相続人の一人と連絡が取れないと遺産分割できない?音信不通・行方不明の場合の対応 - 相続・遺言・離婚専門の大倉行政書士事務所

2026.10.05

相続人の一人と連絡が取れないと遺産分割できない?音信不通・行方不明の場合の対応

相続人の一人と連絡が取れないと遺産分割できない?音信不通・行方不明の場合の対応

親や兄弟姉妹が亡くなり、相続手続を始めようとしたところ、「兄とは20年以上連絡を取っていない」「前妻との間の子どもの住所が分からない」「戸籍を調べて初めて知らない相続人がいることが分かった」というケースがあります。

遺産分割協議は、原則として相続人全員で行う必要があります。連絡が取れない相続人がいるからといって、その人を除外して残りの相続人だけで遺産分割協議を完成させることはできません。

ただし、「電話に出ない」「住所が分からない」「完全に行方不明」という状況は、それぞれ対応方法が異なります。

この記事では、相続人の一人と連絡が取れない場合について、最初に確認すべきこと、住所調査、家庭裁判所の手続、遺産分割を放置するリスクまで順番に解説します。

相続人と連絡が取れない場合はまず状況を分けて考える

「相続人と連絡が取れない」という相談は一つに見えますが、実際にはさまざまな状態があります。

状況 考えられる対応
住所も電話番号も分からない 戸籍や戸籍の附票などから現在の住所につながる情報を確認します。
住所は分かるが電話に出ない 書面を送付し、相続が発生していることや協議を希望していることを伝えます。
連絡は届いているが返事をしない 一方的に除外することはできません。話合いが進まなければ家庭裁判所の手続を検討します。
長期間所在も生死も分からない 事情によって不在者財産管理人や失踪宣告など、家庭裁判所の制度を検討することがあります。
海外に住んでいる 海外在住者を含めて協議します。署名証明等、国内居住者とは異なる書類が必要になる場合があります。
相続開始後にその相続人も亡くなった その人の相続人が権利を承継するため、数次相続として改めて相続関係を確認します。

最初から「行方不明」と決めつけないことが重要です。

家族が住所を知らないだけで、戸籍関係の調査をすると現在の住所を確認できるケースがあります。まず相続人を確定し、その人がどのような状態なのかを整理します。

遺産分割協議は相続人の多数決では決められない

遺産分割について誤解されやすいのが、「相続人5人のうち4人が賛成しているので進められるのではないか」という点です。

遺産分割協議は、単純な多数決で決める手続ではありません。遺産分割協議書を作成するのであれば、原則として相続人全員の合意が必要です。

そのため、連絡が取れない相続人の名前を協議書から外したり、家族が代わりに署名したりすることはできません。

してはいけない対応

  • 連絡が取れない相続人を最初から相続人に含めない
  • 他の家族が本人の代わりに署名する
  • 本人の意思を確認せず実印を使用する
  • 「取り分はいらないだろう」と推測して財産を分ける

相続人を一人欠いた状態で遺産分割を進めると、後から協議そのものが問題になる可能性があります。

特に、長年疎遠だった子、前婚の子、兄弟姉妹の代襲相続人などは、他の親族と面識がないこともあります。それでも法律上相続人であれば、適切な方法で手続へ参加してもらう必要があります。

最初に戸籍を集めて相続人を正確に確定する

連絡が取れない人への対応を考える前に、まず必要なのが法的な相続人を確定することです。

家族が「相続人はこの3人だけ」と思っていても、戸籍を確認すると、前婚の子どもがいた、認知された子がいた、すでに亡くなった兄弟姉妹の子が代襲相続人になっていた、といったことがあります。

一般的には、被相続人について出生から死亡まで連続した戸籍関係書類を確認し、相続関係を整理します。相続順位によっては、両親や兄弟姉妹に関する戸籍まで必要になる場合があります。

相続人調査を先に行う理由

  • 協議に参加すべき全員を確認できる
  • 知らない相続人の存在を把握できる
  • すでに亡くなっている相続人がいれば、その承継関係を確認できる
  • 不動産や金融機関の相続手続にも戸籍が必要になる

相続人の調査を途中で止めたまま協議を始めると、後から別の相続人が判明し、協議をやり直すことにもなりかねません。

住所が分からない場合は戸籍の附票などを確認する

相続人であることは分かっているものの、現在の住所を知らない場合があります。

例えば、何十年も前に家を出た兄弟、離婚後に交流がなくなった親族、被相続人と疎遠だった子どもなどです。

このような場合、適法な相続手続のために戸籍や戸籍の附票等を確認し、現在の住所につながる情報を調査できるケースがあります。

住所が確認できれば、突然電話をかけるよりも、まず相続が発生したこと、相続人として協議への参加をお願いしたいことなどを書面で伝える方法が考えられます。

最初の連絡では感情的な内容を入れない

長期間疎遠だった親族の場合、突然「印鑑を押してください」と書類だけを送ると警戒されることがあります。誰が亡くなったのか、なぜ連絡したのか、どのような財産について手続が必要なのかを整理して伝える方が、その後の協議を進めやすくなります。

