2024.07.22
離婚公正証書の書き方と必要書類:完全ガイド
離婚は人生の大きな転換点となりますが、その過程で避けて通れないのが離婚協議書や離婚公正証書の作成です。この文書は、協議離婚を円滑に進めるための重要なステップとなり、特に養育費や財産分与などの取り決めを明確にすることで、将来のトラブルを防ぎます。離婚公正証書は、離婚の枠組み内で合意された内容を公式に記録し、法的な効力を持たせるために不可欠です。
こちらの記事では、離婚公正証書の書き方、必要な書類、養育費や財産分与を含む合意内容の記載方法、そして公正証書の作成にかかる費用や公証役場の選び方、予約方法について詳しく解説します。また、協議離婚による公正証書作成後の手続きや、公正証書の内容をどのように保守すべきかについても触れ、離婚手続きを進める上での完全ガイドを提供します。
「離婚公正証書」とは何か
離婚公正証書は、離婚に関する合意や条件が記載された公文書であり、文書の真正性を高めるために作成することが推奨されます。この公正証書は、公証人が中立の立場で作成するもので、養育費、財産分与、面会交流などの夫婦間の取り決めが詳細に記載されます。
公正証書の定義
公正証書とは、公証人によって作成される公文書のことであり、私人からの嘱託に基づき公証人がその権限に基づいて作成します。公正証書は、証拠能力が高く、原本が公証役場で保管されるため、偽造の心配がありません。また、公正証書には「強制執行認諾条項」が含まれることが多く、これにより金銭の支払いが行われない場合に裁判を行わずに強制執行が可能です。
離婚公正証書と通常の離婚協議書の違い
離婚公正証書と通常の離婚協議書の最大の違いは、公正証書が公証人によって作成される公文書である点です。公証人が作成する離婚公正証書に強制執行認諾条項を記載することで強制執行の手続きを裁判なしで行うことができます。一方、通常の離婚協議書は私文書であり、支払い契約に違反があった場合、裁判を起こして判決を得なければ強制執行ができません。公正証書の作成は、金銭的な支払いの約束が守られない場合に、迅速かつ効果的に対応できるため、特に、養育費や財産分与、慰謝料等を定める離婚の際には有効な手段とされています。このように、公正証書による離婚は、文書の真正性が高まり、強制執行が可能となることにより、協議離婚における安心感が保証されます。
なぜ公正証書を作成するのか
公正証書を作成する主な理由は、離婚時に合意した条件を法的に強制できるようにするためです。公正証書は、中立的な公証人によって作成されるため、その内容には高い証拠力と証明力があります。これにより、養育費や財産分与、慰謝料などの支払いの約束が遵守されない場合に、裁判を経ずに直接強制執行を行うことが可能です。
公正証書のメリット
公正証書の最大のメリットは、その効力にあります。公正証書には強制執行認諾条項が含まれることが多く、これにより契約が履行されない場合に迅速に対応することができます。例えば、養育費の支払いが遅れた場合、公正証書があれば、支払義務者の財産を差し押さえることが可能となります。これは、特に時間を要する裁判を避け、子供の生活を守るために重要です。
また、公正証書は原本が公証役場に保存されるため、紛失や偽造の心配がなく、常に正確な内容が保証されます。さらに、公正証書による財産開示手続きは、債務者の財産情報を効率的に把握することを可能にし、適切な執行を支援します。
公正証書のデメリット
一方で、公正証書を作成するにはいくつかのデメリットも存在します。まず、公正証書を作成するためには、夫婦が具体的な条件について合意し、双方が揃って公証役場に出向き公証人の前で内容の確認や署名をしなければなりません。これには時間とコストがかかり、すべての条件が法的に認められるわけではないため、場合によっては公正証書を作成できないこともあります。
また、公正証書に強制執行認諾文言を含めることで、その効力を強化することができますが、相手が無職で財産もない場合には、実際に強制執行を行うことが困難になることもあります。このように、公正証書が万能の解決策とは限らず、その使用には慎重な判断が求められます。
公正証書の作成は、離婚を含む様々な合意事項において法的保護を提供する重要な手段ですが、その利用にはメリットとデメリットを十分に理解し、適切な条件で利用することが重要です。
離婚公正証書の作成手順
ステップ1: 条件の話し合い
離婚公正証書の作成にはまず、夫婦間で離婚に関する条件を話し合い、合意に達することが必要です。この段階で、養育費、財産分与、慰謝料などの条件を明確にします。合意が成立しない限り、公正証書を完成させることはできません。夫婦の双方が「公正証書に書くことはすべて納得しており、それを契約として遵守します。」という前提が必要です。
