遺言執行者を引き受けられないとき|就任前の辞退・就任後の辞任と手続き支援 - 相続・遺言・離婚専門の大倉行政書士事務所

遺言執行者を引き受けられないとき|就任前の辞退・就任後の辞任と手続き支援

遺言執行者を引き受けられないときの辞退・辞任・手続き支援を、遺言書と書類の背景で示す生成画像

遺言書で執行者に指定されても、まだ就任を承諾していなければ、引き受けない選択ができます。一方、就任後に辞める場合は、正当な事由があることに加え、家庭裁判所の許可が必要です。「家族に断りの連絡をするだけでよいのか」は、すでに引き受けたかどうかで変わります。

法律の知識がない、仕事や介護で時間がない、遠方に住んでいるといった事情がある方は、役割そのものを引き受けられないのか、書類準備などを任せれば対応できるのかを分けて考えましょう。この記事では、就任前の辞退、就任後の辞任、執行者のまま実務支援を受ける場合の違いと、連絡・引き継ぎの進め方を説明します。

遺言執行者の辞退・辞任・手続き支援はどう違う?

就任前の辞退、家庭裁判所の許可を得る就任後の辞任、執行者を続ける手続き支援を比較した生成解説図
就任後の辞任には、正当な事由と家庭裁判所の許可が必要です。
状況検討する対応最初の確認
まだ就任を承諾していない引き受けない意思を伝える過去の返答・行動と、就任を求める催告の有無
就任した後に続けられなくなった家庭裁判所の許可を得て辞任する継続が難しい具体的事情、進行中の事務、引き継ぎ
執行者は続けられるが作業が難しい委任できる実務の支援を依頼する遺言の定め、適用法、ご本人に残る判断・確認

民法では、任務を引き受けることを「就職の承諾」と表現しています。会社への就職という意味ではありません。民法1007条は承諾後の任務開始を、1019条2項は就任後の辞任を定めています。根拠はe-Gov法令検索の民法1007条・1019条で確認できます。

「辞退届」「辞任届」という書類の題名だけで、どの手続きになるかが決まるものではありません。すでに承諾している人が「辞退」と書いても、就任前に戻れるわけではないため、最初に現在の立場を確かめます。

まだ引き受けていないか、何を見て確認する?

指定されたことと、引き受けたことを分ける

遺言書に名前が書かれていることだけで、本人が必ず任務を引き受けなければならないわけではありません。遺言者が存命中に話を聞いた場合と、死亡後に遺言書を確認して返事をした場合も、経緯を分けて整理します。相談時には、遺言書の作成日、遺言者の死亡日、指定を知った日を伝えてください。

親族から「名前があるから銀行へ行ってほしい」と言われ、一般的な必要書類を聞いただけの場合と、遺言執行者として払戻しなどを進めた場合では、確認する行動の内容が異なります。「まだ通知書を出していない」「承諾書に印鑑を押していない」だけで、未就任と決めつけないことが大切です。

返答と実際に行ったことを時系列にする

メールやメッセージで引き受けると返答したこと、相続人へ就任を知らせたこと、金融機関で執行者として書類を提出したことなどを、日付順に整理します。口頭のやり取りも、相手、日付、伝えた内容を分かる範囲で記録します。記憶が曖昧な部分は、確定した事実と区別しましょう。

  • 遺言書と、執行者の指定・権限に関する条項
  • 就任について交わしたメール、手紙、承諾書等
  • 相続人へ送った通知と、その控え
  • 銀行などへ提出した書類、受領した財産、支出の記録
  • 家庭裁判所からの選任に関する書類がある場合はその内容

形式的な書面がない場合でも、それまでの言動や手続きの内容が問題になることがあります。承諾したかについて関係者の認識が違うときは、自己判断で辞退通知を出して終わりにせず、資料をそろえて弁護士に確認してください。家庭裁判所で選任されている場合も、遺言で指定された段階の辞退と同じに扱わず、選任の経緯を伝えます。

就任するか返事を求める催告が届いたら?

