2024.05.06
離婚に伴う慰謝料を保証人に支払ってもらうには?
離婚に伴う慰謝料の支払を約束した場合、相手の支払能力に不安がある場合には保証人を付けることも検討することができます。こちらの記事では、慰謝料の支払に保証人を付ける場合の重要なところや公正証書で契約することについて説明させていただきます。
離婚の慰謝料には保証人を付けることができる!
相手の不貞により離婚をする場合、相手に対し、慰謝料を請求することができます。この場合に、相手が慰謝料を支払うことについて支払能力や支払意思に不安がある場合には、慰謝料の支払について連帯保証人をつけることができます。連帯保証人をつけておくことで、連帯保証人は本人と同等の支払義務を負うこととなりますので、支払いを受ける者は不安なく支払を受けることができると言えるでしょう。
連帯保証人とは 金銭を支払う者(債務者)が支払をしない場合に、支払う者に代わって金銭を支払うことを約束した者のことです。連帯保証人は、通常の「保証人」が有する「催告の抗弁権」や「検索の抗弁権」を有しません。そのため、金銭を支払う者と同等の債務を有する者と言えるでしょう。 |
連帯保証人の承諾は必ず必要
離婚の慰謝料の支払で、連帯保証人を付ける場合には、連帯保証人の候補者に、連帯保証人となることの了承を得ることが必要です。つまり、夫婦のみの契約では連帯保証人の意思が確認できませんので、連帯保証人を「Aさんを連帯保証人とする。」という契約ができません。連帯保証人を付けるには、契約時に夫婦と連帯保証人の候補者の3者間で行う必要があります。なお、保証人を付けてする契約は民法の規定により書面ですることが必要であるとされています。
第446条(保証人の責任等) 1 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。 2 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。 3 保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。 |
慰謝料の支払で連帯保証人を付けた方が良いケース
慰謝料の額が数十万円など低額である場合や、一括により支払いである場合には、連帯保証人を付けるメリットは小さいと言えます。では、どのような契約では連帯保証人を付けるべきなのでしょうか。考えられるケースとしては、次の3つが挙げられます。
- 慰謝料の支払が分割の場合
- 慰謝料の支払が分割であり、支払が長期にわたる場合
- 慰謝料が高額な場合
上記の各項について以下に詳しく説明します。
慰謝料の支払が分割の場合
離婚後、数か月は分割による慰謝料の支払を続けていても、ある日突然、支払がなくなることは珍しくありません。このように、約束した慰謝料の総額には満たないものの、ある程度、支払があった後に急に支払がなくなり相手に逃げられてしまうケースはとても多いです。このような場合に、連帯保証人を付けていると連帯保証人に対し支払を求めることができるので安心して慰謝料の支払いを受けることができるでしょう。
慰謝料の支払が分割であり、支払が長期にわたる場合
前記の内容と、ほとんど同じ趣旨ですが、慰謝料の支払が分割であり、支払の期間が長い場合には、相手が途中で支払わなくなる可能性が高くなります。これは、支払う者が「これだけ支払ったのだから、もう文句は言わないだろう。」や「ほとんど支払ったからもう強制執行の手続はしないだろう。」のような心理になるからと考えられます。そのため、支払による期間が長い場合には特に連帯保証人を付けておくと安心です。
慰謝料が高額な場合
離婚時の契約で、口頭や書面では慰謝料の支払いを承諾していても、実際は支払う気がなく「早く離婚をする」目的で高額な慰謝料の支払を認めるケースもあります。このような場合には、後述の公正証書を作成しておくと、強制執行により給与の差押などをすることができますが、公正証書としていない場合には、裁判により確定判決を得る必要があり手続が煩雑です。裁判による複雑な手続をしないためにも、連帯保証人を付けておきましょう。
離婚による慰謝料の支払契約は公正証書の作成すべき
離婚に伴う契約は、公正証書を作成することができます。公正証書とは、公証人と呼ばれる法律の専門家によって公証役場で作成される公文書のことです。公正証書は、私人が作成する契約書と違い、高い証拠力や強制力を有しています。
なぜ、離婚の慰謝料の支払を公正証書で作成するのか?