ステップ2: 合意内容の文書化
合意した内容は文書にして公正証書の原案とします。この文書化の過程では、法的に有効な内容のみを含める必要があります。公証人がこの原案をチェックし、問題があれば修正を行います。例えば、公証人が「この財産分与の条件は記載できないです」と指摘された場合、条件の再検討が必要になります。
ステップ3: 公証役場での予約
記載する内容が決定したら、公証役場に予約をします。公証役場は、夫婦で合意できた離婚の条件を公正証書に作成する場所です。このステップでは、公正証書の作成日の予約と、当日の準備が重要です。
ステップ4: 公証人による書面作成
公証役場の予約日に、公証人は合意内容をもとに公正証書を作成します。当日は、夫婦で公証人が用意した公正証書の内容を確認し、この書面の原本に署名と捺印をします。公正証書は高い証明力を持ち、相手が金銭の支払いを怠った場合は裁判所の判決を待たず、直ちに強制執行手続きに移ることができます。公正証書に署名捺印を行った後、公正証書は完成し、法的な効力を持つようになります。
離婚公正証書に必要な書類
離婚公正証書を作成する際には、以下の書類が必要です。これらの書類は、公正証書の法的な効力を確保し、手続きをスムーズに進めるために不可欠です。
離婚公正証書を作成する際には、以下の書類が必要です。これらの書類は、公正証書の法的な効力を確保し、手続きをスムーズに進めるために不可欠です。
基本的な必要書類
1.公正証書案文
離婚に関する取り決めを記載した文書で、公正証書の作成基となります。この文書は、離婚協議書と同様の内容を含むことが一般的です。
2.本人確認書類
公証人が本人確認を行うために必要です。運転免許証、パスポート、または住民基本台帳カード(顔写真入り)が一般的に求められます。
3.戸籍謄本(全部事項証明)
夫婦の戸籍の全情報を含む公的書類で、離婚事実の確認に使用されます。
4.印鑑登録証明書
印鑑証明書は、嘱託人のいずれかが公証役場に行かず代理人による作成をする場合に必要となります。印鑑証明書は作成後3か月以内のものが必要になります。
特定状況で追加必要な書類
1.年金分割合意書
年金分割を行う場合、この合意書が必要です。公正証書とは別に年金分割の合意内容を定め、公証役場で認証を受けることが推奨されます。この年金分割に関する決め事は公正証書によってもすることができます。その場合には事前に公正証書の案文内に年金の合意分割を加えておくとよいでしょう。
2.財産分与に関する資料
不動産の登記簿謄本や固定資産評価証明など、財産分与の対象となる財産を特定するための資料が必要です。また、ローン関連の書類や自動車の車検証も含まれることがあります。
3.代理人による手続きの場合の書類
行政書士等の専門家に公正証書の作成を依頼する場合、委任者からの委任状や印鑑登録証明書が必要となります。なお、代理人による作成であっても、公正証書案文や上記の本人確認書類、戸籍謄本は必ず必要です。
公正証書の作成に際しては、公証役場によって必要な書類が異なる場合がありますので、事前に専門の行政書士や公証役場に確認することが重要です。これにより、手続きの遅延や不備を防ぐことができます。
記載すべき内容
次に、公正証書に記載される内容について述べさせていただきます。
親権に関する内容
離婚公正証書において、親権に関する記述は非常に重要です。親権者を明確にすることで、子どもの法的な保護者が誰であるかをはっきりさせることができます。例えば、親権者が母親である場合、その事実を公正証書に記載し、母親が子どもの日常生活や教育を担当すること記載しておきます。この内容を離婚届に親権者を記載して届出することで効力を生じさせます。
養育費に関する内容
養育費の支払い条件も詳細に記載する必要があります。支払額、支払いの開始時期と終了時期、支払い方法(例えば、毎月の終わりに口座振込み)など、具体的な条件を設定します。これにより、将来的に養育費の支払いに関するトラブルを防ぐことができます。
面会交流に関する内容
面会交流の条件も公正証書に記載することが推奨されます。面会の頻度や時間、場所、その他の具体的なルールを定めることで、子どもと離れて暮らす親が定期的に子どもと交流できるようにします。合意に基づき、面会交流がスムーズに行われるようにするため、詳細な規定が有効です。しかし、家庭裁判所の実務では、面会交流の規定について包括的で一般的な内容が望ましいとされており、公証人の見解によっては詳細な記載が認められない場合があります。