民法1008条により、相続人その他の利害関係人は、相当の期間を定め、就任を承諾するかどうか確答するよう催告できます。その場合、期間内に相続人に対して確答をしないと、就任を承諾したものとみなされます。「返事をしなければ断ったことになる」と考えて放置しないでください。

受け取った文書の全文と封筒を保管し、到着日、指定された回答期限、差出人の立場、回答先を確認します。条文が定めるのは「相当の期間」であり、どの案件も必ず7日、2週間といった一律の日数ではありません。書かれた期限の妥当性に疑問があっても、無視してよいと自己判断しないようにします。

判断が間に合わない場合は、期限の前に法律相談を受け、回答や期間の調整について確認しましょう。こちらから「調べているので待ってください」と送っただけで、期限が当然に延びたり、承諾を避けられたりするとは限りません。延期の話ができた場合も、合意内容を記録します。

普通の連絡と法律上の催告は区別します。

家族からのすべての問い合わせに、直ちに承諾みなしの効果が生じるという意味ではありません。文書の題名だけで判断せず、求められている回答、期間、これまでの経緯を確認します。期限を過ぎてしまったときも、その後に断りの手紙を送れば必ず解消できるとは考えず、早めに相談してください。

就任前に辞退するときは、誰にどう伝える?

まだ承諾しておらず、承諾したとみなされる事情もないことを確認したうえで、引き受けない意思を相続人等の関係者へ明確に伝えます。催告が届いている場合は、その回答先と民法1008条の扱いも確認します。一人の親族に話しただけで必要な相手全員に伝わったと決めず、誰に何を伝えたか残してください。

曖昧な保留と、引き受けない返答を混ぜない

断ると決めたのに「しばらく難しいです」「できれば別の方に」とだけ書くと、いつか着手する予定なのか分かりません。対象となる遺言を特定し、就任を承諾しない意思を簡潔に示します。事情の説明は必要な範囲にとどめ、家族への非難や、財産の分け方に関する要求まで同じ通知へ盛り込まない方が、連絡の目的が伝わりやすくなります。

未承諾の場合の連絡文例

令和○年○月○日
○○○○様
住所・氏名・連絡先

○○○○様の令和○年○月○日付遺言により、私が遺言執行者に指定されている件について、ご連絡します。私は、遺言執行者への就任を承諾しませんので、その旨をお知らせします。

この文例は、就任後の辞任手続きには使えません。催告への返答として用いる場合は、催告を受けた日や対象文書も特定し、送付先・回答期限を確認します。送った文面の控えと、相手に届いた経緯が分かる記録を保管してください。配達記録があっても、封筒に入れた文書の内容まで分かるとは限らないため、控えも一緒に残します。

遺言書や通帳を預かっているとき

就任を断ることと、預かっている原本や物品を適切に返すことは別に整理します。誰から何を預かったかを確認し、返却・引渡しの相手に権限があるかを確かめてください。重要書類を家族の誰かへまとめて渡したまま、行き先が分からなくなることを避けます。

財産を受け取ったり処分したりした経緯がある場合は、単なる原本の預かりとは違う確認が必要です。辞退通知を書く前に、その行為が執行者としての承諾や任務にどう関係するかを相談しましょう。

就任後に辞任したいときは、家庭裁判所の許可が必要

就任を承諾した後は、民法1019条2項に基づき、正当な事由がある場合に家庭裁判所の許可を得て辞任します。相続人全員が了承した場合でも、その了承だけで法律上の辞任手続きが済むわけではありません。銀行へ担当終了の連絡をすることも、裁判所の許可の代わりにはなりません。

続けられない事情と、任務への影響を説明する

例えば療養などの事情が生じて任務の継続が難しくなった場合は、いつから、どの作業が、どの程度できなくなったかを具体的に整理します。病名や年齢が一つ当てはまれば必ず認められる、忙しければ無条件で辞められる、といった一律の基準ではありません。正当な事由に当たるかは個別の事情を踏まえた裁判所の判断になります。