また、相手方の住所を調査できたとしても、その情報は相続手続のために適切に取り扱う必要があります。無関係な目的で使用してよいものではありません。

住所は分かるが返事をしてくれない場合

住所を確認して手紙を送ったにもかかわらず、相続人が返事をしてくれない場合もあります。

この場合は「所在不明」とは異なります。相手方がそこに生活していることは確認できるものの、単に協議への参加を拒否している、家族との関係から連絡を避けている、相続内容に納得していないなど、さまざまな事情が考えられます。

まずは、相続財産の内容や希望する分割方法をできるだけ分かりやすく示し、回答を求めます。

最初から署名だけを求めない

相続人からすると、財産の全体像が分からないまま遺産分割協議書だけ送られてくれば、「何か隠されているのではないか」と感じることもあります。

預金、不動産など主要な財産を整理し、どのような分け方を提案しているのかを説明することが大切です。

回答期限を設けても自動的に同意にはならない

「○月○日までに回答がなければ同意したものとみなします」と一方的に通知したとしても、それだけで遺産分割への同意が成立するわけではありません。

返事をしない相続人を無視して協議を完成させることはできません。

話合いができない場合は家庭裁判所の手続を検討する

書面で連絡しても協議が成立しない場合には、遺産分割調停など家庭裁判所の手続を検討することになります。

相続人間で具体的な争いが生じている場合は、行政書士が相手方との交渉代理を行うことはできません。紛争性がある場合には弁護士への相談を検討する必要があります。

本当に行方不明の場合は不在者財産管理人を検討することがある

戸籍関係の調査を行い、最後に確認できる住所へ連絡しても所在を確認できず、長期間行方が分からない場合があります。

このような場合に検討される制度の一つが不在者財産管理人です。

不在者財産管理人は、行方が分からない本人の財産を管理するため、家庭裁判所によって選任される者です。

ただし、不在者財産管理人が選ばれれば自由に遺産分割協議へ同意できるという意味ではありません。通常の財産管理の範囲を超える行為をする場合には、家庭裁判所の許可が必要になることがあります。

不在者財産管理人を検討する場面の例

  • 相続人の戸籍上の住所を調べても所在を確認できない
  • 長期間にわたり本人と連絡が取れない
  • 本人が不在のままでは遺産分割を進められない
  • 本人の財産を管理する必要も生じている

家庭裁判所の手続には、本人が本当に不在であることを示す資料や、財産関係の資料などが必要になる場合があります。単に電話に出ないというだけで直ちに不在者財産管理人の制度を利用するものではありません。

長期間生死が分からない場合は失踪宣告という制度もある

相続人が単に住所不明というだけでなく、長期間にわたり生死そのものが分からない場合には、失踪宣告という制度が問題になることがあります。

普通失踪では、原則として一定の長期間、生死が明らかでないことが必要です。戦争、船舶事故その他の危難に遭った場合には別の制度上の扱いがあります。

失踪宣告がされると法律上重要な効果が生じるため、「遺産分割を早く終わらせたい」という理由だけで簡単に選択する制度ではありません。

不在者財産管理人と失踪宣告は目的が異なります

行方不明の相続人がいるからといって、すぐに「死亡したことにする」という制度ではありません。本人の所在状況や不明となっている期間などを踏まえ、適切な家庭裁判所の手続を検討する必要があります。