財産分与に関する内容
財産分与についての詳細な記載は、離婚後の経済的な紛争を避けるために重要です。どの財産が分与の対象となるのか、そしてその分配方法について具体的に定めます。例えば、不動産や預金、その他の財産がどのように分割されるかを明記することが求められます。
強制執行に関する事項
公正証書には、強制執行認諾条項を含めることができます。これにより、契約が違反された場合に迅速に法的措置を取ることが可能となります。特に養育費の支払いが滞った場合には、この条項により速やかに差押えなどの強制執行を行うことができます。
公正証書作成にかかる費用
公正証書を作成する際には、様々な費用が発生します。公証人手数料は、公証役場で公正証書を作成する際に必要となる基本的な費用であり、その他にも必要書類の取得費用や専門家の依頼料などが含まれます。具体的な費用は、作成する公正証書の内容や契約の詳細によって異なりますが、一般的には10万円から15万円の範囲で変動します。(行政書士の場合)
費用の内訳
公正証書の作成にかかる主な費用は、公証人手数料、必要書類の取得費用、専門家の依頼料です。公証人手数料は、公証役場での手続きにより法定されており、財産の価額や条件の内容に応じて手数料が算出されます。例えば、財産価値が5000万円以下の場合、公正証書の作成費用は大体50,000円程度ですが、財産価値が高くなると、手数料も増加します。
また、公正証書を作成する際には、戸籍謄本や不動産登記事項証明書などの公的書類の取得が必要になります。これらの書類は公証役場に提出する必要があり、それぞれの書類にかかる手数料も費用に含まれます。さらに、公正証書の作成を専門家に依頼する場合には、依頼料や交通費も発生します。
費用節約の方法
公正証書の作成費用を節約する方法として、まず公証役場での手続きを事前によく理解し、必要な書類を自分で用意することが挙げられます。また、自治体によっては、公正証書にかかる費用の一部を補助する制度がありますので、該当する場合はこの補助を利用すると良いでしょう。詳細はネットで「公正証書 補助 (地域名)」で検索するとよいでしょう。
また、公正証書の作成に際して行政書士に依頼する場合、報酬の支払い方法を分割払いにすることで、初期費用を抑えることが可能です。さらに、相手方との協議により、費用の一部または全額を相手が負担する合意を得ることも一つの方法です。
公正証書の作成は、その法的効力と将来のトラブルを防ぐための重要な手続きですが、費用についても事前にしっかりと計画を立てることが重要です。
公証役場の選び方と予約方法
公証役場は、法律で設置されている公的な施設で、公正証書の作成をします。日本全国に約300か所の公証役場があり、特に都市部に多く設置されていますが、地域によっては数が限られている場合もあります。公証役場の選定に際しては、アクセスの便や利用者の多さを考慮することが重要です。しかし、利用者の多い都市部の公証役場は予約の関係ですぐに作成できないことがありますので、注意が必要です。
公証役場の選定基準
公証役場を選ぶ際には、まず最寄りの公証役場を確認しましょう。大都市には複数の公証役場が存在するため、自宅や職場からアクセスしやすい場所を選ぶことができます。また、公証役場は平日の9時から17時までの間に開庁しており、電話での受付時間が短い場所もあるため、事前に開庁時間を確認しておくことが大切です。
予約手続きの詳細
公証役場で公正証書を作成するには予約が必要な場合があります。予約方法は公証役場によって異なるため、事前に電話やメールで確認し、必要な書類を準備しておくことが効率的です。また、公正証書の作成日を予約できる公証役場もありますので、急いでいる場合は候補日程を複数用意しておくと良いでしょう。
公正証書の作成には、公証人との事前相談が必要です。公証役場との連絡は電話やFAXだけでなく、最近では電子メールでのやりとりが可能なところも増えています。初回の相談で提出できなかった資料は、後日、PDF形式でメールに添付して送信することができます。
公正証書の作成をスムーズに進めるためには、適切な公証役場の選定と予約手続きが重要です。これにより、必要な書類の準備や公証人との打ち合わせが円滑に行われ、効率的に手続きを進めることができます。
離婚後の手続き
離婚届の提出
離婚が成立した後、離婚届の提出は法的に必須の手続きです。提出先は、夫婦の本籍地または所在地の役所の戸籍課(戸籍・住民課)等となります。離婚届は、一方または双方が提出することができ、別居中でも一人で提出することが可能ですが、離婚の意思が双方になければ無効となります。提出方法には直接持参する方法と郵送がありますが、郵送の場合は届出日は役場に届いた日となります。