遺言書、就任の経緯、財産の状況、既に行った事務、現在止まっている手続き、継続困難の理由をまとめると、相談先が状況を把握しやすくなります。事情を裏付ける資料の要否や申立書の書き方、提出先・費用・必要書類は、家庭裁判所の案内や弁護士・司法書士の対応範囲を確認してください。

当事務所の手続き支援には、家庭裁判所へ提出する辞任許可の申立書の作成や、裁判手続きの代理は含まれません。通常の相続書類の作成支援と混同せず、必要な手続きに対応できる専門家へ相談することが大切です。

申立てをしただけで任務を放置しない

辞任したい意思を示した日、申立てをした日、許可が出た日を同じに扱わないでください。許可を待つ間に金融機関から補正を求められている、財産の保存に急ぐ対応があるなどの場合は、何を誰が対応するかを確認します。判断が難しいまま、新たな処分を独断で進めたり、連絡を全て止めたりすることは避けましょう。

相続人に任務を怠っていると指摘された場合も、自分から辞任を申し立てる場合と、利害関係人が解任を求める場合は別です。責任の追及や紛争があるときは、事務の代行先を探すだけでなく、弁護士へ経緯を説明してください。

辞任後の引き継ぎと、次の執行者はどうする?

次の人が手続きを再開できる資料を残す

辞任の許可を得た場合も、それまでに行った仕事の記録が不要になるわけではありません。預かった財産と書類、収入・支出、終了した事務、未了の事務、連絡待ちの相手を整理し、引渡先と方法を確認します。辞任によって、それまでの行為に関する責任まで当然に消えるものでもありません。

引き継ぐ内容整理しておく情報
財産・金銭保管場所、残額、入出金の根拠、引渡先と受領記録
書類遺言書、戸籍、財産目録、通知控え、銀行の案内等の原本・写しの区別
進行中の手続き提出先、提出日、担当窓口、追加で求められた資料、回答期限
費用と報告立替金、領収書、未精算の項目、関係者へ報告した内容

民法1020条は、任務終了後について654条・655条を準用しています。急迫の事情があるときの必要な処分や、終了を相手方へ知らせることも問題になります。「辞任したので今後は一切関係しない」とだけ伝えて終わりにせず、緊急対応と終了の通知・引き継ぎを相談先と整理してください。

家族の話合いだけで新しい執行者になるとは限らない

次の担当者が必要な場合は、遺言の指定内容や他の執行者の有無を確認します。遺言執行者がいない、またはいなくなったときは、民法1010条により、利害関係人が家庭裁判所へ選任を求めることができます。相続人同士で連絡係を決めたことと、法的な遺言執行者が選任されたことは区別します。

裁判所「遺言執行者の選任」では、申立先を遺言者の最後の住所地の家庭裁判所とし、遺言書の写しなどの標準的な添付資料を案内しています。辞任の許可と後任の選任は目的の違う手続きなので、必要性と順序を分けて確認します。

執行者を続けながら、難しい作業だけ任せる方法もある

引き受ける意思と判断する力はあるものの、戸籍の収集、財産目録の作成、金融機関の書類準備に時間を割けない場合は、委任できる作業の支援を検討できます。反対に、内容を確認して判断すること自体が難しい場合は、単なる作業分担で対応できるかを先に確かめます。

民法1016条は、遺言に別の定めがある場合を除き、執行者が自己の責任で第三者に任務を行わせることを認めています。ただし、施行前に作られた遺言の復任権には旧規定が適用される経過措置があります。遺言書の作成日と委任に関する条項を確認し、現行条文だけで全ての案件を判断しないことが必要です。詳しくは改正法附則8条3項(裁判所掲載資料)をご確認ください。

分担するときは、作業・確認・報告を一組で決めます。

誰が資料を集め、誰が文案を作り、ご本人がいつ内容を確認するかを決めます。提出や発送まで依頼する場合は、その権限と提出先の取扱いも確認します。書類作成の依頼だけで、執行者の地位や責任が依頼先へ移るものではありません。

