し ○枚

家庭裁判所で選任された場合は根拠の部分を変更する

家庭裁判所で選任された人が、文例の「遺言により指定され」という部分をそのまま使うと、就任の根拠が事実と異なります。選任した家庭裁判所、審判の日付など、実際の書類に基づいて表現を調整してください。

遺言執行者がいない場合等に利用する選任手続は、裁判所「遺言執行者の選任」で案内されています。相続人同士で担当者を決めただけの場合と、法的な遺言執行者として選任された場合を混同しないことが大切です。

未確認の財産や支払額を書き込まない

まだ銀行の回答がない段階で「あなたには○円を振り込みます」と確定額を記載すると、後で訂正が必要になることがあります。通知時点で確定していない事項は「確認中」とし、遺言に書かれた内容と、調査で判明した事実とを分けて記載しましょう。

遺言執行者が複数いる場合も、誰が連絡窓口となるか、どのように通知を出すかを確認します。他の執行者の合意が必要な場面を無視して、自分だけがすべてを決定できるような書き方にしないでください

送付方法はどう選ぶ?内容証明が必須とは限らない

通知内容と到達の記録をそれぞれ残す

民法1007条2項は、通知方法を内容証明郵便に限定していません。ただし、後で「何を送ったか」「届いたか」が問題になりそうな場合には、通知書と同封資料の控えを残し、書留等の追跡できる方法を検討します。

郵便の追跡記録だけでは、封筒に入れた資料の内容まで当然に分かるわけではありません。相手ごとに、通知書、遺言書の写し、同封物の一覧、発送の記録を一組にして保管すると、後日の確認に役立ちます。

電子メール等を使う場合も、アドレスの本人確認、添付ファイルの閲覧可否、誤送信防止、受領確認を検討します。送信済みの表示だけを根拠に、相手が内容を確認できたと決めつけないでください。

内容証明郵便には同封物の制限がある

日本郵便の内容証明の利用条件では、対象は文書1通で、それ以外の物を同封できないとされています。通常の通知書に遺言書の写しや返信用封筒を添える形を、そのまま内容証明郵便にすることはできません。

内容証明を利用する場合は、通知する内容と資料の送り方を組み立て直し、配達の証明が必要かも含めて検討してください。利用条件は日本郵便「内容証明 ご利用の条件等」で確認できます。

内容証明は、通知内容が真実であることや、遺言が有効であることを証明する制度ではありません。送付方法だけを強くしても、相続人の漏れや遺言内容の誤記を補うことはできないため、まず通知書と資料の正確性を優先します。

返送・無回答・異議があった場合の対応

返送された場合は理由と再確認の記録を残す

宛先不明、転居、保管期間経過などで返送された場合には、封筒の表示や追跡結果を保存し、送付先を確認します。「一度投函したから、以後は何もしなくてよい」と扱わないでください。

受取拒否と、住所が誤っていた場合とでは事情が異なります。通知義務や意思表示の到達を巡って判断が必要な場合は、一律に届いた・届かなかったと断定せず、経緯をまとめて弁護士に相談します。

返事がないことを同意や放棄と扱わない

就任通知への返答がない場合も、それだけで遺言への同意や遺留分の放棄が成立するわけではありません。受領確認を求める文書に、費用負担の合意や権利放棄をまとめて紛れ込ませることも避けます。

遺言の有効性、財産の範囲、遺留分などについて異議が出たときは、通知のやり取りだけで解決しようとせず、争点と資料を整理してください。行政書士による書類作成の支援と、紛争の代理交渉は別の業務です。

遺言執行者の就任通知に関するよくある質問

遺言書をすでに見せた相続人にも通知書を送りますか?

過去に見せた事実だけで、就任後の通知義務を当然に満たしたと決めつけないようにします。いつ、誰に、どの遺言内容を伝えたかを確認し、就任の事実とあわせて書面で整理しておくと記録が明確になります。

就任通知は内容証明郵便で送らなければなりませんか?

法律上、内容証明郵便だけに限定されているわけではありません。通知内容と相手への到達をどのように記録するかで方法を検討します。内容証明では遺言書の写しなどを別資料として自由に同封できないため、一般の郵送方法との違いに注意してください。

相続人全員の署名や実印をもらう必要がありますか?

遺言内容を通知すること自体に、相続人全員の署名・実印による同意を求める仕組みではありません。金融機関等の個別手続で必要な書類は別に確認し、通知の受領と手続への同意を混同しないでください。

財産目録ができていなくても通知できますか?

遺言内容の通知と財産目録の作成・交付は別の義務です。調査中であることを伝えて通知を先に行うことは考えられますが、財産目録についても遅滞なく作成・交付する必要があり、無期限に後回しにはできません。

通知文に相続人の返答期限を設けてもよいですか?

資料の確認や送付先の連絡について、協力をお願いする目安日を示すことは考えられます。ただし、その日までに返答がなければ同意・権利放棄したものとする扱いは避けます。法定の期限と事務連絡上の目安も区別してください。

生駒市で遺言執行に伴う書類の準備を相談するには

奈良県生駒市の大倉行政書士事務所では、遺言・相続に関するご相談を承っています。例えば、奈良市の相続人に通知を送りたい一方で、大阪市に住む相続人の住所確認が必要な場合なども、遺言書と相続関係を整理してから、必要な準備を検討することが大切です。

ご相談時には、遺言書の写し、就任の根拠となる資料、分かる範囲の相続人情報、既に送った文書や返送された郵便物をまとめてください。対応可能な書類作成等の範囲を確認し、裁判所提出書類や紛争対応が必要な場合は、司法書士・弁護士の担当分野と区別してご案内します。

遺言書執行の公表基本報酬:121,000円(税込)〜・実費別途

2026年10月12日時点の公表料金です。事案の複雑さ等により加算される場合があります。これは遺言執行全体の基本報酬であり、就任通知書1通だけの作成料金ではありません。ご相談内容を確認し、対応の可否、業務範囲と費用をご案内します。

就任通知は、相続人が遺言の内容と今後の連絡先を確認するための重要な書面です。強い表現で同意を迫るのではなく、正確な情報を、必要な相手に、経過を記録できる形で伝えることを意識しましょう。

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