また、離婚届を提出する際には本人確認書類が必要ですので、郵送をする際には身分証明書のコピーを忘れずに同封しましょう。さらに本籍地以外の役場に郵送する場合には戸籍謄本を求められます。
各種手続きの実施
離婚に伴い、様々な手続きが必要となります。例えば、離婚成立後は健康保険の切替が必要で、無職の場合は国民健康保険への加入が、就業している場合は新たな健康保険への加入が必要です。また、離婚により年金分割が必要な場合、これは離婚成立日から2年以内に手続きを完了させる必要があります。
離婚に伴う住所変更の場合、転居届を提出する必要があり、新しい市区町村への転入がある場合は、その手続きが異なります。また、離婚して旧姓に戻る場合は、印鑑登録の変更も必要です。
ひとり親家庭になる場合、児童扶養手当の申請や医療費の自己負担分の補助など、様々な支援が受けられます。これらの手続きには所得証明書などの提出が必要であり、手続きの時期によって必要な書類が異なるため、事前にしっかりと確認しておくことが大切です。これらの手続きは、離婚後の新たな生活をスタートするために重要です。適切に手続きを進めることで、離婚後の生活における様々な問題をスムーズに解決し、新しいスタートを切ることができます。
まとめ
離婚公正証書の作成は、協議離婚を円滑に進めるために不可欠なプロセスです。こちらの記事では、離婚公正証書の書き方から必要書類、そしてその法的意義に至るまで、詳細にわたって解説しました。これらの情報を踏まえることで、離婚手続きの際に発生し得る様々な問題を事前に防ぐことが可能となり、双方にとって公平な合意が形成されやすくなります。
このように法的文書を適切に取り扱うことは、離婚に限らず多くの場面で重要です。読者の皆様が今後、さらに詳しい情報や関連する話題に興味をお持ちであれば、ぜひ以下の記事もご覧ください。
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離婚公正証書のサポートは全国対応です
離婚公正証書のサポートは全国対応しています。離婚専門の行政書士が担当しており、事務所は大阪市にありますが、離婚公正証書の作成に関する業務は全国どこからでも対応可能です。経験豊富な行政書士が、養育費や財産分与、面会交流など、離婚に関するあらゆる取り決めについて丁寧にサポートいたします。さらに、口コミ数は150件を超え、総合評価は4.9/5と非常に高い評価をいただいております。信頼性と実績を持つ当事務所に、ぜひお任せください。
料金
書面の種類 | 料金 | 概要 |
離婚の公正証書 | 60,000円~ | 離婚公正証書の原案を作成し、公証役場において打ち合わせや必要書類の提出等を行います。 |
公証役場での代理調印 | 15,000円 | 当事者一方の代理人として、公証役場で代理署名等を行います。代理人を立てて作成する場合には、委任者の委任状が必要です。 |
離婚協議書 | 30,000円 | 離婚協議書を作成し、PDFにより提供します。郵送は追加料金で対応させていただきます。 |
お問い合わせ
お問い合わせフォーム又はお電話(TEL:050-3173-4720)よりご連絡ください。
よくある質問
Q 離婚公正証書に記載すべき内容は何ですか?
A離婚公正証書には以下の内容を記載する必要があります。
・離婚に関する合意
・親権
・養育費
・慰謝料
・財産分与
・年金分割
・面会交流
・連絡先の通知義務 等
Q 公証役場での離婚手続きに必要な書類は何ですか?
A公証役場での離婚公正証書作成手続きには、離婚協議書、戸籍謄本、身分証明書(運転免許証やパスポートなど)、印鑑(認印又は実印)、不動産の登記簿謄本や物件目録(財産分与がある場合)、年金手帳と年金分割のための情報通知書(年金分割がある場合)が必要です。
Q離婚協議書の作成にかかる専門家の費用はどれくらいですか?
A離婚協議書や公正証書の原案作成のみであれば、費用は約40,000円から100,000円が相場です。また、行政書士が公証人役場で手続を代理するなどの手続を依頼される場合には、追加で約30,000円から50,000円程の費用がかかります。
Q離婚公正証書は妻だけで作成することは可能ですか?
A離婚に関する合意がある場合、公正証書の作成申請は夫婦の一方だけでも可能です。公証役場への申請も、夫または妻の一方だけで行うことができます。しかし、作成は夫婦双方が公証役場に行かなければいけません。(代理人も可能ですが。)