就任を引き受ける方向で整理できたら、相続人への遺言内容の通知など、開始時の作業を確認します。支援先を探していることを理由に必要な連絡を長期間止めず、どの作業が期限や他の手続きに影響するかを共有しましょう。

支援を依頼する前に、費用と本人に残る仕事を確認する

見積りでは、書類の作成だけか、資料収集や銀行への提出まで含むか、修正や追加対応をどこまで含むかを確認します。本人が行う署名押印、内容の承認、財産の処分に関する判断も明らかにします。依頼する作業が増える場合は、追加費用の条件と事前に説明を受ける方法を決めておきましょう。

遺言執行者本人の報酬、専門家への支援費用、戸籍等の実費はそれぞれ別です。誰が契約し、誰が立て替え、最終的にどう精算するかも整理します。支援を頼んだことだけで、すべての費用を自由に遺産から差し引いてよいわけではありません。

不動産登記は司法書士、税務申告は税理士、争いを伴う代理交渉は弁護士の業務として確認します。困りごとが「書類が多い」ことなのか、「遺言の効力を争われている」ことなのかで、相談先も変わります。後者を通常の書類作成の依頼だけで解決しようとしないでください。

遺言執行者を引き受けられないときのよくある質問

法律の素人であることだけで、遺言執行者になれませんか?

専門資格がないことだけで就任できないわけではありません。ただし、資格の有無と任務を適切に続けられるかは別です。必要な判断や記録を担えるか、支援を受けることで対応できるかを確認してから決めましょう。

辞退すれば、相続財産も受け取れなくなりますか?

執行者への就任を断ることと、相続人として相続することは別です。辞退通知を送っただけで家庭裁判所の相続放棄になるわけではありません。相続自体を放棄したい場合は、期限のある別の手続きとして早めに確認してください。

銀行の手続きだけ終わったので、執行者を辞めてもよいですか?

銀行の受付や払戻しが終わったことだけで、遺言全体の執行が完了するとは限りません。他の財産、引渡し、精算、報告などの残りを確認します。任務が残る段階で辞任する場合は、就任後の辞任として検討します。

相続人全員が別の人でよいと言えば、交代できますか?

家族の了承だけで、就任後の辞任許可や新たな執行者の選任が済むわけではありません。遺言の内容、現在の執行者の立場、必要な家庭裁判所の手続きを確認します。

遺言執行の実務を一人で進めることが難しい方へ

奈良県生駒市の大倉行政書士事務所では、指定されたご本人が執行者として行う書類準備や預貯金の手続きを支援しています。奈良市などからのご相談でも、遺言書、これまでの対応、任せたい仕事を確認して対応範囲をご案内します。

続けながら作業を任せたい方は、遺言執行者に指定された方の手続き支援で、支援内容と依頼の流れをご確認ください。執行者への新規就任や、辞任許可の申立てとは分けてご案内しています。

初回相談は無料です。部分的な手続き支援の費用は、任せる仕事と財産・相続人の状況に応じて個別に見積もります。公表されている「遺言書執行プラン」121,000円(税込)からという料金が、部分支援に一律で適用されるわけではありません。証明書等の実費や他の専門家の費用も区別して確認します。

最初の連絡では「まだ返事をしていない」「引き受けた後に書類準備で止まっている」など、現在の状況と困っている作業をお伝えください。催告などの期限がある場合は、その日付もお知らせください。資料の確認方法は、相談内容に合わせてご案内します。

事務所名大倉行政書士事務所
所在地奈良県生駒市山崎町3番11-1
電話番号0743-83-2162
受付時間9:00〜18:00
対応地域生駒市・奈良市・東大阪市・大阪市およびその周辺地域
お問い合わせお問い合わせフォームはこちら

参考サイト

法令・公式案内と事務所の対応範囲は2026年11月3日に確認しています。

その他の関連記事

記事一覧に戻る