公正証書による契約は、お金を支払う側が支払を怠った場合に、裁判を経ずに給料の差押ができる内容を条項に記載することができます。つまり、離婚契約に慰謝料の支払がある場合に、この条項を記載しておくことで、万一、公正証書の内容のとおりに慰謝料が支払われなければ、支払を受ける者は、簡易的な手続で慰謝料の請求額の範囲で強制執行をすることができます。
保証人も強制執行の対象とできる
離婚に伴う慰謝料や財産分与の支払契約を、公正証書によって夫婦と保証人の3者間で締結することで保証人についても強制執行の対象とすることができます。この場合には、債務者と保証人が支払債務を履行しなければ、いずれの財産についても強制執行の対象となりますので、通常より高い確率で債権回収ができるでしょう。ただし、養育費等の夫婦間に発生する専属的な義務である場合には、保証人をつけることが出来ない場合がありますので、注意が必要です。
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公正証書を作成するメリットのまとめ
離婚に伴う慰謝料の支払契約を公正証書として作成するメリットは、前記で説明した強制執行以外にも次の内容が挙げられます。
- 公正証書は偽造や変造のリスクがない
- 公正証書を紛失し、契約内容を確認できなくなるリスクがほぼ無い
詳細は以下の通りです。
公正証書は偽造や変造のリスクがない
公正証書は原本が公証役場で保管されますので、作成後に公正証書の内容の偽造や変造がされるリスクがありません。
公正証書を紛失し、契約内容を確認できなくなるリスクがほぼ無い
上記のとおり、公正証書は原本が公証役場に保管されていますので、万一、公正証書を失くしてしまったとしても、公正証書の正本や謄本を再発行してもらうことができます。ただし、公正証書の保管の期限は原則20年間と決められていますので、それ以降であれば再発行ができない場合があります。
離婚に伴う慰謝料契約を公正証書でするデメリット
これまでは、公正証書を作成するメリットについて主に記述しましたが、当然デメリットも存在します。主に考えられるデメリットは、費用や作成期間です。まず費用についてですが、公正証書を作成する場合、公証人に対し手数料「30,000円から70,000円程(ただし、ケースにもよる)」が必要です。これは、政令で金額が定められており、これを支払わずに公正証書を作成することはできません。
続いて、作成期間についてですが、公正証書を作成するには、公証役場に出向き作成をする必要があります。公証役場は各都道府県に平均で3~4か所(都市部では10か所以上のところもあります。)程しかなく、公証役場で公証人は3~4名程しか在籍しておりません。そのため、公証役場は混雑しているケースが多く、最初の申込から作成まで1か月前後はかかるケースがほとんどです。私文書であれば、最短当日に作成し契約できるので、作成時間においては私文書の方が早く作成できます。
離婚に伴う慰謝料の支払を公正証書で作成する
公正証書の作成サポートは当事務所によってもさせていただけます。慰謝料の支払を安全に受けるためには、強制執行認諾条項付きの公正証書によって作成しておくことをおすすめします。公正証書は、必要書類の取得や公証人との打ち合わせなど初めての方にとっては難しいかもしれません。このような手続は全て当事務所によって対応をさせていただきます。
当方は大阪にある行政書士事務所ですが、公正証書の作成について全国で対応させていただくことができます。また大阪を含む近畿圏内では、公証役場での代理人による署名押印にも対応させていただくことができますので「平日に時間が無い方」や「夫婦で公証役場に行きたくない方」などはお気軽にご連絡ください。
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料金
当事務所の、離婚関連業務による書類作成の費用でございます。作成する内容や難易度によって一部金額が異なる場合がありますので、ご了承ください。
書面の種類 | 料金 | 概要 |
離婚の公正証書 | 60,000円~ | 離婚公正証書の原案を作成し、公証役場において打ち合わせや必要書類の提出等を行います。 |
公証役場での代理調印 | 15,000円 | 当事者一方の代理人として、公証役場で代理署名等を行います。代理人を立てて作成する場合には、委任者の委任状が必要です。 |
離婚協議書 | 30,000円 | 離婚協議書を作成し、PDFにより提供します。郵送は追加料金で対応させていただきます。 |
お客様の声
こちらは、離婚関連の業務をご依頼いただいたお客様の声の一部でございます。これら以外のお声についても「お客様の声」よりご確認いただけます。
まとめ-離婚に伴う慰謝料を保証人に支払ってもらうには?
最後までご覧いただきありがとうございました。こちらの記事では下記の内容について記載させていただきました。
- 離婚の慰謝料には保証人を付けることができる!
- 連帯保証人の承諾は必ず必要
- 慰謝料の支払で連帯保証人を付けた方が良いケース
- 慰謝料の支払が分割の場合
- 慰謝料の支払が分割であり、支払が長期にわたる場合
- 慰謝料が高額な場合
- 離婚による慰謝料の支払契約は公正証書の作成すべき
- なぜ、離婚の慰謝料の支払を公正証書で作成するのか?
- 保証人も強制執行の対象とできる
- 公正証書を作成するメリットのまとめ
- 公正証書は偽造や変造のリスクがない
- 公正証書を紛失し、契約内容を確認できなくなるリスクがほぼ無い
- 離婚に伴う慰謝料契約を公正証書でするデメリット