相続開始後に連絡の取れない相続人も亡くなっていた場合

長期間連絡を取っていなかった相続人について戸籍を調査した結果、すでに死亡していたことが判明する場合もあります。

例えば、父が死亡し、父の相続について話合いをしないまま長男も死亡した場合、長男が有していた相続上の地位を、その長男の相続人が承継することがあります。

このように相続手続が終わらないうちに次の相続が発生することを、一般に数次相続と呼びます。

相続が重なると、当初は3人だった関係者が、その後5人、8人と増えていくこともあります。

連絡の取れない相続人がいるからといって長期間そのままにしておくと、相続関係がさらに複雑になる可能性があります。

遺言書がある場合は遺産分割が不要なこともある

相続人の一人と連絡が取れない場合でも、被相続人が遺言書を残しているのであれば、最初にその内容を確認します。

有効な遺言によって特定の財産を取得する人が明確に指定されている場合には、その財産について相続人全員による遺産分割協議を行わずに手続できるケースがあります。

ただし、遺言に記載されていない財産がある場合や、遺言内容そのものに問題がある場合などは別途検討が必要です。

そのため、相続人と連絡が取れないと分かった時点で、遺言書の有無も併せて確認することが大切です。

連絡が取れない相続人を放置するリスク

「急いで売る財産もないから、そのうち連絡が取れればよい」と相続手続を止めてしまうケースがあります。

しかし、長期間放置すると別の問題が増える可能性があります。

さらに次の相続が発生する

相続人の一人が亡くなると、その人の相続人が新たに関係してきます。必要な戸籍が増え、連絡を取る人数も増える可能性があります。

不動産の管理や処分が難しくなる

相続した家や土地を売却したい場合でも、権利関係が整理されていなければ手続が進みにくくなります。

相続登記の期限も確認する必要がある

不動産については相続登記の申請が義務化されています。遺産分割がまとまらないからといって、登記について何も確認せず放置することは避けるべきです。

長期間経過した遺産分割には別の制約もある

現在の民法では、相続開始から長期間経過した遺産分割について、特別受益や寄与分を反映した具体的な相続分による分割に期間上の制限が設けられています。

事情によって例外もありますが、「相続は何十年放置しても何も変わらない」と考えるのは危険です。

相続人と連絡が取れないときに行政書士へ依頼できること

相続人との連絡が取れないケースでは、まず「争い」になる前の事実確認と書類整理が重要です。

行政書士は、行政書士が取り扱うことのできる範囲で、戸籍収集、相続関係の整理、遺産分割協議書など相続書類の作成をサポートできます。

内容 主な相談先の例
戸籍収集・相続関係の整理 行政書士など
遺産分割協議書等の書類作成 行政書士など。紛争性がある場合は弁護士への相談が必要です。
相続人間の紛争・交渉代理 弁護士
相続登記 司法書士
不在者財産管理人等の家庭裁判所手続 事案に応じて弁護士、司法書士等への相談を検討します。
相続税 税理士

最初から誰に依頼すればよいか分からない場合は、まず現在どこまで相続人や財産が判明しているのかを整理すると、その後に必要な専門家を判断しやすくなります。

相続人と連絡が取れない場合のよくある質問

兄弟の一人と何十年も連絡を取っていません。除外して遺産分割できますか?

その人が法律上の相続人であれば、単に疎遠という理由で除外することはできません。まず戸籍等から相続関係と現在の住所につながる情報を確認し、連絡を試みる必要があります。

手紙を送っても返事がありません。残りの相続人だけで決めてもよいですか?

原則としてできません。返答がないことと遺産分割に同意したことは同じではありません。協議ができない場合は、家庭裁判所での遺産分割調停等を検討します。

相続人の住所は行政書士に調べてもらえますか?

相続手続のための戸籍収集や相続人調査について、行政書士が職務上取り扱える範囲で対応できる場合があります。具体的に取得できる資料は相続関係や依頼内容によって異なります。

行方不明の相続人の取り分をゼロにできますか?

行方不明であることだけを理由に、その相続人の権利をなくすことはできません。不在者財産管理人など家庭裁判所の制度を利用する場合にも、不在者本人の利益への配慮が必要となります。

相続人と連絡がつくまで相続手続を何年でも放置してよいですか?

おすすめできません。次の相続が発生して関係者が増える可能性があるほか、不動産の相続登記や長期間経過後の遺産分割に関するルールなどもあります。早めに相続関係だけでも確認しておくことが大切です。

まとめ|連絡が取れない相続人を飛ばさず段階的に確認する

相続人の一人と連絡が取れない場合でも、最初から家庭裁判所の手続が必要になるとは限りません。

まずは戸籍によって相続人を確定し、住所が分からないのであれば戸籍の附票等を含めて確認し、連絡可能な住所が判明すれば書面で連絡するという順序で整理します。

住所が分かっているのに協議を拒否されている場合と、本当に行方不明である場合とでは、その後の対応が異なります。

重要なのは、連絡が取れない相続人を勝手に除外して遺産分割を進めないことです。

時間が経過するほど数次相続によって関係者が増えることもあります。相続人の中に疎遠な人がいることが分かった段階で、できるところから相続関係を整理しておくことが大切です。

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「長年会っていない相続人がいる」「相続人の住所が分からず手続が止まっている」といった場合には、まず現在の戸籍関係や相続人の状況を確認するところから整理します。生駒市のほか、奈良市、東大阪市、大阪市およびその周辺地域のご相談にも対応しています。

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